前半(http://radish.diarynote.jp/201607091512155095/)の続きです。
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事例4:極楽の鳥を愛しているならリングを贈ろう
この事例は最近のSCG Washington DC(スタンダード)のカバレッジから持ってきた。解説者のGerry ThompsonとMike Floresはちゃんとここで何が起きていて、Ben Lundquistがどのレベルを使うべきかを議論している(マルチレベル・シンキングの用語を使ってはいないが)。
Benは手札にOblivion Ringを持っており、Insectile Aberation2体と(+4/+0の)Runechanter’s Pikeを場に出している。彼のライフは21で、相手は20。相手の手札は1枚だが、状況からすると無意味な土地である可能性が非常に高い。
Oblivion RingをBirds of Paradiseに使って10点アタック、相手のAnthonyを10ライフまで落とすか、あるいはRingを温存する代わりに、鳥でチャンプして追加のドロー・ステップを得る機会を相手に与えるかが判断のポイントになる。
このOblivion Ringを相手のBirds of Paradiseに使うべきか、という問題だ。どのレベルが正しい答えを教えてくれるだろうか?その理由は?
(※訳注:画像あり。)
レベル1では、相手が何をドローし得るかを考える。最も恐ろしいカードはBonfire of the Damnedだ。そのため、Bonfireを引くチャンスを2回から1回にできるというのは、Oblivion Ringを使う重要な理由になる。
しかし、正しいプレイにたどり着くのにレベル1の思考では不十分だ。レベル1では、このターンは待って次のターンに鳥にRingを使うべきではない理由を答えられない。正しいプレイを決めるのに必要なのはレベル2だ:私が何を持っていると相手は考えているか?
相手には大量のマナがあり、この状況でベストなBirds of Paradiseの使い方は時間稼ぎのためのチャンプブロックだ。相手から見れば、こちらが次のターンにGut ShotやOblivion Ringを引くのが恐ろしい。鳥はチャンプさせたいので、こちらが除去をトップする可能性をケアしてこのターンにチャンプするのが極めて自然だ。これが見えるのがレベル2で、BenはこのターンにOblivion Ringをプレイすべきということになる。
事例5:十字軍はいつ感電する運命なのか?
この事例はMike Floresの記事『Practical Leveled Thinking』から借り、私が少し改変したものだ。
スタンダード。あなたはケッシグランプを使い、相手は白青人間(※訳注:ムーアランド入り人間ビート)。相手がMirran Crusaderをプレイし、あなたの手札にはGalvanic Blastがある。
今すぐCrusaderにBlastを使うべきだろうか。それともAngelic DestinyにレスポンスでBlastしてより大きな成果を上げるために待つべきだろうか。待った場合、相手がDestinyを使わないと、Mana LeakやFaith’s Shieldで感電破がカウンターされるおそれがある。
使うレベルを決めるために、何を考慮すべきだろうか?
まずはじめに、相手が既に青マナを場に出していると想定すれば、Mana Leakが白青人間のメインに入るカードかどうかは考慮すべきポイントだ。3~4枚入れるのが当たり前の時期があったが、それ以外の時期はほとんど0枚だった。Faith’s Shieldはそれほど見かけないが、全く無視してよいカードでもない。
もう一つ考えたいのは、Angelic Destinyが相手の手札あるいはデッキにない可能性だ。今のところメインに4枚入れるのが正しいという意見が多いが、私が世界選手権で使ったバージョンはメインにDestinyを入れていない。
とはいえ、この事例で最も重要な問題は、相手が感電破をケアせずAngelic Destinyをブッパする可能性がどれぐらいあると見積もるかだ。相手の使えるレンジを示す指標がここで役に立つ。
これがサイド後だったとすると(Flashfreezeも考慮すべきというのはさておき)、相手が前のゲームでどのようなプレイをしたかを考えよう。もしSlagstormをケアせずクリーチャーを並べてきていたなら、ここでもAngelic Destinyをブッパしてくる可能性があるだろう。こちらが6マナを使えるようになる直前に特別な理由なくタップアウトしてきていたら、タイタンのためにリークを構えたブラフをするプレイ(=レベル2)はおそらく相手の使えるレンジ外だ。
また別のルートとして、相手がGalvanic Blastを正しくケアしてDestinyをブッパしないだろうと読んだうえで、Mirran Crusaderから1回殴られるというプレイがある。これは、こちらが感電破を持っていないという誤った読みを相手にさせることにより、次のターンにDestinyをBlastで狩れる可能性を高めるというプレイだ。相手がそう読んでくれると考えるなら、これはレベル4のプレイになる。
この事例は細かい部分が明確になっておらず、どのレベルが最適で何が正しいプレイか確定するには情報が十分でない。しかし、与えられた情報だけでも、上述の通りいろいろな道筋を考えることができる。
事例6:この達人は無名なのか、それともネームレスはないのか?
モダン。キブラー相手のドランミラーだ。相手のライフは8でこちらは7。相手の手札は2枚でこちらは0枚。
相手のボードは、沼、Stirring Wildwood、Murmering Boskがアンタップ状態で、5/6のTarmogoyf3体が今まさにアタック中だ。
こちらのボードは、森、沼、平地、Godless Shrine、Gavony Township、6/5のKitchen Finksがタップ状態、Treetop Village(起動されておらずカウンターも載っていない)、5/5のQasali Pridemage、2/2のQasali Pridemage、5/4のキッチンがアンタップ状態だ。
どのレベルを使うべきか?それがどんなプレイに繋がるか?
(※訳注:画像あり。)
タルモ1体をダブルブロックしてもう1体をシングルブロックし、5ダメージを受けて2ライフを残すのがレベル0のプレイだ。
レベル1では、このアタックを正当化する相手の手札は何か、と考える。Zealous Persecutionでは足りていない。このターンに6ダメージを受けても1ライフ残り、返しにTreetop Village+6/5キッチン+2/1キッチンでアタックすればこちらの勝ちだ。Zealousと1マナ生物(つまりバーパラ)を持っているならオールアタックは納得できる。だがこちらはレベル0のプレイをしておけばそんなに悪い状況にはならない。手札が2枚ともブロッカーでもやはり不十分だ。
相手が持っている可能性があり、実際に持っていそうだと思われるカードはNameless Inversionだ。これはTreefolk Harbingerのサーチ対象としてドランデッキに1枚挿しされることがよくある。
ではNameless Inversionをケアすべきなのだろうか?
相手のカードはこれまで17枚見えている。その中にTreefolk Harbingerはなく、Harbingerをデッキに入れているかどうかは分からない。Harbingerを見た場合より、Nameless Inversionが入っている可能性は低くなる(Harbingerなしでもタルモのために部族スペルを入れている可能性は残るが)。
プレイを決断する前に、次の問いについて考えてみよう:相手がこのアタックをしなければどんな盤面になるか?
そう、ガヴォニーが再びアンタップするので、こちらのクリーチャー2体が相手のタルモのサイズを超え、1体が相打ちできるサイズになる。その次のターンには、相打ちサイズだったキッチンもタルモのサイズを追い越し、他の2体はそれぞれ単独で即死ダメージ級のサイズになる。相手が動かずに1~2ターン経過すれば、どんどん相手に勝ち目のない盤面になっていく(ガヴォニーがボードの均衡を崩すからだ)。
相手はNameless Inversionを持っているのか、それとも、どうしようもなくなる前に動けるときに動いてワンチャンを作りにきたのか、というのがこの事例の真の問題だ。
この問いに答えるにはレベル3の思考が必要になる:相手が持っていると私が予想しているカードは何だと相手は考えているか?
相手はこちらがプロプレイヤーだと知っている。また、こちらも相手がプロだと知っている。とすると、相手がNameless Inversionを持っているというこちらの読みを相手が読むのは合理的だ。キブラーのアタックを正当化できるカードはほとんどなく、その中で彼が実際に持っている可能性があるのがNameless Inversionだからだ。
Nameless Inversionをケアするかどうかで盤面がどう変わるか比較してみよう。ケアする場合は3体でそれぞれチャンプブロックし、こちらには2/1キッチンと6/5キッチンが残り、次のターンにガヴォニーかTreetopを起動できる。その次もまたタルモ3体アタックが来るので、6/5キッチンで1体相打ちをとり、残り2体を2/1キッチンとTreetopでチャンプすることになる。そしてNameless Inversionはいまだ彼の手札の中だ!
これを、相手がInversionを持っておらず返しに死ぬケースと比べてみる。Inversionを持っている可能性はゼロではないがどうしてもケアしなければならないとは思えない。Inversionを持たれていると思い込み過ぎていたに違いなく、相手が動かなかった場合に陥る苦境(この後2ターンでガヴォニーに負ける)を考えれば、彼がレベル2を使ってきたと考えるのが合理的だ。相手のブラフに対してコールするレベル0のプレイを選ぶ、というレベル3の判断が正しいだろう。
今回の事例では、キブラーがNameless Inversionを持っている可能性よりも、(盤面で劣勢なため)レベル0や1の選択肢では勝ち目のないゲームにレベル2のプレイでワンチャン作りにきただけという可能性の方が高い。(世界最高のプレイヤーの一人である)彼の使えるレンジは明らかに全てのレベルだと分かっているので、レベル2が彼の使えるレンジ外になっている可能性は安心して除外できる。
事例7:鏡よ鏡……、何をコールすべきか垣間見させておくれ!
SCGデトロイト(レガシー)でのChris Andersen相手のフィーチャーマッチ。相手のデッキはエルフで、今はこちらの後攻2ターン目。
こちらの手札には黒マナの出る土地とEngineered Plagueがあり、つまり目標は次の相手のターンを生き延びることだ。幸いMeddling Mageを持っているが、何を指定すべきかという難しい判断に直面している。相手には十分な生物とマナが(Gaea’s Cradleのおかげで)揃っており、次のターンにサバンナ(かサバンナをサーチできるフェッチ)+Mirror Entityをプレイすれば即死アタックが可能になっている。しかし、Mirror Entityが手札になければ(多くのリストでEntityは2枚だ)、Glimpse of Natureを指定するのが生き延びるためには最良だ。
理屈の上ではGlimpseを指定する方が若干良い(Glimpseは既に1枚使われているので残り3枚で、Entityは2枚だ)が、エルフのリストによっては勝利手段がMirror Entityだけの場合があり、それならEntityを指定すれば問答無用でロックしてしまえる。
決断する前にもう一つだけ考慮できることがある。Meddling Mageをプレイしたとき、彼が「指定は?」と聞き、こちらは「2枚の間で悩んでるんだ」と答えた。それに対して彼は「GlimpseとGreen Sun’s Zenithかな?」と聞いてきた。
通常この手の情報は無意味だが、Chris Andersenは非常に抜け目なくあらゆる機会に「ワザをかけて」こようとすることを私は知っている。
どのレベルを使うべきか?それに従えばMeddling Mageで何を指定すべきか?
(※訳注:画像あり。)
Engineered Plague / 仕組まれた疫病 (2)(黒)
エンチャント
仕組まれた疫病が戦場に出るに際し、クリーチャー・タイプを1つ選ぶ。
選ばれたタイプのクリーチャーは、-1/-1の修整を受ける。
http://whisper.wisdom-guild.net/card/Engineered%20Plague/
Meddling Mage / 翻弄する魔道士 (白)(青)
クリーチャー ― 人間(Human) ウィザード(Wizard)
翻弄する魔道士が戦場に出るに際し、土地でないカード名を1つ指定する。
指定されたカードは唱えられない。
2/2
http://whisper.wisdom-guild.net/card/Meddling%20Mage/
Gaea’s Cradle / ガイアの揺籃の地
伝説の土地
(T):あなたがコントロールするクリーチャー1体につき、あなたのマナ・プールに(緑)を加える。
http://whisper.wisdom-guild.net/card/Gaea%27s+Cradle/
Mirror Entity / 鏡の精体 (2)(白)
クリーチャー ― 多相の戦士(Shapeshifter)
多相(このカードは、すべてのクリーチャー・タイプである。)
(X):ターン終了時まで、あなたがコントロールするクリーチャーは基本のパワーとタフネスがX/Xになり、すべてのクリーチャー・タイプを得る。
1/1
http://whisper.wisdom-guild.net/card/Mirror%20Entity/
Glimpse of Nature / 垣間見る自然 (緑)
ソーサリー
このターン、あなたがクリーチャー呪文を唱えるたび、カードを1枚引く。
http://whisper.wisdom-guild.net/card/Glimpse%20of%20Nature/
Green Sun’s Zenith / 緑の太陽の頂点 (X)(緑)
ソーサリー
あなたのライブラリーから点数で見たマナ・コストがX以下の緑のクリーチャー・カードを1枚探し、それを戦場に出す。その後、あなたのライブラリーを切り直す。緑の太陽の頂点をオーナーのライブラリーに加えて切り直す。
http://whisper.wisdom-guild.net/card/Green+Sun%27s+Zenith/
レベル0では……いや、Meddling Mageを使うにはレベル1以上が必要だ。
レベル1では、Glimpse of Natureを指定する方がMirror Entityより少しだけ良い(Glimpse3枚に対してEntity2枚なので60%だ)。これら2種類以外に指定する意味のありそうなカードはない。
相手の質問がこちらの判断の中で意味を持つのはここだ。こちらがGlimpseとMirror Entityの二択を選ぼうとしていることに彼が気づいていて、なおかつ彼がMirror Entityを持っている場合、この質問はこちらにGlimpseを指定させるように誘導するチャンスになっている(Glimpseは明らかにZenithより良い)。
しかし、彼のトリックスターぶりをこちらが知っていることを彼も分かっているなら、Mirror Entityを持っていないときにこの質問をしてEntityを指定させ、Glimpseをプレイしようとするだろう。
この特殊な事例では私は結局Mirror Entityを指定するレベルを使った。もうお分かりだと思うが、相手がどのレベルを使っているか確信できない限りレベル5以上を使うのは避けたい。レベル5以上になると、どちらが一つ上のレベルを使うかという五分五分の二択になってしまうためだ。レベル1の情報で考えれば成功率は50%より高い(60%)ので、そのレベルを判断基準にした方が良いだろう。
したがって、ここで正しいのはレベル1を使い、Glimpse of Natureを指定することだ。
まとめ
より高いレベルが必要な状況になったときに使えるように、あらゆるレベルを使えるようになっておくのが理想だ。こちらの使えるレンジが限られているという情報を相手に与えるのも避けたいだろう。
しかし、ほとんどの状況でレベル2までを使えれば十分だ。意思決定には自分の直観も活用しつつ、レベル0~2を考慮すれば確率的にも概ねベストになる。
ほとんどの場合、どの選択が良いかは明らかだ(森より先にRazorverge Thicketを出す、のように)。明らかに見えるだけの場合もあるが(ヘルカイトの事例)。
レベル1とレベル2の要素をできるだけ色々な場面で考えてみてほしい、特にレベル1だ。できるだけレベル0を続けていられればベストだが、(盤面がイーブンか自分に優勢で)重要なカードをケアすべきときや、低いレベルでは判断の根拠が足りないときのプレイに変化があるはずだ。
マルチレベル・シンキングの理論と使い方を理解し、正しいプレイを見つけるのに今回の実践編が役立てば幸いだ。
Craig Wescoe
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事例4:極楽の鳥を愛しているならリングを贈ろう
この事例は最近のSCG Washington DC(スタンダード)のカバレッジから持ってきた。解説者のGerry ThompsonとMike Floresはちゃんとここで何が起きていて、Ben Lundquistがどのレベルを使うべきかを議論している(マルチレベル・シンキングの用語を使ってはいないが)。
Benは手札にOblivion Ringを持っており、Insectile Aberation2体と(+4/+0の)Runechanter’s Pikeを場に出している。彼のライフは21で、相手は20。相手の手札は1枚だが、状況からすると無意味な土地である可能性が非常に高い。
Oblivion RingをBirds of Paradiseに使って10点アタック、相手のAnthonyを10ライフまで落とすか、あるいはRingを温存する代わりに、鳥でチャンプして追加のドロー・ステップを得る機会を相手に与えるかが判断のポイントになる。
このOblivion Ringを相手のBirds of Paradiseに使うべきか、という問題だ。どのレベルが正しい答えを教えてくれるだろうか?その理由は?
(※訳注:画像あり。)
Oblivion Ring / 忘却の輪 (2)(白)
エンチャント
忘却の輪が戦場に出たとき、他の土地でないパーマネント1つを対象とし、それを追放する。
忘却の輪が戦場を離れたとき、その追放されたカードをオーナーのコントロール下で戦場に戻す。
http://whisper.wisdom-guild.net/card/Oblivion%20Ring/
Insectile Aberration / 昆虫の逸脱者
〔青〕 クリーチャー ― 人間(Human) 昆虫(Insect)
飛行
3/2
Delver of Secrets / 秘密を掘り下げる者 (青)
クリーチャー ? 人間(Human) ウィザード(Wizard)
あなたのアップキープの開始時に、あなたのライブラリーの一番上のカードを見る。あなたはそのカードを公開してもよい。これによりインスタント・カードかソーサリー・カードが公開された場合、秘密を掘り下げる者を変身させる。
1/1
http://whisper.wisdom-guild.net/card/Insectile%20Aberration/
Runechanter’s Pike / ルーン唱えの長槍 (2)
アーティファクト ― 装備品(Equipment)
装備しているクリーチャーは先制攻撃を持つとともに+X/+0の修整を受ける。Xは、あなたの墓地にあるインスタント・カードとソーサリー・カードの総数である。
装備(2)
http://whisper.wisdom-guild.net/card/Runechanter%27s+Pike/
レベル1では、相手が何をドローし得るかを考える。最も恐ろしいカードはBonfire of the Damnedだ。そのため、Bonfireを引くチャンスを2回から1回にできるというのは、Oblivion Ringを使う重要な理由になる。
しかし、正しいプレイにたどり着くのにレベル1の思考では不十分だ。レベル1では、このターンは待って次のターンに鳥にRingを使うべきではない理由を答えられない。正しいプレイを決めるのに必要なのはレベル2だ:私が何を持っていると相手は考えているか?
相手には大量のマナがあり、この状況でベストなBirds of Paradiseの使い方は時間稼ぎのためのチャンプブロックだ。相手から見れば、こちらが次のターンにGut ShotやOblivion Ringを引くのが恐ろしい。鳥はチャンプさせたいので、こちらが除去をトップする可能性をケアしてこのターンにチャンプするのが極めて自然だ。これが見えるのがレベル2で、BenはこのターンにOblivion Ringをプレイすべきということになる。
事例5:十字軍はいつ感電する運命なのか?
この事例はMike Floresの記事『Practical Leveled Thinking』から借り、私が少し改変したものだ。
スタンダード。あなたはケッシグランプを使い、相手は白青人間(※訳注:ムーアランド入り人間ビート)。相手がMirran Crusaderをプレイし、あなたの手札にはGalvanic Blastがある。
今すぐCrusaderにBlastを使うべきだろうか。それともAngelic DestinyにレスポンスでBlastしてより大きな成果を上げるために待つべきだろうか。待った場合、相手がDestinyを使わないと、Mana LeakやFaith’s Shieldで感電破がカウンターされるおそれがある。
使うレベルを決めるために、何を考慮すべきだろうか?
Mirran Crusader / ミラディンの十字軍 (1)(白)(白)
クリーチャー ― 人間(Human) 騎士(Knight)
二段攻撃、プロテクション(黒)、プロテクション(緑)
2/2
http://whisper.wisdom-guild.net/card/Mirran%20Crusader/
Galvanic Blast / 感電破 (赤)
インスタント
クリーチャー1体かプレイヤー1人を対象とする。感電破はそれに2点のダメージを与える。
金属術 ― あなたがアーティファクトを3つ以上コントロールしているかぎり、代わりに感電破はそのクリーチャーかプレイヤーに4点のダメージを与える。
http://whisper.wisdom-guild.net/card/Galvanic%20Blast/
Angelic Destiny / 天使の運命 (2)(白)(白)
エンチャント ― オーラ(Aura)
エンチャント(クリーチャー)
エンチャントされているクリーチャーは+4/+4の修整を受けるとともに飛行と先制攻撃を持ち、それはそれの他のタイプに加えて天使(Angel)である。
エンチャントされているクリーチャーが死亡したとき、天使の運命をオーナーの手札に戻す。
http://whisper.wisdom-guild.net/card/Angelic%20Destiny/
Mana Leak / マナ漏出 (1)(青)
インスタント
呪文1つを対象とする。それのコントローラーが(3)を支払わないかぎり、それを打ち消す。
http://whisper.wisdom-guild.net/card/Mana%20Leak/
Faith’s Shield / 信仰の盾 (白)
インスタント
あなたがコントロールするパーマネント1つを対象とする。それはターン終了時までプロテクション(あなたが選んだ色1色)を得る。
窮地 ― あなたのライフが5点以下である場合、代わりにあなたとあなたがコントロールする各パーマネントは、ターン終了時までプロテクション(あなたが選んだ色1色)を得る。
http://whisper.wisdom-guild.net/card/Faith%27s+Shield/
まずはじめに、相手が既に青マナを場に出していると想定すれば、Mana Leakが白青人間のメインに入るカードかどうかは考慮すべきポイントだ。3~4枚入れるのが当たり前の時期があったが、それ以外の時期はほとんど0枚だった。Faith’s Shieldはそれほど見かけないが、全く無視してよいカードでもない。
もう一つ考えたいのは、Angelic Destinyが相手の手札あるいはデッキにない可能性だ。今のところメインに4枚入れるのが正しいという意見が多いが、私が世界選手権で使ったバージョンはメインにDestinyを入れていない。
とはいえ、この事例で最も重要な問題は、相手が感電破をケアせずAngelic Destinyをブッパする可能性がどれぐらいあると見積もるかだ。相手の使えるレンジを示す指標がここで役に立つ。
これがサイド後だったとすると(Flashfreezeも考慮すべきというのはさておき)、相手が前のゲームでどのようなプレイをしたかを考えよう。もしSlagstormをケアせずクリーチャーを並べてきていたなら、ここでもAngelic Destinyをブッパしてくる可能性があるだろう。こちらが6マナを使えるようになる直前に特別な理由なくタップアウトしてきていたら、タイタンのためにリークを構えたブラフをするプレイ(=レベル2)はおそらく相手の使えるレンジ外だ。
また別のルートとして、相手がGalvanic Blastを正しくケアしてDestinyをブッパしないだろうと読んだうえで、Mirran Crusaderから1回殴られるというプレイがある。これは、こちらが感電破を持っていないという誤った読みを相手にさせることにより、次のターンにDestinyをBlastで狩れる可能性を高めるというプレイだ。相手がそう読んでくれると考えるなら、これはレベル4のプレイになる。
この事例は細かい部分が明確になっておらず、どのレベルが最適で何が正しいプレイか確定するには情報が十分でない。しかし、与えられた情報だけでも、上述の通りいろいろな道筋を考えることができる。
事例6:この達人は無名なのか、それともネームレスはないのか?
モダン。キブラー相手のドランミラーだ。相手のライフは8でこちらは7。相手の手札は2枚でこちらは0枚。
相手のボードは、沼、Stirring Wildwood、Murmering Boskがアンタップ状態で、5/6のTarmogoyf3体が今まさにアタック中だ。
こちらのボードは、森、沼、平地、Godless Shrine、Gavony Township、6/5のKitchen Finksがタップ状態、Treetop Village(起動されておらずカウンターも載っていない)、5/5のQasali Pridemage、2/2のQasali Pridemage、5/4のキッチンがアンタップ状態だ。
どのレベルを使うべきか?それがどんなプレイに繋がるか?
(※訳注:画像あり。)
Stirring Wildwood / 活発な野生林
土地
活発な野生林はタップ状態で戦場に出る。
(T):あなたのマナ・プールに(緑)か(白)を加える。
(1)(緑)(白):活発な野生林はターン終了時まで、到達を持つ緑であり白である3/4のエレメンタル(Elemental)・クリーチャーになる。それは土地でもある。
http://whisper.wisdom-guild.net/card/Stirring%20Wildwood/
Murmuring Bosk / つぶやき林
土地 ― 森(Forest)
((T):あなたのマナ・プールに(緑)を加える。)
つぶやき林が戦場に出るに際し、あなたは自分の手札からツリーフォーク(Treefolk)・カードを1枚公開してもよい。そうしない場合、つぶやき林はタップ状態で戦場に出る。
(T):あなたのマナ・プールに(白)か(黒)を加える。つぶやき林は、あなたに1点のダメージを与える。
http://whisper.wisdom-guild.net/card/Murmuring%20Bosk/
Gavony Township / ガヴォニーの居住区
土地
(T):あなたのマナ・プールに(◇)を加える。
(2)(緑)(白),(T):あなたがコントロールする各クリーチャーの上に、+1/+1カウンターをそれぞれ1個置く。
http://whisper.wisdom-guild.net/card/Gavony%20Township/
Kitchen Finks / 台所の嫌がらせ屋 (1)(緑/白)(緑/白)
クリーチャー ― アウフ(Ouphe)
台所の嫌がらせ屋が戦場に出たとき、あなたは2点のライフを得る。
頑強(このクリーチャーが死亡したとき、その上に-1/-1カウンターが置かれていなかった場合、それを-1/-1カウンターが1個置かれた状態でオーナーのコントロール下で戦場に戻す。)
3/2
http://whisper.wisdom-guild.net/card/Kitchen%20Finks/
Qasali Pridemage / クァーサルの群れ魔道士 (緑)(白)
クリーチャー ― 猫(Cat) ウィザード(Wizard)
賛美(あなたがコントロールするいずれかのクリーチャーが単独で攻撃するたび、そのクリーチャーはターン終了時まで+1/+1の修整を受ける。)
(1),クァーサルの群れ魔道士を生け贄に捧げる:アーティファクト1つかエンチャント1つを対象とし、それを破壊する。
2/2
http://whisper.wisdom-guild.net/card/Qasali%20Pridemage/
タルモ1体をダブルブロックしてもう1体をシングルブロックし、5ダメージを受けて2ライフを残すのがレベル0のプレイだ。
レベル1では、このアタックを正当化する相手の手札は何か、と考える。Zealous Persecutionでは足りていない。このターンに6ダメージを受けても1ライフ残り、返しにTreetop Village+6/5キッチン+2/1キッチンでアタックすればこちらの勝ちだ。Zealousと1マナ生物(つまりバーパラ)を持っているならオールアタックは納得できる。だがこちらはレベル0のプレイをしておけばそんなに悪い状況にはならない。手札が2枚ともブロッカーでもやはり不十分だ。
相手が持っている可能性があり、実際に持っていそうだと思われるカードはNameless Inversionだ。これはTreefolk Harbingerのサーチ対象としてドランデッキに1枚挿しされることがよくある。
ではNameless Inversionをケアすべきなのだろうか?
相手のカードはこれまで17枚見えている。その中にTreefolk Harbingerはなく、Harbingerをデッキに入れているかどうかは分からない。Harbingerを見た場合より、Nameless Inversionが入っている可能性は低くなる(Harbingerなしでもタルモのために部族スペルを入れている可能性は残るが)。
プレイを決断する前に、次の問いについて考えてみよう:相手がこのアタックをしなければどんな盤面になるか?
そう、ガヴォニーが再びアンタップするので、こちらのクリーチャー2体が相手のタルモのサイズを超え、1体が相打ちできるサイズになる。その次のターンには、相打ちサイズだったキッチンもタルモのサイズを追い越し、他の2体はそれぞれ単独で即死ダメージ級のサイズになる。相手が動かずに1~2ターン経過すれば、どんどん相手に勝ち目のない盤面になっていく(ガヴォニーがボードの均衡を崩すからだ)。
相手はNameless Inversionを持っているのか、それとも、どうしようもなくなる前に動けるときに動いてワンチャンを作りにきたのか、というのがこの事例の真の問題だ。
この問いに答えるにはレベル3の思考が必要になる:相手が持っていると私が予想しているカードは何だと相手は考えているか?
相手はこちらがプロプレイヤーだと知っている。また、こちらも相手がプロだと知っている。とすると、相手がNameless Inversionを持っているというこちらの読みを相手が読むのは合理的だ。キブラーのアタックを正当化できるカードはほとんどなく、その中で彼が実際に持っている可能性があるのがNameless Inversionだからだ。
Nameless Inversionをケアするかどうかで盤面がどう変わるか比較してみよう。ケアする場合は3体でそれぞれチャンプブロックし、こちらには2/1キッチンと6/5キッチンが残り、次のターンにガヴォニーかTreetopを起動できる。その次もまたタルモ3体アタックが来るので、6/5キッチンで1体相打ちをとり、残り2体を2/1キッチンとTreetopでチャンプすることになる。そしてNameless Inversionはいまだ彼の手札の中だ!
これを、相手がInversionを持っておらず返しに死ぬケースと比べてみる。Inversionを持っている可能性はゼロではないがどうしてもケアしなければならないとは思えない。Inversionを持たれていると思い込み過ぎていたに違いなく、相手が動かなかった場合に陥る苦境(この後2ターンでガヴォニーに負ける)を考えれば、彼がレベル2を使ってきたと考えるのが合理的だ。相手のブラフに対してコールするレベル0のプレイを選ぶ、というレベル3の判断が正しいだろう。
今回の事例では、キブラーがNameless Inversionを持っている可能性よりも、(盤面で劣勢なため)レベル0や1の選択肢では勝ち目のないゲームにレベル2のプレイでワンチャン作りにきただけという可能性の方が高い。(世界最高のプレイヤーの一人である)彼の使えるレンジは明らかに全てのレベルだと分かっているので、レベル2が彼の使えるレンジ外になっている可能性は安心して除外できる。
事例7:鏡よ鏡……、何をコールすべきか垣間見させておくれ!
SCGデトロイト(レガシー)でのChris Andersen相手のフィーチャーマッチ。相手のデッキはエルフで、今はこちらの後攻2ターン目。
こちらの手札には黒マナの出る土地とEngineered Plagueがあり、つまり目標は次の相手のターンを生き延びることだ。幸いMeddling Mageを持っているが、何を指定すべきかという難しい判断に直面している。相手には十分な生物とマナが(Gaea’s Cradleのおかげで)揃っており、次のターンにサバンナ(かサバンナをサーチできるフェッチ)+Mirror Entityをプレイすれば即死アタックが可能になっている。しかし、Mirror Entityが手札になければ(多くのリストでEntityは2枚だ)、Glimpse of Natureを指定するのが生き延びるためには最良だ。
理屈の上ではGlimpseを指定する方が若干良い(Glimpseは既に1枚使われているので残り3枚で、Entityは2枚だ)が、エルフのリストによっては勝利手段がMirror Entityだけの場合があり、それならEntityを指定すれば問答無用でロックしてしまえる。
決断する前にもう一つだけ考慮できることがある。Meddling Mageをプレイしたとき、彼が「指定は?」と聞き、こちらは「2枚の間で悩んでるんだ」と答えた。それに対して彼は「GlimpseとGreen Sun’s Zenithかな?」と聞いてきた。
通常この手の情報は無意味だが、Chris Andersenは非常に抜け目なくあらゆる機会に「ワザをかけて」こようとすることを私は知っている。
どのレベルを使うべきか?それに従えばMeddling Mageで何を指定すべきか?
(※訳注:画像あり。)
Engineered Plague / 仕組まれた疫病 (2)(黒)
エンチャント
仕組まれた疫病が戦場に出るに際し、クリーチャー・タイプを1つ選ぶ。
選ばれたタイプのクリーチャーは、-1/-1の修整を受ける。
http://whisper.wisdom-guild.net/card/Engineered%20Plague/
Meddling Mage / 翻弄する魔道士 (白)(青)
クリーチャー ― 人間(Human) ウィザード(Wizard)
翻弄する魔道士が戦場に出るに際し、土地でないカード名を1つ指定する。
指定されたカードは唱えられない。
2/2
http://whisper.wisdom-guild.net/card/Meddling%20Mage/
Gaea’s Cradle / ガイアの揺籃の地
伝説の土地
(T):あなたがコントロールするクリーチャー1体につき、あなたのマナ・プールに(緑)を加える。
http://whisper.wisdom-guild.net/card/Gaea%27s+Cradle/
Mirror Entity / 鏡の精体 (2)(白)
クリーチャー ― 多相の戦士(Shapeshifter)
多相(このカードは、すべてのクリーチャー・タイプである。)
(X):ターン終了時まで、あなたがコントロールするクリーチャーは基本のパワーとタフネスがX/Xになり、すべてのクリーチャー・タイプを得る。
1/1
http://whisper.wisdom-guild.net/card/Mirror%20Entity/
Glimpse of Nature / 垣間見る自然 (緑)
ソーサリー
このターン、あなたがクリーチャー呪文を唱えるたび、カードを1枚引く。
http://whisper.wisdom-guild.net/card/Glimpse%20of%20Nature/
Green Sun’s Zenith / 緑の太陽の頂点 (X)(緑)
ソーサリー
あなたのライブラリーから点数で見たマナ・コストがX以下の緑のクリーチャー・カードを1枚探し、それを戦場に出す。その後、あなたのライブラリーを切り直す。緑の太陽の頂点をオーナーのライブラリーに加えて切り直す。
http://whisper.wisdom-guild.net/card/Green+Sun%27s+Zenith/
レベル0では……いや、Meddling Mageを使うにはレベル1以上が必要だ。
レベル1では、Glimpse of Natureを指定する方がMirror Entityより少しだけ良い(Glimpse3枚に対してEntity2枚なので60%だ)。これら2種類以外に指定する意味のありそうなカードはない。
相手の質問がこちらの判断の中で意味を持つのはここだ。こちらがGlimpseとMirror Entityの二択を選ぼうとしていることに彼が気づいていて、なおかつ彼がMirror Entityを持っている場合、この質問はこちらにGlimpseを指定させるように誘導するチャンスになっている(Glimpseは明らかにZenithより良い)。
しかし、彼のトリックスターぶりをこちらが知っていることを彼も分かっているなら、Mirror Entityを持っていないときにこの質問をしてEntityを指定させ、Glimpseをプレイしようとするだろう。
この特殊な事例では私は結局Mirror Entityを指定するレベルを使った。もうお分かりだと思うが、相手がどのレベルを使っているか確信できない限りレベル5以上を使うのは避けたい。レベル5以上になると、どちらが一つ上のレベルを使うかという五分五分の二択になってしまうためだ。レベル1の情報で考えれば成功率は50%より高い(60%)ので、そのレベルを判断基準にした方が良いだろう。
したがって、ここで正しいのはレベル1を使い、Glimpse of Natureを指定することだ。
まとめ
より高いレベルが必要な状況になったときに使えるように、あらゆるレベルを使えるようになっておくのが理想だ。こちらの使えるレンジが限られているという情報を相手に与えるのも避けたいだろう。
しかし、ほとんどの状況でレベル2までを使えれば十分だ。意思決定には自分の直観も活用しつつ、レベル0~2を考慮すれば確率的にも概ねベストになる。
ほとんどの場合、どの選択が良いかは明らかだ(森より先にRazorverge Thicketを出す、のように)。明らかに見えるだけの場合もあるが(ヘルカイトの事例)。
レベル1とレベル2の要素をできるだけ色々な場面で考えてみてほしい、特にレベル1だ。できるだけレベル0を続けていられればベストだが、(盤面がイーブンか自分に優勢で)重要なカードをケアすべきときや、低いレベルでは判断の根拠が足りないときのプレイに変化があるはずだ。
マルチレベル・シンキングの理論と使い方を理解し、正しいプレイを見つけるのに今回の実践編が役立てば幸いだ。
Craig Wescoe
TCGplayerより。
マルチレベル・シンキング実践編。
4年越しになってしまいましたが、以下の記事の続編です。
http://radish.diarynote.jp/201208170309509174/
※以下の記事の中にも書かれている通り、用語の解説がありますので先に読んでおいた方が良いかもしれません。
出てくる事例はM13発売当時のものですが、考え方は時代によらず使えるのかなと思います。
長くなって前後半に分かれてしまいましたが、昔の環境なので、よく見る土地(ベーシック、フェッチ、ショック、デュアル)以外の問題文に出てくるカードは効果を載せるようにしました。
※「訳注:画像あり」としたところに原文では盤面の画像や写真があり、文中で述べられている以上に詳しい情報が読み取れます。じっくり考えたい方はそちらもご覧ください。
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Multilevel Thinking Part 2: Seven Walkthroughs
Craig Wescoe
8/16/2012 8:54:00 AM
http://magic.tcgplayer.com/db/article.asp?ID=10647
マルチレベル・シンキングの理論を紹介した先週の記事が好評だったので、今週は同じトピックをより深く掘り下げる記事を書くことにした。ゲーム中の様々な場面でこの理論をどう活用すれば良いか、7つの事例を通して見ていこうと思う。
先週は理論を紹介し、重要な用語を概説して、それぞれのレベルでの思考プロセスがどのようなものかを述べた。今回の記事はそれらを前提にするので、よく理解するためにはまず前回の記事を一読することをお勧めする。
出てくる事例ごとにいったん立ち止まり、自分ならどんな方針でプレイするか、マルチレベル・シンキングをどう使えば正しいプレイを導き出せるかを考えてみてほしい。その後で、私がマルチレベル・シンキングをどう適用して正しいプレイに至るか見てみよう。
あなたが様々な状況で最適なプレイを見定める能力を強化したいなら、この理論は役に立つ道具だ。実践してみることで直観的に使えるようになり、ゲームの幅が広がり、勝利も増えることになるはずだ。
レベル0:私は何を持っているか?
レベル1:(公開情報を超えて)相手は何を持っているか?
レベル2:(相手にとっての公開情報を超えて)私が何を持っていると相手は考えているか?
レベル3:相手が持っていると私が予想しているカードは何だと相手は考えているか?
レベル4:私が持っていることを相手が予想しているだろうと私が考えているカードは何だと相手は考えているか?
レベル5+:相手はレベル4以上を使っているか?
(※訳注:レベル3は「私のレベル1の思考を相手はどう読んでいるか?」、レベル4は「私のレベル2の思考を相手はどう読んでいるか?」と捉えると分かりやすい、かもしれません・・・。)
事例1:レッドゾーンに乗り込む豚たちにまつわるアブナイ話
M13ドラフト。今はこちらの4ターン目の第1メインフェイズ。
こちらの戦場はMogg Flunkies、Flinthoof Boar、山、山、森。手札はYeva’s Forcemage、Turn to Slag、Rummaging Goblin、Rancor、森、森。
相手の手札は3枚。相手の場の沼、沼、山、Reckless Brute、Tormented Soul、Dark FavorがエンチャントされたTormented Soulは全てタップ状態。
相手のライフは13でこちらは6だ。
どのレベルを使うべきか?それがどんなプレイに繋がるか?
(※訳注:画像あり。)
レベル0の思考では、まず森のプレイは確実で、Rancorをプレイしつつどちらの3マナクリーチャーを出すかが考えどころ、ということになるだろう。次のターンにもう一方のクリーチャーかTurn to Slagの選択肢がある。
相手は次のターン、2体のTormented Soulでこちらのライフを1まで落とすことができる。どちらもブロックはできず、いますぐ対処は不可能なので、こちらは少なくとも次のターンに相手を倒せる状況に持ち込む必要がある。さらに相手の次のターンを生き抜くことも必要だ。今の手札でそれを実現するには、相手のReckless Bruteに対するブロッカーを用意するしかない。しかし、Mogg FlunkiesやFlinthoof Boarをブロッカーにするわけにはいかない。次のターンに相手を倒せる状況にするには、このターンは2体ともアタックする必要があるからだ。
レベル0の思考では、Reckless Bruteへのブロッカーとしてどちらの3マナクリーチャーをプレイするか、というところで煮詰まってしまう。どちらが正解か答えるにはレベル1の思考が必要になる。
相手の持ちうるカードは何か、がレベル1の問いだ。彼がMurderかSearing Spearを持っている場合、どちらのクリーチャーを出してもこちらは死ぬ。これではどちらが良いか判断する役には立たない。
考える意味があるのは、Yeva’s Forcemageが持っている相手の裏をかく要素だ。例えば、相手は次のターンにブロッカーを出し、ぎりぎり生き残れるようにダメージを減らしてくる可能性がある。これを+2/+2(とRancorのトランプル)で打ち破れるかもしれない。それ以外の要素をどう考えても手の善し悪しの判断がつかないなら、これは次の一手を決める根拠になるだろう。しかし、相手は正しいプレイをしてくる、つまり手札の中で最大限ダメージを減らせるクリーチャーを出してくると想定すべきだ。それに、もし相手がブロッカーを出すプランなら、こちらにはTurn to Slagがある。結局、どちらのクリーチャーを出しても相手を倒してしまうだろう。
最もケアするに値するカードはCower in Fearだ。こちらがゴブリンを出した場合はFearを使われたら負けてしまうが、腕力魔道士はタフネスが1高いのでFearを耐えることができる。
したがって、ここで使うべきレベルは1で、森→Mogg FlunkiesにRancor→Yeva’s Forcemageを出す(対象はどちらでもOK)→アタック→エンド→BruteをForcemageでブロック、というプレイになる。このプレイで相手の持ちうるほとんどのカードの組み合わせを打ち破ることができ、他のレベルを使う必要はない。
(※訳注:Cower in Fearは原文ではCrippling Blightになっていますが、元記事のコメント欄で著者の補足があり、Crippling Blightは誤りでCower in Fearに読み替えるのが正しいとのことです。訳文では訂正することにしました。)
事例2:キキジキと村人たち
モダン。ナヤ殻を使うLSVが相手の1ゲーム目。こちらは自前のアグロロックを使っている。相手のライフは11でこちらは16。相手も自分も手札は3枚。
相手のボードは、山、Stomping Ground、Grove of the Burnwillowsがタップ状態、Sacred Foundry、Arid Mesa、Village Bell-Ringer、Restoration Angel、Eternal Witnessがアンタップ状態だ。直前のターンにEternal Witnessを出してArid Mesaを拾い、すぐにプレイしてきた。相手の手札にKiki-Jiki, Mirror Breakerがいることは(前に思考囲いしたので)知っており、残り2枚は不明だが土地ではないはずだ(土地ならすぐに出してキキジキ+天使のコンボでやられていたはず)。
今はこちらの第1メインフェイズ。
こちらのボードは、平地、Godless Shrine、Treetop Village、Horizon Canopy、Birds of Paradise、Birds of Paradise、Noble Hierarch、4体のスピリットトークンで、全てアンタップ状態。
手札は、森、Tarmogoyf、Zealous Persecutionだ。
どのレベルを使うべきか?それがどんなプレイに繋がるか?
(※訳注:画像あり。)
レベル0の思考では、まず森をプレイすることは確実。それによりこのターン8マナが使え、手札のスペルの一方または両方をプレイ、Horizon Canopyの起動、Treetop Villageの起動やアタックなどが可能で、いろいろなアクションの組み合わせが考えられる。
まず考えるべきなのは、このターンに叩き出せる最大ダメージはいくつか、という問いだ。
森をプレイしてTreetop Villageを起動、Zealous Persecutionをプレイしてオールアタックすると、こちらの2/2スピリットトークン×4、パワー1のマナ生物×3、4/4トランプルのミシュラランドに対して、相手は0/3のBell-Ringerと2/3飛行の天使、という状況になる。ダメージを最大限防ぐには、スピリットトークンを天使で、TreetopをBell-Ringerでブロックすることになるだろう。相手が何も持っていないとすると、これでちょうど1ライフまで追い詰められる。1ライフまで落とせるのは大きく、Arid Mesaを起動できなくなるので4マナのままキキジキをプレイできない状態を続けさせられる。
レベル1の思考では、相手がキキジキに加えて何を持っているかを考えることになる。Path to Exileや稲妻を持たれていた場合、Horizon Canopyを起動して回答を引かない限りこちらは死ぬ(48枚のライブラリのうち6枚――Path to Exile4枚とSlaughter Pact2枚――が回答だ)。より勝率が高いのはどちらのプレイか考えよう:48枚中6枚(12.5%)の回答をトップしてキキジキに対処するか、それとも相手に稲妻もPathもなく、さらにキキジキプレイに必要なアンタップインの土地も引かれないことを期待するか?
標準的なナヤ殻には概ね4枚のPathかBolt、7枚のアンタップイン土地が入っていると予想され、アンタップイン土地のうち1枚(山)は既に場に出ている。相手が次のターンにライブラリ48枚のうち6枚のアンタップ土地を引く確率は12.5%で、(先ほど思考囲いで手札を見た後の)3ターンのうちにBoltかPathを引かれた確率は24%だ(4/51 + 4/50 + 4/49)。つまり、「1ライフまで落とす」プランは 24% + 12.5% = 36.5% の確率で負けることになる。これは間違いなく除去をトップできずに負ける確率87.5%よりも良い。そのため、1ライフに落とすプレイをするのが良いということになる。この事例ではレベル0とレベル1の思考が同じ結論に至る。
事例3:ヘルカイトで急げ
M13ドラフト。今はこちらの第1メインフェイズ。相手はライフ8で手札なし、こちらはライフ10で手札はSearing Spear、山、Thundermaw Hellkiteだ。
相手のボードは、森2枚、平地3枚、Griffin Protectorがタップ状態、森1枚、Guardinans of Akrasa、Primal Huntbeast、Sentinel Spiderがアンタップ状態。
こちらのボードは、沼4枚、山2枚、Crimson Muckwader、Rummaging Goblinだ。
どのレベルを使うべきか?それがどんなプレイに繋がるか?
(※訳注:画像あり。)
相手のライブラリトップ以外の情報が全て明らかになっているので、これは明らかにレベル0のプレイをする場面だ。山とThundermaw Hellkiteを出し、Searing Spear用のマナを立てる。そしてヘルカイトでアタック。相手がブロックしなければSpearで焼いて終わり。簡単だろう?
違う。
プレイミスに気づいただろうか?
ミスは戦闘前に土地を置いたことで、なぜこれがミスなのか理解するにはレベル2の問いが必要となる。こちらが何を持っていると相手は考えているか、だ。
土地をRummaging Goblinの能力で捨てずに場に出したことで、抜け目のない相手なら、追加の土地を出す方がライブラリのカード1枚と交換するよりもこちらにとって価値があるということに気づくだろう(価値がないなら捨てない理由がない)。相手が「追加の土地が意味を持つカードとは何か」と考えると、もっともあり得そうなのはSearing Spearだ(コモンなので)。
もし相手のデッキにヘルカイトへの回答が入っているなら、間違いなくSpiderでチャンプブロックして、その回答を引くためのドローステップを迎えようとしてくるだろう。
別の道を考えよう。ヘルカイトをプレイして、手札2枚と立っている沼1枚という状態になったとき、相手から見れば、すぐに死ぬのはこちらが山+Searing Spearの組み合わせを持っているケース(あるいはEssence Drainで次のターンに死ぬケース)だけだ。これはかなり可能性が低い。
相手がブロックしなければこちらの勝ちなので、相手がブロックしない確率を最大化することに全力を注ぎたい。土地を持ったままにすればこの確率は大きくなり、土地を出せば小さくなる。この事例ではレベル2の思考によって正しいプレイを導き出すことができる。
注記:ここでもう一つ考えておいても良いのは、相手に抜け目がないと分かっていて、こちらの手札にSearing Spearがない場合は、土地を出してヘルカイトをブロックするように仕向けた方が良いということだ。相手がこちらの動きを読んでいて、適切な思考レベルを見い出せたとしても、うまくいくかどうかは実際にプレイする前によく考える必要がある。
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(後半へ続く)
http://radish.diarynote.jp/201607091512388163/
マルチレベル・シンキング実践編。
4年越しになってしまいましたが、以下の記事の続編です。
http://radish.diarynote.jp/201208170309509174/
※以下の記事の中にも書かれている通り、用語の解説がありますので先に読んでおいた方が良いかもしれません。
出てくる事例はM13発売当時のものですが、考え方は時代によらず使えるのかなと思います。
長くなって前後半に分かれてしまいましたが、昔の環境なので、よく見る土地(ベーシック、フェッチ、ショック、デュアル)以外の問題文に出てくるカードは効果を載せるようにしました。
※「訳注:画像あり」としたところに原文では盤面の画像や写真があり、文中で述べられている以上に詳しい情報が読み取れます。じっくり考えたい方はそちらもご覧ください。
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Multilevel Thinking Part 2: Seven Walkthroughs
Craig Wescoe
8/16/2012 8:54:00 AM
http://magic.tcgplayer.com/db/article.asp?ID=10647
マルチレベル・シンキングの理論を紹介した先週の記事が好評だったので、今週は同じトピックをより深く掘り下げる記事を書くことにした。ゲーム中の様々な場面でこの理論をどう活用すれば良いか、7つの事例を通して見ていこうと思う。
先週は理論を紹介し、重要な用語を概説して、それぞれのレベルでの思考プロセスがどのようなものかを述べた。今回の記事はそれらを前提にするので、よく理解するためにはまず前回の記事を一読することをお勧めする。
出てくる事例ごとにいったん立ち止まり、自分ならどんな方針でプレイするか、マルチレベル・シンキングをどう使えば正しいプレイを導き出せるかを考えてみてほしい。その後で、私がマルチレベル・シンキングをどう適用して正しいプレイに至るか見てみよう。
あなたが様々な状況で最適なプレイを見定める能力を強化したいなら、この理論は役に立つ道具だ。実践してみることで直観的に使えるようになり、ゲームの幅が広がり、勝利も増えることになるはずだ。
レベル0:私は何を持っているか?
レベル1:(公開情報を超えて)相手は何を持っているか?
レベル2:(相手にとっての公開情報を超えて)私が何を持っていると相手は考えているか?
レベル3:相手が持っていると私が予想しているカードは何だと相手は考えているか?
レベル4:私が持っていることを相手が予想しているだろうと私が考えているカードは何だと相手は考えているか?
レベル5+:相手はレベル4以上を使っているか?
(※訳注:レベル3は「私のレベル1の思考を相手はどう読んでいるか?」、レベル4は「私のレベル2の思考を相手はどう読んでいるか?」と捉えると分かりやすい、かもしれません・・・。)
事例1:レッドゾーンに乗り込む豚たちにまつわるアブナイ話
M13ドラフト。今はこちらの4ターン目の第1メインフェイズ。
こちらの戦場はMogg Flunkies、Flinthoof Boar、山、山、森。手札はYeva’s Forcemage、Turn to Slag、Rummaging Goblin、Rancor、森、森。
相手の手札は3枚。相手の場の沼、沼、山、Reckless Brute、Tormented Soul、Dark FavorがエンチャントされたTormented Soulは全てタップ状態。
相手のライフは13でこちらは6だ。
どのレベルを使うべきか?それがどんなプレイに繋がるか?
(※訳注:画像あり。)
Mogg Flunkies / モグの下働き (1)(赤)
クリーチャー ― ゴブリン(Goblin)
モグの下働きは、単独では攻撃したりブロックしたりできない。
3/3
http://whisper.wisdom-guild.net/card/Mogg%20Flunkies/
Flinthoof Boar / 火打ち蹄の猪 (1)(緑)
クリーチャー ― 猪(Boar)
火打ち蹄の猪は、あなたが山(Mountain)をコントロールしているかぎり+1/+1の修整を受ける。
(赤):火打ち蹄の猪はターン終了時まで速攻を得る。(このターン、それは攻撃したり(T)したりできる。)
2/2
http://whisper.wisdom-guild.net/card/Flinthoof%20Boar/
Yeva’s Forcemage / イェヴァの腕力魔道士 (2)(緑)
クリーチャー ― エルフ(Elf) シャーマン(Shaman)
イェヴァの腕力魔道士が戦場に出たとき、クリーチャー1体を対象とする。それはターン終了時まで+2/+2の修整を受ける。
2/2
http://whisper.wisdom-guild.net/card/Yeva%27s+Forcemage/
Turn to Slag / 金屑化 (3)(赤)(赤)
ソーサリー
クリーチャー1体を対象とする。金屑化はそれに5点のダメージを与える。それにつけられているすべての装備品(Equipment)を破壊する。
http://whisper.wisdom-guild.net/card/Turn+to+Slag/
Rummaging Goblin / かき回すゴブリン (2)(赤)
クリーチャー ― ゴブリン(Goblin) ならず者(Rogue)
(T),カードを1枚捨てる:カードを1枚引く。
1/1
http://whisper.wisdom-guild.net/card/Rummaging%20Goblin/
Rancor / 怨恨 (緑)
エンチャント ― オーラ(Aura)
エンチャント(クリーチャー)
エンチャントされているクリーチャーは、+2/+0の修整を受けるとともにトランプルを持つ。
怨恨が戦場からいずれかの墓地に置かれたとき、怨恨をオーナーの手札に戻す。
http://whisper.wisdom-guild.net/card/Rancor/
Reckless Brute / 無謀な粗暴者 (2)(赤)
クリーチャー ― オーガ(Ogre) 戦士(Warrior)
速攻(このクリーチャーは、あなたのコントロール下になってすぐに攻撃したり(T)したりできる。)
無謀な粗暴者は可能なら毎ターン攻撃する。
3/1
http://whisper.wisdom-guild.net/card/Reckless%20Brute/
Tormented Soul / 苛まれし魂 (黒)
クリーチャー ― スピリット(Spirit)
苛まれし魂ではブロックできず、それはブロックされない。
1/1
http://whisper.wisdom-guild.net/card/Tormented%20Soul/
Dark Favor / 闇の好意 (1)(黒)
エンチャント ― オーラ(Aura)
エンチャント(クリーチャー)
闇の好意が戦場に出たとき、あなたは1点のライフを失う。
エンチャントされているクリーチャーは+3/+1の修整を受ける。
http://whisper.wisdom-guild.net/card/Dark%20Favor/
レベル0の思考では、まず森のプレイは確実で、Rancorをプレイしつつどちらの3マナクリーチャーを出すかが考えどころ、ということになるだろう。次のターンにもう一方のクリーチャーかTurn to Slagの選択肢がある。
相手は次のターン、2体のTormented Soulでこちらのライフを1まで落とすことができる。どちらもブロックはできず、いますぐ対処は不可能なので、こちらは少なくとも次のターンに相手を倒せる状況に持ち込む必要がある。さらに相手の次のターンを生き抜くことも必要だ。今の手札でそれを実現するには、相手のReckless Bruteに対するブロッカーを用意するしかない。しかし、Mogg FlunkiesやFlinthoof Boarをブロッカーにするわけにはいかない。次のターンに相手を倒せる状況にするには、このターンは2体ともアタックする必要があるからだ。
レベル0の思考では、Reckless Bruteへのブロッカーとしてどちらの3マナクリーチャーをプレイするか、というところで煮詰まってしまう。どちらが正解か答えるにはレベル1の思考が必要になる。
相手の持ちうるカードは何か、がレベル1の問いだ。彼がMurderかSearing Spearを持っている場合、どちらのクリーチャーを出してもこちらは死ぬ。これではどちらが良いか判断する役には立たない。
考える意味があるのは、Yeva’s Forcemageが持っている相手の裏をかく要素だ。例えば、相手は次のターンにブロッカーを出し、ぎりぎり生き残れるようにダメージを減らしてくる可能性がある。これを+2/+2(とRancorのトランプル)で打ち破れるかもしれない。それ以外の要素をどう考えても手の善し悪しの判断がつかないなら、これは次の一手を決める根拠になるだろう。しかし、相手は正しいプレイをしてくる、つまり手札の中で最大限ダメージを減らせるクリーチャーを出してくると想定すべきだ。それに、もし相手がブロッカーを出すプランなら、こちらにはTurn to Slagがある。結局、どちらのクリーチャーを出しても相手を倒してしまうだろう。
最もケアするに値するカードはCower in Fearだ。こちらがゴブリンを出した場合はFearを使われたら負けてしまうが、腕力魔道士はタフネスが1高いのでFearを耐えることができる。
したがって、ここで使うべきレベルは1で、森→Mogg FlunkiesにRancor→Yeva’s Forcemageを出す(対象はどちらでもOK)→アタック→エンド→BruteをForcemageでブロック、というプレイになる。このプレイで相手の持ちうるほとんどのカードの組み合わせを打ち破ることができ、他のレベルを使う必要はない。
(※訳注:Cower in Fearは原文ではCrippling Blightになっていますが、元記事のコメント欄で著者の補足があり、Crippling Blightは誤りでCower in Fearに読み替えるのが正しいとのことです。訳文では訂正することにしました。)
事例2:キキジキと村人たち
モダン。ナヤ殻を使うLSVが相手の1ゲーム目。こちらは自前のアグロロックを使っている。相手のライフは11でこちらは16。相手も自分も手札は3枚。
相手のボードは、山、Stomping Ground、Grove of the Burnwillowsがタップ状態、Sacred Foundry、Arid Mesa、Village Bell-Ringer、Restoration Angel、Eternal Witnessがアンタップ状態だ。直前のターンにEternal Witnessを出してArid Mesaを拾い、すぐにプレイしてきた。相手の手札にKiki-Jiki, Mirror Breakerがいることは(前に思考囲いしたので)知っており、残り2枚は不明だが土地ではないはずだ(土地ならすぐに出してキキジキ+天使のコンボでやられていたはず)。
今はこちらの第1メインフェイズ。
こちらのボードは、平地、Godless Shrine、Treetop Village、Horizon Canopy、Birds of Paradise、Birds of Paradise、Noble Hierarch、4体のスピリットトークンで、全てアンタップ状態。
手札は、森、Tarmogoyf、Zealous Persecutionだ。
どのレベルを使うべきか?それがどんなプレイに繋がるか?
(※訳注:画像あり。)
Grove of the Burnwillows / 燃え柳の木立ち
土地
(T):あなたのマナ・プールに(◇)を加える。
(T):あなたのマナ・プールに(赤)か(緑)を加える。各対戦相手は1点のライフを得る。
http://whisper.wisdom-guild.net/card/Grove%20of%20the%20Burnwillows/
Village Bell-Ringer / 村の鐘鳴らし (2)(白)
クリーチャー ― 人間(Human) スカウト(Scout)
瞬速(あなたはこの呪文を、あなたがインスタントを唱えられるときならいつでも唱えてよい。)
村の鐘鳴らしが戦場に出たとき、あなたがコントロールするすべてのクリーチャーをアンタップする。
1/4
http://whisper.wisdom-guild.net/card/Village%20Bell-Ringer/
Restoration Angel / 修復の天使 (3)(白)
クリーチャー ― 天使(Angel)
瞬速
飛行
修復の天使が戦場に出たとき、あなたがコントロールする天使(Angel)でないクリーチャー1体を対象とする。あなたはそれを追放し、その後そのカードをあなたのコントロール下で戦場に戻してもよい。
3/4
http://whisper.wisdom-guild.net/card/Restoration%20Angel/
Eternal Witness / 永遠の証人 (1)(緑)(緑)
クリーチャー ― 人間(Human) シャーマン(Shaman)
永遠の証人が戦場に出たとき、あなたの墓地にあるカード1枚を対象とする。あなたはそれをあなたの手札に戻してもよい。
2/1
http://whisper.wisdom-guild.net/card/Eternal%20Witness/
Kiki-Jiki, Mirror Breaker / 鏡割りのキキジキ (2)(赤)(赤)(赤)
伝説のクリーチャー ― ゴブリン(Goblin) シャーマン(Shaman)
速攻
(T):あなたがコントロールする、伝説でないクリーチャー1体を対象とする。それのコピーであるトークンを1体戦場に出す。そのトークンは速攻を持つ。次の終了ステップの開始時に、それを生け贄に捧げる。
2/2
http://whisper.wisdom-guild.net/card/Kiki-Jiki%2C%20Mirror%20Breaker/
Treetop Village / 樹上の村
土地
樹上の村はタップ状態で戦場に出る。
(T):あなたのマナ・プールに(緑)を加える。
(1)(緑):樹上の村は、ターン終了時までトランプルを持つ緑の3/3の類人猿(Ape)クリーチャーになる。それは土地でもある。(それが、自身をブロックしているすべてのクリーチャーを破壊するのに十分な戦闘ダメージを割り振る場合、あなたはその残りのダメージを防御プレイヤーかプレインズウォーカーに割り振ってもよい。)
http://whisper.wisdom-guild.net/card/Treetop%20Village/
Horizon Canopy / 地平線の梢
土地
(T),1点のライフを支払う:あなたのマナ・プールに(緑)か(白)を加える。
(1),(T),地平線の梢を生け贄に捧げる:カードを1枚引く。
http://whisper.wisdom-guild.net/card/Horizon%20Canopy/
Birds of Paradise / 極楽鳥 (緑)
クリーチャー ― 鳥(Bird)
飛行
(T):あなたのマナ・プールに、好きな色のマナ1点を加える。
0/1
http://whisper.wisdom-guild.net/card/Birds%20of%20Paradise/
Noble Hierarch / 貴族の教主 (緑)
クリーチャー ― 人間(Human) ドルイド(Druid)
賛美(あなたがコントロールするいずれかのクリーチャーが単独で攻撃するたび、そのクリーチャーはターン終了時まで+1/+1の修整を受ける。)
(T):あなたのマナ・プールに(緑)か(白)か(青)を加える。
0/1
http://whisper.wisdom-guild.net/card/Noble%20Hierarch/
Tarmogoyf / タルモゴイフ (1)(緑)
クリーチャー ― ルアゴイフ(Lhurgoyf)
タルモゴイフのパワーは、すべての墓地にあるカードのカード・タイプの数に等しく、タフネスはその点数に1を加えた点数に等しい。
*/1+*
http://whisper.wisdom-guild.net/card/Tarmogoyf/
Zealous Persecution / 盲信的迫害 (白)(黒)
インスタント
ターン終了時まで、あなたがコントロールするクリーチャーは+1/+1の修整を受けるとともに、あなたの対戦相手がコントロールするクリーチャーは-1/-1の修整を受ける。
http://whisper.wisdom-guild.net/card/Zealous%20Persecution/
レベル0の思考では、まず森をプレイすることは確実。それによりこのターン8マナが使え、手札のスペルの一方または両方をプレイ、Horizon Canopyの起動、Treetop Villageの起動やアタックなどが可能で、いろいろなアクションの組み合わせが考えられる。
まず考えるべきなのは、このターンに叩き出せる最大ダメージはいくつか、という問いだ。
森をプレイしてTreetop Villageを起動、Zealous Persecutionをプレイしてオールアタックすると、こちらの2/2スピリットトークン×4、パワー1のマナ生物×3、4/4トランプルのミシュラランドに対して、相手は0/3のBell-Ringerと2/3飛行の天使、という状況になる。ダメージを最大限防ぐには、スピリットトークンを天使で、TreetopをBell-Ringerでブロックすることになるだろう。相手が何も持っていないとすると、これでちょうど1ライフまで追い詰められる。1ライフまで落とせるのは大きく、Arid Mesaを起動できなくなるので4マナのままキキジキをプレイできない状態を続けさせられる。
レベル1の思考では、相手がキキジキに加えて何を持っているかを考えることになる。Path to Exileや稲妻を持たれていた場合、Horizon Canopyを起動して回答を引かない限りこちらは死ぬ(48枚のライブラリのうち6枚――Path to Exile4枚とSlaughter Pact2枚――が回答だ)。より勝率が高いのはどちらのプレイか考えよう:48枚中6枚(12.5%)の回答をトップしてキキジキに対処するか、それとも相手に稲妻もPathもなく、さらにキキジキプレイに必要なアンタップインの土地も引かれないことを期待するか?
標準的なナヤ殻には概ね4枚のPathかBolt、7枚のアンタップイン土地が入っていると予想され、アンタップイン土地のうち1枚(山)は既に場に出ている。相手が次のターンにライブラリ48枚のうち6枚のアンタップ土地を引く確率は12.5%で、(先ほど思考囲いで手札を見た後の)3ターンのうちにBoltかPathを引かれた確率は24%だ(4/51 + 4/50 + 4/49)。つまり、「1ライフまで落とす」プランは 24% + 12.5% = 36.5% の確率で負けることになる。これは間違いなく除去をトップできずに負ける確率87.5%よりも良い。そのため、1ライフに落とすプレイをするのが良いということになる。この事例ではレベル0とレベル1の思考が同じ結論に至る。
事例3:ヘルカイトで急げ
M13ドラフト。今はこちらの第1メインフェイズ。相手はライフ8で手札なし、こちらはライフ10で手札はSearing Spear、山、Thundermaw Hellkiteだ。
相手のボードは、森2枚、平地3枚、Griffin Protectorがタップ状態、森1枚、Guardinans of Akrasa、Primal Huntbeast、Sentinel Spiderがアンタップ状態。
こちらのボードは、沼4枚、山2枚、Crimson Muckwader、Rummaging Goblinだ。
どのレベルを使うべきか?それがどんなプレイに繋がるか?
(※訳注:画像あり。)
Searing Spear / 灼熱の槍 (1)(赤)
インスタント
クリーチャー1体かプレイヤー1人を対象とする。灼熱の槍はそれに3点のダメージを与える。
http://whisper.wisdom-guild.net/card/Searing%20Spear/
Thundermaw Hellkite / 雷口のヘルカイト (3)(赤)(赤)
クリーチャー ― ドラゴン(Dragon)
飛行
速攻(このクリーチャーは、あなたのコントロール下になってすぐに攻撃したり(T)したりできる。)
雷口のヘルカイトが戦場に出たとき、それはあなたの対戦相手がコントロールする飛行を持つ各クリーチャーにそれぞれ1点のダメージを与える。それらのクリーチャーをタップする。
5/5
http://whisper.wisdom-guild.net/card/Thundermaw%20Hellkite/
Griffin Protector / 庇護のグリフィン (3)(白)
クリーチャー ― グリフィン(Griffin)
飛行
他のクリーチャーがあなたのコントロール下で戦場に出るたび、庇護のグリフィンはターン終了時まで+1/+1の修整を受ける。
2/3
http://whisper.wisdom-guild.net/card/Griffin%20Protector/
Guardians of Akrasa / アクラサの守護者 (2)(白)
クリーチャー ― 人間(Human) 兵士(Soldier)
防衛(このクリーチャーは攻撃できない。)
賛美(あなたがコントロールするいずれかのクリーチャーが単独で攻撃するたび、そのクリーチャーはターン終了時まで+1/+1の修整を受ける。)
0/4
http://whisper.wisdom-guild.net/card/Guardians%20of%20Akrasa/
Primal Huntbeast / 原初の狩猟獣 (3)(緑)
クリーチャー ― ビースト(Beast)
呪禁(このクリーチャーは、あなたの対戦相手がコントロールする呪文や能力の対象にならない。)
3/3
http://whisper.wisdom-guild.net/card/Primal%20Huntbeast/
Sentinel Spider / 歩哨蜘蛛 (3)(緑)(緑)
クリーチャー ― 蜘蛛(Spider)
警戒(このクリーチャーは攻撃してもタップしない。)
到達(このクリーチャーは飛行を持つクリーチャーをブロックできる。)
4/4
http://whisper.wisdom-guild.net/card/Sentinel%20Spider/
Crimson Muckwader / 真紅の汚水這い (1)(赤)
クリーチャー ― トカゲ(Lizard)
真紅の汚水這いは、あなたが沼(Swamp)をコントロールしているかぎり+1/+1の修整を受ける。
(2)(黒):真紅の汚水這いを再生する。(このターン、次にこのクリーチャーが破壊される場合、それは破壊されない。代わりに、それをタップし、それに与えられているダメージをすべて取り除き、それを戦闘から取り除く。)
2/1
http://whisper.wisdom-guild.net/card/Crimson%20Muckwader/
相手のライブラリトップ以外の情報が全て明らかになっているので、これは明らかにレベル0のプレイをする場面だ。山とThundermaw Hellkiteを出し、Searing Spear用のマナを立てる。そしてヘルカイトでアタック。相手がブロックしなければSpearで焼いて終わり。簡単だろう?
違う。
プレイミスに気づいただろうか?
ミスは戦闘前に土地を置いたことで、なぜこれがミスなのか理解するにはレベル2の問いが必要となる。こちらが何を持っていると相手は考えているか、だ。
土地をRummaging Goblinの能力で捨てずに場に出したことで、抜け目のない相手なら、追加の土地を出す方がライブラリのカード1枚と交換するよりもこちらにとって価値があるということに気づくだろう(価値がないなら捨てない理由がない)。相手が「追加の土地が意味を持つカードとは何か」と考えると、もっともあり得そうなのはSearing Spearだ(コモンなので)。
もし相手のデッキにヘルカイトへの回答が入っているなら、間違いなくSpiderでチャンプブロックして、その回答を引くためのドローステップを迎えようとしてくるだろう。
別の道を考えよう。ヘルカイトをプレイして、手札2枚と立っている沼1枚という状態になったとき、相手から見れば、すぐに死ぬのはこちらが山+Searing Spearの組み合わせを持っているケース(あるいはEssence Drainで次のターンに死ぬケース)だけだ。これはかなり可能性が低い。
相手がブロックしなければこちらの勝ちなので、相手がブロックしない確率を最大化することに全力を注ぎたい。土地を持ったままにすればこの確率は大きくなり、土地を出せば小さくなる。この事例ではレベル2の思考によって正しいプレイを導き出すことができる。
注記:ここでもう一つ考えておいても良いのは、相手に抜け目がないと分かっていて、こちらの手札にSearing Spearがない場合は、土地を出してヘルカイトをブロックするように仕向けた方が良いということだ。相手がこちらの動きを読んでいて、適切な思考レベルを見い出せたとしても、うまくいくかどうかは実際にプレイする前によく考える必要がある。
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(後半へ続く)
http://radish.diarynote.jp/201607091512388163/
StarCityGamesより。
悪魔は細部に宿る。
Dig Through Time健在の頃の記事ですが面白かったので。
プレイした直後に「あっ」ってなるやつです。
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The Devil Is In The Details
CARSTEN KOTTER
2015/08/06
http://www.starcitygames.com/article/31327_The-Devil-Is-In-The-Details.html
マジックは複雑なゲームで、レガシーは特にそうだ――これまで印刷されてきたカードのほとんどがリーガルなフォーマットでは予想外の相互作用が数多く生じ、それらに対処しなきゃならない。それだけでなく、レガシーのようなパワーの高いフォーマットでは、ちっぽけな細部、気づきにくいほんのささいな判断でさえ勝敗に多大な影響を与える。
今日の記事でやりたいのは、そのような見過ごしがちな判断をはらんだ事例を3つ、読者のみんなにプレゼントすることだ。気をつけて考えたことがなければ、判断を下していることを自覚すらできない。そんな話だよ。
正しいプレイが何かを考えるシンキングタイムを用意して、その後で僕の考える正しいプレイと、なぜ/どんなときに小さな判断が重要となるかを解説するつもりだ。
面白そうだろう?
よし、それじゃあやってみよう。
Delving Deeper
何を使っているか分からない相手に対するゲーム1、こちらはRUGデルバーを使っている。
Temur Delver
Tom Koson
1st Place at StarCityGames.com Super IQ on 7/26/2015
Legacy
lands (18)
3 《Tropical Island》
3 《Volcanic Island》
4 《霧深い雨林/Misty Rainforest》
4 《樹木茂る山麓/Wooded Foothills》
4 《不毛の大地/Wasteland》
creatures (12)
4 《秘密を掘り下げる者/Delver of Secrets》
4 《敏捷なマングース/Nimble Mongoose》
4 《タルモゴイフ/Tarmogoyf》
spells (30)
4 《渦まく知識/Brainstorm》
4 《思案/Ponder》
4 《意志の力/Force of Will》
4 《目くらまし/Daze》
4 《呪文貫き/Spell Pierce》
4 《もみ消し/Stifle》
2 《四肢切断/Dismember》
4 《稲妻/Lightning Bolt》
sideboard
2 《墓掘りの檻/Grafdigger’s Cage》
1 《硫黄の精霊/Sulfur Elemental》
1 《森の知恵/Sylvan Library》
1 《古えの遺恨/Ancient Grudge》
1 《狼狽の嵐/Flusterstorm》
1 《水流破/Hydroblast》
1 《クローサの掌握/Krosan Grip》
2 《紅蓮破/Pyroblast》
2 《水没/Submerge》
1 《壌土からの生命/Life from the Loam》
2 《乱暴/Rough》
対戦相手はBayouを置いただけで1ターン目を終え、こちらは1ターン目マングースよりもStifleを構える方が重要だと考えた。
今は対戦相手の2ターン目、Bloodstained Mireを置いてすぐ起動したところだ:
どうプレイする?
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「フェッチのもみ消し一択だろ?」という方へ――その通り!では、当たり前じゃない部分に注意を払ってみよう――Wooded Foothillsでどちらの土地を持ってくる?
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この問いにきちんと答えるには、こちらがどんなプランなのか理解している必要がある。こちらの手札に赤いカードはなく緑のカードがあり、第一感はTropical Islandかもしれないね。
僕は、それはミスで、Volcanic Islandが正解だと考えている。以下が理由だ:
現時点で、相手はジャンドの可能性が非常に高い(1枚目の土地がBayouで、Bloodstained Mireが入っているデッキだ)。ジャンドに対するベストプランの一つは、相手をマナスクリューさせて立ち直る前に勝つことだ。こちらには大量のDazeがあり、このプランは実現もできそうだ。
ということは、次のターンにマングースを出してクロックを始めるためにTropical Islandを持ってくるべきってことになるんじゃないか?
この考えの問題点は、フェッチを場に残して墓地が1枚の状況でマングースを出すことになる点だ。
このフェッチを切った場合――つまり、Dazeを2枚キャストする必要が出てきた場合――ブレスト後のシャッフル手段を失うことになる。このシャッフルは今の状況で非常に重要だ。
また、マングースを脅威として機能させるために、できるだけ早く墓地を肥やす必要がある。こちらの手札を考えると、追加のキャントリップのようなキャストしやすいスペルをブレストで集めたい。自分のターンにフェッチを切らないことは1マナを「ドブに捨てる」のに等しく、RUGデルバーはそんなことをしたいデッキではないし、マングースのスレッショルドを急ぐ状況ではなおさらやりたくないプレイだ。
さらに、3枚目のDazeは使わない可能性が高い。つまり引き直したくないカードが少なくとも1枚手札にあり、ブレストで不要牌をもう1枚引く可能性も非常に高い。
そういうわけで、セドリック・フィリップスが "Perfect Brainstorm" と呼ぶ、直後にフェッチを切るブレストをしたいところだ。
こちらは土地を立てておく必要もない。状況を変える新たなカードを引かなければ、僕の考える今後2ターンのプレイはこうなる:まずVolcanic Islandを持ってきて相手のMireをもみ消し、次の自分のターンにボルカを使ってブレストをキャスト、Misty RainforestをプレイしてTropical Islandをフェッチしたのちマングースをキャスト、相手の次のアクションをDazeする。
RUG3色を揃えつつこのプレイをするには、次のターンの初めにブレストをキャストする土地を先に持ってくる必要がある――これが赤いカードがないのにVolcanic Islandをフェッチする理由だ。
このターン中にDazeを使う必要がある場合のことは考えておいた方が良いかもしれない。ボルカを手札に戻したとすると、次のターンはマングースのキャストを諦めるか、ブレストを撃たずにフェッチを切る必要が出てくる。
Dazeを使わされるのは、このターンに死儀礼か思考囲いをキャストされた場合だ。しかし、その確率は、こちらのプラン通りに進む確率と比べてとても低く、ケアするには値しないだろう。そうなるのは相手がこのターンに死儀礼か囲いをトップした場合だけだからだ――既に手札にあったなら1ターン目に使ってきたはずだよね。
Storming Stronger
この事例は僕がプレイテスト中に経験したことが元になっている――そう、僕はミスをした。この記事を書こうと思った最初のきっかけなんだ。
こちらはストームを使い、Dark Petitionをテスト中だ(実際に僕がテストしていたリストだよ):
Petition Storm
Carsten Kotter
0th Place at Test deck on 0/0/0000
Legacy
lands (15)
1 《島/Island》
1 《沼/Swamp》
1 《Badlands》
1 《Tropical Island》
2 《Underground Sea》
1 《Volcanic Island》
4 《汚染された三角州/Polluted Delta》
4 《沸騰する小湖/Scalding Tarn》
spells (45)
4 《ライオンの瞳のダイアモンド/Lion’s Eye Diamond》
4 《水蓮の花びら/Lotus Petal》
4 《陰謀団の儀式/Cabal Ritual》
4 《暗黒の儀式/Dark Ritual》
4 《渦まく知識/Brainstorm》
4 《思案/Ponder》
4 《ギタクシア派の調査/Gitaxian Probe》
4 《陰謀団式療法/Cabal Therapy》
3 《強迫/Duress》
3 《闇の誓願/Dark Petition》
4 《冥府の教示者/Infernal Tutor》
1 《炎の中の過去/Past in Flames》
1 《苦悶の触手/Tendrils of Agony》
1 《巣穴からの総出/Empty the Warrens》
相手はBURGデルバーらしく、こちらは妨害スペルで相手を丸裸(手札ゼロ)にしたところだ。その間に2体のデルバーによってこちらのライフは一気に減ってしまった。今はPolluted Deltaをドローしてメインフェイズが始まったところ。このターンに仕掛けなければ死ぬ:
どうすべきだろう?
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明らかに今この場で勝つ必要があり、そのためにドロースペルでチューターかテンドリルを見つけなければならず、Past in Flamesのための大量のマナと十分なストームカウントは手札と墓地に揃っている状況だ。
真の問題はこれだ:勝利する確率を最大化するにはどの順序でドロースペルをキャストすべきか?
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まずは簡単なところから:Dark Ritual、Dark Ritual、Cabal Ritual、Lion’s Eye Diamond、Polluted Deltaをプレイし、Volcanic Islandをフェッチする。Past in FlamesをキャストしてLEDをサクり、ドロースペルをキャストするための青3マナを出す。全てのRitualをフラッシュバックし、青3黒12マナが浮いてストームカウントは既に8だ。
ここからが難しい。ストームが十分にあるなら、他のドロースペルよりも先にGitaxian Probeを墓地からキャストするのが普通だろう。カードを見る枚数を最大化できる。
しかし、その常識に盲目的に従うと勝てる確率が落ちてしまうのがこのケースの特殊なところだ。
初めにギタ調、その後ブレスト2回をキャストすることで、ライブラリの上から5枚を見ることができる。だがここで気づくべきなのは、ギタ調を最後にキャストしない限り、順序を変えても同じだということだ――非常に重要な一点を除いて:最初にギタ調を使うと、1回目のブレスト直後に手札に2枚のカードが残る。
キャストできないスペルや土地3枚とInfernal Tutorがめくれたとき、どうやっても暴勇が達成できなくなる!最高のカードを見つけたのに負けることになってしまうんだ(例えばライブラリトップが「土地、Infernal Tutor、土地、土地」みたいに並んでいた場合)。
一方、最初にブレストを使って2枚の処理不能カードとInfernal Tutorが見つかった場合は相手が死ぬ:チューターを残してテンドリルをサーチだ。見つからなくても、ギタ調してから2枚目のブレストを使えば、ギタ調を最初に使う場合と同じカードを見ることができる。普段と違う順序でドロースペルを使うことで、何も失うことなくイージーウィンのチャンスが得られているね。
Telling Truer
Burning Wish入りでエムラ無しのオムニテルを使っていて、ゲーム1だ。
Demon Rum
Carsten Kotter
0th Place at Test deck on 0/0/0000
Legacy
lands (19)
4 《島/Island》
2 《Underground Sea》
2 《Volcanic Island》
1 《溢れかえる岸辺/Flooded Strand》
4 《汚染された三角州/Polluted Delta》
4 《沸騰する小湖/Scalding Tarn》
2 《水晶鉱脈/Crystal Vein》
creatures (4)
4 《若き紅蓮術士/Young Pyromancer》
spells (37)
4 《全知/Omniscience》
3 《実物提示教育/Show and Tell》
4 《渦まく知識/Brainstorm》
4 《思案/Ponder》
4 《ギタクシア派の調査/Gitaxian Probe》
2 《定業/Preordain》
4 《時を越えた探索/Dig Through Time》
4 《意志の力/Force of Will》
4 《燃え立つ願い/Burning Wish》
4 《陰謀団式療法/Cabal Therapy》
sideboard
2 《狼狽の嵐/Flusterstorm》
2 《紅蓮破/Pyroblast》
1 《ぶどう弾/Grapeshot》
1 《無垢の血/Innocent Blood》
1 《虐殺/Massacre》
1 《溶融/Meltdown》
1 《洞察力の花弁/Petals of Insight》
3 《紅蓮地獄/Pyroclasm》
1 《実物提示教育/Show and Tell》
1 《思考囲い/Thoughtseize》
1 《虚空の罠/Void Snare》
ドロースペルでショーテル&赤願い&全知が揃ったところだ。ショーテルはこのターンにギタ調で引いたばかり。相手の手札を見て、向こうが古き良きエンチャントレスを使っており、こちらのGrapeshotを無効化するカード――Solitary Confinement――を持っていることが分かった。
Show and Tellをキャストする必要がある。
どうプレイすべきか?
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相手は十分賢くてショーテルにSolitary Confinementを合わせてくるとすると、こちらはどこかでもう1枚追加の赤願いを使う必要がある。ショーテルを使い、Petalsを開始して、Grapeshotの前にVoid SnareをサーチしてConfinementをバウンスだ。そう、これ以外の道はない。
この問題を解くのにまず重要なのは、全知+赤願いからのPetals of Insightというコンボで何ができるかだ。「無限にストームを稼いで赤願いを見つける」という考えではなかなか解けないだろう。
僕が何のことを言っているのか気づいた人は、それをやってみよう。分からない場合は、このコンボが実際にどう動くかをもう少し考えてみると探している道を見つけられるかもしれない。
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僕が言っていたのはこのことだ:こちらのデッキの枚数が3の倍数でなければ、Petals of Insightを繰り返しキャストすることでライブラリを並べ替えられる。
1枚か2枚のカードを隣の3枚ブロックに移動させると、デッキを1回転させるごとにPetals of Insightで見る3枚ブロックが新しくなり、カードはデッキの中を徐々に移動していく。このプロセスによって、最終的にデッキ中の任意の3枚をPetals of Insightでドローすることができる。
説明のためにカード5枚のライブラリを考えてみよう:
この中のキャントリップ3枚をドローしたいとしよう。
Petalsを解決すると、島、ポンダー、定業を好きな順序でボトムに送れる:
もう一度Petalsをキャストすると、赤願い、ギタ調、島が見える。定業とポンダーもどこにあるか知っているので、ギタ調をその次に来るように並べよう:
ここでPetalsをキャストすれば、欲しかった3枚のキャントリップが見えるのでドローしよう。このように、一つ前のブロックの下2枚と、次のブロックの一番上のカードを合わせた新しいブロックを作ることができる。3の倍数+1枚のライブラリの場合は、一つ目のブロックの下1枚と次のブロックの上2枚を合わせたブロックになる。
もっと大きなライブラリでも同じプロセスでカードを動かし、ゆっくりだが確実に好きな3枚を揃えることができる。現実のライブラリの枚数では相当な回数のPetalsが必要になるが、Petalsは好きなだけキャストすることができるので大丈夫だ。
上の問題で残る厄介な点は、こちらが使ったカードと手札を合わせてちょうど12枚になっていて(ちゃんと数えたかな?)、ライブラリは48枚なので並び替えができないことだ。この状態からPetalsを使うと、同じ3枚ブロックが何度も繰り返し現れるだけになる。
幸い、ライブラリの枚数を変えられるカードが手札にある:Polluted Deltaだ。ライブラリの枚数が問題になることに気づけば、まず枚数を数えて1枚増やすか減らす必要があることを知り、島ではなくフェッチをプレイしてショーテルすればOK。その後に2枚のBurning Wishが入ったブロックを作ればおしまいだ。
もし枚数に気づけなかった場合はどうなるだろう?
それでも勝つかもしれないけど、失敗する確率はゼロじゃなくなる。たまたま赤願いが2枚入ったブロックがあれば勝てるけれど可能性は低く、あとは赤願いとドロースペル(特にDig Through Time)の組み合わせに賭けることになる。これが成功する確率を僕は計算できないけど、赤願い+ドロースペルのブロックがないケースや、ドロースペルで追加のWishが見つからないケースは間違いなくある。デッキの中でDTTとWishがどれぐらい離れているかにも気をつける必要があるので成功率の計算はとても難しい。Petalsで1回転させる間にデッキの並び順を記録するぐらいならできるかな。
ともかく、細部に注意を払わなかったせいで勝率をかなり落としてしまうことは間違いないだろう?
神は宿った
何問正解できたかな?
もっと大事なこととして、解答(やシンキングタイム途中のヒント)を読む前に、どこに注意を払うべきか気づけたのは何問あっただろう?
僕の解答より良いプレイはないと言い切ることはできないし議論は歓迎だけど、この記事に書いた事例はあくまで特殊なケースだ。今日僕が言いたかったポイントは、非常に小さな判断にも正解と不正解があり、そこで正しい選択ができるようになるためには、大局的な方針に加えてゲーム中に出くわすあらゆる些事に気を配るしかないってことだよ。
忘れないでほしい。誤った判断をする最も簡単な方法は、自分が判断していることに気づかないことだ。
目を見開こう!
悪魔は細部に宿る。
Dig Through Time健在の頃の記事ですが面白かったので。
プレイした直後に「あっ」ってなるやつです。
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The Devil Is In The Details
CARSTEN KOTTER
2015/08/06
http://www.starcitygames.com/article/31327_The-Devil-Is-In-The-Details.html
マジックは複雑なゲームで、レガシーは特にそうだ――これまで印刷されてきたカードのほとんどがリーガルなフォーマットでは予想外の相互作用が数多く生じ、それらに対処しなきゃならない。それだけでなく、レガシーのようなパワーの高いフォーマットでは、ちっぽけな細部、気づきにくいほんのささいな判断でさえ勝敗に多大な影響を与える。
今日の記事でやりたいのは、そのような見過ごしがちな判断をはらんだ事例を3つ、読者のみんなにプレゼントすることだ。気をつけて考えたことがなければ、判断を下していることを自覚すらできない。そんな話だよ。
正しいプレイが何かを考えるシンキングタイムを用意して、その後で僕の考える正しいプレイと、なぜ/どんなときに小さな判断が重要となるかを解説するつもりだ。
面白そうだろう?
よし、それじゃあやってみよう。
Delving Deeper
何を使っているか分からない相手に対するゲーム1、こちらはRUGデルバーを使っている。
Temur Delver
Tom Koson
1st Place at StarCityGames.com Super IQ on 7/26/2015
Legacy
lands (18)
3 《Tropical Island》
3 《Volcanic Island》
4 《霧深い雨林/Misty Rainforest》
4 《樹木茂る山麓/Wooded Foothills》
4 《不毛の大地/Wasteland》
creatures (12)
4 《秘密を掘り下げる者/Delver of Secrets》
4 《敏捷なマングース/Nimble Mongoose》
4 《タルモゴイフ/Tarmogoyf》
spells (30)
4 《渦まく知識/Brainstorm》
4 《思案/Ponder》
4 《意志の力/Force of Will》
4 《目くらまし/Daze》
4 《呪文貫き/Spell Pierce》
4 《もみ消し/Stifle》
2 《四肢切断/Dismember》
4 《稲妻/Lightning Bolt》
sideboard
2 《墓掘りの檻/Grafdigger’s Cage》
1 《硫黄の精霊/Sulfur Elemental》
1 《森の知恵/Sylvan Library》
1 《古えの遺恨/Ancient Grudge》
1 《狼狽の嵐/Flusterstorm》
1 《水流破/Hydroblast》
1 《クローサの掌握/Krosan Grip》
2 《紅蓮破/Pyroblast》
2 《水没/Submerge》
1 《壌土からの生命/Life from the Loam》
2 《乱暴/Rough》
対戦相手はBayouを置いただけで1ターン目を終え、こちらは1ターン目マングースよりもStifleを構える方が重要だと考えた。
今は対戦相手の2ターン目、Bloodstained Mireを置いてすぐ起動したところだ:
ゲーム1、相手の第1メインフェイズ、土地はプレイ済み。
相手のライフ:19
相手の手札:6枚
相手の場:
* Bayou(アンタップ)
相手の墓地:
* Bloodstained Mire
スタック:Bloodstained Mireの起動型能力
あなたのライフ:20
あなたの手札:
* Stifle
* Misty Rainforest
* Nimble Mongoose
* Brainstorm
* Daze
* Daze
* Daze
あなたの場:
* Wooded Foothills(アンタップ)
あなたの墓地:空
※訳注:元記事に見やすい画像があります。
どうプレイする?
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「フェッチのもみ消し一択だろ?」という方へ――その通り!では、当たり前じゃない部分に注意を払ってみよう――Wooded Foothillsでどちらの土地を持ってくる?
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この問いにきちんと答えるには、こちらがどんなプランなのか理解している必要がある。こちらの手札に赤いカードはなく緑のカードがあり、第一感はTropical Islandかもしれないね。
僕は、それはミスで、Volcanic Islandが正解だと考えている。以下が理由だ:
現時点で、相手はジャンドの可能性が非常に高い(1枚目の土地がBayouで、Bloodstained Mireが入っているデッキだ)。ジャンドに対するベストプランの一つは、相手をマナスクリューさせて立ち直る前に勝つことだ。こちらには大量のDazeがあり、このプランは実現もできそうだ。
ということは、次のターンにマングースを出してクロックを始めるためにTropical Islandを持ってくるべきってことになるんじゃないか?
この考えの問題点は、フェッチを場に残して墓地が1枚の状況でマングースを出すことになる点だ。
このフェッチを切った場合――つまり、Dazeを2枚キャストする必要が出てきた場合――ブレスト後のシャッフル手段を失うことになる。このシャッフルは今の状況で非常に重要だ。
また、マングースを脅威として機能させるために、できるだけ早く墓地を肥やす必要がある。こちらの手札を考えると、追加のキャントリップのようなキャストしやすいスペルをブレストで集めたい。自分のターンにフェッチを切らないことは1マナを「ドブに捨てる」のに等しく、RUGデルバーはそんなことをしたいデッキではないし、マングースのスレッショルドを急ぐ状況ではなおさらやりたくないプレイだ。
さらに、3枚目のDazeは使わない可能性が高い。つまり引き直したくないカードが少なくとも1枚手札にあり、ブレストで不要牌をもう1枚引く可能性も非常に高い。
そういうわけで、セドリック・フィリップスが "Perfect Brainstorm" と呼ぶ、直後にフェッチを切るブレストをしたいところだ。
こちらは土地を立てておく必要もない。状況を変える新たなカードを引かなければ、僕の考える今後2ターンのプレイはこうなる:まずVolcanic Islandを持ってきて相手のMireをもみ消し、次の自分のターンにボルカを使ってブレストをキャスト、Misty RainforestをプレイしてTropical Islandをフェッチしたのちマングースをキャスト、相手の次のアクションをDazeする。
RUG3色を揃えつつこのプレイをするには、次のターンの初めにブレストをキャストする土地を先に持ってくる必要がある――これが赤いカードがないのにVolcanic Islandをフェッチする理由だ。
このターン中にDazeを使う必要がある場合のことは考えておいた方が良いかもしれない。ボルカを手札に戻したとすると、次のターンはマングースのキャストを諦めるか、ブレストを撃たずにフェッチを切る必要が出てくる。
Dazeを使わされるのは、このターンに死儀礼か思考囲いをキャストされた場合だ。しかし、その確率は、こちらのプラン通りに進む確率と比べてとても低く、ケアするには値しないだろう。そうなるのは相手がこのターンに死儀礼か囲いをトップした場合だけだからだ――既に手札にあったなら1ターン目に使ってきたはずだよね。
Storming Stronger
この事例は僕がプレイテスト中に経験したことが元になっている――そう、僕はミスをした。この記事を書こうと思った最初のきっかけなんだ。
こちらはストームを使い、Dark Petitionをテスト中だ(実際に僕がテストしていたリストだよ):
Petition Storm
Carsten Kotter
0th Place at Test deck on 0/0/0000
Legacy
lands (15)
1 《島/Island》
1 《沼/Swamp》
1 《Badlands》
1 《Tropical Island》
2 《Underground Sea》
1 《Volcanic Island》
4 《汚染された三角州/Polluted Delta》
4 《沸騰する小湖/Scalding Tarn》
spells (45)
4 《ライオンの瞳のダイアモンド/Lion’s Eye Diamond》
4 《水蓮の花びら/Lotus Petal》
4 《陰謀団の儀式/Cabal Ritual》
4 《暗黒の儀式/Dark Ritual》
4 《渦まく知識/Brainstorm》
4 《思案/Ponder》
4 《ギタクシア派の調査/Gitaxian Probe》
4 《陰謀団式療法/Cabal Therapy》
3 《強迫/Duress》
3 《闇の誓願/Dark Petition》
4 《冥府の教示者/Infernal Tutor》
1 《炎の中の過去/Past in Flames》
1 《苦悶の触手/Tendrils of Agony》
1 《巣穴からの総出/Empty the Warrens》
相手はBURGデルバーらしく、こちらは妨害スペルで相手を丸裸(手札ゼロ)にしたところだ。その間に2体のデルバーによってこちらのライフは一気に減ってしまった。今はPolluted Deltaをドローしてメインフェイズが始まったところ。このターンに仕掛けなければ死ぬ:
ゲーム1、あなたの第1メインフェイズ、土地は未プレイ。
相手のライフ:20
相手の手札:0枚
相手の場:
* Tropical Island×2(両方ともタップ)
* Volcanic Island(アンタップ)
* 3/4のTarmogoyf(アンタップ)
* 裏向きDelver×2(両方ともタップ)
相手の墓地:
* Wasteland
* Daze
* Brainstorm
* Ponder
* Wasteland
あなたのライフ:2
あなたの手札:
* Dark Ritual
* Dark Ritual
* Cabal Ritual
* Lion’s Eye Diamond
* Past in Flames
* Polluted Delta
あなたの場:
* Swamp(アンタップ)
あなたの墓地:
* Duress
* Cabal Therapy
* Cabal Therapy
* Underground Sea
* Underground Sea
* Polluted Delta
* Gitaxian Probe
* Brainstorm
* Brainstorm
どうすべきだろう?
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明らかに今この場で勝つ必要があり、そのためにドロースペルでチューターかテンドリルを見つけなければならず、Past in Flamesのための大量のマナと十分なストームカウントは手札と墓地に揃っている状況だ。
真の問題はこれだ:勝利する確率を最大化するにはどの順序でドロースペルをキャストすべきか?
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まずは簡単なところから:Dark Ritual、Dark Ritual、Cabal Ritual、Lion’s Eye Diamond、Polluted Deltaをプレイし、Volcanic Islandをフェッチする。Past in FlamesをキャストしてLEDをサクり、ドロースペルをキャストするための青3マナを出す。全てのRitualをフラッシュバックし、青3黒12マナが浮いてストームカウントは既に8だ。
ここからが難しい。ストームが十分にあるなら、他のドロースペルよりも先にGitaxian Probeを墓地からキャストするのが普通だろう。カードを見る枚数を最大化できる。
しかし、その常識に盲目的に従うと勝てる確率が落ちてしまうのがこのケースの特殊なところだ。
初めにギタ調、その後ブレスト2回をキャストすることで、ライブラリの上から5枚を見ることができる。だがここで気づくべきなのは、ギタ調を最後にキャストしない限り、順序を変えても同じだということだ――非常に重要な一点を除いて:最初にギタ調を使うと、1回目のブレスト直後に手札に2枚のカードが残る。
キャストできないスペルや土地3枚とInfernal Tutorがめくれたとき、どうやっても暴勇が達成できなくなる!最高のカードを見つけたのに負けることになってしまうんだ(例えばライブラリトップが「土地、Infernal Tutor、土地、土地」みたいに並んでいた場合)。
一方、最初にブレストを使って2枚の処理不能カードとInfernal Tutorが見つかった場合は相手が死ぬ:チューターを残してテンドリルをサーチだ。見つからなくても、ギタ調してから2枚目のブレストを使えば、ギタ調を最初に使う場合と同じカードを見ることができる。普段と違う順序でドロースペルを使うことで、何も失うことなくイージーウィンのチャンスが得られているね。
Telling Truer
Burning Wish入りでエムラ無しのオムニテルを使っていて、ゲーム1だ。
Demon Rum
Carsten Kotter
0th Place at Test deck on 0/0/0000
Legacy
lands (19)
4 《島/Island》
2 《Underground Sea》
2 《Volcanic Island》
1 《溢れかえる岸辺/Flooded Strand》
4 《汚染された三角州/Polluted Delta》
4 《沸騰する小湖/Scalding Tarn》
2 《水晶鉱脈/Crystal Vein》
creatures (4)
4 《若き紅蓮術士/Young Pyromancer》
spells (37)
4 《全知/Omniscience》
3 《実物提示教育/Show and Tell》
4 《渦まく知識/Brainstorm》
4 《思案/Ponder》
4 《ギタクシア派の調査/Gitaxian Probe》
2 《定業/Preordain》
4 《時を越えた探索/Dig Through Time》
4 《意志の力/Force of Will》
4 《燃え立つ願い/Burning Wish》
4 《陰謀団式療法/Cabal Therapy》
sideboard
2 《狼狽の嵐/Flusterstorm》
2 《紅蓮破/Pyroblast》
1 《ぶどう弾/Grapeshot》
1 《無垢の血/Innocent Blood》
1 《虐殺/Massacre》
1 《溶融/Meltdown》
1 《洞察力の花弁/Petals of Insight》
3 《紅蓮地獄/Pyroclasm》
1 《実物提示教育/Show and Tell》
1 《思考囲い/Thoughtseize》
1 《虚空の罠/Void Snare》
ドロースペルでショーテル&赤願い&全知が揃ったところだ。ショーテルはこのターンにギタ調で引いたばかり。相手の手札を見て、向こうが古き良きエンチャントレスを使っており、こちらのGrapeshotを無効化するカード――Solitary Confinement――を持っていることが分かった。
Show and Tellをキャストする必要がある。
ゲーム1、あなたの第1メインフェイズ、土地は未プレイ。
相手のライフ:20
相手の手札:
* Sterling Grove
* Elephant Grass
* Elephant Grass
* Mirri’s Guile
* Forest
* Solitary Confinement
相手の場:
* Wild Growth2枚がついたForest(タップ)
* Plains(タップ)
* Savannah(タップ)
* Argothian Enchantress(アンタップ)
* Enchantress’s presence
* Rest in Peace
あなたのライフ:17
あなたの手札:
* Burning Wish
* Polluted Delta
* Island
* Omniscience
* Show and Tell
あなたの場:
* Volcanic Island×2(両方ともアンタップ)
あなたの追放領域:
* Gitaxian Probe
* Scalding Tarn
* Preordain
* Ponder
* Brainstorm
どうプレイすべきか?
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相手は十分賢くてショーテルにSolitary Confinementを合わせてくるとすると、こちらはどこかでもう1枚追加の赤願いを使う必要がある。ショーテルを使い、Petalsを開始して、Grapeshotの前にVoid SnareをサーチしてConfinementをバウンスだ。そう、これ以外の道はない。
この問題を解くのにまず重要なのは、全知+赤願いからのPetals of Insightというコンボで何ができるかだ。「無限にストームを稼いで赤願いを見つける」という考えではなかなか解けないだろう。
僕が何のことを言っているのか気づいた人は、それをやってみよう。分からない場合は、このコンボが実際にどう動くかをもう少し考えてみると探している道を見つけられるかもしれない。
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僕が言っていたのはこのことだ:こちらのデッキの枚数が3の倍数でなければ、Petals of Insightを繰り返しキャストすることでライブラリを並べ替えられる。
1枚か2枚のカードを隣の3枚ブロックに移動させると、デッキを1回転させるごとにPetals of Insightで見る3枚ブロックが新しくなり、カードはデッキの中を徐々に移動していく。このプロセスによって、最終的にデッキ中の任意の3枚をPetals of Insightでドローすることができる。
説明のためにカード5枚のライブラリを考えてみよう:
《島/Island》
《定業/Preordain》
《思案/Ponder》
《燃え立つ願い/Burning Wish》
《ギタクシア派の調査/Gitaxian Probe》
この中のキャントリップ3枚をドローしたいとしよう。
Petalsを解決すると、島、ポンダー、定業を好きな順序でボトムに送れる:
《燃え立つ願い/Burning Wish》
《ギタクシア派の調査/Gitaxian Probe》
《島/Island》
《思案/Ponder》
《定業/Preordain》
もう一度Petalsをキャストすると、赤願い、ギタ調、島が見える。定業とポンダーもどこにあるか知っているので、ギタ調をその次に来るように並べよう:
《思案/Ponder》
《定業/Preordain》
《ギタクシア派の調査/Gitaxian Probe》
《燃え立つ願い/Burning Wish》
《島/Island》
ここでPetalsをキャストすれば、欲しかった3枚のキャントリップが見えるのでドローしよう。このように、一つ前のブロックの下2枚と、次のブロックの一番上のカードを合わせた新しいブロックを作ることができる。3の倍数+1枚のライブラリの場合は、一つ目のブロックの下1枚と次のブロックの上2枚を合わせたブロックになる。
もっと大きなライブラリでも同じプロセスでカードを動かし、ゆっくりだが確実に好きな3枚を揃えることができる。現実のライブラリの枚数では相当な回数のPetalsが必要になるが、Petalsは好きなだけキャストすることができるので大丈夫だ。
上の問題で残る厄介な点は、こちらが使ったカードと手札を合わせてちょうど12枚になっていて(ちゃんと数えたかな?)、ライブラリは48枚なので並び替えができないことだ。この状態からPetalsを使うと、同じ3枚ブロックが何度も繰り返し現れるだけになる。
幸い、ライブラリの枚数を変えられるカードが手札にある:Polluted Deltaだ。ライブラリの枚数が問題になることに気づけば、まず枚数を数えて1枚増やすか減らす必要があることを知り、島ではなくフェッチをプレイしてショーテルすればOK。その後に2枚のBurning Wishが入ったブロックを作ればおしまいだ。
もし枚数に気づけなかった場合はどうなるだろう?
それでも勝つかもしれないけど、失敗する確率はゼロじゃなくなる。たまたま赤願いが2枚入ったブロックがあれば勝てるけれど可能性は低く、あとは赤願いとドロースペル(特にDig Through Time)の組み合わせに賭けることになる。これが成功する確率を僕は計算できないけど、赤願い+ドロースペルのブロックがないケースや、ドロースペルで追加のWishが見つからないケースは間違いなくある。デッキの中でDTTとWishがどれぐらい離れているかにも気をつける必要があるので成功率の計算はとても難しい。Petalsで1回転させる間にデッキの並び順を記録するぐらいならできるかな。
ともかく、細部に注意を払わなかったせいで勝率をかなり落としてしまうことは間違いないだろう?
神は宿った
何問正解できたかな?
もっと大事なこととして、解答(やシンキングタイム途中のヒント)を読む前に、どこに注意を払うべきか気づけたのは何問あっただろう?
僕の解答より良いプレイはないと言い切ることはできないし議論は歓迎だけど、この記事に書いた事例はあくまで特殊なケースだ。今日僕が言いたかったポイントは、非常に小さな判断にも正解と不正解があり、そこで正しい選択ができるようになるためには、大局的な方針に加えてゲーム中に出くわすあらゆる些事に気を配るしかないってことだよ。
忘れないでほしい。誤った判断をする最も簡単な方法は、自分が判断していることに気づかないことだ。
目を見開こう!
StarCityGamesより。
サイドボーディングにまつわる戦略と戦術。
サイドの世界も奥深いですよね。
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Strategy And Tactics In Sideboarding
ROSS MERRIAM
2014/08/20
http://www.starcitygames.com/article/29167_Strategy-And-Tactics-In-Sideboarding.html
戦略記事をお求めのみなさま、お待たせしました。今週はサイドボーディングにおける戦略と戦術について、そして戦略と戦術の混同が効果的なサイドプランの構築をいかに阻害しているかについて、詳しく話そうと思う。
まずは、「戦略」と「戦術」の意味をはっきりさせるところから。
戦略は、ゲームまたはマッチを通して考慮される全体的なプランのことだ。プレイヤーにとっておそらく最もありふれた戦略的な問いは、目の前のマッチアップでの適切な振る舞いを見極めるための「どちらがビートダウンか?(Who’s the beatdown?)」だろう。どちらがコントロール側でどちらがアグロ側か説明できるなら、それぞれのデッキが採用している戦略がある程度分かっているということになる。
戦略は抽象的なもので、あるアーキタイプがいつの時代も同種のカードを入れて戦略を実現していることはあっても、戦略が特定の1つのカードに依存するということはほとんどない。コントロールデッキは、重くて強力なスペルで勝利するまでの時間を得るために軽い除去やカウンターを採用する。アグロコントロールデッキは軽い脅威を使い、序盤から中盤にかけての勝利を確実にするためにポイントを押さえて妨害スペルを使う。しかし、戦略を定義づけるのは決してカードそれ自体ではなく、カードがどう使われるかだ。
多くのデッキにとって、自身の採る戦略は相手のデッキとは無関係だ。ラブルレッドは小型クリーチャーの群れと火力によって、どんな相手だろうと序盤のうちに圧倒してしまおうとする。青白コントロールは可能な限りゲームを引き伸ばし、Sphinx’s Revelationで圧倒的なアドバンテージを確立しようとする。ベルチャーは相手が何であろうとマジックをさせる前に終わらせてしまおうとする。
この原則の例外はミッドレンジというアーキタイプだ。ミッドレンジは中盤に優位に立つために、自分よりもアグロなデッキに対しては序盤の主導権を譲り、「折り返し点」まではコントロール側の立場に立つ。コントロールデッキに対してはアグロ戦略を採る。いずれにせよミッドレンジは中盤での勝利を目指すわけだが、相手の動きに依存して異なるルートを使い分ける。
一方、戦術は、戦略を実現するための個々の場面でのプレイや判断のことを指す。よくある例は次のようなものだ:単体除去を温存して全体除去の威力を高める、損なアタックをして相手のライフを火力圏内に落とす、ドロースペルをカウンターせず全体除去に合わせるためにとっておく。重要なのは、これらの例はいかなる状況でも守るべき強いルールではないということだ。ラブルレッドを相手に、次のターンのSupreme Verdictの威力を高めるためにLast Breathを温存してライフを減らすのはたいていリスキーすぎる。
戦略的判断とは異なり、戦術的判断は常に状況に応じて行われる。この状況というのは、ボード、ライフ、自分の手札、相手の手札にあり得るカード、など数えきれないほど多くの要素を含んでいる。しかし最も重要なのは、あらゆる戦術的判断は自分の戦略に基づいて行われるということだ。ゲームを通じたプランを持ち、それを実行しているということは、実行可能な戦略を立て、その戦略から導かれた戦術的判断をしているということになる。
さて、戦略と戦術を定義したところで、この記事の主題は戦略的/戦術的判断がサイドボーディングにどのような影響を与えるかだ。
サイドで変更できるのはデッキのわずかな一部分だけなので、サイドボーディングでは主に戦術的判断を行うことになる。完全に戦略を変えるには15枚のサイドボードのスペースでは足りず、たとえ変形サイドを採用していたとしてもサイド後に筋違いのカードが残ってしまうケースは多い。そのため、変形サイドは戦術的に意味のある選択肢がない場合にのみ使うべきだ。
この選択肢がない場合の戦略の大改革の良い例は、青単信心と青白系コントロールとのマッチアップだ。青単信心は軽いが弱いクリーチャーを序盤に並べ、強力な信心カードで優位を築くホード型アグロデッキだ。Cloudfin Raptor、Master of Waves、Thassa, God of the Seaのような戦略に適したカードを使ってできるだけ横に展開する。しかし残念なことに他のアグロデッキほどの速度はないため、青単信心のカードは無残なほどにSupreme Verdictに弱い。このマッチアップでは、唯一Supreme Verdict耐性を持つMutavaultが最重要カードとなる。
伝統的に、アグロな青デッキは速度を落としてカウンターを増量することで、全体除去やジェイスのような強力スペルに対する弱点を補ってきた。しかし、Supreme Verdictはカウンター不能なのでもっと劇的な戦略の変更が必要となる。
青白コントロールはジェイスやエルズペス、大きなXのSphinx’s Revelationを守るためのカウンターを大量搭載する代償として脅威の濃度がうすい。青単信心は序盤にゲームを終わらせるためのカードを捨て、うまく中盤から終盤に突入してコントロールデッキの脅威のうすさを咎める必要がある。この新しい戦略に従えば、場に出すクリーチャーは1体にして、必要に応じて相手の強力な脅威に回答しながらコツコツとダメージを積み重ねることになる。
この新戦略の下では単体除去を気にかけるのではなく、脅威を解決させ続けられればたとえ20ターンかかっても20点ダメージを与える十分な時間があると考えるべきだ。サイド前はコントロールの戦略的優位のために盲目的なアグロ戦略を採らざるをえなかった一方で、サイド後はとんでもない忍耐を前提とした戦略を採用することになる。本来この戦略を採る場合、単体で強力な脅威を入れるのが理想だが、限られたサイドボードのスペースではTidebinder Mageのような弱い生物を残すしかない。クロックが貧弱なため、コントロールデッキにこちらのカウンターをかいくぐるチャンスを与えてしまうことになるが、相手がSupreme Verdictを引かないことを祈るよりはずっと良いプランだろう。
祈りは戦略とは呼べない。
先ほど述べたように、サイドボーディングの大部分は戦術的判断によって行われる。大規模に入れ替えるよりも、細部の調整をするケースの方がずっと多い。また、サイドボーディングは完全に受動的なプロセスでもある。対戦相手の戦略と戦術によって変更点が決まる。この受動的な面がサイドボーディングでのトラブルの多くを生んでいると僕は考えている。目の前のマッチアップで出てくる個々の脅威や場面に回答するための特定のカードを探してしまうプレイヤーは多い。その回答が苦し紛れだったり相手の戦略とは無関係であるにも関わらず。これにより、過剰サイドインや重要なデッキの核を削り過ぎるというよく知られたミスが生まれる。
典型的なコントロールデッキでは、序盤にリソースの交換を続けて終盤に強力なカードでマウントを取るために受動的な回答を大量搭載すべきこともあるが、ほとんどの能動的なアグロやコンボでは、追加した受動的なカードは戦略に合わないものになる。
能動的なデッキからは受動的カードを全て抜けと僕が言っているように聞こえるかもしれないが、正しい回答を用意している相手に能動的なデッキが安定して勝ち続けるのは非常に難しい(例えばForce of Willに対するベルチャー)。戦略が機能するために必要なデッキの核のスペースを考慮しつつ、受動的カードを賢く使うのが重要だ。スペース不足のため、この受動的なカードにはいろいろなカードに回答できる柔軟性も必要となる。単に回答としてだけではなく、必要に応じて能動的なプランにも貢献できれば最高だ。火力スペルは赤いアグロデッキの幅を広げ、Selesnya Charmは脅威にもコンバットトリックにもなり、Rapid Hybridizationは相手の除去に対する擬似カウンターとしても使える。
サイドボードに入れる回答の良くない例として、青単信心のRatchet Bombを考えよう。Ratchet Bombは黒単信心のPack Ratと、ジャンドモンスターやジャンドプレインズウォーカーズ、緑単信心など様々な緑系ミッドレンジのMistcutter Hydraに効果的に回答することができる。しかしそれ以外のカード、Desecration Demonやプレインズウォーカーなどには遅すぎてまともな回答にはならず、デッキの本来のゲームプランには何も貢献しない。蓄積カウンターは生み出すが信心を増やすことはしない。
黒単信心や緑ミッドレンジに対しては、相手を「折り返し点」前の防御体制に押しとどめておくアグロな行動をすることがポイントとなる。Ratchet Bombはいくつか問題カードに回答することはできるものの、それをするためにかける時間のコストがあまりにも高すぎる。Pack RatやMistcutter Hydraに対する僕の「回答」がダメージレースだと聞いて驚くプレイヤーは多い。マナカーブに沿った青単信心のようなデッキが先手なら、たとえブン回らなくても後手のRatは機能しにくい。Hydraは少なくともX=4でプレイしないとRapid Hybridizationされたトークンと相打ちになってしまい、青単信心が十分にプレッシャーをかけている状況なら4/4とのダメージレースには勝てる。
僕がPack RatやMistcutter Hydraに負けるリスクがあるのは承知しているが、あり得る全ての場面で勝とうとするのは間違いだ。目指すべきなのは勝率を最大化することで、勝ちにくい後手のゲームは全てのゲームのうちの一部でしかない。そんなゲームをいくつか勝つためにデッキを歪めてしまえば他のゲームで勝てなくなり、結局負けが増えてしまうだろう。
ここでDomesticationを考えてみよう。Desecration Demonを1体出されている状況には回答できないものの(2体いれば片方を奪ってもう一方をサクらせられる)、このカードは青単信心にとってパーフェクトなクリーチャー対策で、アグロ戦略の後押しもしてくれる。黒単信心は「折り返し点」となるまで盤面を構築し、アグロにギアチェンジすることを目指すデッキだ。Lifebane Zombieのような大したことのない生物を奪うだけで、このマッチアップのポイントであるボードに多大な影響を与えられる。小型生物を並べるアグロデッキに対しては、Domesticationによって、青単信心デッキ自身が「折り返し点」に到達しやすくなる。デッキの他の部分と調和した、能動的な役割もこなせる受動的な除去スペルなのだ。
過剰サイドインの誘惑を断ち切る良い方法だと僕が思っているのは、すぐにサイドボードを手に取り何をサイドインするか考える前に、どのカードをサイドアウトすべきかを最初に考えることだ。ちょっとした違いだが、メインから抜くカードよりも限定的な場面でのみ強力なカードの方が魅力的に見えてしまう楽観主義を避ける心理的な効果が得られる。
リミテッドでのサイドボーディング
有効活用されないことの多いリミテッドのサイドボードも同じ原則で運用する。
カードプールが狭いため状況は少し複雑になる。リミテッドでは速い、あるいは遅い戦略に合うカードが不足しがちなため、デッキはどうしてもミッドレンジになりがちだ。リミテッドでも、ちょっとした戦術的な調整も大胆な戦略変更もあり得るのだが、経験の浅いプレイヤーは見逃してしまうようだ。
構築と同じくリミテッドでも、慣れていないプレイヤーは特定のカードへの回答を過大評価してサイドインしてしまう。とてもよくあるのが、Disenchant系のカードや色対策のサイドインだ。黒に偏った相手のデッキに対してDark Betrayalが刺さりそう、というケースなら分かりやすい。ドラフトやシールドでのサイドボーディングではもっと微妙な調整として、生物のラインナップを相手の生物に合わせて変えるべきだ。
相手はWarpath Ghoulを何枚か使っていないだろうか?そうであればPillarfield Oxはかなり良いクリーチャーになる。逆の立場なら、2/4の群れを乗り越えるためにWarpath Ghoulはサイドアウトしよう。相手はついていくのが難しいほどアグロなマナカーブになっていないだろうか?そうであればBronze Sableをサイドインして速度を近づけよう。これらはゲームプランの大幅な変更ではないが、少しの調整だけで戦術的な立ち回りが可能になる。
言われてみれば明らかでも、普通は「悪い」とみなされているカードを無視してしまう罠には実に簡単に陥ってしまう。マジックでは常にそうだが、状況が全てだ。
このような微調整だけでなく、明らかに相手よりもデッキパワーが低い場合は劇的な変更が必要になる。
こちらが回答不能なボムを相手がいくつも使っているなら、普通にゲームをしてもうまくいかない。長引けば相手の必勝である以上、こちらはできるだけ素早くゲームを終わらせなければならない。Fugitive WizardsやCoral Merfolkをサイドインしてビートしよう。いずれにせようまいやり方とは言えないが、適切な戦略と正しいカードを選べば、ラストピックを活用して簡単にマッチアップを改善することもできる。
同様に、長引けばこちらが必勝であればDivinationは不要だ。ボムをキャストするまで膠着させるためのブロッカーを入れよう。
これらの判断の根本にあるのは、常に問い、再評価するということだ。4ターン目Desecration Demonに対するこちらのプランは?Supreme Verdictに対しては?Advent of the Wurmが来たら?Thoughtseize/Hero’s Downfall/Ajani, Mentor of Heroesが入ったデッキのAdventと、Soldier of the Pantheon/Fleecemane Lion/Selesnya Charmが入ったデッキのAdventでは違いはあるか?
サイドボードの全てのカードは、75枚全体のつながりの中で正当化されるべきだ。自分のデッキの基本的なゴールを理解すればサイドボーディングはより自由になり、相手のデッキのメジャーなリストからのちょっとした変更点や、まったく未知のマッチアップにも対応できるようになる。優れたプレイヤーが同じサイドボーディングをすることはめったにないというのを聞いたことがあると思う。サイドイン・アウトの判断をするときに考慮する要素が非常に多いのがその理由だ。いつでも通用するプランを作ろうとするのは、よく言っても短絡的だ。そうではなく、自分のデッキの本質を理解し、戦略によってサイドボーディングの判断をしていこう。直観を鍛えれば、この判断をいつも簡単に下せるようになることに気づくはずだ。
サイドボーディングにまつわる戦略と戦術。
サイドの世界も奥深いですよね。
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Strategy And Tactics In Sideboarding
ROSS MERRIAM
2014/08/20
http://www.starcitygames.com/article/29167_Strategy-And-Tactics-In-Sideboarding.html
戦略記事をお求めのみなさま、お待たせしました。今週はサイドボーディングにおける戦略と戦術について、そして戦略と戦術の混同が効果的なサイドプランの構築をいかに阻害しているかについて、詳しく話そうと思う。
まずは、「戦略」と「戦術」の意味をはっきりさせるところから。
戦略は、ゲームまたはマッチを通して考慮される全体的なプランのことだ。プレイヤーにとっておそらく最もありふれた戦略的な問いは、目の前のマッチアップでの適切な振る舞いを見極めるための「どちらがビートダウンか?(Who’s the beatdown?)」だろう。どちらがコントロール側でどちらがアグロ側か説明できるなら、それぞれのデッキが採用している戦略がある程度分かっているということになる。
戦略は抽象的なもので、あるアーキタイプがいつの時代も同種のカードを入れて戦略を実現していることはあっても、戦略が特定の1つのカードに依存するということはほとんどない。コントロールデッキは、重くて強力なスペルで勝利するまでの時間を得るために軽い除去やカウンターを採用する。アグロコントロールデッキは軽い脅威を使い、序盤から中盤にかけての勝利を確実にするためにポイントを押さえて妨害スペルを使う。しかし、戦略を定義づけるのは決してカードそれ自体ではなく、カードがどう使われるかだ。
多くのデッキにとって、自身の採る戦略は相手のデッキとは無関係だ。ラブルレッドは小型クリーチャーの群れと火力によって、どんな相手だろうと序盤のうちに圧倒してしまおうとする。青白コントロールは可能な限りゲームを引き伸ばし、Sphinx’s Revelationで圧倒的なアドバンテージを確立しようとする。ベルチャーは相手が何であろうとマジックをさせる前に終わらせてしまおうとする。
この原則の例外はミッドレンジというアーキタイプだ。ミッドレンジは中盤に優位に立つために、自分よりもアグロなデッキに対しては序盤の主導権を譲り、「折り返し点」まではコントロール側の立場に立つ。コントロールデッキに対してはアグロ戦略を採る。いずれにせよミッドレンジは中盤での勝利を目指すわけだが、相手の動きに依存して異なるルートを使い分ける。
一方、戦術は、戦略を実現するための個々の場面でのプレイや判断のことを指す。よくある例は次のようなものだ:単体除去を温存して全体除去の威力を高める、損なアタックをして相手のライフを火力圏内に落とす、ドロースペルをカウンターせず全体除去に合わせるためにとっておく。重要なのは、これらの例はいかなる状況でも守るべき強いルールではないということだ。ラブルレッドを相手に、次のターンのSupreme Verdictの威力を高めるためにLast Breathを温存してライフを減らすのはたいていリスキーすぎる。
戦略的判断とは異なり、戦術的判断は常に状況に応じて行われる。この状況というのは、ボード、ライフ、自分の手札、相手の手札にあり得るカード、など数えきれないほど多くの要素を含んでいる。しかし最も重要なのは、あらゆる戦術的判断は自分の戦略に基づいて行われるということだ。ゲームを通じたプランを持ち、それを実行しているということは、実行可能な戦略を立て、その戦略から導かれた戦術的判断をしているということになる。
さて、戦略と戦術を定義したところで、この記事の主題は戦略的/戦術的判断がサイドボーディングにどのような影響を与えるかだ。
サイドで変更できるのはデッキのわずかな一部分だけなので、サイドボーディングでは主に戦術的判断を行うことになる。完全に戦略を変えるには15枚のサイドボードのスペースでは足りず、たとえ変形サイドを採用していたとしてもサイド後に筋違いのカードが残ってしまうケースは多い。そのため、変形サイドは戦術的に意味のある選択肢がない場合にのみ使うべきだ。
この選択肢がない場合の戦略の大改革の良い例は、青単信心と青白系コントロールとのマッチアップだ。青単信心は軽いが弱いクリーチャーを序盤に並べ、強力な信心カードで優位を築くホード型アグロデッキだ。Cloudfin Raptor、Master of Waves、Thassa, God of the Seaのような戦略に適したカードを使ってできるだけ横に展開する。しかし残念なことに他のアグロデッキほどの速度はないため、青単信心のカードは無残なほどにSupreme Verdictに弱い。このマッチアップでは、唯一Supreme Verdict耐性を持つMutavaultが最重要カードとなる。
伝統的に、アグロな青デッキは速度を落としてカウンターを増量することで、全体除去やジェイスのような強力スペルに対する弱点を補ってきた。しかし、Supreme Verdictはカウンター不能なのでもっと劇的な戦略の変更が必要となる。
青白コントロールはジェイスやエルズペス、大きなXのSphinx’s Revelationを守るためのカウンターを大量搭載する代償として脅威の濃度がうすい。青単信心は序盤にゲームを終わらせるためのカードを捨て、うまく中盤から終盤に突入してコントロールデッキの脅威のうすさを咎める必要がある。この新しい戦略に従えば、場に出すクリーチャーは1体にして、必要に応じて相手の強力な脅威に回答しながらコツコツとダメージを積み重ねることになる。
この新戦略の下では単体除去を気にかけるのではなく、脅威を解決させ続けられればたとえ20ターンかかっても20点ダメージを与える十分な時間があると考えるべきだ。サイド前はコントロールの戦略的優位のために盲目的なアグロ戦略を採らざるをえなかった一方で、サイド後はとんでもない忍耐を前提とした戦略を採用することになる。本来この戦略を採る場合、単体で強力な脅威を入れるのが理想だが、限られたサイドボードのスペースではTidebinder Mageのような弱い生物を残すしかない。クロックが貧弱なため、コントロールデッキにこちらのカウンターをかいくぐるチャンスを与えてしまうことになるが、相手がSupreme Verdictを引かないことを祈るよりはずっと良いプランだろう。
祈りは戦略とは呼べない。
先ほど述べたように、サイドボーディングの大部分は戦術的判断によって行われる。大規模に入れ替えるよりも、細部の調整をするケースの方がずっと多い。また、サイドボーディングは完全に受動的なプロセスでもある。対戦相手の戦略と戦術によって変更点が決まる。この受動的な面がサイドボーディングでのトラブルの多くを生んでいると僕は考えている。目の前のマッチアップで出てくる個々の脅威や場面に回答するための特定のカードを探してしまうプレイヤーは多い。その回答が苦し紛れだったり相手の戦略とは無関係であるにも関わらず。これにより、過剰サイドインや重要なデッキの核を削り過ぎるというよく知られたミスが生まれる。
典型的なコントロールデッキでは、序盤にリソースの交換を続けて終盤に強力なカードでマウントを取るために受動的な回答を大量搭載すべきこともあるが、ほとんどの能動的なアグロやコンボでは、追加した受動的なカードは戦略に合わないものになる。
能動的なデッキからは受動的カードを全て抜けと僕が言っているように聞こえるかもしれないが、正しい回答を用意している相手に能動的なデッキが安定して勝ち続けるのは非常に難しい(例えばForce of Willに対するベルチャー)。戦略が機能するために必要なデッキの核のスペースを考慮しつつ、受動的カードを賢く使うのが重要だ。スペース不足のため、この受動的なカードにはいろいろなカードに回答できる柔軟性も必要となる。単に回答としてだけではなく、必要に応じて能動的なプランにも貢献できれば最高だ。火力スペルは赤いアグロデッキの幅を広げ、Selesnya Charmは脅威にもコンバットトリックにもなり、Rapid Hybridizationは相手の除去に対する擬似カウンターとしても使える。
サイドボードに入れる回答の良くない例として、青単信心のRatchet Bombを考えよう。Ratchet Bombは黒単信心のPack Ratと、ジャンドモンスターやジャンドプレインズウォーカーズ、緑単信心など様々な緑系ミッドレンジのMistcutter Hydraに効果的に回答することができる。しかしそれ以外のカード、Desecration Demonやプレインズウォーカーなどには遅すぎてまともな回答にはならず、デッキの本来のゲームプランには何も貢献しない。蓄積カウンターは生み出すが信心を増やすことはしない。
黒単信心や緑ミッドレンジに対しては、相手を「折り返し点」前の防御体制に押しとどめておくアグロな行動をすることがポイントとなる。Ratchet Bombはいくつか問題カードに回答することはできるものの、それをするためにかける時間のコストがあまりにも高すぎる。Pack RatやMistcutter Hydraに対する僕の「回答」がダメージレースだと聞いて驚くプレイヤーは多い。マナカーブに沿った青単信心のようなデッキが先手なら、たとえブン回らなくても後手のRatは機能しにくい。Hydraは少なくともX=4でプレイしないとRapid Hybridizationされたトークンと相打ちになってしまい、青単信心が十分にプレッシャーをかけている状況なら4/4とのダメージレースには勝てる。
僕がPack RatやMistcutter Hydraに負けるリスクがあるのは承知しているが、あり得る全ての場面で勝とうとするのは間違いだ。目指すべきなのは勝率を最大化することで、勝ちにくい後手のゲームは全てのゲームのうちの一部でしかない。そんなゲームをいくつか勝つためにデッキを歪めてしまえば他のゲームで勝てなくなり、結局負けが増えてしまうだろう。
ここでDomesticationを考えてみよう。Desecration Demonを1体出されている状況には回答できないものの(2体いれば片方を奪ってもう一方をサクらせられる)、このカードは青単信心にとってパーフェクトなクリーチャー対策で、アグロ戦略の後押しもしてくれる。黒単信心は「折り返し点」となるまで盤面を構築し、アグロにギアチェンジすることを目指すデッキだ。Lifebane Zombieのような大したことのない生物を奪うだけで、このマッチアップのポイントであるボードに多大な影響を与えられる。小型生物を並べるアグロデッキに対しては、Domesticationによって、青単信心デッキ自身が「折り返し点」に到達しやすくなる。デッキの他の部分と調和した、能動的な役割もこなせる受動的な除去スペルなのだ。
過剰サイドインの誘惑を断ち切る良い方法だと僕が思っているのは、すぐにサイドボードを手に取り何をサイドインするか考える前に、どのカードをサイドアウトすべきかを最初に考えることだ。ちょっとした違いだが、メインから抜くカードよりも限定的な場面でのみ強力なカードの方が魅力的に見えてしまう楽観主義を避ける心理的な効果が得られる。
リミテッドでのサイドボーディング
有効活用されないことの多いリミテッドのサイドボードも同じ原則で運用する。
カードプールが狭いため状況は少し複雑になる。リミテッドでは速い、あるいは遅い戦略に合うカードが不足しがちなため、デッキはどうしてもミッドレンジになりがちだ。リミテッドでも、ちょっとした戦術的な調整も大胆な戦略変更もあり得るのだが、経験の浅いプレイヤーは見逃してしまうようだ。
構築と同じくリミテッドでも、慣れていないプレイヤーは特定のカードへの回答を過大評価してサイドインしてしまう。とてもよくあるのが、Disenchant系のカードや色対策のサイドインだ。黒に偏った相手のデッキに対してDark Betrayalが刺さりそう、というケースなら分かりやすい。ドラフトやシールドでのサイドボーディングではもっと微妙な調整として、生物のラインナップを相手の生物に合わせて変えるべきだ。
相手はWarpath Ghoulを何枚か使っていないだろうか?そうであればPillarfield Oxはかなり良いクリーチャーになる。逆の立場なら、2/4の群れを乗り越えるためにWarpath Ghoulはサイドアウトしよう。相手はついていくのが難しいほどアグロなマナカーブになっていないだろうか?そうであればBronze Sableをサイドインして速度を近づけよう。これらはゲームプランの大幅な変更ではないが、少しの調整だけで戦術的な立ち回りが可能になる。
言われてみれば明らかでも、普通は「悪い」とみなされているカードを無視してしまう罠には実に簡単に陥ってしまう。マジックでは常にそうだが、状況が全てだ。
このような微調整だけでなく、明らかに相手よりもデッキパワーが低い場合は劇的な変更が必要になる。
こちらが回答不能なボムを相手がいくつも使っているなら、普通にゲームをしてもうまくいかない。長引けば相手の必勝である以上、こちらはできるだけ素早くゲームを終わらせなければならない。Fugitive WizardsやCoral Merfolkをサイドインしてビートしよう。いずれにせようまいやり方とは言えないが、適切な戦略と正しいカードを選べば、ラストピックを活用して簡単にマッチアップを改善することもできる。
同様に、長引けばこちらが必勝であればDivinationは不要だ。ボムをキャストするまで膠着させるためのブロッカーを入れよう。
これらの判断の根本にあるのは、常に問い、再評価するということだ。4ターン目Desecration Demonに対するこちらのプランは?Supreme Verdictに対しては?Advent of the Wurmが来たら?Thoughtseize/Hero’s Downfall/Ajani, Mentor of Heroesが入ったデッキのAdventと、Soldier of the Pantheon/Fleecemane Lion/Selesnya Charmが入ったデッキのAdventでは違いはあるか?
サイドボードの全てのカードは、75枚全体のつながりの中で正当化されるべきだ。自分のデッキの基本的なゴールを理解すればサイドボーディングはより自由になり、相手のデッキのメジャーなリストからのちょっとした変更点や、まったく未知のマッチアップにも対応できるようになる。優れたプレイヤーが同じサイドボーディングをすることはめったにないというのを聞いたことがあると思う。サイドイン・アウトの判断をするときに考慮する要素が非常に多いのがその理由だ。いつでも通用するプランを作ろうとするのは、よく言っても短絡的だ。そうではなく、自分のデッキの本質を理解し、戦略によってサイドボーディングの判断をしていこう。直観を鍛えれば、この判断をいつも簡単に下せるようになることに気づくはずだ。
StarCityGamesより。
Why You Winという考え方。
これを間違えて何度負けたか分かりません・・・。
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Why You Win
CARSTEN KOTTER
2013/08/30
http://www.starcitygames.com/article/26809_Why-You-Win.html
今日はデッキ構築からゲーム中のプレイングまで幅広く応用できる、とても基本的な考え方について話そうと思う。僕はこの考え方のことを「なぜ勝てるのか」(Why You Win)と呼んでいる。
簡単に答えられる問いに見えるかもしれない――1ターン目デルバーがあるからさ!――だけどこの考え方を身につけておけば、よく知らないデッキを使っている(あるいは相手にしている)ときでも勝てるようになり、難しい局面で最善手を見つけるのに役立ち、より容易くデッキを変えたり効率良くチューニングできるようになる。つまり、知っておいて損はないってことさ。
もう少しはっきりさせておこう。今日話そうとしているのはある1ゲームに勝つためのテクニックのことじゃない。ヴェンディリオンをプレイする正しいタイミング、どのスペルをカウンターすべきか、Giant Growthのブラフの仕方、あるいはメインフェイズに動くべき状況についての話じゃない。
自分のデッキが機能するために必要な要素は何か、どのようなゲームなら勝てるのか(望むべきゲームとは)、そしてどのように負けるのか、そんな話をしようと思う。自分のデッキについて、そしていろいろな対戦相手のデッキについてこれらを考えておくことで、デッキ構築やプレイ中に正しい判断をする大きな助けになるだろう。
準備はいいかい?よし、はじめよう。
Why You Winのこころ
Why You Winは非常に基本的な考え方――Jon Finkelが雄弁に語っていた「何が重要か」を見極める方法の一つだ。かの記事"Who’s the beatdown"と同様、Why You Winはゲーム全体を照らす指針のもとに判断を下すための考え方だ。あの偉大な古典は「役割を見誤ること=敗北」だと教えてくれた。一方、Why You Winの背後にある思想はこれだ:
「強みを誤解すること=敗北」
これは何を言っているのだろう?ゲーム中に何か判断するというのは、先に進む道を一つ選ぶということだ。その道で自分のデッキの強みを発揮できない場合、じわじわと自滅することになってしまう。
一つ局面を見てみよう。たぶん読者の多くは近い経験をしたことがあると思う。
あなたは(昔ながらのZooのような)赤ベースのアグロデッキを使っていて1体のWild Nacatl(3/3)と1体のKird Ape(2/3)を出しており、手札は空。マーベリックを使う相手のライフは6で、直前にKnight of the Reliquary(5/5)を1体出してきたところだ。凶暴に2体でアタックしてナカティルと2ダメージを交換することもできるし、追加のクリーチャーを引いて盤面で圧倒するまでじっと待つこともできる。
どうすべきだろう?
このマッチアップの経験があれば答えは簡単だね:2体で殴り、FireblastかPrice of Progress、あるいは稲妻2枚トップでの勝ちを狙う。しかしどうしてこれが正しいのだろう?
よく考えてみると、相手にただ2ダメージを与えるだけのために、たくさんの道筋について思いを巡らせていることが分かる。
自分のデッキの動きを知っていることがカギだ。ここで使っているような高速Zooは盤面構築型のマーベリックのようなデッキがゲーム終盤に繰り出してくるクリーチャーには勝てないだろう。生物によるラッシュで十分なダメージを稼ぎ、大きなクリーチャーに制圧される前に火力でゲームを終わらせるのがZooの勝ち筋になる。これこそ「Zooはなぜ勝てるのか」であり、「あなたは何を目指してプレイすべきか」なんだ!
もう少し複雑な例として、僕の愛するPIF Tendrilsを取り上げよう(まさにPast in Flames Tendrilsという動きをするので今後はこう呼ぼうと思ってる)。
Ad Nauseam Tendrils
Carsten Kotter
0th Place at Test deck on 7/28/2013
lands (15)
1 《島/Island》
1 《沼/Swamp》
1 《Badlands》
4 《汚染された三角州/Polluted Delta》
4 《沸騰する小湖/Scalding Tarn》
1 《Tropical Island》
2 《Underground Sea》
1 《Volcanic Island》
spells (45)
4 《ライオンの瞳のダイアモンド/Lion’s Eye Diamond》
3 《水蓮の花びら/Lotus Petal》
2 《師範の占い独楽/Sensei’s Divining Top》
1 《むかつき/Ad Nauseam》
4 《渦まく知識/Brainstorm》
4 《陰謀団の儀式/Cabal Ritual》
4 《暗黒の儀式/Dark Ritual》
2 《リム=ドゥールの櫃/Lim-Dul’s Vault》
2 《陰謀団式療法/Cabal Therapy》
4 《強迫/Duress》
1 《巣穴からの総出/Empty the Warrens》
4 《ギタクシア派の調査/Gitaxian Probe》
4 《冥府の教示者/Infernal Tutor》
1 《炎の中の過去/Past in Flames》
4 《思案/Ponder》
1 《苦悶の触手/Tendrils of Agony》
sideboard
1 《水蓮の花びら/Lotus Petal》
3 《ザンティッドの大群/Xantid Swarm》
3 《突然の衰微/Abrupt Decay》
3 《蒸気の連鎖/Chain of Vapor》
1 《陰謀団式療法/Cabal Therapy》
たった6枚しか妨害手段を持たないこのデッキが約2倍の妨害インスタントを積んだテンポデッキとどうやって渡り合うのか、不思議じゃないかな?
このデッキは複数のスペルを組み合わせて解決させなきゃならず、そのうち1枚を止められたら動かない。それがどうしてカウンターと手札破壊を両方積んだEsper Deathbladeのようなデッキに対して有利になるんだろうか?
このデッキがどうやって勝つかを見てみよう。簡単に分かる答えは「大量の儀式とチューターのキャストによって」だね。だけどこの回答は物事を深く見ていない。
このデッキが勝てる本当の理由は「カードの質のアドバンテージを得られるから」だ。
ライブラリ操作とキャントリップを大量に搭載し、さらに無視して良いカードが多いため、ゲームを進めるうちに自分の手札が相手よりも良いものになるのはほとんど必然と言っていい。こちらの手札が相手の手札を凌駕し、相手の対抗策全てを打ち破れる(そしてそのまま倒せる)状況、これこそが真に狙うべき地点だ。
逆のケースも見てみよう。Why You Winを誤解したときどのようにして負けるのか。取り上げるのはDeath and Taxesだ:
Death and Taxes
Micah Greenbaum
5th Place at StarCityGames.com Legacy Open on 8/25/2013
lands (23)
9 《平地/Plains》
1 《魂の洞窟/Cavern of Souls》
1 《地平線の梢/Horizon Canopy》
4 《リシャーダの港/Rishadan Port》
4 《不毛の大地/Wasteland》
1 《永岩城/Eiganjo Castle》
3 《Karakas》
creatures (27)
4 《ファイレクシアの破棄者/Phyrexian Revoker》
2 《エイヴンの思考検閲者/Aven Mindcensor》
1 《悪鬼の狩人/Fiend Hunter》
3 《ちらつき鬼火/Flickerwisp》
3 《ミラディンの十字軍/Mirran Crusader》
4 《ルーンの母/Mother of Runes》
4 《石鍛冶の神秘家/Stoneforge Mystic》
2 《コロンドールのマンガラ/Mangara of Corondor》
4 《スレイベンの守護者、サリア/Thalia, Guardian of Thraben》
spells (10)
4 《霊気の薬瓶/AEther Vial》
1 《殴打頭蓋/Batterskull》
4 《剣を鍬に/Swords to Plowshares》
1 《梅澤の十手/Umezawa’s Jitte》
sideboard
1 《万力鎖/Manriki-Gusari》
1 《大祖始の遺産/Relic of Progenitus》
2 《エーテル宣誓会の法学者/Ethersworn Canonist》
1 《レオニンの遺物囲い/Leonin Relic-Warder》
2 《萎れ葉のしもべ/Wilt-Leaf Liege》
1 《絶対の法/Absolute Law》
2 《忘却の輪/Oblivion Ring》
2 《安らかなる眠り/Rest in Peace》
2 《大変動/Cataclysm》
1 《太陽の槍/Sunlance》
このデッキは第一印象では白ウィニーに見える。しかしこれを小型クリーチャーによるビートダウンデッキとしてプレイしてしまうと――マナカーブとダメージ効率を優先してしまうと――ほとんどのマッチで悲惨なプレイをすることになってしまうだろう。このデッキが勝てる理由はダメージ量ではない。
デスタクは白ウィニーではなくプリズンデッキだと見るべきだ。このデッキはマナ拘束とうっとうしいヘイトベアを大量搭載して相手のゲームプランを機能不全にさせ、ほとんど何もできなくなるまで選択肢を狭めた上で小さな生物でチクチクと相手を倒す。つまり、デスタクのWhy You Winは「相手の有効な手をなくせるから」であり、相手の手を制限するプレイを常に最優先して選ぶべきだ。
「これがこのデッキのプランだよ」とWhy You Winをシンプルに言えないこともある。相手のデッキによって変わるケースも多い。ゴブリンを例に挙げよう。
じっくり戦うミッドレンジデッキが相手の場合、ふつうGoblin RingleaderによるカードアドバンテージがWhy You Winになる。カウンターできない2/2速攻生物付きのFact or Fictionを何度もプレイすることで、堅実に進める相手に対して1ゲームを通じて3枚、5枚、あるいはそれ以上の枚数差をつけられる。レガシーのコントロールデッキすら上回るドロー能力は幅広いマッチアップでゴブリンの強みになっている。そのため、通常はじっくりと盤面を築き、マナを伸ばし、時が来たら相手を圧倒するという方針を採る。
しかし、このプランでは駄目なマッチアップもある。例えば上に挙げたPIF Tendrilsを相手にしている場合だ。4マナに達してリングリーダーをキャストする頃にはテンドリルで死んでしまう。こういうゲームではカードドローは明らかにWhy You Winではない。
ストームデッキを倒すなら、こちらが死ぬより前に相手を殺さなきゃならない――完全にレースゲームになる。Why You Winはダメージ量だ。このマッチアップではゴブリンデッキのアグロコンボの側面に目を向けるべきで、ラッキーを引いてパイルドライバーを展開し、4ターンキルすることを狙う。合間に不毛やリシャポで相手を遅らせるのも正解だが、最速キルの手を緩めて別の何かをプレイすることはほとんど常に裏目に出るだろう。ストームに挑むなら、相手が勝つ前にこちらが確実に勝ち切る必要がある。心構え、マリガン、キャストする/場に出すカードは全て可能な限り早い勝利に向かうものでなければならない。
自分のメインプランは変えないのに、相手のプラン(Why They Win)に合わせる必要のあるデッキもある。奇跡を使っている場面を見てみよう:
U/W Miracles
Joe Lossett
1st Place at Miscellaneous on 8/4/2013
lands (23)
4 《島/Island》
2 《平地/Plains》
1 《乾燥台地/Arid Mesa》
4 《溢れかえる岸辺/Flooded Strand》
2 《秘教の門/Mystic Gate》
3 《汚染された三角州/Polluted Delta》
1 《沸騰する小湖/Scalding Tarn》
2 《Tundra》
2 《Volcanic Island》
2 《Karakas》
creatures (4)
3 《ヴェンディリオン三人衆/Vendilion Clique》
1 《造物の学者、ヴェンセール/Venser, Shaper Savant》
planeswalkers (3)
3 《精神を刻む者、ジェイス/Jace, the Mind Sculptor》
spells (30)
4 《師範の占い独楽/Sensei’s Divining Top》
4 《相殺/Counterbalance》
1 《安らかなる眠り/Rest in Peace》
4 《渦まく知識/Brainstorm》
1 《対抗呪文/Counterspell》
1 《狼狽の嵐/Flusterstorm》
3 《Force of Will》
1 《誤った指図/Misdirection》
2 《呪文貫き/Spell Pierce》
3 《剣を鍬に/Swords to Plowshares》
2 《天使への願い/Entreat the Angels》
1 《至高の評決/Supreme Verdict》
3 《終末/Terminus》
sideboard
2 《仕組まれた爆薬/Engineered Explosives》
1 《真髄の針/Pithing Needle》
1 《硫黄の精霊/Sulfur Elemental》
2 《安らかなる眠り/Rest in Peace》
1 《狼狽の嵐/Flusterstorm》
2 《誤った指図/Misdirection》
1 《紅蓮破/Pyroblast》
2 《赤霊破/Red Elemental Blast》
1 《摩耗/Wear》
1 《造物の学者、ヴェンセール/Venser, Shaper Savant》
1 《天使への願い/Entreat the Angels》
ゲームプランは常に一つだ:生き延びるためにリソースを使い、土地を並べ、相手のやりたいことを全て阻止する。しかしWhy You Winは向かい合っている相手次第で大きく変わる。ライブラリ操作と妨害スペルを正しく使うことができるのは自分が何をすべきか理解している場合のみだ。
典型的なミッドレンジデッキ――例えばマーベリック――が相手なら、白1マナでボード全体に回答し(Terminusのことだよ)、そこから大量の天使トークンやジェイスというボムで速やかにゲームを終わらせられること、これがWhy You Winになる。したがって、このマッチアップで目指すべきなのはTerminusとEntreatをライブラリトップに用意して守ることだ。これで最適なタイミングで相手を吹き飛ばすことができる。相手は全力でこれらのカードのキャストを阻止しにくる。
奇跡の相手がコンボになるとWhy You Winはガラリと変わる。ボードを綺麗にしてボムを投下することではなく、相手がまったく動けない状態を目指すことになる。相殺独楽によるロックの完成や妨害手段満載の手札を揃えることが焦点となり、いったんそうなってしまえば相手は死んだも同然、脅威を解決させてゲームを終わらせるだけだ。
Why You Winを使う
記事の冒頭で言ったように、Why You Winを知ることはデッキ構築からプレイ中の決断までトーナメントのほぼ全ての場面で役に立つ。実際どう役に立つかを場面別に説明していこう。
デッキ構築
Why You Winを理解すればデッキ構築の多くの落とし穴を避けられる。Why You Winを考えることで不要なカードが見えるようになり、デッキの強みが最大限に活きる状況を作り出す構築に集中できる。
一つの例はAdam Prosakのキャントリップ16枚型ANTだ。このデッキは相手よりも強い手札を揃えることで勝つという点を彼は見極め、デッキの手札調整能力を最大化することに全力を傾けた。初手の時点で既に相手よりも良いハンドになる(コンボ対策が入っていない相手との)マッチアップでの安定性に問題があったけど、持久戦をしたいデッキにとってこれほど相手にしたくないデッキはないだろう。ターンエンドするたびにキャントリップをキャストされ、Adamの手札の質はあっという間にこちらを上回ってしまう。
同様に、RUG Delverは相手の序盤の動きを阻害することで勝つという点を理解すれば、最近どうして(ほぼ?)みんながStifleを抜かなくなったのか腑に落ちるはずだ。相手のセットランドを妨害できなければRUGの手札は速やかに死に札となり、勝利するまでクロックを守り切ることが不可能になる。RUG Delverは相手の足回りを奪うから勝つ。クリーチャーが強力だから勝つわけじゃない。こういう知恵がデッキリストに反映されるのは当然だよね。
サイドボーディング
サイドボードの構築や実際のサイドボーディングでもWhy You Winに気をつけよう。なんとエルフに対してANTがキャントリップをサイドのボブと交換しているのを見たことがある。手札破壊がセラピー2枚しかない相手にスニークショーが白力線を入れるというのもあった。これらのカードによって1回勝てたとしても、その間に3回かそれ以上負けることになる。これらはゲームプランを推し進めるスペルではないからだ。そのために抜いたカードとは違ってね。
ANTやスニークショーは仕掛けるために必要なコンボパーツを安定して見つけられるから勝つ。メインからどの1枚を抜いてもデッキは弱くなるんだ(正しくメインが組まれていれば)。カードをサイドと交換した方が良いのは、対処できない脅威(ガドックや相殺など)があり、勝つまでの道のりに「コンボ対策を破る」が追加される場合だ。限定的な場面で役に立つカードを即サイドインしてメインのカードを抜いてしまうのは間違っている。
サイドボーディングとサイドボード構築では、目の前に向かい合う対戦相手に対してなぜ勝てるのかを明らかにしなきゃならない。それが分かったら、勝利へのプランに合わないカードを抜き、特にそのマッチアップでのプランに合ったカードを入れよう。
そう、言うは易しだね。だけどこれは覚えておいてほしい。あるカードをサイドインすべきかどうか分からないとき、勝利までのプランをどうサポートしてくれるかはっきり見えないなら入れない方がいい。
マリガン判断
相手が何を使っているか分かっているなら、その相手に対するWhy You Winに気を配ろう。分かりやすいこともあるね――ベルチャー相手の後攻なら、Force of Willをキャストできるから勝つ。ならばウィルを求めてマリガンだ。
奇跡を使っている場合、たいていは独楽がデッキを超強化するから勝つ。だから土地と独楽という初手はほとんどの場合キープだ。(ベルチャーみたいな)特別な場合を除いてね。
勝つために特殊なゲームプランが必要になることもある。例えばEsper Deathbladeの初手が土地3枚、手札破壊2枚、死儀礼1枚、ジェイス1枚だったとしよう。通常これは素晴らしい手札だ――相手の手札を攻めて3ターン目ジェイスで勝ち――しかし相手がマーフォークだとジェイスへの妨害を引かれる可能性が高く、Deathbladeが勝つのは難しくなる。この場合は石鍛冶を解決させてバターを出すか大量のソープロと瞬唱のキャストによって勝つことになる。ハンデス死儀礼ジェイスという手札はこのゲームプランとは程遠く、したがってマリガンすべきだ。
ゲーム中の判断
どんなデッキを使っていたとしてもゲーム中の判断はWhy You Winの影響を受けるはずだ。あらゆるデッキが少なくとも1つは勝利への道筋を持っている。それに従うのが重要だ。ベルチャーはスピードによって勝つ。だからオールインすべきかどうかという選択の余地はない。スニークショーは巨大生物を可能な限り早く叩きつけることで勝つ。だから全てのアクションはその瞬間に向かっていくべきだ。
多くのデッキ(「一直線」ではないデッキ)には進める方向が複数ある。そういうデッキにとって各マッチアップでWhy You Winを考えることは特に重要だ。その考え次第でゲーム全体の流れが決まる。
例えばRUG Delverを使っていて初手にStifleとデルバーがあるとしよう。すぐにデルバーを出すべきだろうか、それともフェッチを止めるために土地を立てておくべきだろうか?
マッチアップによって答えは変わる。相手がZooの場合は純粋なデルバービートで勝利できる可能性は極めて低い。Zooが動き出せば虫を殺すかダメージレースを仕掛けてくることがほとんどだろう。一方でZooは土地がとても少なく、さらにフェッチを多く積んでいる。通常、RUG側の最善手はZooをマナスクリューさせて時間を稼ぎ、カウンターによる防御付きのデルバーを展開することだ。
一方、相手がハイタイドの場合は土地を止めることが勝利にまったく結びつかない。ハイタイドには基本土地とフェッチがたくさん入っていて、大量のキャントリップで追加の土地を探すのも容易だ。ハイタイドに対しては、ソフトカウンターをケアできないほどこちらのクロックのプレッシャーが大きいから勝つんだ。そのため1ターン目にデルバーを展開してStifleはその後のフェッチを止めるために使うのが正しいプレイになる。
もう勝てたかな?
まとめると、Why You Winは自分のデッキにとって正しい土俵を選び、こちらの強みと相手の弱みが出る状況を作るための考え方だ。
盤面を支配できるから、あるいは妨害パーマネントの組み合わせで相手をロックできるから勝つデッキがある。相手を押しつぶすほどのカードアドバンテージで勝つデッキもある。相手のボードでは何もできないように妨害して合間に出した生物で勝つデッキもあるし、相手よりも良い手札を揃えることで勝つデッキもある。
自分のデッキがなぜ勝てるのかを理解することはプレイングと構築を最適化するための文字通り足場になる。一般的にも、目の前のマッチアップにおいても、常に自分のプランが何なのかを把握しよう。見極めたゴールに向かう判断をしていこう。
今日はこの辺で。すごく基本的な話だったけど楽しんでもらえたら嬉しいよ――ご意見があればどうぞコメントを。
また次回。Win your way!
Carsten Kotter
Why You Winという考え方。
これを間違えて何度負けたか分かりません・・・。
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Why You Win
CARSTEN KOTTER
2013/08/30
http://www.starcitygames.com/article/26809_Why-You-Win.html
今日はデッキ構築からゲーム中のプレイングまで幅広く応用できる、とても基本的な考え方について話そうと思う。僕はこの考え方のことを「なぜ勝てるのか」(Why You Win)と呼んでいる。
簡単に答えられる問いに見えるかもしれない――1ターン目デルバーがあるからさ!――だけどこの考え方を身につけておけば、よく知らないデッキを使っている(あるいは相手にしている)ときでも勝てるようになり、難しい局面で最善手を見つけるのに役立ち、より容易くデッキを変えたり効率良くチューニングできるようになる。つまり、知っておいて損はないってことさ。
もう少しはっきりさせておこう。今日話そうとしているのはある1ゲームに勝つためのテクニックのことじゃない。ヴェンディリオンをプレイする正しいタイミング、どのスペルをカウンターすべきか、Giant Growthのブラフの仕方、あるいはメインフェイズに動くべき状況についての話じゃない。
自分のデッキが機能するために必要な要素は何か、どのようなゲームなら勝てるのか(望むべきゲームとは)、そしてどのように負けるのか、そんな話をしようと思う。自分のデッキについて、そしていろいろな対戦相手のデッキについてこれらを考えておくことで、デッキ構築やプレイ中に正しい判断をする大きな助けになるだろう。
準備はいいかい?よし、はじめよう。
Why You Winのこころ
Why You Winは非常に基本的な考え方――Jon Finkelが雄弁に語っていた「何が重要か」を見極める方法の一つだ。かの記事"Who’s the beatdown"と同様、Why You Winはゲーム全体を照らす指針のもとに判断を下すための考え方だ。あの偉大な古典は「役割を見誤ること=敗北」だと教えてくれた。一方、Why You Winの背後にある思想はこれだ:
「強みを誤解すること=敗北」
これは何を言っているのだろう?ゲーム中に何か判断するというのは、先に進む道を一つ選ぶということだ。その道で自分のデッキの強みを発揮できない場合、じわじわと自滅することになってしまう。
一つ局面を見てみよう。たぶん読者の多くは近い経験をしたことがあると思う。
あなたは(昔ながらのZooのような)赤ベースのアグロデッキを使っていて1体のWild Nacatl(3/3)と1体のKird Ape(2/3)を出しており、手札は空。マーベリックを使う相手のライフは6で、直前にKnight of the Reliquary(5/5)を1体出してきたところだ。凶暴に2体でアタックしてナカティルと2ダメージを交換することもできるし、追加のクリーチャーを引いて盤面で圧倒するまでじっと待つこともできる。
どうすべきだろう?
このマッチアップの経験があれば答えは簡単だね:2体で殴り、FireblastかPrice of Progress、あるいは稲妻2枚トップでの勝ちを狙う。しかしどうしてこれが正しいのだろう?
よく考えてみると、相手にただ2ダメージを与えるだけのために、たくさんの道筋について思いを巡らせていることが分かる。
自分のデッキの動きを知っていることがカギだ。ここで使っているような高速Zooは盤面構築型のマーベリックのようなデッキがゲーム終盤に繰り出してくるクリーチャーには勝てないだろう。生物によるラッシュで十分なダメージを稼ぎ、大きなクリーチャーに制圧される前に火力でゲームを終わらせるのがZooの勝ち筋になる。これこそ「Zooはなぜ勝てるのか」であり、「あなたは何を目指してプレイすべきか」なんだ!
もう少し複雑な例として、僕の愛するPIF Tendrilsを取り上げよう(まさにPast in Flames Tendrilsという動きをするので今後はこう呼ぼうと思ってる)。
Ad Nauseam Tendrils
Carsten Kotter
0th Place at Test deck on 7/28/2013
lands (15)
1 《島/Island》
1 《沼/Swamp》
1 《Badlands》
4 《汚染された三角州/Polluted Delta》
4 《沸騰する小湖/Scalding Tarn》
1 《Tropical Island》
2 《Underground Sea》
1 《Volcanic Island》
spells (45)
4 《ライオンの瞳のダイアモンド/Lion’s Eye Diamond》
3 《水蓮の花びら/Lotus Petal》
2 《師範の占い独楽/Sensei’s Divining Top》
1 《むかつき/Ad Nauseam》
4 《渦まく知識/Brainstorm》
4 《陰謀団の儀式/Cabal Ritual》
4 《暗黒の儀式/Dark Ritual》
2 《リム=ドゥールの櫃/Lim-Dul’s Vault》
2 《陰謀団式療法/Cabal Therapy》
4 《強迫/Duress》
1 《巣穴からの総出/Empty the Warrens》
4 《ギタクシア派の調査/Gitaxian Probe》
4 《冥府の教示者/Infernal Tutor》
1 《炎の中の過去/Past in Flames》
4 《思案/Ponder》
1 《苦悶の触手/Tendrils of Agony》
sideboard
1 《水蓮の花びら/Lotus Petal》
3 《ザンティッドの大群/Xantid Swarm》
3 《突然の衰微/Abrupt Decay》
3 《蒸気の連鎖/Chain of Vapor》
1 《陰謀団式療法/Cabal Therapy》
たった6枚しか妨害手段を持たないこのデッキが約2倍の妨害インスタントを積んだテンポデッキとどうやって渡り合うのか、不思議じゃないかな?
このデッキは複数のスペルを組み合わせて解決させなきゃならず、そのうち1枚を止められたら動かない。それがどうしてカウンターと手札破壊を両方積んだEsper Deathbladeのようなデッキに対して有利になるんだろうか?
このデッキがどうやって勝つかを見てみよう。簡単に分かる答えは「大量の儀式とチューターのキャストによって」だね。だけどこの回答は物事を深く見ていない。
このデッキが勝てる本当の理由は「カードの質のアドバンテージを得られるから」だ。
ライブラリ操作とキャントリップを大量に搭載し、さらに無視して良いカードが多いため、ゲームを進めるうちに自分の手札が相手よりも良いものになるのはほとんど必然と言っていい。こちらの手札が相手の手札を凌駕し、相手の対抗策全てを打ち破れる(そしてそのまま倒せる)状況、これこそが真に狙うべき地点だ。
逆のケースも見てみよう。Why You Winを誤解したときどのようにして負けるのか。取り上げるのはDeath and Taxesだ:
Death and Taxes
Micah Greenbaum
5th Place at StarCityGames.com Legacy Open on 8/25/2013
lands (23)
9 《平地/Plains》
1 《魂の洞窟/Cavern of Souls》
1 《地平線の梢/Horizon Canopy》
4 《リシャーダの港/Rishadan Port》
4 《不毛の大地/Wasteland》
1 《永岩城/Eiganjo Castle》
3 《Karakas》
creatures (27)
4 《ファイレクシアの破棄者/Phyrexian Revoker》
2 《エイヴンの思考検閲者/Aven Mindcensor》
1 《悪鬼の狩人/Fiend Hunter》
3 《ちらつき鬼火/Flickerwisp》
3 《ミラディンの十字軍/Mirran Crusader》
4 《ルーンの母/Mother of Runes》
4 《石鍛冶の神秘家/Stoneforge Mystic》
2 《コロンドールのマンガラ/Mangara of Corondor》
4 《スレイベンの守護者、サリア/Thalia, Guardian of Thraben》
spells (10)
4 《霊気の薬瓶/AEther Vial》
1 《殴打頭蓋/Batterskull》
4 《剣を鍬に/Swords to Plowshares》
1 《梅澤の十手/Umezawa’s Jitte》
sideboard
1 《万力鎖/Manriki-Gusari》
1 《大祖始の遺産/Relic of Progenitus》
2 《エーテル宣誓会の法学者/Ethersworn Canonist》
1 《レオニンの遺物囲い/Leonin Relic-Warder》
2 《萎れ葉のしもべ/Wilt-Leaf Liege》
1 《絶対の法/Absolute Law》
2 《忘却の輪/Oblivion Ring》
2 《安らかなる眠り/Rest in Peace》
2 《大変動/Cataclysm》
1 《太陽の槍/Sunlance》
このデッキは第一印象では白ウィニーに見える。しかしこれを小型クリーチャーによるビートダウンデッキとしてプレイしてしまうと――マナカーブとダメージ効率を優先してしまうと――ほとんどのマッチで悲惨なプレイをすることになってしまうだろう。このデッキが勝てる理由はダメージ量ではない。
デスタクは白ウィニーではなくプリズンデッキだと見るべきだ。このデッキはマナ拘束とうっとうしいヘイトベアを大量搭載して相手のゲームプランを機能不全にさせ、ほとんど何もできなくなるまで選択肢を狭めた上で小さな生物でチクチクと相手を倒す。つまり、デスタクのWhy You Winは「相手の有効な手をなくせるから」であり、相手の手を制限するプレイを常に最優先して選ぶべきだ。
「これがこのデッキのプランだよ」とWhy You Winをシンプルに言えないこともある。相手のデッキによって変わるケースも多い。ゴブリンを例に挙げよう。
じっくり戦うミッドレンジデッキが相手の場合、ふつうGoblin RingleaderによるカードアドバンテージがWhy You Winになる。カウンターできない2/2速攻生物付きのFact or Fictionを何度もプレイすることで、堅実に進める相手に対して1ゲームを通じて3枚、5枚、あるいはそれ以上の枚数差をつけられる。レガシーのコントロールデッキすら上回るドロー能力は幅広いマッチアップでゴブリンの強みになっている。そのため、通常はじっくりと盤面を築き、マナを伸ばし、時が来たら相手を圧倒するという方針を採る。
しかし、このプランでは駄目なマッチアップもある。例えば上に挙げたPIF Tendrilsを相手にしている場合だ。4マナに達してリングリーダーをキャストする頃にはテンドリルで死んでしまう。こういうゲームではカードドローは明らかにWhy You Winではない。
ストームデッキを倒すなら、こちらが死ぬより前に相手を殺さなきゃならない――完全にレースゲームになる。Why You Winはダメージ量だ。このマッチアップではゴブリンデッキのアグロコンボの側面に目を向けるべきで、ラッキーを引いてパイルドライバーを展開し、4ターンキルすることを狙う。合間に不毛やリシャポで相手を遅らせるのも正解だが、最速キルの手を緩めて別の何かをプレイすることはほとんど常に裏目に出るだろう。ストームに挑むなら、相手が勝つ前にこちらが確実に勝ち切る必要がある。心構え、マリガン、キャストする/場に出すカードは全て可能な限り早い勝利に向かうものでなければならない。
自分のメインプランは変えないのに、相手のプラン(Why They Win)に合わせる必要のあるデッキもある。奇跡を使っている場面を見てみよう:
U/W Miracles
Joe Lossett
1st Place at Miscellaneous on 8/4/2013
lands (23)
4 《島/Island》
2 《平地/Plains》
1 《乾燥台地/Arid Mesa》
4 《溢れかえる岸辺/Flooded Strand》
2 《秘教の門/Mystic Gate》
3 《汚染された三角州/Polluted Delta》
1 《沸騰する小湖/Scalding Tarn》
2 《Tundra》
2 《Volcanic Island》
2 《Karakas》
creatures (4)
3 《ヴェンディリオン三人衆/Vendilion Clique》
1 《造物の学者、ヴェンセール/Venser, Shaper Savant》
planeswalkers (3)
3 《精神を刻む者、ジェイス/Jace, the Mind Sculptor》
spells (30)
4 《師範の占い独楽/Sensei’s Divining Top》
4 《相殺/Counterbalance》
1 《安らかなる眠り/Rest in Peace》
4 《渦まく知識/Brainstorm》
1 《対抗呪文/Counterspell》
1 《狼狽の嵐/Flusterstorm》
3 《Force of Will》
1 《誤った指図/Misdirection》
2 《呪文貫き/Spell Pierce》
3 《剣を鍬に/Swords to Plowshares》
2 《天使への願い/Entreat the Angels》
1 《至高の評決/Supreme Verdict》
3 《終末/Terminus》
sideboard
2 《仕組まれた爆薬/Engineered Explosives》
1 《真髄の針/Pithing Needle》
1 《硫黄の精霊/Sulfur Elemental》
2 《安らかなる眠り/Rest in Peace》
1 《狼狽の嵐/Flusterstorm》
2 《誤った指図/Misdirection》
1 《紅蓮破/Pyroblast》
2 《赤霊破/Red Elemental Blast》
1 《摩耗/Wear》
1 《造物の学者、ヴェンセール/Venser, Shaper Savant》
1 《天使への願い/Entreat the Angels》
ゲームプランは常に一つだ:生き延びるためにリソースを使い、土地を並べ、相手のやりたいことを全て阻止する。しかしWhy You Winは向かい合っている相手次第で大きく変わる。ライブラリ操作と妨害スペルを正しく使うことができるのは自分が何をすべきか理解している場合のみだ。
典型的なミッドレンジデッキ――例えばマーベリック――が相手なら、白1マナでボード全体に回答し(Terminusのことだよ)、そこから大量の天使トークンやジェイスというボムで速やかにゲームを終わらせられること、これがWhy You Winになる。したがって、このマッチアップで目指すべきなのはTerminusとEntreatをライブラリトップに用意して守ることだ。これで最適なタイミングで相手を吹き飛ばすことができる。相手は全力でこれらのカードのキャストを阻止しにくる。
奇跡の相手がコンボになるとWhy You Winはガラリと変わる。ボードを綺麗にしてボムを投下することではなく、相手がまったく動けない状態を目指すことになる。相殺独楽によるロックの完成や妨害手段満載の手札を揃えることが焦点となり、いったんそうなってしまえば相手は死んだも同然、脅威を解決させてゲームを終わらせるだけだ。
Why You Winを使う
記事の冒頭で言ったように、Why You Winを知ることはデッキ構築からプレイ中の決断までトーナメントのほぼ全ての場面で役に立つ。実際どう役に立つかを場面別に説明していこう。
デッキ構築
Why You Winを理解すればデッキ構築の多くの落とし穴を避けられる。Why You Winを考えることで不要なカードが見えるようになり、デッキの強みが最大限に活きる状況を作り出す構築に集中できる。
一つの例はAdam Prosakのキャントリップ16枚型ANTだ。このデッキは相手よりも強い手札を揃えることで勝つという点を彼は見極め、デッキの手札調整能力を最大化することに全力を傾けた。初手の時点で既に相手よりも良いハンドになる(コンボ対策が入っていない相手との)マッチアップでの安定性に問題があったけど、持久戦をしたいデッキにとってこれほど相手にしたくないデッキはないだろう。ターンエンドするたびにキャントリップをキャストされ、Adamの手札の質はあっという間にこちらを上回ってしまう。
同様に、RUG Delverは相手の序盤の動きを阻害することで勝つという点を理解すれば、最近どうして(ほぼ?)みんながStifleを抜かなくなったのか腑に落ちるはずだ。相手のセットランドを妨害できなければRUGの手札は速やかに死に札となり、勝利するまでクロックを守り切ることが不可能になる。RUG Delverは相手の足回りを奪うから勝つ。クリーチャーが強力だから勝つわけじゃない。こういう知恵がデッキリストに反映されるのは当然だよね。
サイドボーディング
サイドボードの構築や実際のサイドボーディングでもWhy You Winに気をつけよう。なんとエルフに対してANTがキャントリップをサイドのボブと交換しているのを見たことがある。手札破壊がセラピー2枚しかない相手にスニークショーが白力線を入れるというのもあった。これらのカードによって1回勝てたとしても、その間に3回かそれ以上負けることになる。これらはゲームプランを推し進めるスペルではないからだ。そのために抜いたカードとは違ってね。
ANTやスニークショーは仕掛けるために必要なコンボパーツを安定して見つけられるから勝つ。メインからどの1枚を抜いてもデッキは弱くなるんだ(正しくメインが組まれていれば)。カードをサイドと交換した方が良いのは、対処できない脅威(ガドックや相殺など)があり、勝つまでの道のりに「コンボ対策を破る」が追加される場合だ。限定的な場面で役に立つカードを即サイドインしてメインのカードを抜いてしまうのは間違っている。
サイドボーディングとサイドボード構築では、目の前に向かい合う対戦相手に対してなぜ勝てるのかを明らかにしなきゃならない。それが分かったら、勝利へのプランに合わないカードを抜き、特にそのマッチアップでのプランに合ったカードを入れよう。
そう、言うは易しだね。だけどこれは覚えておいてほしい。あるカードをサイドインすべきかどうか分からないとき、勝利までのプランをどうサポートしてくれるかはっきり見えないなら入れない方がいい。
マリガン判断
相手が何を使っているか分かっているなら、その相手に対するWhy You Winに気を配ろう。分かりやすいこともあるね――ベルチャー相手の後攻なら、Force of Willをキャストできるから勝つ。ならばウィルを求めてマリガンだ。
奇跡を使っている場合、たいていは独楽がデッキを超強化するから勝つ。だから土地と独楽という初手はほとんどの場合キープだ。(ベルチャーみたいな)特別な場合を除いてね。
勝つために特殊なゲームプランが必要になることもある。例えばEsper Deathbladeの初手が土地3枚、手札破壊2枚、死儀礼1枚、ジェイス1枚だったとしよう。通常これは素晴らしい手札だ――相手の手札を攻めて3ターン目ジェイスで勝ち――しかし相手がマーフォークだとジェイスへの妨害を引かれる可能性が高く、Deathbladeが勝つのは難しくなる。この場合は石鍛冶を解決させてバターを出すか大量のソープロと瞬唱のキャストによって勝つことになる。ハンデス死儀礼ジェイスという手札はこのゲームプランとは程遠く、したがってマリガンすべきだ。
ゲーム中の判断
どんなデッキを使っていたとしてもゲーム中の判断はWhy You Winの影響を受けるはずだ。あらゆるデッキが少なくとも1つは勝利への道筋を持っている。それに従うのが重要だ。ベルチャーはスピードによって勝つ。だからオールインすべきかどうかという選択の余地はない。スニークショーは巨大生物を可能な限り早く叩きつけることで勝つ。だから全てのアクションはその瞬間に向かっていくべきだ。
多くのデッキ(「一直線」ではないデッキ)には進める方向が複数ある。そういうデッキにとって各マッチアップでWhy You Winを考えることは特に重要だ。その考え次第でゲーム全体の流れが決まる。
例えばRUG Delverを使っていて初手にStifleとデルバーがあるとしよう。すぐにデルバーを出すべきだろうか、それともフェッチを止めるために土地を立てておくべきだろうか?
マッチアップによって答えは変わる。相手がZooの場合は純粋なデルバービートで勝利できる可能性は極めて低い。Zooが動き出せば虫を殺すかダメージレースを仕掛けてくることがほとんどだろう。一方でZooは土地がとても少なく、さらにフェッチを多く積んでいる。通常、RUG側の最善手はZooをマナスクリューさせて時間を稼ぎ、カウンターによる防御付きのデルバーを展開することだ。
一方、相手がハイタイドの場合は土地を止めることが勝利にまったく結びつかない。ハイタイドには基本土地とフェッチがたくさん入っていて、大量のキャントリップで追加の土地を探すのも容易だ。ハイタイドに対しては、ソフトカウンターをケアできないほどこちらのクロックのプレッシャーが大きいから勝つんだ。そのため1ターン目にデルバーを展開してStifleはその後のフェッチを止めるために使うのが正しいプレイになる。
もう勝てたかな?
まとめると、Why You Winは自分のデッキにとって正しい土俵を選び、こちらの強みと相手の弱みが出る状況を作るための考え方だ。
盤面を支配できるから、あるいは妨害パーマネントの組み合わせで相手をロックできるから勝つデッキがある。相手を押しつぶすほどのカードアドバンテージで勝つデッキもある。相手のボードでは何もできないように妨害して合間に出した生物で勝つデッキもあるし、相手よりも良い手札を揃えることで勝つデッキもある。
自分のデッキがなぜ勝てるのかを理解することはプレイングと構築を最適化するための文字通り足場になる。一般的にも、目の前のマッチアップにおいても、常に自分のプランが何なのかを把握しよう。見極めたゴールに向かう判断をしていこう。
今日はこの辺で。すごく基本的な話だったけど楽しんでもらえたら嬉しいよ――ご意見があればどうぞコメントを。
また次回。Win your way!
Carsten Kotter
【翻訳】Thoughtseize You - Reid Duke
2013年12月18日 翻訳(プレイング) コメント (10)StarCityGamesより。
思考囲い入門。
初めてデュレスを見たときのワクワクは今も忘れません。
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Thoughtseize You
REID DUKE
2013/09/05
http://www.starcitygames.com/article/26855_Thoughtseize-You.html
思考囲いはマジックを象徴するカードの1枚だ。思考囲い自体は全てのフォーマットでリーガルというわけではないが、DuressやInquisition of Kozilek、その他多くのいわゆる「囲い効果」は多かれ少なかれどんなところでも目にするものだ。テーロスで思考囲いが再録されるにあたり、その存在感はこれまで以上に大きく感じられ、今後数年の間トーナメントで必ず目にすることになるのは間違いない。思考囲いの使い方を理解することはトーナメントプレイヤーが成功するのに不可欠だろう。
今日の記事では、デッキ構築からプレイ中のサイドボーディングまで、Thoughtseizeについて知るべき全ての事柄をカバーしようと思う。
思考囲いのリスク
1対1交換
思考囲いはゲームにおいて何をするのか、それを理解するのが最初のステップだ。囲いはレガシーやヴィンテージにおいてさえ素晴らしい仕事をする超高効率カードのように見えるが、このカードには重大なコストもつきまとう。
カードアドバンテージの観点から見れば、思考囲いがすることは1対1交換――直接はアドバンテージを得られない。というわけで、思考囲いについてまず初めに考えることはあなたのデッキが1対1交換を欲しているかどうかだ。この観点ではジャンドや青黒コントロールは有望だろう。しかしどのデッキにもフィットするわけではない。
初心者デッキビルダーが陥りがちな落とし穴でよく見かけるのは、大量の火力と大量の囲い効果を搭載した黒赤デッキを作ってしまうことだ。マジックのフレイバー的には黒と赤を組み合わせるのは自然で、囲い効果と火力は黒と赤を象徴する能力だからだ。
しかし現実には、思考囲いは間違いなくバーンデッキが欲しているものではない。バーンの強みは対戦相手が通常の方法で干渉するのが難しいところにある。そのため、バーンのゲームプランに必要なカードの枠に代わりに思考囲いを入れてしまうと、まさに対戦相手がしたいこと――あなたと1対1交換をすること――をさせてしまうことになる。
僕の経験では、囲いを入れたバーンというのは相手のライフを5まで落とすことは素晴らしく得意だが、そこからゲームに勝つのが苦手なデッキだ。
緑単ランプやケッシグランプのようなランプ戦略にも同じことが言える。これらのデッキは大部分のカードをマナ加速に割いており、戦略を機能させるためにはマナ以外のカードはどれもゲームに非常に強いインパクトを与える必要がある。そのため、相手のスペル1枚との交換(しかもこちらより多くのスペルを持っている相手との交換)を目的とする思考囲いのようなカードはお呼びでない。
上に挙げたようなデッキでも、特にサイド要員として特定の目的のために思考囲いを採用することは考えられる。しかし、囲いを入れるコストは「高くつく」ということを理解するのは大切だ。
冗長性
1対1交換がフィットするデッキにとって、思考囲いは効率性と信頼性の高い魅力的なカードだ。しかし、それでも全ての状況で完璧ではない。
テンポの観点から見れば、思考囲いはボードには影響を与えず、相手がマナを費やしたカードとの交換をするわけでもない――厳密に言えば、思考囲いをキャストすることであなたは僅かなビハインドを背負うことになる。
そのため、思考囲いは冗長性の高いデッキに対してはとてもひどいカードになる。マジックのデッキにおける冗長性とは、カードの交換可能性のことだ。双子デッキは勝つために1枚のDeceiver Exarchと1枚のSplinter Twin、コンボを守るための1枚の軽いカウンターを必要とするため、冗長性の低いデッキだ。このようなデッキに対して思考囲いは素晴らしい働きをする。Exarchを1枚抜いてしまえば、そこからリカバーできるカードは双子デッキにはとても少なく、そしてリカバーできなければデッキはほとんど機能しない。
正反対の例はとても基本的なクリーチャーデッキだ――白ウィニーや緑単アグロのような。20枚の森と40枚のKalonian Tuskerというデッキに対しては思考囲いのパフォーマンスは最悪だ。Kalonian Tuskerを手札から1枚抜かれたとしても、単に別の1枚をプレイすればよい。さらに悪いことに、囲いは手札を効果的に攻められないばかりか、ボードの遅れを取り戻す役にも立たない。相手がマナを払ってから対処できるのでDoom Bladeの方が良いだろうし、どんな状況であれクリーチャーの方が良いだろう。
空振り
思考囲いを空振りする可能性についてここまで触れていなかったが、これは過小評価しがちな巨大なリスクだ。マジックのゲームは紙一重で決まる。あなたがマリガンしたとき、2対1交換をされたとき、あるいは何らかのカードディスアドバンテージを背負ったとき、対等な状況に復帰するために素晴らしいプレイをしなければならないというプレッシャーに襲われる。もしそれができず、お互いの引きが同レベルであればあなたは負けるだろう。特にリミテッドやジャンドミラーのような消耗戦では思考囲いの空振りは大げさでもなんでもなく最悪だ。思考囲いをデッキに入れるには、空振りのリスクがとても小さいかヒットしたときの見返りがとても大きいかのいずれかが必要だ。
思考囲いというカードが他の囲い系カードより優れている理由が空振りのリスクだ。僕が脳食願望を構築トーナメントで使ったことがない理由、Duressがサイドボードに追いやられている理由もこれだ。
トップデッキにやられる
囲いとよく似ていてこちらも象徴的なカウンターと比較をしてみよう。
囲いのアドバンテージは:
* カウンターは特定のタイミングで使う必要があるが、思考囲いは都合の良いタイミングで使える。
* 相手の手札を見られる。
* 囲い系スペルは非常に軽い。
* カウンターされにくい。
カウンターのアドバンテージは:
* 相手がマナをつぎ込んでから回答できる。
* トップデッキに対して防御できる。
ゲームがグダってトップ勝負になると、思考囲いを入れたことを後悔することになるだろう。手札が空の(あるいは土地だけの)相手に対して思考囲いを引くのは空振りするのと同じだ。
「ゲームをトップ勝負に持ち込む働きをしつつ、自身をトップするのは最悪」というのは思考囲いの残念な性質だ。
デッキ構築中やサイドボーディング中に、トップ勝負になる可能性がどの程度あるかよく考えてほしい。トップ勝負に持ち込むことがゴールになることもある(ジャンド、ジャンク、Poxのようなデッキはこれをゴールにすることが多い)。もしトップ勝負になりやすそうなら、終盤に引くと弱いカードで自分のデッキをどこまで薄めることができるかを次に考えてほしい。
思考囲いのリスクとリターンを単純なやり方で見積もるなら、囲いは初手にあれば素晴らしいがそれ以外のタイミングでは良くないカードだとみなすと良い。プレイを始める前にゲームが何ターンぐらい続きそうか予想し、1ゲーム中に何枚ぐらいのカードを見ることになりそうか計算する。そして、初手として引くカードの枚数(願わくば7枚だね)と、ゲームを通してライブラリトップから引くことになるカードの枚数を比較する。
この比が大きい場合、例えば速いコンボデッキとの対戦のような場合は、思考囲いが輝く可能性は高い。直感に反してモダンのジャンドでInquisition of Kozilekが親和やバーン相手に素晴らしいカードになるのはまさにこれが理由だ(思考囲いのライフロスはケースバイケースで評価すべきで、こういったデッキ相手には大きなコストになる)。比が小さい場合、例えばジャンドミラーのような場合、思考囲いは重荷になる可能性が高い。
ここ数年の僕のモダンジャンドミラーの勝率には自信がある。僕がやっていたのはThoughtseize、Inquisition of Kozilek、Duressを全てサイドアウトして、トップするのが嬉しいカードを入れることだ。ほとんど例外なくターン4か5までには両プレイヤーの手札は空になり、その状況で6枚の死に札がデッキに入っている相手に対して、こちらが長期戦を勝てる確率はかなり高くなる。
まとめると、1対1交換をする気のないデッキに思考囲いを入れることには慎重になろう。冗長性の高いデッキに溢れたメタゲームでは思考囲いの価値は低い。そのようなデッキ相手やトップ勝負になりそうなマッチアップでは思考囲いはサイドアウトしよう。
囲い系スペルはメインに5枚か6枚まで、メインとサイド合わせて7枚までにしておくことをオススメする。これは僕が個人的に全てのフォーマットで守っている最大枚数だ。
思考囲いの恩恵
あなたのデッキに囲い系スペルを満載することの危険性をここまで述べてきた。これだけの弱点にもかかわらず思考囲いがデッキビルダーにとって最高のツールであるのはなぜなのか、これから説明しよう。
シナジーを破壊する
デッキ構築における僕の信条は、それ単独でメリットがあり強力なカードに目を向けるということだ。とはいえこれがマジックのデッキを構築する唯一の方法というわけではない。実際、僕の友人でチームメイトのSam Blackは全く違うアプローチを採り、カード同士の相互作用によって優位に立つことを良しとする。このアプローチには多くの利点がある。Samが場に並べたBonescythe Sliver、Megantic Sliver、Syphon Sliver、Galerider Sliverの前に僕のタルモは棒立ちしてしまう(僕がSamの創造力をバカにするのは分かりやすい例として引き合いに出すときだけだ)。
丸いRock的な戦略で、より強力なシナジーベースのデッキを打ち破ることを可能にするのが思考囲いのようなカードだ。思考囲いは素早く効率的にリソースを交換する手段を提供する。Galerider Sliverが単独で場に出ざるをえない状況にいったんしてしまえば、より強力なあなたのカードで局地戦に勝利していくことができるだろう。囲い効果によって、Doom BladeやNaturalizeのような限定的な回答カードよりもうまくシナジーを崩すことができる。生物ベースの戦略にも、コントロールにも、コンボにも有効なためだ。
特定の脅威に回答する
リミテッドマッチのゲーム1を相手のPrimeval Bountyによって落としたとき、最初にすることは何だろう?「自分を気の毒に思う」とか「ため息をつきながらブツブツ言う」とかかもしれない。そうだとして、次にすることは何だろう?NaturalizeやSolemn Offering、Bramblecrushのようなエンチャント除去を求めて自分のサイドボードを必死に探しまわることじゃないかと思う。
だが黒赤デッキを使っていることもある。
そう、他に対処方法がない問題カードに対して囲い効果は素晴らしい回答手段になる。サイドにGolgari Charmを入れる前の僕のスタンダードのジャンドでは、赤単アグロに対してDuressをサイドインしていた。Burning Earthを落とし、2枚目を引かれる前にゲームに勝つことが狙いだ。完璧なプランではないが、単に諦めるよりはずっと良い!
加えて、単純にキャストされてからでは回答不能なカードもある。Supreme Verdictを相手に懸命に戦う黒白トークンデッキを想像してほしい。ベストな回答は思考囲いで評決を抜いてしまうことだ!
思考囲いをデッキに入れているとき、僕は落ち着いていられる。相手が投げつけてくる脅威のほぼ全てに少なくとも回答することは可能だと知っているためだ。後で述べるゲームプレイの章で、「特定の脅威に回答する」というコンセプトについてはもう一度触れようと思う。
相手の手札を見る
相手の手札を見ることに確固とした価値を置くことは難しいが、多くのプレイヤーが過小評価している大きなアドバンテージが得られると僕は思っている。
相手の動きを読むコツを掴む前、僕は正確な良いプレイをするテクニックを磨こうとするプレイヤーだった。たぶんこれはMO出身ということから来ているか、あるいは単に内向的な性格のためかもしれない。しかしいずれにせよ、Gitaxian Probeが印刷され、それを自分の全てのデッキに入れてから僕はそれまでよりも勝てるようになった。
ギタ調はフィットしないとみんなが思うだろうデッキ、青黒コントロールやCaw-Bladeにも僕はそれを入れてみた。すると、隠されていた情報が全て明らかになれば簡単に勝利への道筋を見つけられることに気づいた。
相手の手札を見る能力はとても強力で、それが生死を分かつマッチアップもある。一つの例ではあるが、Duressを撃って前方確認、何もないことを確かめてイージーウィンしたストームプレイヤーと、カウンター満載のハンドを見てさらなる妨害をじっと待つべきだと知ったストームプレイヤーの違いについて考えてみてほしい。
穴を作る
相手の手札を見る能力に続いて、思考囲いを他の似た効果、Hymn to TourachやCabal Therapy、Counterspellとは一線を画したものにしている真のカギがこれだ。あなたは相手の手札を見て、ゲームについて考え、「それから」どれを落とすか決める。
冗長性の話に戻ろう。冗長性が非常に高く思考囲いが重荷になるデッキの例としてKalonian Tuskerだけのデッキについて述べた。しかし、このようなデッキが驚くほど思考囲いに弱い場合がある。緑単アグロだけに話を限っても、マナカーブに沿って1マナから4、5、6マナへと順次クリーチャーをプレイしようとするだろう。コンバットトリックやOverrunのようなフィニッシャーを持っているかもしれないし、ユーティリティやプレインズウォーカーがあるかもしれない。
思考囲いを撃ったとき、どのリソースが、どのカテゴリーのカードが相手にとって不足しているかが見える。そこを狙う。
小粒なクリーチャーが多い手札を見たなら、Giant Growthを落としてあなたのSengir Vampireの安全を確保できる。大きなフィニッシャーが多い手札を見たなら、軽いスペルを落として序盤に攻勢を仕掛けることができる。
思考囲いはテンポ面でビハインドになるとも述べたが、これは机上論であることが多い。思考囲いで相手のマナカーブを崩すことができるためだ。序盤に囲いを撃ち、その後のターンに相手が使える強いカードが1枚だけなら(それをプレイされる前に倒せないなら)、それを捨てさせて相手のマナを無駄にさせることができる。
ゲームプレイ:思考囲いをキャストする
コントロールデッキに穴を作る
冗長性の話とともに生物によるビートダウンデッキについて議論し、シナジー満載のコンボデッキについても議論してきた。相手にしたときに思考囲いが真に輝く3つ目のデッキカテゴリーが、受動的なコントロールデッキだ。
コントロールデッキは単体で強力なカードをよく使うが、正しく機能するためには各種カードを正しい割合で配合する必要がある。例えば、クリーチャーに対する防御が不十分なら速いラッシュに負けてしまう。カウンターがなければプレインズウォーカーに負けてしまう。フィニッシャーがなければマナフラッドして終盤戦を勝てなくなってしまう。コントロールとの対戦では穴を作ることが最も重要になる。
カードプールが広がるにつれて、コントロールに対する思考囲いの強さは増すと思っている。特にプレインズウォーカーと同時に使うのが強い。スタンダードでもモダンでも、僕は青白赤のようなコントロールデッキに対してジャンドを使うのが好きだ。採りうるアプローチがたくさんあり、最良を探すチャレンジは楽しい。
(サイド後の)スタンダードのジャンドには、強力なクリーチャー、プレインズウォーカー、Rakdos’s Return、Underworld Connections、さらに酸スラやルーリク・サーのような別の角度からの攻撃まで入る!たしかに青赤白にはこれら全てに回答する手段が入っているが、それらを常に適切なタイミングで手に入れることは難しい。あなたがDuressを使えばそれはほとんど不可能になる。
Duressをキャストすると相手の弱点が見える。相手が除去を大量に持っているなら、クリーチャーで相手を倒そうと悩むべきではない――カウンターを落としてRakdos’s Returnを解決させよう。また、先攻1ターン目にDuressを撃ち、相手がDissipateをたくさん持っているのが見えたなら、Detention Sphereを落として最初の3ターンの間に出せる脅威に目を向けよう。
例:あなたは2枚、相手は1枚の土地を出している。あなたの2ターン目にDuressを撃った。両者の手札はこのようなものだ。
一般にUnderworld Connectionsは青白赤に対して最高のカードの一つだが、この状況ではひとまずしばらくはそれを無視することがカギになる。このDuressは対戦相手の強みと弱み――たくさんのカウンターと解決したクリーチャーへの回答の少なさ――を明らかにしてくれた。この例では、僕ならWarleader’s Helixを抜き、洞窟から狩達を解決させにいく。
狩達は単純にこのマッチアップで最高のカードの一つであるだけでなく、この状況にぴったりのカードだ。対戦相手が狩達への回答をトップする可能性は高いが、少なくともSupreme VerdictやThundermaw Hellkiteのためにはタップアウトしなければならず、これだけ多くのカウンターを握られていてもこちらのスペルを通せるタイミングはあるということが分かる。これらのカウンターに正面から突っ込んで強引に通そうとしてもうまくいく可能性は低い。
特定の脅威に回答する
思考囲いのプレイングは2つの問いに帰着する――いつキャストするか、そしてどのカードを抜くか。2つの問いは関連している。
マッチアップが分かったら、思考囲いで落とすべき最も重要なカードは何か自問しよう。上で述べたリミテッドマッチの例では、相手のPrimeval Bountyを抜くために僕はDuressをサイドインした。Duressを撃つベストなタイミングは相手が6マナに届く直前になる。相手がBountyを手札に持っている可能性が最も高いタイミングだからだ。
こちらがジャンドを使っていて、相手がやっかいなAuriok Champion入りの黒白トークンを使っている場合、思考囲いを撃つのは後攻なら1ターン目、先攻なら2ターン目だ。
相手が持っているだろう能動的な問題カードの例を挙げてきたが、相手にその問題カードをキャストするチャンスを与えないように、かつ可能な限り遅いタイミングで思考囲いをキャストするのが正解だ。実際には相手が複数の問題カードを入れていることがよくあることにも気をつけよう。この場合は臨機応変に対応する必要がある。さっきのPrimeval Bountyのプレイヤーは緑白を使っており、同時にAjani, Caller of the Prideもデッキに入れているとしよう。Duressを撃つのに長く待ちすぎるのは愚かで、プレインズウォーカーを出されてPrimeval Bountyなしでもゲームに負けることになってしまう!
さらに面白いのは受動的な問題カードに対処するときだ。記事の最初の方で、ケッシグランプは1対1交換をしたいデッキではないので思考囲いを入れるのは得策でないと書いたのを覚えているかな?このケッシグランプはDissipateに本当に苦労するデッキで、本来の狙いである緑タイタンの解決のためにDissipateを落とす目的でサイドに思考囲いを入れる必要がある。
このケースでは、タイタンをキャストする直前あるいはまさにキャストするターンまで思考囲いを我慢すべきだ。1ターン目に囲いを撃ち、それから相手にDissipateを引かれるのは最悪だろう。5ターン目にタイタンを持っていないが引きたい状況、あるいはタイタンと思考囲いと6マナはあるが7枚目の土地がない状況はもう少し複雑だ。このような状況では、どの程度相手に押されているか、どの程度我慢ができるかに応じてケースバイケースで対応するしかない。
強引に一般論を言えば、一つ目の例では僕はタイタンを引くまで囲いを我慢するだろう。二つ目の例では土地を引こうが引くまいが次のターンにタイタンをプレイできるようにすぐ囲いを撃つだろう。
ここまでに挙げた例の中で、1ターン目に囲いを撃つべき場面はAuriok Champion入りのデッキ相手に後攻の場合だけだったことに注目してほしい。特別な理由が無い限り、思考囲いは最速で撃つべきではないということだ。
目指すべきゴールが明確になっていない状況で思考囲いをどう使うかについて、一般的な指針をいくつか示して今日の記事を締めくくろうと思う。
効果的な思考囲い:いつキャストすべきか
自分のゲームプランを崩してまで囲うのはやめよう。思考囲いは都合の良いときに使える単なる便利なツールの一つであるべきで、使用者に道を踏み外させるようなカードにしてしまうべきではない。特に理由がなければ僕は思考囲いではなくクリーチャーをプレイする。特に理由がなければ僕は思考囲いよりもタップインランドの処理を選ぶ。1ターンの経過で囲いの価値が上がるか下がるかは分からない。だから、よりシビアなタイミングを要求されるプレイ(クリーチャーのキャスト)を優先するし、思考囲いをいち早く撃つために痛い代償(ショックランドの2点)を支払うこともしない。
例:あなたはモダンのジャンドをプレイしている。何を使っているか不明な相手に対して先攻のあなたの手札がこれだ:
このケースでは、僕ならBlood Cryptをタップインで出す。相手がなにもしなかった場合、2ターン目に囲いを撃ってOvergrown Tombをタップインで出す。何が何でも止めなければならない相手の1ターン目のプレイというのは想像できない。相手が死儀礼を出してきても2ターン目に稲妻で焼きつつ囲うことができる。相手から囲いが飛んできてもこちらの手札の冗長性は高く、突然死することはないだろう。相手がSerum VisionsをキャストしたりSpell Snareを構えたりしてきてもどうということはなく、たぶんその可能性について考えることもしないだろう。
次のターンに2マナ生物をトップした場合、1ターン目に囲いを我慢したことが少し裏目に出る。だがジャンドは急いでラッシュを仕掛ける必要のあるデッキではない。ライフは重要で、「土地で自分に2点、思考囲いで自分に2点、ボブをキャスト」のようなプレイが良いかどうかはマッチアップ次第だ。思考囲いを1ターン待つという小さなコストにより、2ライフと追加の情報が得られる。
効果的な思考囲い:何を抜くべきか
思考囲いをキャストすべきタイミングは、最終的に囲いの効果自体によって明らかになる。しかしここでは目指すべきゴールが明確になっていない。そんなときは相手の手札を見て、穴を作れるかどうかを考えよう。弱点を作り、それを活用することを考えるんだ。それができなかったとしても問題ない。何かに縛られたり辛抱することはない――最強のカードを抜くんだ!
モダンでは、青いミッドレンジやコントロールデッキに対して囲いで抜きたいカードランキングが自分の中にある。明らかな抜くべきカードが無い場合は瞬唱を落とす。瞬唱がない場合は青コマを抜く。青コマがない場合はSphonx’s Revelationのような終盤に強いカードを落とす。
相手をマナスクリューさせようとは決してしないというルールも自分に課している。経験上この作戦は信頼できない。親和に対してMox Opalや太鼓を抜くことはしない。土地1枚とSerum Visionsという手札をキープした相手に対しても、大量のプレッシャーを出して早期戦を仕掛けられる場合以外はたいてい瞬唱を落とす。相手は結局マナスクリューから抜けだしてしまい、もっと強力なカードを落とさなかったことを後悔することになる。もしスクリューから抜け出せないようなら、どのみち勝っている。
まとめ
この入門記事が少しでも思考囲いを理解する役に立つことを願っている。このカードは信じられないほどパワフルなツールで、全てのトーナメントプレイヤーはいつ、どのように使うかを知っているべきだ。一方で、囲いには相当量のリスクもつきまとう。
まとめると:
* 思考囲いはどんなデッキにも合うわけではない。
* 冗長性の高いデッキ相手やトップ勝負になりやすいゲームではサイドアウトしよう。
* 思考囲いで一番抜きたいカードが何なのか前もって考えよう。囲い以外では対処が難しいカードに回答するために使おう。
* 思考囲いをキャストしたら穴を作ろうとしよう。弱点を探してそこを攻めよう。
* 不確かな状況では、都合の良いときに思考囲いをキャストして相手の最強カードを抜くことで最高の価値を得よう。
このTipsを心に留めれば思考囲いといろいろなフォーマットで長く良い付き合いができるだろう。
思考囲い入門。
初めてデュレスを見たときのワクワクは今も忘れません。
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Thoughtseize You
REID DUKE
2013/09/05
http://www.starcitygames.com/article/26855_Thoughtseize-You.html
思考囲いはマジックを象徴するカードの1枚だ。思考囲い自体は全てのフォーマットでリーガルというわけではないが、DuressやInquisition of Kozilek、その他多くのいわゆる「囲い効果」は多かれ少なかれどんなところでも目にするものだ。テーロスで思考囲いが再録されるにあたり、その存在感はこれまで以上に大きく感じられ、今後数年の間トーナメントで必ず目にすることになるのは間違いない。思考囲いの使い方を理解することはトーナメントプレイヤーが成功するのに不可欠だろう。
今日の記事では、デッキ構築からプレイ中のサイドボーディングまで、Thoughtseizeについて知るべき全ての事柄をカバーしようと思う。
Thoughtseize / 思考囲い (B)
ソーサリー
プレイヤー1人を対象とする。そのプレイヤーは手札を公開する。あなたはその中から土地でないカードを1枚選ぶ。そのプレイヤーはそのカードを捨てる。あなたは2点のライフを失う。
思考囲いのリスク
1対1交換
思考囲いはゲームにおいて何をするのか、それを理解するのが最初のステップだ。囲いはレガシーやヴィンテージにおいてさえ素晴らしい仕事をする超高効率カードのように見えるが、このカードには重大なコストもつきまとう。
カードアドバンテージの観点から見れば、思考囲いがすることは1対1交換――直接はアドバンテージを得られない。というわけで、思考囲いについてまず初めに考えることはあなたのデッキが1対1交換を欲しているかどうかだ。この観点ではジャンドや青黒コントロールは有望だろう。しかしどのデッキにもフィットするわけではない。
初心者デッキビルダーが陥りがちな落とし穴でよく見かけるのは、大量の火力と大量の囲い効果を搭載した黒赤デッキを作ってしまうことだ。マジックのフレイバー的には黒と赤を組み合わせるのは自然で、囲い効果と火力は黒と赤を象徴する能力だからだ。
しかし現実には、思考囲いは間違いなくバーンデッキが欲しているものではない。バーンの強みは対戦相手が通常の方法で干渉するのが難しいところにある。そのため、バーンのゲームプランに必要なカードの枠に代わりに思考囲いを入れてしまうと、まさに対戦相手がしたいこと――あなたと1対1交換をすること――をさせてしまうことになる。
僕の経験では、囲いを入れたバーンというのは相手のライフを5まで落とすことは素晴らしく得意だが、そこからゲームに勝つのが苦手なデッキだ。
緑単ランプやケッシグランプのようなランプ戦略にも同じことが言える。これらのデッキは大部分のカードをマナ加速に割いており、戦略を機能させるためにはマナ以外のカードはどれもゲームに非常に強いインパクトを与える必要がある。そのため、相手のスペル1枚との交換(しかもこちらより多くのスペルを持っている相手との交換)を目的とする思考囲いのようなカードはお呼びでない。
上に挙げたようなデッキでも、特にサイド要員として特定の目的のために思考囲いを採用することは考えられる。しかし、囲いを入れるコストは「高くつく」ということを理解するのは大切だ。
冗長性
1対1交換がフィットするデッキにとって、思考囲いは効率性と信頼性の高い魅力的なカードだ。しかし、それでも全ての状況で完璧ではない。
テンポの観点から見れば、思考囲いはボードには影響を与えず、相手がマナを費やしたカードとの交換をするわけでもない――厳密に言えば、思考囲いをキャストすることであなたは僅かなビハインドを背負うことになる。
そのため、思考囲いは冗長性の高いデッキに対してはとてもひどいカードになる。マジックのデッキにおける冗長性とは、カードの交換可能性のことだ。双子デッキは勝つために1枚のDeceiver Exarchと1枚のSplinter Twin、コンボを守るための1枚の軽いカウンターを必要とするため、冗長性の低いデッキだ。このようなデッキに対して思考囲いは素晴らしい働きをする。Exarchを1枚抜いてしまえば、そこからリカバーできるカードは双子デッキにはとても少なく、そしてリカバーできなければデッキはほとんど機能しない。
正反対の例はとても基本的なクリーチャーデッキだ――白ウィニーや緑単アグロのような。20枚の森と40枚のKalonian Tuskerというデッキに対しては思考囲いのパフォーマンスは最悪だ。Kalonian Tuskerを手札から1枚抜かれたとしても、単に別の1枚をプレイすればよい。さらに悪いことに、囲いは手札を効果的に攻められないばかりか、ボードの遅れを取り戻す役にも立たない。相手がマナを払ってから対処できるのでDoom Bladeの方が良いだろうし、どんな状況であれクリーチャーの方が良いだろう。
空振り
思考囲いを空振りする可能性についてここまで触れていなかったが、これは過小評価しがちな巨大なリスクだ。マジックのゲームは紙一重で決まる。あなたがマリガンしたとき、2対1交換をされたとき、あるいは何らかのカードディスアドバンテージを背負ったとき、対等な状況に復帰するために素晴らしいプレイをしなければならないというプレッシャーに襲われる。もしそれができず、お互いの引きが同レベルであればあなたは負けるだろう。特にリミテッドやジャンドミラーのような消耗戦では思考囲いの空振りは大げさでもなんでもなく最悪だ。思考囲いをデッキに入れるには、空振りのリスクがとても小さいかヒットしたときの見返りがとても大きいかのいずれかが必要だ。
思考囲いというカードが他の囲い系カードより優れている理由が空振りのリスクだ。僕が脳食願望を構築トーナメントで使ったことがない理由、Duressがサイドボードに追いやられている理由もこれだ。
トップデッキにやられる
囲いとよく似ていてこちらも象徴的なカウンターと比較をしてみよう。
囲いのアドバンテージは:
* カウンターは特定のタイミングで使う必要があるが、思考囲いは都合の良いタイミングで使える。
* 相手の手札を見られる。
* 囲い系スペルは非常に軽い。
* カウンターされにくい。
カウンターのアドバンテージは:
* 相手がマナをつぎ込んでから回答できる。
* トップデッキに対して防御できる。
ゲームがグダってトップ勝負になると、思考囲いを入れたことを後悔することになるだろう。手札が空の(あるいは土地だけの)相手に対して思考囲いを引くのは空振りするのと同じだ。
「ゲームをトップ勝負に持ち込む働きをしつつ、自身をトップするのは最悪」というのは思考囲いの残念な性質だ。
デッキ構築中やサイドボーディング中に、トップ勝負になる可能性がどの程度あるかよく考えてほしい。トップ勝負に持ち込むことがゴールになることもある(ジャンド、ジャンク、Poxのようなデッキはこれをゴールにすることが多い)。もしトップ勝負になりやすそうなら、終盤に引くと弱いカードで自分のデッキをどこまで薄めることができるかを次に考えてほしい。
思考囲いのリスクとリターンを単純なやり方で見積もるなら、囲いは初手にあれば素晴らしいがそれ以外のタイミングでは良くないカードだとみなすと良い。プレイを始める前にゲームが何ターンぐらい続きそうか予想し、1ゲーム中に何枚ぐらいのカードを見ることになりそうか計算する。そして、初手として引くカードの枚数(願わくば7枚だね)と、ゲームを通してライブラリトップから引くことになるカードの枚数を比較する。
この比が大きい場合、例えば速いコンボデッキとの対戦のような場合は、思考囲いが輝く可能性は高い。直感に反してモダンのジャンドでInquisition of Kozilekが親和やバーン相手に素晴らしいカードになるのはまさにこれが理由だ(思考囲いのライフロスはケースバイケースで評価すべきで、こういったデッキ相手には大きなコストになる)。比が小さい場合、例えばジャンドミラーのような場合、思考囲いは重荷になる可能性が高い。
ここ数年の僕のモダンジャンドミラーの勝率には自信がある。僕がやっていたのはThoughtseize、Inquisition of Kozilek、Duressを全てサイドアウトして、トップするのが嬉しいカードを入れることだ。ほとんど例外なくターン4か5までには両プレイヤーの手札は空になり、その状況で6枚の死に札がデッキに入っている相手に対して、こちらが長期戦を勝てる確率はかなり高くなる。
まとめると、1対1交換をする気のないデッキに思考囲いを入れることには慎重になろう。冗長性の高いデッキに溢れたメタゲームでは思考囲いの価値は低い。そのようなデッキ相手やトップ勝負になりそうなマッチアップでは思考囲いはサイドアウトしよう。
囲い系スペルはメインに5枚か6枚まで、メインとサイド合わせて7枚までにしておくことをオススメする。これは僕が個人的に全てのフォーマットで守っている最大枚数だ。
思考囲いの恩恵
あなたのデッキに囲い系スペルを満載することの危険性をここまで述べてきた。これだけの弱点にもかかわらず思考囲いがデッキビルダーにとって最高のツールであるのはなぜなのか、これから説明しよう。
シナジーを破壊する
デッキ構築における僕の信条は、それ単独でメリットがあり強力なカードに目を向けるということだ。とはいえこれがマジックのデッキを構築する唯一の方法というわけではない。実際、僕の友人でチームメイトのSam Blackは全く違うアプローチを採り、カード同士の相互作用によって優位に立つことを良しとする。このアプローチには多くの利点がある。Samが場に並べたBonescythe Sliver、Megantic Sliver、Syphon Sliver、Galerider Sliverの前に僕のタルモは棒立ちしてしまう(僕がSamの創造力をバカにするのは分かりやすい例として引き合いに出すときだけだ)。
丸いRock的な戦略で、より強力なシナジーベースのデッキを打ち破ることを可能にするのが思考囲いのようなカードだ。思考囲いは素早く効率的にリソースを交換する手段を提供する。Galerider Sliverが単独で場に出ざるをえない状況にいったんしてしまえば、より強力なあなたのカードで局地戦に勝利していくことができるだろう。囲い効果によって、Doom BladeやNaturalizeのような限定的な回答カードよりもうまくシナジーを崩すことができる。生物ベースの戦略にも、コントロールにも、コンボにも有効なためだ。
特定の脅威に回答する
リミテッドマッチのゲーム1を相手のPrimeval Bountyによって落としたとき、最初にすることは何だろう?「自分を気の毒に思う」とか「ため息をつきながらブツブツ言う」とかかもしれない。そうだとして、次にすることは何だろう?NaturalizeやSolemn Offering、Bramblecrushのようなエンチャント除去を求めて自分のサイドボードを必死に探しまわることじゃないかと思う。
だが黒赤デッキを使っていることもある。
そう、他に対処方法がない問題カードに対して囲い効果は素晴らしい回答手段になる。サイドにGolgari Charmを入れる前の僕のスタンダードのジャンドでは、赤単アグロに対してDuressをサイドインしていた。Burning Earthを落とし、2枚目を引かれる前にゲームに勝つことが狙いだ。完璧なプランではないが、単に諦めるよりはずっと良い!
加えて、単純にキャストされてからでは回答不能なカードもある。Supreme Verdictを相手に懸命に戦う黒白トークンデッキを想像してほしい。ベストな回答は思考囲いで評決を抜いてしまうことだ!
思考囲いをデッキに入れているとき、僕は落ち着いていられる。相手が投げつけてくる脅威のほぼ全てに少なくとも回答することは可能だと知っているためだ。後で述べるゲームプレイの章で、「特定の脅威に回答する」というコンセプトについてはもう一度触れようと思う。
相手の手札を見る
相手の手札を見ることに確固とした価値を置くことは難しいが、多くのプレイヤーが過小評価している大きなアドバンテージが得られると僕は思っている。
相手の動きを読むコツを掴む前、僕は正確な良いプレイをするテクニックを磨こうとするプレイヤーだった。たぶんこれはMO出身ということから来ているか、あるいは単に内向的な性格のためかもしれない。しかしいずれにせよ、Gitaxian Probeが印刷され、それを自分の全てのデッキに入れてから僕はそれまでよりも勝てるようになった。
ギタ調はフィットしないとみんなが思うだろうデッキ、青黒コントロールやCaw-Bladeにも僕はそれを入れてみた。すると、隠されていた情報が全て明らかになれば簡単に勝利への道筋を見つけられることに気づいた。
相手の手札を見る能力はとても強力で、それが生死を分かつマッチアップもある。一つの例ではあるが、Duressを撃って前方確認、何もないことを確かめてイージーウィンしたストームプレイヤーと、カウンター満載のハンドを見てさらなる妨害をじっと待つべきだと知ったストームプレイヤーの違いについて考えてみてほしい。
穴を作る
相手の手札を見る能力に続いて、思考囲いを他の似た効果、Hymn to TourachやCabal Therapy、Counterspellとは一線を画したものにしている真のカギがこれだ。あなたは相手の手札を見て、ゲームについて考え、「それから」どれを落とすか決める。
冗長性の話に戻ろう。冗長性が非常に高く思考囲いが重荷になるデッキの例としてKalonian Tuskerだけのデッキについて述べた。しかし、このようなデッキが驚くほど思考囲いに弱い場合がある。緑単アグロだけに話を限っても、マナカーブに沿って1マナから4、5、6マナへと順次クリーチャーをプレイしようとするだろう。コンバットトリックやOverrunのようなフィニッシャーを持っているかもしれないし、ユーティリティやプレインズウォーカーがあるかもしれない。
思考囲いを撃ったとき、どのリソースが、どのカテゴリーのカードが相手にとって不足しているかが見える。そこを狙う。
小粒なクリーチャーが多い手札を見たなら、Giant Growthを落としてあなたのSengir Vampireの安全を確保できる。大きなフィニッシャーが多い手札を見たなら、軽いスペルを落として序盤に攻勢を仕掛けることができる。
思考囲いはテンポ面でビハインドになるとも述べたが、これは机上論であることが多い。思考囲いで相手のマナカーブを崩すことができるためだ。序盤に囲いを撃ち、その後のターンに相手が使える強いカードが1枚だけなら(それをプレイされる前に倒せないなら)、それを捨てさせて相手のマナを無駄にさせることができる。
ゲームプレイ:思考囲いをキャストする
コントロールデッキに穴を作る
冗長性の話とともに生物によるビートダウンデッキについて議論し、シナジー満載のコンボデッキについても議論してきた。相手にしたときに思考囲いが真に輝く3つ目のデッキカテゴリーが、受動的なコントロールデッキだ。
コントロールデッキは単体で強力なカードをよく使うが、正しく機能するためには各種カードを正しい割合で配合する必要がある。例えば、クリーチャーに対する防御が不十分なら速いラッシュに負けてしまう。カウンターがなければプレインズウォーカーに負けてしまう。フィニッシャーがなければマナフラッドして終盤戦を勝てなくなってしまう。コントロールとの対戦では穴を作ることが最も重要になる。
カードプールが広がるにつれて、コントロールに対する思考囲いの強さは増すと思っている。特にプレインズウォーカーと同時に使うのが強い。スタンダードでもモダンでも、僕は青白赤のようなコントロールデッキに対してジャンドを使うのが好きだ。採りうるアプローチがたくさんあり、最良を探すチャレンジは楽しい。
(サイド後の)スタンダードのジャンドには、強力なクリーチャー、プレインズウォーカー、Rakdos’s Return、Underworld Connections、さらに酸スラやルーリク・サーのような別の角度からの攻撃まで入る!たしかに青赤白にはこれら全てに回答する手段が入っているが、それらを常に適切なタイミングで手に入れることは難しい。あなたがDuressを使えばそれはほとんど不可能になる。
Duressをキャストすると相手の弱点が見える。相手が除去を大量に持っているなら、クリーチャーで相手を倒そうと悩むべきではない――カウンターを落としてRakdos’s Returnを解決させよう。また、先攻1ターン目にDuressを撃ち、相手がDissipateをたくさん持っているのが見えたなら、Detention Sphereを落として最初の3ターンの間に出せる脅威に目を向けよう。
例:あなたは2枚、相手は1枚の土地を出している。あなたの2ターン目にDuressを撃った。両者の手札はこのようなものだ。
あなたの手札:
《森林の墓地/Woodland Cemetery》
《魂の洞窟/Cavern of Souls》
《地下世界の人脈/Underworld Connections》
《高原の狩りの達人/Huntmaster of the Fells》
《ラクドスの復活/Rakdos’s Return》
対戦相手の手札:
《神聖なる泉/Hallowed Fountain》
《断崖の避難所/Clifftop Retreat》
《中略/Syncopate》
《否認/Negate》
《雲散霧消/Dissipate》
《戦導者のらせん/Warleader’s Helix》
《雷口のヘルカイト/Thundermaw Hellkite》
一般にUnderworld Connectionsは青白赤に対して最高のカードの一つだが、この状況ではひとまずしばらくはそれを無視することがカギになる。このDuressは対戦相手の強みと弱み――たくさんのカウンターと解決したクリーチャーへの回答の少なさ――を明らかにしてくれた。この例では、僕ならWarleader’s Helixを抜き、洞窟から狩達を解決させにいく。
狩達は単純にこのマッチアップで最高のカードの一つであるだけでなく、この状況にぴったりのカードだ。対戦相手が狩達への回答をトップする可能性は高いが、少なくともSupreme VerdictやThundermaw Hellkiteのためにはタップアウトしなければならず、これだけ多くのカウンターを握られていてもこちらのスペルを通せるタイミングはあるということが分かる。これらのカウンターに正面から突っ込んで強引に通そうとしてもうまくいく可能性は低い。
特定の脅威に回答する
思考囲いのプレイングは2つの問いに帰着する――いつキャストするか、そしてどのカードを抜くか。2つの問いは関連している。
マッチアップが分かったら、思考囲いで落とすべき最も重要なカードは何か自問しよう。上で述べたリミテッドマッチの例では、相手のPrimeval Bountyを抜くために僕はDuressをサイドインした。Duressを撃つベストなタイミングは相手が6マナに届く直前になる。相手がBountyを手札に持っている可能性が最も高いタイミングだからだ。
こちらがジャンドを使っていて、相手がやっかいなAuriok Champion入りの黒白トークンを使っている場合、思考囲いを撃つのは後攻なら1ターン目、先攻なら2ターン目だ。
相手が持っているだろう能動的な問題カードの例を挙げてきたが、相手にその問題カードをキャストするチャンスを与えないように、かつ可能な限り遅いタイミングで思考囲いをキャストするのが正解だ。実際には相手が複数の問題カードを入れていることがよくあることにも気をつけよう。この場合は臨機応変に対応する必要がある。さっきのPrimeval Bountyのプレイヤーは緑白を使っており、同時にAjani, Caller of the Prideもデッキに入れているとしよう。Duressを撃つのに長く待ちすぎるのは愚かで、プレインズウォーカーを出されてPrimeval Bountyなしでもゲームに負けることになってしまう!
さらに面白いのは受動的な問題カードに対処するときだ。記事の最初の方で、ケッシグランプは1対1交換をしたいデッキではないので思考囲いを入れるのは得策でないと書いたのを覚えているかな?このケッシグランプはDissipateに本当に苦労するデッキで、本来の狙いである緑タイタンの解決のためにDissipateを落とす目的でサイドに思考囲いを入れる必要がある。
このケースでは、タイタンをキャストする直前あるいはまさにキャストするターンまで思考囲いを我慢すべきだ。1ターン目に囲いを撃ち、それから相手にDissipateを引かれるのは最悪だろう。5ターン目にタイタンを持っていないが引きたい状況、あるいはタイタンと思考囲いと6マナはあるが7枚目の土地がない状況はもう少し複雑だ。このような状況では、どの程度相手に押されているか、どの程度我慢ができるかに応じてケースバイケースで対応するしかない。
強引に一般論を言えば、一つ目の例では僕はタイタンを引くまで囲いを我慢するだろう。二つ目の例では土地を引こうが引くまいが次のターンにタイタンをプレイできるようにすぐ囲いを撃つだろう。
ここまでに挙げた例の中で、1ターン目に囲いを撃つべき場面はAuriok Champion入りのデッキ相手に後攻の場合だけだったことに注目してほしい。特別な理由が無い限り、思考囲いは最速で撃つべきではないということだ。
目指すべきゴールが明確になっていない状況で思考囲いをどう使うかについて、一般的な指針をいくつか示して今日の記事を締めくくろうと思う。
効果的な思考囲い:いつキャストすべきか
自分のゲームプランを崩してまで囲うのはやめよう。思考囲いは都合の良いときに使える単なる便利なツールの一つであるべきで、使用者に道を踏み外させるようなカードにしてしまうべきではない。特に理由がなければ僕は思考囲いではなくクリーチャーをプレイする。特に理由がなければ僕は思考囲いよりもタップインランドの処理を選ぶ。1ターンの経過で囲いの価値が上がるか下がるかは分からない。だから、よりシビアなタイミングを要求されるプレイ(クリーチャーのキャスト)を優先するし、思考囲いをいち早く撃つために痛い代償(ショックランドの2点)を支払うこともしない。
例:あなたはモダンのジャンドをプレイしている。何を使っているか不明な相手に対して先攻のあなたの手札がこれだ:
《草むした墓/Overgrown Tomb》
《血の墓所/Blood Crypt》
《思考囲い/Thoughtseize》
《稲妻/Lightning Bolt》
《終止/Terminate》
《ヴェールのリリアナ/Liliana of the Veil》
《ヴェールのリリアナ/Liliana of the Veil》
このケースでは、僕ならBlood Cryptをタップインで出す。相手がなにもしなかった場合、2ターン目に囲いを撃ってOvergrown Tombをタップインで出す。何が何でも止めなければならない相手の1ターン目のプレイというのは想像できない。相手が死儀礼を出してきても2ターン目に稲妻で焼きつつ囲うことができる。相手から囲いが飛んできてもこちらの手札の冗長性は高く、突然死することはないだろう。相手がSerum VisionsをキャストしたりSpell Snareを構えたりしてきてもどうということはなく、たぶんその可能性について考えることもしないだろう。
次のターンに2マナ生物をトップした場合、1ターン目に囲いを我慢したことが少し裏目に出る。だがジャンドは急いでラッシュを仕掛ける必要のあるデッキではない。ライフは重要で、「土地で自分に2点、思考囲いで自分に2点、ボブをキャスト」のようなプレイが良いかどうかはマッチアップ次第だ。思考囲いを1ターン待つという小さなコストにより、2ライフと追加の情報が得られる。
効果的な思考囲い:何を抜くべきか
思考囲いをキャストすべきタイミングは、最終的に囲いの効果自体によって明らかになる。しかしここでは目指すべきゴールが明確になっていない。そんなときは相手の手札を見て、穴を作れるかどうかを考えよう。弱点を作り、それを活用することを考えるんだ。それができなかったとしても問題ない。何かに縛られたり辛抱することはない――最強のカードを抜くんだ!
モダンでは、青いミッドレンジやコントロールデッキに対して囲いで抜きたいカードランキングが自分の中にある。明らかな抜くべきカードが無い場合は瞬唱を落とす。瞬唱がない場合は青コマを抜く。青コマがない場合はSphonx’s Revelationのような終盤に強いカードを落とす。
相手をマナスクリューさせようとは決してしないというルールも自分に課している。経験上この作戦は信頼できない。親和に対してMox Opalや太鼓を抜くことはしない。土地1枚とSerum Visionsという手札をキープした相手に対しても、大量のプレッシャーを出して早期戦を仕掛けられる場合以外はたいてい瞬唱を落とす。相手は結局マナスクリューから抜けだしてしまい、もっと強力なカードを落とさなかったことを後悔することになる。もしスクリューから抜け出せないようなら、どのみち勝っている。
まとめ
この入門記事が少しでも思考囲いを理解する役に立つことを願っている。このカードは信じられないほどパワフルなツールで、全てのトーナメントプレイヤーはいつ、どのように使うかを知っているべきだ。一方で、囲いには相当量のリスクもつきまとう。
まとめると:
* 思考囲いはどんなデッキにも合うわけではない。
* 冗長性の高いデッキ相手やトップ勝負になりやすいゲームではサイドアウトしよう。
* 思考囲いで一番抜きたいカードが何なのか前もって考えよう。囲い以外では対処が難しいカードに回答するために使おう。
* 思考囲いをキャストしたら穴を作ろうとしよう。弱点を探してそこを攻めよう。
* 不確かな状況では、都合の良いときに思考囲いをキャストして相手の最強カードを抜くことで最高の価値を得よう。
このTipsを心に留めれば思考囲いといろいろなフォーマットで長く良い付き合いができるだろう。
ChannelFireballより。
ミラーマッチについて。
ミラーマッチ、お好きでしょうか?
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PV’s Playhouse―Mirror Match
By Paulo Vitor Damo da Rosa
27 Mar, 2013
http://www.channelfireball.com/articles/pvs-playhouse-mirror-match/
こんにちは!
今日はみんなから最もよくある質問の一つについて考えてみましょう――どうやってミラーマッチに勝つか。
「ミラーマッチ」とは、同じアーキタイプに属す2つのデッキ同士の対戦のことです。完全に同じデッキ同士の対戦(75枚ミラー)から、色は違えど同じ原理に基づくデッキ同士の対戦(例えば赤緑ランプと緑白ランプの対戦)まで含みます。
たいてい僕はミラーマッチが嫌いです。上手いプレイヤーの多くが、ミラーマッチは「スキル勝負になる」ので素晴らしいと考えていますが、ミラーかどうかに関わらずほとんどの試合でスキルは重要です。
僕がトーナメントに向けてあるデッキを選ぶのは、環境に対してそのデッキの勝率が良いからです。それを50%の勝率にしてしまいたくはありません。僕はトーナメントにローグデッキを持ち込まないので、必然的に多くのラウンドがミラーマッチになります。あなたもそうじゃないですか?
こちらにできるのと同じことを対戦相手もできるため、ミラーマッチでは普段自分のデッキでやっているのとは異なるアプローチが必要になることがあります。
今回の記事では、ミラーマッチをアグロ、コントロール、コンボそれぞれのミラーに分けて考えてみましょう。
アグロミラー
アグロデッキの重要な性質は、アグレッシブなカードの多くは(たとえそういう見方をしていなかったとしても)防御に使うことができる、という点です。Lightning Boltは3点ダメージを与えたりブロッカーを排除したりできますが、アタッカーを除去することもできるのです。Dreg Manglerは3点アタックができますが、ブロックもできるのです。
攻撃に使うのがとても効果的なカードもありますが、アグロミラーで勝つ秘訣はそれらのカードを防御に使うべきタイミングに気づくことです――そのようなカードのほぼ全てが防御に利用可能なのです。
別の言葉で言うとこうなります:アグロミラーで最も重要なのは、自分がアグロ側に立つべきか、コントロール側に立つべきか、あるいはダメージレースをすべきかの見極めだ。
Mike Floresはかつての記事で、「役割を見誤ること=敗北」と書きました。これはアグロミラーでは完全に成り立ちます。
では、自分がコントロールとビートダウンのどちらをすべきか、どうやって知るのでしょうか?2つの方法があります。
1つ目はボードを見て状況を把握するやり方です――相手が明らかにこちらを殺さんとしているなら、じっくりとコントロールプレイをする必要があります。この方法の問題は、手遅れになることがしばしばある、という点です――ブロックによるクリーチャー交換をしたいなら、ダメージを受けた後にクリーチャーを交換するのではなく2ターン前にやっておくべきだったのです。
「アグロミラーでは役割の変化はほとんど起こらない」ということに気を付けるのが重要です。多くの場合、コントロールを始めたプレイヤーは相手を倒すまでコントロールを続け、アグロ側に立ったプレイヤーはずっとアグロを続けます。
アグロミラーでコントロール側に立つとき、最初の判断ポイントまでに自分がコントロール側だと気づくことは必須です。アグロにスタートし、うまくいかないことに気づき、終盤になってコントロールに切り替える人がときどきいますが、最適ではありません。アグロにスタートして中盤でもアグロだったなら、アグロのままゲームを終わらせようとすべきでしょう。
この例として僕が気に入っているのが、世界選手権2010でのZooミラーです。
僕らは2つのデッキを調整していました――アグロZooと「大きな」Zooです。大きなZooの方が「ミラー」では有利だという想定のもとで誰もが動いていました。問題は、僕らがSmall ZooをBig Zooと同じやり方でプレイしていたことでした――アグロにスタートし、うまくいかなくなったらクリーチャーを焼いてボード上の優位を築こうとしていたのです。このやり方ではBig Zooのカードパワーに完全に圧倒され、どうやっても負けます。アグロにスタートし、うまくいかなくなったら「相手を」焼く、というように戦略を変えたところ、かなり勝てるようになりました。相手がタルモと巨大な聖遺の騎士を出していようが、本体が死んでしまえば関係ありません。
コントロール側とアグロ側のどちらを取るべきかを早期に知るためには、まずどちらが先攻かを見ましょう。先攻のプレイヤーはタイミングの面では相手より有利でカードは1枚少ないため、通常はアグロ側に傾きます。
次に自分の初手と序盤のプレイに目を向けましょう。自分の手札が2マナ生物1枚、火力1枚、ドラゴン1枚というものだった場合、2マナ生物と火力を防御的に使って、ドラゴンをプレイできるターンまで生き延びる確率を高めようとするでしょう。
自分の手札に速いクリーチャー2枚と火力2枚がある場合、それらを使って相手がドラゴンをプレイする前に倒してしまおうとするでしょう。ドラゴンは必ずしも初手には要りません――自分のデッキにドラゴンがあり終盤で勝てる可能性が高いことを知っていれば、ゲームを長引かせるプレイが可能です。こちらの初手はアグレッシブに見えるけれども相手がChampion of the Parish2連打からスタートしてきた場合は、そう、「できる限り早く」コントロール側に切り替えましょう。
ひとつの例: 僕は昨日ドラフトをしていました。マッチアップはシミック対ボロス――通常はアグロミラーです。僕は先攻でGreenside Watcherに続けてFrilled Oculusを展開、対戦相手は3ターン目にSkyknight Legionnaireを出し、「アタックせずに」エンドしました。僕がアタックし、彼はLegionnaireとこちらのWatcherを交換――普通はしようとは思わないプレイです。
対戦相手が自分をコントロール側だと考えている、もしくはダメージレースをしようとしているのは明らかです。なぜ彼はそう考えたのでしょう?僕は先攻で2体のクリーチャーを出していて既にライフアドバンテージを得ていました――僕が4ターン目にさらにクリーチャーを追加して攻勢を続けるだろうと誰でも考えるでしょう。
5ターン目、彼がAssemble the Legionをプレイして、あのブロックの意図が分かりました――彼は終盤を勝てるカードを持っていたため、ゲームを長引かせたかったのです。
このシナリオでは、Legionnaireのブロックが最適なプレイとなるための要因は全て場に出ていました。
サイド後は状況が少し変わります。昔から言われているように、何を差し置いてもアグロミラーでベストなアプローチは相手より少しだけ大きなカードを使うことです。過去にこの役割を担ってきたカードは例えば以下のようなものです:
このアプローチを採る場合、マナカーブを高くしすぎないように注意が必要です。小型生物を抜きThundermaw Hellkiteを入れて勝ちたいところですが、そのためには序盤の生物と除去を引き換えにしなければなりません。上回るのは「少しだけ」、上回りすぎないようにしましょう。
このアプローチを採れない場合、一つのやり方は速度を保つことです。どっちつかずになるのは良くありません。長期戦を勝てそうにないなら、長期戦は勝てません――完全に序盤戦に注力するのがベターです。
コントロールミラー
コントロールミラーは、役割を選べない点でアグロミラーと違います――多くの場合、両プレイヤーが相手をコントロールしようとすることになります。特定のアーキタイプはアグロに動かざるをえないでしょう(例えば緑白や赤白コントロールデッキはSphinx’s Revelationを使うデッキをビートしようとします)が、ふつうはうまくいきません。アグロが使うカードとは違い、コントロールのカードは当初の狙いとは別の役割として使うことができないのです。
Lightning Maulerを持っていれば、最適ではないかもしれませんがブロックに使うことができます。Supreme VerdictやTerminus、Devour Flesh、Dissipate、Sphinx’s Revelationのようなカードを持っている場合、決してアタックすることはできません。アグロデッキのコントロール側の動きを考えるのは簡単ですが、コントロールデッキのアグロ側の動きを考えるのが難しいのはこれが理由です。
脅威よりも回答が多く入っているため、アグロに動いてもう一方のコントロールプレイヤーを倒そうとする試みは成功しません。
コントロールミラーでは通常たくさんの不要牌といくつかの超重要牌が存在し、2つのことが試合の行方を決めます:その超重要牌と、土地です。
重要牌をめぐる争いをするために土地が必要です。カウンターを多く入れるほど土地の重要性は増します。どちらもカウンターを使っていないならジェイスのために必要な土地はちょうど5枚です。カウンターがある場合、ジェイスをプレイしつつそれを通すためにより多くの土地が必要となります。
最近のエスパーミラーではこの考えが極端に現れます。ゲーム1はNephalia Drownyard以外のカードはほぼ無意味です。カードは好きなだけ引けるしライフは好きなだけ得られますが、もし僕がNephaliaを3枚引いてあなたが1枚だとしたら、あなたはおそらく勝てません。
青白赤とエスパーとの対戦でも似たようなことが起こります。青白赤がトラフトとBoros Charmを入れたバージョンならアタックによって勝つこともできるでしょうが、もっとコントロール寄りのバージョンにはエスパーをビートするためのカードが入っておらず、Harvest Pyreを通すしかありません。ゲームはその1枚のカード(とSnapcaster MageとBoros Reckoner)に左右され、それ以外はほとんど無意味です。このマッチアップでは、ゲームがどんな展開になるのか、つまり3ターン目にはReckonerをキャストせず、致死量のHarvest Pyreを撃つときまで持っておくことになると1ターン目には気づく必要があります。
このことは古きサイカトグミラーを見ても明らかです。Carlos Romaoはカードを引くことを無視してUpheavalとMana Short戦争のためにカウンター呪文を温存する戦略を採用し、世界選手権を優勝しました。相手がFact or Fictionを何枚キャストしたかに関わらず、Upheavalさえ解決させてしまえば勝つことをCarlosは知っていました。それで彼はほとんどのリソースをUpheaval争いのために温存したのです。
大量のカウンターがある場合、初動と同じターンにカウンターを撃てる状況になるまで動きたくないことが多いでしょう。パワーカードはたいていコストが重く、守るのはとても大変です。「仕掛ける」ためには、とても軽い(Jace BelerenやDuress)か、あるいは相手のエンドにプレイできる(Vendilion CliqueやMana Short、巨大なSphinx’s Revelation)妨害のどちらかが必要になります。
例外は手札に土地がない状況です。土地が4枚で止まっているなら、とにかく4マナプレインズウォーカーはブッパするしかないでしょう。あと4ターン待ったところで、相手は7枚の土地を揃えてこちらは5枚が関の山、同等の条件で勝負するチャンスは失われてしまいます――お互いに土地4枚の状況で勝負した方がマシです。もし彼がカウンターを撃って自分のターンにパーマネントを出してきたとしても、こちらの回答からそのパーマネントを守るマナが彼には残りません(一方、相手が土地7枚を並べるまで待ってしまうと、彼は脅威を出したターンにそれを守ることが可能になってしまいます)。
アグロデッキのリストは似通ったものになることが多いのですが、コントロールのリストは自由度がとても高いです。スロットにはアグロに対してよく効くカードを入れることも、他のコントロールデッキに対してよく効くカードを入れることもできます。そのため、僕はコントロールミラーで最も重要なことは、デッキがどのように構築されているか、だと思っています。やろうと思えばコントロールミラーはゲーム開始前に勝つことすらできるのです。そのようにデッキを構築することによって。
抜けるカードがたくさんあり、マッチアップの改善度合いが本当に大きいのでサイドボーディングはとても大切です。いろいろなサイドボーディングの方向性があり得ますが、目指すべきゴールはキーカードを解決させることになります。これには方法が3つあります:
1) キーカードを増量して強引に通す。
2) Duress、Dispel、Negateのような軽い妨害スペルを使う。今のスタンダードではこれがベストな方法です。
3) プレッシャーを与えるカードを使う。プレッシャーというのは、それで相手を倒せるカードという意味ではなく、相手に動くことを強いるカードです。過去には、Anurid Brushhopper、Vendilion Clique、Cabal Interrogator、Scepter of Fugue、Jace Belerenなどが使われました――どれも軽くて相手に対処を迫るカードで、別のパーマネントを守ったりタップアウトした相手を咎めたりするプレイに繋がります。
「だけどPV、コントロールデッキには回答が山積みで、アグロに動こうとしてもふつうは失敗するってさっき言ってたばかりじゃないか?」
はい、たしかにそうですね。2つの理由でここでは状況が変わります:第一に、ゲーム2では回答手段が減ります。多くの人がサイド後は除去を抜くため、軽いクリーチャーが問題となる可能性が高くなり、相手の死に札を有効活用させてしまうことにはなりにくいのです。
二つ目の理由は、今のスタンダードのデッキにはタップアウトした相手を咎める手段があまり入っていないことです。昔のウェイク対サイカのマッチアップでは、サイカ側はDeep Analysisのためにタップアウトすることが不可能でした。MirariかMirari’s Wakeをキャストされて負けてしまうからです。しかしウェイク側は咎められることなくDeep Analysisを使うことができました。サイカは8マナ揃えるまでは咎めることができないからです。これはウェイク側の大きなアドバンテージでした。
現在はどのデッキもタップアウトを咎めることはありません。エスパーミラーでLingering Soulsをプレイして、トークンを除去するためのSupreme Verdictを相手に撃たせた場面を想像してみてください。このとき何をすればいいのでしょう?メインフェイズにX=3のSphinx’s Revelationを撃ちますか?それはうまくいきません。サイド後はジェイスやAssemble the Legionが考慮に入り、プレッシャーを与える戦略がより効果的になります。
コントロールミラーについてもう一つ言えるのは、初手にはプレッシャーがたくさん来ないということです。ドローゴー系のカードが多く来るはずで、さらにプレイヤーはマナを立てた相手にスペルをブッパはあまりしません。なので、あなたが手札にカウンターを持っていなかったとしても問題はないのです(もちろんサイド後にどんな脅威が想定されるかによりますが――例えば青白赤を相手にトラフトを出されただけで負けてしまう手札をキープしようとはしないでください)。
ゲームは非常に長引き、初手はゲーム全体を通して見ることになるカードのうちのごく一部に過ぎません。6枚の土地と1枚のスペルという手札をキープして、その後良くなることを期待するのはアリです。
コンボミラー
コンボデッキは妨害を入れたタイプと入れていないタイプに二分されます。どちらのプレイヤーも妨害を入れていないコンボミラーの場合、速い方が勝ちます――以上。
一方が妨害を入れていて、もう一方が入れていない場合、通常は妨害を入れている側が勝ちます。入れている側には何のプレッシャーもないのに対して、入れていない側は可能な限り早くコンボを決めなければなりません。どちらの側に立つにせよマリガンは積極的にすべきです――手札をじっくり整える十分な時間はありません。
面白いのは両プレイヤーが妨害を入れている場合で、このコンボミラーは「仕掛けるべきか?」という問題に帰着します。妨害がハンデス系なら相手の手札を見られるため、仕掛ける必要があるかどうかはかなり明確になります。カウンター系の妨害を使う場合は何枚のカウンターを持っているか、何回勝負できるか、将来の見込みが重要になります。
多くの状況で僕は仕掛けるべきだと言うでしょう――待つことで得られる恩恵は、同じだけのものを相手にも与えることになります。
待つ理由がある場合にだけ待つべきです。カウンターが手札にあり、コンボとカウンターのプレイを同じターンに行うための青マナソースがないときはおそらく青マナを待つべきでしょう――相手が仕掛けてきても止められるので急ぐ必要はありません。例えば相手のマナが詰まっているときは、1ターン内に2回のカウンターを撃つのに十分なマナソースを引かれる前に仕掛けてしまうのが良いでしょう。
ニュートラルな状況で非常に一般的なルールとして、手札のカウンター枚数(1ターン内にキャスト可能な枚数)が、かいくぐるべき相手のカウンター枚数以下なら仕掛けましょう。
こちらの手札のカウンターが0枚の場合、相手の1枚のカウンターで止められてしまうとしても相手より先に仕掛けようとするでしょう。
手札にカウンターが1枚あり、相手のカウンターは1枚もかいくぐれない(コンボとカウンターを同時に行うマナがない)場合、僕は待ちます。
手札のカウンターは1枚で、相手のカウンター1枚をかわせる場合は仕掛けます。手札のカウンターが2枚、かわせるのが1枚の場合は待ちます。
これは明らかに単純なルールでゲームの内容による部分も大きいですが、仕掛けるべきか待つべきかの手がかりがまったくないときには使えるでしょう(あるいはただブッパしましょう)。
サイドボーディングでは2つの汎用的なTIPSがあります:
1) お互いに同じ効果を及ぼすカードは抜く。あるカードが自分と相手両方の助けとなる場合、役に立ちません。例えばショーテルミラーではShow and Tellは間違いなく抜くべきです(Show and Tellで出して確実に勝てるカードがないのであれば)。
2) デッキを薄めすぎない。サイド後だってコンボデッキです。妨害として使えるVendilion CliqueのようなクリーチャーをサイドインするのはOKですが、大量のクリーチャーを入れるアグレッシブなサイドプランを持っている場合、通常は変形するよりもコンボであり続ける方がベターです。試合をどちらが先にコンボを決められるかという運ゲーにしないために「違う」デッキになりたくなるかもしれませんが、自分のデッキをただ弱くすることは得策でなく、多くの場合はそうなってしまいます。
残念ですがコンボミラーについてはこれ以上言えることはありません。
まとめましょう:
アグロミラー:自分がアグロ側なのかコントロール側なのかを早期に見極めよう。できればサイド後は相手より少しだけ大きくしよう。
コントロールミラー:そのマッチアップでのキーカードを見極め、それをケアしよう。軽い妨害か軽いプレッシャーをサイドインしてキーカードを解決させるために使おう。待てるのであれば待とう。
コンボミラー:たいていの場合は仕掛けよう。遅いハンドはキープせず、両者に同じ効果を及ぼすカードは抜き、コンボは抜かないようにしよう。
この記事を楽しんでもらえたら嬉しいです。
また来週!
ミラーマッチについて。
ミラーマッチ、お好きでしょうか?
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PV’s Playhouse―Mirror Match
By Paulo Vitor Damo da Rosa
27 Mar, 2013
http://www.channelfireball.com/articles/pvs-playhouse-mirror-match/
こんにちは!
今日はみんなから最もよくある質問の一つについて考えてみましょう――どうやってミラーマッチに勝つか。
「ミラーマッチ」とは、同じアーキタイプに属す2つのデッキ同士の対戦のことです。完全に同じデッキ同士の対戦(75枚ミラー)から、色は違えど同じ原理に基づくデッキ同士の対戦(例えば赤緑ランプと緑白ランプの対戦)まで含みます。
たいてい僕はミラーマッチが嫌いです。上手いプレイヤーの多くが、ミラーマッチは「スキル勝負になる」ので素晴らしいと考えていますが、ミラーかどうかに関わらずほとんどの試合でスキルは重要です。
僕がトーナメントに向けてあるデッキを選ぶのは、環境に対してそのデッキの勝率が良いからです。それを50%の勝率にしてしまいたくはありません。僕はトーナメントにローグデッキを持ち込まないので、必然的に多くのラウンドがミラーマッチになります。あなたもそうじゃないですか?
こちらにできるのと同じことを対戦相手もできるため、ミラーマッチでは普段自分のデッキでやっているのとは異なるアプローチが必要になることがあります。
今回の記事では、ミラーマッチをアグロ、コントロール、コンボそれぞれのミラーに分けて考えてみましょう。
アグロミラー
アグロデッキの重要な性質は、アグレッシブなカードの多くは(たとえそういう見方をしていなかったとしても)防御に使うことができる、という点です。Lightning Boltは3点ダメージを与えたりブロッカーを排除したりできますが、アタッカーを除去することもできるのです。Dreg Manglerは3点アタックができますが、ブロックもできるのです。
攻撃に使うのがとても効果的なカードもありますが、アグロミラーで勝つ秘訣はそれらのカードを防御に使うべきタイミングに気づくことです――そのようなカードのほぼ全てが防御に利用可能なのです。
別の言葉で言うとこうなります:アグロミラーで最も重要なのは、自分がアグロ側に立つべきか、コントロール側に立つべきか、あるいはダメージレースをすべきかの見極めだ。
Mike Floresはかつての記事で、「役割を見誤ること=敗北」と書きました。これはアグロミラーでは完全に成り立ちます。
では、自分がコントロールとビートダウンのどちらをすべきか、どうやって知るのでしょうか?2つの方法があります。
1つ目はボードを見て状況を把握するやり方です――相手が明らかにこちらを殺さんとしているなら、じっくりとコントロールプレイをする必要があります。この方法の問題は、手遅れになることがしばしばある、という点です――ブロックによるクリーチャー交換をしたいなら、ダメージを受けた後にクリーチャーを交換するのではなく2ターン前にやっておくべきだったのです。
「アグロミラーでは役割の変化はほとんど起こらない」ということに気を付けるのが重要です。多くの場合、コントロールを始めたプレイヤーは相手を倒すまでコントロールを続け、アグロ側に立ったプレイヤーはずっとアグロを続けます。
アグロミラーでコントロール側に立つとき、最初の判断ポイントまでに自分がコントロール側だと気づくことは必須です。アグロにスタートし、うまくいかないことに気づき、終盤になってコントロールに切り替える人がときどきいますが、最適ではありません。アグロにスタートして中盤でもアグロだったなら、アグロのままゲームを終わらせようとすべきでしょう。
この例として僕が気に入っているのが、世界選手権2010でのZooミラーです。
僕らは2つのデッキを調整していました――アグロZooと「大きな」Zooです。大きなZooの方が「ミラー」では有利だという想定のもとで誰もが動いていました。問題は、僕らがSmall ZooをBig Zooと同じやり方でプレイしていたことでした――アグロにスタートし、うまくいかなくなったらクリーチャーを焼いてボード上の優位を築こうとしていたのです。このやり方ではBig Zooのカードパワーに完全に圧倒され、どうやっても負けます。アグロにスタートし、うまくいかなくなったら「相手を」焼く、というように戦略を変えたところ、かなり勝てるようになりました。相手がタルモと巨大な聖遺の騎士を出していようが、本体が死んでしまえば関係ありません。
コントロール側とアグロ側のどちらを取るべきかを早期に知るためには、まずどちらが先攻かを見ましょう。先攻のプレイヤーはタイミングの面では相手より有利でカードは1枚少ないため、通常はアグロ側に傾きます。
次に自分の初手と序盤のプレイに目を向けましょう。自分の手札が2マナ生物1枚、火力1枚、ドラゴン1枚というものだった場合、2マナ生物と火力を防御的に使って、ドラゴンをプレイできるターンまで生き延びる確率を高めようとするでしょう。
自分の手札に速いクリーチャー2枚と火力2枚がある場合、それらを使って相手がドラゴンをプレイする前に倒してしまおうとするでしょう。ドラゴンは必ずしも初手には要りません――自分のデッキにドラゴンがあり終盤で勝てる可能性が高いことを知っていれば、ゲームを長引かせるプレイが可能です。こちらの初手はアグレッシブに見えるけれども相手がChampion of the Parish2連打からスタートしてきた場合は、そう、「できる限り早く」コントロール側に切り替えましょう。
ひとつの例: 僕は昨日ドラフトをしていました。マッチアップはシミック対ボロス――通常はアグロミラーです。僕は先攻でGreenside Watcherに続けてFrilled Oculusを展開、対戦相手は3ターン目にSkyknight Legionnaireを出し、「アタックせずに」エンドしました。僕がアタックし、彼はLegionnaireとこちらのWatcherを交換――普通はしようとは思わないプレイです。
対戦相手が自分をコントロール側だと考えている、もしくはダメージレースをしようとしているのは明らかです。なぜ彼はそう考えたのでしょう?僕は先攻で2体のクリーチャーを出していて既にライフアドバンテージを得ていました――僕が4ターン目にさらにクリーチャーを追加して攻勢を続けるだろうと誰でも考えるでしょう。
5ターン目、彼がAssemble the Legionをプレイして、あのブロックの意図が分かりました――彼は終盤を勝てるカードを持っていたため、ゲームを長引かせたかったのです。
このシナリオでは、Legionnaireのブロックが最適なプレイとなるための要因は全て場に出ていました。
サイド後は状況が少し変わります。昔から言われているように、何を差し置いてもアグロミラーでベストなアプローチは相手より少しだけ大きなカードを使うことです。過去にこの役割を担ってきたカードは例えば以下のようなものです:
《弧炎撒き/Arc-Slogger》
《イーオスのレインジャー/Ranger of Eos》
《最後のトロール、スラーン/Thrun, the Last Troll》
《遍歴の騎士、エルズペス/Elspeth, Knight-Errant》
《ギデオン・ジュラ/Gideon Jura》
《高原の狩りの達人/Huntmaster of the Fells》
《スラーグ牙/Thragtusk》
《雷口のヘルカイト/Thundermaw Hellkite》
このアプローチを採る場合、マナカーブを高くしすぎないように注意が必要です。小型生物を抜きThundermaw Hellkiteを入れて勝ちたいところですが、そのためには序盤の生物と除去を引き換えにしなければなりません。上回るのは「少しだけ」、上回りすぎないようにしましょう。
このアプローチを採れない場合、一つのやり方は速度を保つことです。どっちつかずになるのは良くありません。長期戦を勝てそうにないなら、長期戦は勝てません――完全に序盤戦に注力するのがベターです。
コントロールミラー
コントロールミラーは、役割を選べない点でアグロミラーと違います――多くの場合、両プレイヤーが相手をコントロールしようとすることになります。特定のアーキタイプはアグロに動かざるをえないでしょう(例えば緑白や赤白コントロールデッキはSphinx’s Revelationを使うデッキをビートしようとします)が、ふつうはうまくいきません。アグロが使うカードとは違い、コントロールのカードは当初の狙いとは別の役割として使うことができないのです。
Lightning Maulerを持っていれば、最適ではないかもしれませんがブロックに使うことができます。Supreme VerdictやTerminus、Devour Flesh、Dissipate、Sphinx’s Revelationのようなカードを持っている場合、決してアタックすることはできません。アグロデッキのコントロール側の動きを考えるのは簡単ですが、コントロールデッキのアグロ側の動きを考えるのが難しいのはこれが理由です。
脅威よりも回答が多く入っているため、アグロに動いてもう一方のコントロールプレイヤーを倒そうとする試みは成功しません。
コントロールミラーでは通常たくさんの不要牌といくつかの超重要牌が存在し、2つのことが試合の行方を決めます:その超重要牌と、土地です。
重要牌をめぐる争いをするために土地が必要です。カウンターを多く入れるほど土地の重要性は増します。どちらもカウンターを使っていないならジェイスのために必要な土地はちょうど5枚です。カウンターがある場合、ジェイスをプレイしつつそれを通すためにより多くの土地が必要となります。
最近のエスパーミラーではこの考えが極端に現れます。ゲーム1はNephalia Drownyard以外のカードはほぼ無意味です。カードは好きなだけ引けるしライフは好きなだけ得られますが、もし僕がNephaliaを3枚引いてあなたが1枚だとしたら、あなたはおそらく勝てません。
青白赤とエスパーとの対戦でも似たようなことが起こります。青白赤がトラフトとBoros Charmを入れたバージョンならアタックによって勝つこともできるでしょうが、もっとコントロール寄りのバージョンにはエスパーをビートするためのカードが入っておらず、Harvest Pyreを通すしかありません。ゲームはその1枚のカード(とSnapcaster MageとBoros Reckoner)に左右され、それ以外はほとんど無意味です。このマッチアップでは、ゲームがどんな展開になるのか、つまり3ターン目にはReckonerをキャストせず、致死量のHarvest Pyreを撃つときまで持っておくことになると1ターン目には気づく必要があります。
このことは古きサイカトグミラーを見ても明らかです。Carlos Romaoはカードを引くことを無視してUpheavalとMana Short戦争のためにカウンター呪文を温存する戦略を採用し、世界選手権を優勝しました。相手がFact or Fictionを何枚キャストしたかに関わらず、Upheavalさえ解決させてしまえば勝つことをCarlosは知っていました。それで彼はほとんどのリソースをUpheaval争いのために温存したのです。
大量のカウンターがある場合、初動と同じターンにカウンターを撃てる状況になるまで動きたくないことが多いでしょう。パワーカードはたいていコストが重く、守るのはとても大変です。「仕掛ける」ためには、とても軽い(Jace BelerenやDuress)か、あるいは相手のエンドにプレイできる(Vendilion CliqueやMana Short、巨大なSphinx’s Revelation)妨害のどちらかが必要になります。
例外は手札に土地がない状況です。土地が4枚で止まっているなら、とにかく4マナプレインズウォーカーはブッパするしかないでしょう。あと4ターン待ったところで、相手は7枚の土地を揃えてこちらは5枚が関の山、同等の条件で勝負するチャンスは失われてしまいます――お互いに土地4枚の状況で勝負した方がマシです。もし彼がカウンターを撃って自分のターンにパーマネントを出してきたとしても、こちらの回答からそのパーマネントを守るマナが彼には残りません(一方、相手が土地7枚を並べるまで待ってしまうと、彼は脅威を出したターンにそれを守ることが可能になってしまいます)。
アグロデッキのリストは似通ったものになることが多いのですが、コントロールのリストは自由度がとても高いです。スロットにはアグロに対してよく効くカードを入れることも、他のコントロールデッキに対してよく効くカードを入れることもできます。そのため、僕はコントロールミラーで最も重要なことは、デッキがどのように構築されているか、だと思っています。やろうと思えばコントロールミラーはゲーム開始前に勝つことすらできるのです。そのようにデッキを構築することによって。
抜けるカードがたくさんあり、マッチアップの改善度合いが本当に大きいのでサイドボーディングはとても大切です。いろいろなサイドボーディングの方向性があり得ますが、目指すべきゴールはキーカードを解決させることになります。これには方法が3つあります:
1) キーカードを増量して強引に通す。
2) Duress、Dispel、Negateのような軽い妨害スペルを使う。今のスタンダードではこれがベストな方法です。
3) プレッシャーを与えるカードを使う。プレッシャーというのは、それで相手を倒せるカードという意味ではなく、相手に動くことを強いるカードです。過去には、Anurid Brushhopper、Vendilion Clique、Cabal Interrogator、Scepter of Fugue、Jace Belerenなどが使われました――どれも軽くて相手に対処を迫るカードで、別のパーマネントを守ったりタップアウトした相手を咎めたりするプレイに繋がります。
「だけどPV、コントロールデッキには回答が山積みで、アグロに動こうとしてもふつうは失敗するってさっき言ってたばかりじゃないか?」
はい、たしかにそうですね。2つの理由でここでは状況が変わります:第一に、ゲーム2では回答手段が減ります。多くの人がサイド後は除去を抜くため、軽いクリーチャーが問題となる可能性が高くなり、相手の死に札を有効活用させてしまうことにはなりにくいのです。
二つ目の理由は、今のスタンダードのデッキにはタップアウトした相手を咎める手段があまり入っていないことです。昔のウェイク対サイカのマッチアップでは、サイカ側はDeep Analysisのためにタップアウトすることが不可能でした。MirariかMirari’s Wakeをキャストされて負けてしまうからです。しかしウェイク側は咎められることなくDeep Analysisを使うことができました。サイカは8マナ揃えるまでは咎めることができないからです。これはウェイク側の大きなアドバンテージでした。
現在はどのデッキもタップアウトを咎めることはありません。エスパーミラーでLingering Soulsをプレイして、トークンを除去するためのSupreme Verdictを相手に撃たせた場面を想像してみてください。このとき何をすればいいのでしょう?メインフェイズにX=3のSphinx’s Revelationを撃ちますか?それはうまくいきません。サイド後はジェイスやAssemble the Legionが考慮に入り、プレッシャーを与える戦略がより効果的になります。
コントロールミラーについてもう一つ言えるのは、初手にはプレッシャーがたくさん来ないということです。ドローゴー系のカードが多く来るはずで、さらにプレイヤーはマナを立てた相手にスペルをブッパはあまりしません。なので、あなたが手札にカウンターを持っていなかったとしても問題はないのです(もちろんサイド後にどんな脅威が想定されるかによりますが――例えば青白赤を相手にトラフトを出されただけで負けてしまう手札をキープしようとはしないでください)。
ゲームは非常に長引き、初手はゲーム全体を通して見ることになるカードのうちのごく一部に過ぎません。6枚の土地と1枚のスペルという手札をキープして、その後良くなることを期待するのはアリです。
コンボミラー
コンボデッキは妨害を入れたタイプと入れていないタイプに二分されます。どちらのプレイヤーも妨害を入れていないコンボミラーの場合、速い方が勝ちます――以上。
一方が妨害を入れていて、もう一方が入れていない場合、通常は妨害を入れている側が勝ちます。入れている側には何のプレッシャーもないのに対して、入れていない側は可能な限り早くコンボを決めなければなりません。どちらの側に立つにせよマリガンは積極的にすべきです――手札をじっくり整える十分な時間はありません。
面白いのは両プレイヤーが妨害を入れている場合で、このコンボミラーは「仕掛けるべきか?」という問題に帰着します。妨害がハンデス系なら相手の手札を見られるため、仕掛ける必要があるかどうかはかなり明確になります。カウンター系の妨害を使う場合は何枚のカウンターを持っているか、何回勝負できるか、将来の見込みが重要になります。
多くの状況で僕は仕掛けるべきだと言うでしょう――待つことで得られる恩恵は、同じだけのものを相手にも与えることになります。
待つ理由がある場合にだけ待つべきです。カウンターが手札にあり、コンボとカウンターのプレイを同じターンに行うための青マナソースがないときはおそらく青マナを待つべきでしょう――相手が仕掛けてきても止められるので急ぐ必要はありません。例えば相手のマナが詰まっているときは、1ターン内に2回のカウンターを撃つのに十分なマナソースを引かれる前に仕掛けてしまうのが良いでしょう。
ニュートラルな状況で非常に一般的なルールとして、手札のカウンター枚数(1ターン内にキャスト可能な枚数)が、かいくぐるべき相手のカウンター枚数以下なら仕掛けましょう。
こちらの手札のカウンターが0枚の場合、相手の1枚のカウンターで止められてしまうとしても相手より先に仕掛けようとするでしょう。
手札にカウンターが1枚あり、相手のカウンターは1枚もかいくぐれない(コンボとカウンターを同時に行うマナがない)場合、僕は待ちます。
手札のカウンターは1枚で、相手のカウンター1枚をかわせる場合は仕掛けます。手札のカウンターが2枚、かわせるのが1枚の場合は待ちます。
これは明らかに単純なルールでゲームの内容による部分も大きいですが、仕掛けるべきか待つべきかの手がかりがまったくないときには使えるでしょう(あるいはただブッパしましょう)。
サイドボーディングでは2つの汎用的なTIPSがあります:
1) お互いに同じ効果を及ぼすカードは抜く。あるカードが自分と相手両方の助けとなる場合、役に立ちません。例えばショーテルミラーではShow and Tellは間違いなく抜くべきです(Show and Tellで出して確実に勝てるカードがないのであれば)。
2) デッキを薄めすぎない。サイド後だってコンボデッキです。妨害として使えるVendilion CliqueのようなクリーチャーをサイドインするのはOKですが、大量のクリーチャーを入れるアグレッシブなサイドプランを持っている場合、通常は変形するよりもコンボであり続ける方がベターです。試合をどちらが先にコンボを決められるかという運ゲーにしないために「違う」デッキになりたくなるかもしれませんが、自分のデッキをただ弱くすることは得策でなく、多くの場合はそうなってしまいます。
残念ですがコンボミラーについてはこれ以上言えることはありません。
まとめましょう:
アグロミラー:自分がアグロ側なのかコントロール側なのかを早期に見極めよう。できればサイド後は相手より少しだけ大きくしよう。
コントロールミラー:そのマッチアップでのキーカードを見極め、それをケアしよう。軽い妨害か軽いプレッシャーをサイドインしてキーカードを解決させるために使おう。待てるのであれば待とう。
コンボミラー:たいていの場合は仕掛けよう。遅いハンドはキープせず、両者に同じ効果を及ぼすカードは抜き、コンボは抜かないようにしよう。
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また来週!
ChannelFireBallより。
しゃあないキープ、マジック難しい、もうマジックやめる等に関わるティルトの話。
身につまされる記事でした。
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Your Inner Monster
By Roberto Gonzales
8 Apr, 2013
http://www.channelfireball.com/home/your-inner-monster/
奴はいる。
鍵をかけて閉じ込めたと思ったとたん、奴は逃げ出す。逃げ出すばかりか、そこらじゅうを走り回りあちこちで大混乱を引き起こす。
奴の狙いは全てをめちゃくちゃに破壊することだけだ。心を持たず、主人もいない。それどころか、奴は私たちを従えている。
奴は何者か?
奴とは何なのか?
逆上だ。
ポーカーなど様々なゲームで、奴はティルトと呼ばれている。ティルトに支配された状態でゲームをプレイすべきではない。
ティルトは以下のように定義されるためだ:
「予期した(得る権利があると思っていた)結果に反する、極端に良い/悪い出来事により、目の前のタスクに集中できなくなること」
全ての人、本当にあらゆる人がどこかでティルトを経験したことがあるはずだ。
ポーカープレイヤーに対してはもう少し突っ込んだことが言える――事前に計算可能な確率があり、確率が高いはずの結果にならなかったとき、勝った側と負けた側の両プレイヤーがティルトに陥るリスクがある。そう、両プレイヤーが。
ティルトには2つの側面があり、これはほとんどの記事が(世の中のPhDたちでさえも)見逃している:正と負のティルトだ。
性格によってどちらのティルトになりやすいかが変わる。
数が多いのは負のティルトで、マジックでよくあるのはマリガンティルトだ。
あなたはゲーム3をプレイしているとしよう。シャッフルして、輝かしい7枚のカードを引く。見ると土地がない。この手札から始めて動けるデッキではない。
マリガンが必要だ。
あなたの経験が浅ければ、これがティルトのきっかけになり得る。ほとんどのマジックプレイヤーは7枚のカードでゲームを始める権利があると思っている。権利なしにティルトは生じ得ない。
いま6枚のカードを引き直し、今度は土地が1枚、そして手札にある他のカードはどれも土地と色が合わない。あなたのティルトメーターの針が上昇する。血が煮えたぎるのを感じ始めるかもしれない。突然、世界はカウチであなたはリック・ジェイムスとなる(※訳注:Kanye Westの曲『To The World』の歌詞 "The whole world is a couch, bitch I’m Rick James tonight" より)。
紙のマジックをプレイしている場合、あなたは頭を振り、これをキープしてチャンスに賭けるべきかどうか考え始める。それがほぼ敗北に繋がることを知りつつ。
このような思考を始めたら、あなたは2段階のうちの1段目に差し掛かっていることになる。「正当化」だ。
マリガンティルト時の正当化は、ほとんどのマジックプレイヤーがあっさり陥る大きな落とし穴だ。数えきれないほどのプレイヤーがこの状況になり、「しょうがない、キープしよう」と言う。
多くの場合、これは明らかに間違っている。マリガンして6枚になり、手札の土地で残りのカードをキャストできないなら、あなたは実質何枚のカードを持っていることになるだろう?1枚?それとも1と1/3枚?
もちろん、完璧な最高のドローをして必要な土地を手に入れる確率はゼロじゃない。でも通常それは起こらない。マリガンティルト時の正当化によって良い判断を下せなくなるのはマズイ。
ある夜、私はPaul Cheonの動画配信を見ていた。そこで彼は、マリガンティルトに打ち勝つさまをまざまざと見せつけてくれた。
ゲーム2、彼はダブマリせざるを得なくなった――土地がなかったからではなく、相手の人間リアニデッキへの干渉手段がなかったためだ。彼の7枚、6枚、そして5枚の手札はいずれも正当化すれば簡単にキープできる内容で、動画を見ている人の多くも「キープしろ」と言っていた。彼はプロらしく肩をすくめ、有効牌のある4枚のカードでキープ。結局彼はゲームに勝利した。
彼は7枚の手札で始める権利に惑わされて安易な決断をすることはなかった。
マリガンティルトの2段階目は「絶望」だ。ここにくると、両プレイヤーが同じ数の手札で始める公平なマジックのゲームをする、というあなたの期待は消え去る。起きていることには気を配らず、ただこの状況をどう終わらせるかを考えるようになる。イライラし、怒りがこみ上げ、災難に見舞われた悲しみに包まれる。対戦相手はときおりこのハプニングに気まずさを覚え、気乗りしないふうに「こういう勝ち方は嫌だね」と言う。MOでは、シャッフラーに対する思いつくかぎりの胸の悪くなるような罵詈雑言をプレイヤーがタイプするのがこの段階だ。大きなトーナメントでさえ、ここまでくると多くのプレイヤーが即投了してしまう(プレイテストではほぼ確実に投了だね)。失敗にがっかりし、負の感情がやる気をなくさせる。
ここに私がマジックキャリアの最初の頃に教わったレッスンがある:
「何が起きようと、致死ダメージを受けるかデッキからカードを引けなくなるまで敗北することはない」
絶望にとらわれると、あなたは最善を尽くすことをやめる。プレイ手順や現局面での勝率に集中しなくなる。良いゲームをしようとしなくなる。
7枚のカードと良い精神状態があればあなたの勝率は平均より高いとしても、例えばカードが5枚で心に暗雲立ち込めているとき、どれほどの勝率があるだろう?おそらくほとんどゼロだ。
より良いマジックプレイヤーになるためのイロハの一つは、盤面の自分側も相手側も100%コントロールするのは不可能だということだ。良いプレイヤーならあり得る動きを100%見通せるチェスとは違う。マジックはそのように作られてはいない。
ある時にはプロポーカープレイヤーのように、個々のゲームでの出来事と自分の感情を切り離さなければならない。そうすれば、結末に振り回されず、最も高確率なプレイは何かを考えて動けるようになる。
多くのプロが次のように言うのを聞くだろう:「このプレイをして、もし相手があれを持っていたら使ってくる。そうされた場合はどのみち負けるんだから、やろう。」
マジックのゲームの多くは、計算をして、確率の高いプレイをするプレイヤーが勝利する。常に成り立つわけではないけれど、それゆえに「確率の高い」プレイと呼ばれている。
誰にとってもティルトマネジメントは難しい。私もそうだ。
私はPTラヴニカへの回帰で0-3したドラフトデッキをゴミ箱に捨ててしまった。いくつかの強いカード、Deathrite ShamanとフォイルのBlood Cryptが入っていたにも関わらず。PTで3ラウンド立て続けにマナスクリューした怒りを抑えることができなかった。
怒りは人に馬鹿なことをさせる。
実は幸運も同じだ。
ティルトの残り半分は、正のティルトだ。私たちはティルトを負の感情とばかり結びつけるので、正のティルトについて考える人は少ない。
正のティルトは負のティルトと同じものだ。しかし、悪い出来事がまずいプレイを引き起こすのではなく、良い出来事が馬鹿なプレイを生む。私はこれを宝くじティルトと呼んでいる。
宝くじに当選することで人は地獄に落ちる。人生で何ペニー稼いだかを数えていたような男が突如2000万ドルを手に入れ、全てが吹き飛ぶ。宝くじに当たるような、バカバカしいほど良い出来事が起きることで彼は自分が何者であるかを忘れ、正しい思考ができなくなる。アメフトでは、(ウォーレン・サップ、ヴィンス・ヤング、トラヴィス・ヘンリーのように)大金を手にした選手がその使い方について正常な思考ができなくなる例をたくさん見ることができる。彼らはその幸運や財産は決して底をつかないと考えてしまう。
マジックでは、良い(ラッキーな)ときにまともでない手札をキープしてしまうのは宝くじティルトだ。GPピッツバーグのラウンド10で戦った相手は、RRとWWが必要なハンドをキープしたと試合後に言ってきた。その手札には赤マナも白マナもなかったけど、今日はツイてるからキープしたとのことだ。私たちは2人とも8-1でこのラウンドを迎えており、彼は明らかに宝くじティルトに陥っていた。さらに悪いことに、彼は幸運にも必要な色マナを手に入れ、この勝負に勝った。
その日ずっと幸運が続いてきたなら、そのまま乗っていけばいいのだろうか?
違う。
それまでの運の良さ/悪さは、現在のあなたの意思決定に影響を与えるべきではない。どの出来事も独立している。
ポーカーでは、アウツ(※訳注:現局面での勝率)を考えずに突飛なベットをするプレイヤーは、プロプレイヤーの大好物だ。丁寧なプレイをすればそのうち彼らの手持ち全額を奪えることをプロは知っているからだ。マジックでも同じことが起きる。幸運がしばらく続くことはある。しかし、いずれプラマイゼロに近づく。
私たちはふつう、賞金を勝ち取る、あるいはプロツアーで初日を抜ける、のようなかなり良いことを夢見てスタートする。マジックキャリアを重ねると、「負け始める」という成長のきっかけにぶつかる。ふいに疑念が浮かび、私たちはこう考える、「マジックは難しい。」次のPTQでもうまくいかない。「マジックは本当に難しい。想像してたよりぜんぜん大変だ。」おそらく大した成果のない1年を終え、こう考え始める、「こんなことやる意味があるのか?」
意味がないこともある。それは、自分の中で設定した目標が不適切なためだ。もし私が世界最高のバスケットボール選手になるという目標を設定したとして、身長は5フィート8インチしかなく、運動不足で、バスケットボールに関するスキルは何も持っていない。すぐには目標に近づけない可能性が高い。
最高のプレイヤーに明日なるという夢は捨てるべきだろうか?おそらくそうだ。夢に向けて成長するのをやめるべきだろうか?それは絶対に違う。
多くの場合、実現不可能な目標からもっと現実的な目標に切り替えることで精神的にも肉体的にも健康でいられるようになる。
マジックで言えば、プロツアーに出られなかったからといってイライラしないことだ。チャレンジングだが達成可能なところに目標を調整しよう。まずはPTQで1勝するところから始め、それからトップ8に目標を移す、というように。
実現不可能な目標から受ける継続的なストレスは実際に健康に悪影響を与える。十代の若者90人を1年間調査した研究では、実現不可能な目標を捨てられなかった人は炎症反応の指標であるC反応性蛋白の増加が確認された。これは心臓病や糖尿病、早期老化のような健康リスクの上昇に繋がる。
死に近づきたくはないだろう?完全に諦めた方が間違いなく良い。
マジックの上達はゆっくりとしたプロセスだ。私はマジックを19年間プレイしてきたが、トーナメントに出るたびに毎回新たなことを学ぶように思う。成功するには継続的にプレイを修正していく必要がある。
問題は、マジックのような変化の激しい環境で勉強するのはとても大変だということだ――うまくやっていくためのスキルを身に付ける体系的なカリキュラムは存在しない。必死に頑張ったとしても、伸び悩む時期に直面することになるだろう。間違いなくそれで普通だ。トーナメントごと、年ごとの上達幅は小さいのが普通だ。
NBA選手レブロン・ジェームスの過去6年のシュート成功率を例に挙げよう。レブロンは6年続けてフィールドゴール成功率(※訳注:フリースローを除いた成功率)を向上させており、今シーズンは56.5%というとてつもない数字にまで上昇した。2003年には41.7%だった。この信じがたい14.8%の向上は一夜にしてなされたわけではない。一歩一歩の成長が一夜漬けをいずれ上回ることを理解し、努力することが必要だ。
思うように上達しないフラストレーションでティルトに陥らないようにしよう。
私たちは大きな舞台でのサクセスストーリーに心を奪われる。プロツアーやPTQを勝った人の記事に引き寄せられる。
成功者の行動に価値を置き、数多くの失敗者に目を向けないこの落とし穴は「生き残りバイアス」と呼ばれる。PTQを勝った人が1人いれば、数えきれないほどの勝てなかった人がいる。彼らの話が重要ではなく、そこから学ぶものがないなどということはない。彼らがいかにティルトと戦ったか、あるいは戦わなかったかを学ぼう。
ティルトマネジメントは期待のマネジメントだ。挑戦しよう、現実的な目標に挑戦しよう。マジックとはどんなゲームなのか、自分のスキルがどんなものなのか、現実を理解しティルトの兆候に気づけたとき、ティルトはあなたを支配できなくなる。
5回マナスクリューして、カードを全て売り払ってマジックをやめたくなるまでの間は。
奴は再びそこにいる。
Roberto
しゃあないキープ、マジック難しい、もうマジックやめる等に関わるティルトの話。
身につまされる記事でした。
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Your Inner Monster
By Roberto Gonzales
8 Apr, 2013
http://www.channelfireball.com/home/your-inner-monster/
奴はいる。
鍵をかけて閉じ込めたと思ったとたん、奴は逃げ出す。逃げ出すばかりか、そこらじゅうを走り回りあちこちで大混乱を引き起こす。
奴の狙いは全てをめちゃくちゃに破壊することだけだ。心を持たず、主人もいない。それどころか、奴は私たちを従えている。
奴は何者か?
奴とは何なのか?
逆上だ。
ポーカーなど様々なゲームで、奴はティルトと呼ばれている。ティルトに支配された状態でゲームをプレイすべきではない。
ティルトは以下のように定義されるためだ:
「予期した(得る権利があると思っていた)結果に反する、極端に良い/悪い出来事により、目の前のタスクに集中できなくなること」
全ての人、本当にあらゆる人がどこかでティルトを経験したことがあるはずだ。
ポーカープレイヤーに対してはもう少し突っ込んだことが言える――事前に計算可能な確率があり、確率が高いはずの結果にならなかったとき、勝った側と負けた側の両プレイヤーがティルトに陥るリスクがある。そう、両プレイヤーが。
ティルトには2つの側面があり、これはほとんどの記事が(世の中のPhDたちでさえも)見逃している:正と負のティルトだ。
性格によってどちらのティルトになりやすいかが変わる。
数が多いのは負のティルトで、マジックでよくあるのはマリガンティルトだ。
あなたはゲーム3をプレイしているとしよう。シャッフルして、輝かしい7枚のカードを引く。見ると土地がない。この手札から始めて動けるデッキではない。
マリガンが必要だ。
あなたの経験が浅ければ、これがティルトのきっかけになり得る。ほとんどのマジックプレイヤーは7枚のカードでゲームを始める権利があると思っている。権利なしにティルトは生じ得ない。
いま6枚のカードを引き直し、今度は土地が1枚、そして手札にある他のカードはどれも土地と色が合わない。あなたのティルトメーターの針が上昇する。血が煮えたぎるのを感じ始めるかもしれない。突然、世界はカウチであなたはリック・ジェイムスとなる(※訳注:Kanye Westの曲『To The World』の歌詞 "The whole world is a couch, bitch I’m Rick James tonight" より)。
紙のマジックをプレイしている場合、あなたは頭を振り、これをキープしてチャンスに賭けるべきかどうか考え始める。それがほぼ敗北に繋がることを知りつつ。
このような思考を始めたら、あなたは2段階のうちの1段目に差し掛かっていることになる。「正当化」だ。
マリガンティルト時の正当化は、ほとんどのマジックプレイヤーがあっさり陥る大きな落とし穴だ。数えきれないほどのプレイヤーがこの状況になり、「しょうがない、キープしよう」と言う。
多くの場合、これは明らかに間違っている。マリガンして6枚になり、手札の土地で残りのカードをキャストできないなら、あなたは実質何枚のカードを持っていることになるだろう?1枚?それとも1と1/3枚?
もちろん、完璧な最高のドローをして必要な土地を手に入れる確率はゼロじゃない。でも通常それは起こらない。マリガンティルト時の正当化によって良い判断を下せなくなるのはマズイ。
ある夜、私はPaul Cheonの動画配信を見ていた。そこで彼は、マリガンティルトに打ち勝つさまをまざまざと見せつけてくれた。
ゲーム2、彼はダブマリせざるを得なくなった――土地がなかったからではなく、相手の人間リアニデッキへの干渉手段がなかったためだ。彼の7枚、6枚、そして5枚の手札はいずれも正当化すれば簡単にキープできる内容で、動画を見ている人の多くも「キープしろ」と言っていた。彼はプロらしく肩をすくめ、有効牌のある4枚のカードでキープ。結局彼はゲームに勝利した。
彼は7枚の手札で始める権利に惑わされて安易な決断をすることはなかった。
マリガンティルトの2段階目は「絶望」だ。ここにくると、両プレイヤーが同じ数の手札で始める公平なマジックのゲームをする、というあなたの期待は消え去る。起きていることには気を配らず、ただこの状況をどう終わらせるかを考えるようになる。イライラし、怒りがこみ上げ、災難に見舞われた悲しみに包まれる。対戦相手はときおりこのハプニングに気まずさを覚え、気乗りしないふうに「こういう勝ち方は嫌だね」と言う。MOでは、シャッフラーに対する思いつくかぎりの胸の悪くなるような罵詈雑言をプレイヤーがタイプするのがこの段階だ。大きなトーナメントでさえ、ここまでくると多くのプレイヤーが即投了してしまう(プレイテストではほぼ確実に投了だね)。失敗にがっかりし、負の感情がやる気をなくさせる。
ここに私がマジックキャリアの最初の頃に教わったレッスンがある:
「何が起きようと、致死ダメージを受けるかデッキからカードを引けなくなるまで敗北することはない」
絶望にとらわれると、あなたは最善を尽くすことをやめる。プレイ手順や現局面での勝率に集中しなくなる。良いゲームをしようとしなくなる。
7枚のカードと良い精神状態があればあなたの勝率は平均より高いとしても、例えばカードが5枚で心に暗雲立ち込めているとき、どれほどの勝率があるだろう?おそらくほとんどゼロだ。
より良いマジックプレイヤーになるためのイロハの一つは、盤面の自分側も相手側も100%コントロールするのは不可能だということだ。良いプレイヤーならあり得る動きを100%見通せるチェスとは違う。マジックはそのように作られてはいない。
ある時にはプロポーカープレイヤーのように、個々のゲームでの出来事と自分の感情を切り離さなければならない。そうすれば、結末に振り回されず、最も高確率なプレイは何かを考えて動けるようになる。
多くのプロが次のように言うのを聞くだろう:「このプレイをして、もし相手があれを持っていたら使ってくる。そうされた場合はどのみち負けるんだから、やろう。」
マジックのゲームの多くは、計算をして、確率の高いプレイをするプレイヤーが勝利する。常に成り立つわけではないけれど、それゆえに「確率の高い」プレイと呼ばれている。
誰にとってもティルトマネジメントは難しい。私もそうだ。
私はPTラヴニカへの回帰で0-3したドラフトデッキをゴミ箱に捨ててしまった。いくつかの強いカード、Deathrite ShamanとフォイルのBlood Cryptが入っていたにも関わらず。PTで3ラウンド立て続けにマナスクリューした怒りを抑えることができなかった。
怒りは人に馬鹿なことをさせる。
実は幸運も同じだ。
ティルトの残り半分は、正のティルトだ。私たちはティルトを負の感情とばかり結びつけるので、正のティルトについて考える人は少ない。
正のティルトは負のティルトと同じものだ。しかし、悪い出来事がまずいプレイを引き起こすのではなく、良い出来事が馬鹿なプレイを生む。私はこれを宝くじティルトと呼んでいる。
宝くじに当選することで人は地獄に落ちる。人生で何ペニー稼いだかを数えていたような男が突如2000万ドルを手に入れ、全てが吹き飛ぶ。宝くじに当たるような、バカバカしいほど良い出来事が起きることで彼は自分が何者であるかを忘れ、正しい思考ができなくなる。アメフトでは、(ウォーレン・サップ、ヴィンス・ヤング、トラヴィス・ヘンリーのように)大金を手にした選手がその使い方について正常な思考ができなくなる例をたくさん見ることができる。彼らはその幸運や財産は決して底をつかないと考えてしまう。
マジックでは、良い(ラッキーな)ときにまともでない手札をキープしてしまうのは宝くじティルトだ。GPピッツバーグのラウンド10で戦った相手は、RRとWWが必要なハンドをキープしたと試合後に言ってきた。その手札には赤マナも白マナもなかったけど、今日はツイてるからキープしたとのことだ。私たちは2人とも8-1でこのラウンドを迎えており、彼は明らかに宝くじティルトに陥っていた。さらに悪いことに、彼は幸運にも必要な色マナを手に入れ、この勝負に勝った。
その日ずっと幸運が続いてきたなら、そのまま乗っていけばいいのだろうか?
違う。
それまでの運の良さ/悪さは、現在のあなたの意思決定に影響を与えるべきではない。どの出来事も独立している。
ポーカーでは、アウツ(※訳注:現局面での勝率)を考えずに突飛なベットをするプレイヤーは、プロプレイヤーの大好物だ。丁寧なプレイをすればそのうち彼らの手持ち全額を奪えることをプロは知っているからだ。マジックでも同じことが起きる。幸運がしばらく続くことはある。しかし、いずれプラマイゼロに近づく。
私たちはふつう、賞金を勝ち取る、あるいはプロツアーで初日を抜ける、のようなかなり良いことを夢見てスタートする。マジックキャリアを重ねると、「負け始める」という成長のきっかけにぶつかる。ふいに疑念が浮かび、私たちはこう考える、「マジックは難しい。」次のPTQでもうまくいかない。「マジックは本当に難しい。想像してたよりぜんぜん大変だ。」おそらく大した成果のない1年を終え、こう考え始める、「こんなことやる意味があるのか?」
意味がないこともある。それは、自分の中で設定した目標が不適切なためだ。もし私が世界最高のバスケットボール選手になるという目標を設定したとして、身長は5フィート8インチしかなく、運動不足で、バスケットボールに関するスキルは何も持っていない。すぐには目標に近づけない可能性が高い。
最高のプレイヤーに明日なるという夢は捨てるべきだろうか?おそらくそうだ。夢に向けて成長するのをやめるべきだろうか?それは絶対に違う。
多くの場合、実現不可能な目標からもっと現実的な目標に切り替えることで精神的にも肉体的にも健康でいられるようになる。
マジックで言えば、プロツアーに出られなかったからといってイライラしないことだ。チャレンジングだが達成可能なところに目標を調整しよう。まずはPTQで1勝するところから始め、それからトップ8に目標を移す、というように。
実現不可能な目標から受ける継続的なストレスは実際に健康に悪影響を与える。十代の若者90人を1年間調査した研究では、実現不可能な目標を捨てられなかった人は炎症反応の指標であるC反応性蛋白の増加が確認された。これは心臓病や糖尿病、早期老化のような健康リスクの上昇に繋がる。
死に近づきたくはないだろう?完全に諦めた方が間違いなく良い。
マジックの上達はゆっくりとしたプロセスだ。私はマジックを19年間プレイしてきたが、トーナメントに出るたびに毎回新たなことを学ぶように思う。成功するには継続的にプレイを修正していく必要がある。
問題は、マジックのような変化の激しい環境で勉強するのはとても大変だということだ――うまくやっていくためのスキルを身に付ける体系的なカリキュラムは存在しない。必死に頑張ったとしても、伸び悩む時期に直面することになるだろう。間違いなくそれで普通だ。トーナメントごと、年ごとの上達幅は小さいのが普通だ。
NBA選手レブロン・ジェームスの過去6年のシュート成功率を例に挙げよう。レブロンは6年続けてフィールドゴール成功率(※訳注:フリースローを除いた成功率)を向上させており、今シーズンは56.5%というとてつもない数字にまで上昇した。2003年には41.7%だった。この信じがたい14.8%の向上は一夜にしてなされたわけではない。一歩一歩の成長が一夜漬けをいずれ上回ることを理解し、努力することが必要だ。
思うように上達しないフラストレーションでティルトに陥らないようにしよう。
私たちは大きな舞台でのサクセスストーリーに心を奪われる。プロツアーやPTQを勝った人の記事に引き寄せられる。
成功者の行動に価値を置き、数多くの失敗者に目を向けないこの落とし穴は「生き残りバイアス」と呼ばれる。PTQを勝った人が1人いれば、数えきれないほどの勝てなかった人がいる。彼らの話が重要ではなく、そこから学ぶものがないなどということはない。彼らがいかにティルトと戦ったか、あるいは戦わなかったかを学ぼう。
ティルトマネジメントは期待のマネジメントだ。挑戦しよう、現実的な目標に挑戦しよう。マジックとはどんなゲームなのか、自分のスキルがどんなものなのか、現実を理解しティルトの兆候に気づけたとき、ティルトはあなたを支配できなくなる。
5回マナスクリューして、カードを全て売り払ってマジックをやめたくなるまでの間は。
奴は再びそこにいる。
Roberto
【翻訳】One Word - Jim Davis
2013年3月20日 翻訳(プレイング) コメント (11)StarCityGamesより。
大事な一単語。
久しぶりになってしまいました。
翻訳どころか原文を読む時間もなかなか取れずペースは大幅ダウンですが、やる気は消えていませんのでなんとか続けていければと思っています。
戦略についての記事をいくつか訳しましたが、今回の記事はとても読みやすかったです。
どの記事も見方は違えど同じものを見ているような気がしますね。
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One Word
JIM DAVIS
2013/3/12
http://www.starcitygames.com/article/25815_One-Word.html
僕の見る限り、マジックプレイヤーには3種類いる:
A. マジックが上手くなりたい人。
B. 本気ではなく、ただマジックをプレイするのを楽しみたい人。
C. マジックが上手くなりたいと思っており、そう口にも出すが、実際には本気ではなく、ただマジックをプレイするのを楽しみたい人。
悲しいかな、最も数が多いのはカテゴリCだ。
これはいつだって目にする。プレイヤーたちは上手くなりたいと言う――今度のPTQを勝ちたい、上手くなって今度のGPでマネーフィニッシュしたい。いや、いずれFNMでトップ8に入りたい、ぐらいのものかもしれない。彼らはやりたいことがあるにもかかわらず、それを達成するために不可欠なステップを踏もうとしない――目標を固めることをしないんだ。
彼らが上手くなりたいというのは本心だと僕は思う。でも、どうすれば上手くなれるかが分からず、それを自分で見つけるだけの情熱と気力を持てないでいる。
どうやって上手くなるか。僕は今日それをたったひとつのシンプルな一単語で示そうと思う。
あなたはPTQやSCGオープンの準備のために何時間も費やしているかもしれない。同じぐらいのスキルを持った友人たちとともにデッキを構築し、たくさんのゲームをプレイする。あなたは自分のアイデアに自信があり、イベントに出かけ、5-3でフィニッシュする。
たぶんこれはとてもよくある光景だ。
「同じ行動を何度も繰り返し、異なる結果を期待すること。」
これを狂気という。
上手くなる方法を表す一単語は何だろう?
「睡眠」かな?最高のプレイをするにはよく寝る必要があることは誰でも知ってる。
あるいは「決意」だろうか?可能な限り練習に打ち込まなきゃならないよね。
「サイドボーディング」はどうだろう?サイド後のゲームが過半数。サイドボーディングを練習せずにどうしたら上手くなれる?
これらは全て重要ではあるけれど、プレイヤーとしてより良くなるための基本的な考え方とはほぼ無関係だ。
もしあなたが大学野球で勝つためにカーブの投げ方を身に付ける必要のあるピッチャーをコーチするとして、「ちゃんと食事を取るように」なんて言うかな?「ウェイトルームに戻ってもっと筋トレするように」と言う?「寒い時期に行われるプレーオフに備えて、寒暖両方のコンディションで練習するように」と言うかい?
いや、言わない――これらは重要ではあるけれど、彼が良いピッチャーに育つかどうかには直結しないアドバイスだからだ。
どうすればより良いプレイヤーになれるか理解しなきゃならない。その方法は、あるゲーム中にあなたがなぜそのプレイをしたのか、そして相手がなぜそのプレイをしたのかを理解することだ。そのゲームについて真剣に考えなければならない。
もう分かったかな?
その一単語とは、「なぜ」だ。
プランニング:なぜ自分はこうするのか?
ゲーム中に行う全ての事柄について、「なぜ?」と自問すべきだ。なぜそうするか分かっていないまま、ただアクションするべきではない。
なぜそうするのか答えられないとしたら、いったい何をやっているのだろう。本当に勝とうとしている?それとも形だけゲームをプレイしているに過ぎないんじゃないか?
あるプレイをして、なぜそうしたか答えられないなら、そのゲームのことを真剣に考えていないということになる――間違った理由を持つことは、何も理由を持たないよりも良い。
これは本当に大事なことだからもう一度言わせてほしい。
間違った理由にもとづいてあるプレイをすることは、理由のないプレイをするよりも良い。
オーケー、話を単純にしよう。本当に単純なんだ:
こちらはFlinthoof BoarとStomping Groundと2枚の山を場に出している。
対戦相手はLoxodon Smiterと2枚のタップされた平地と1枚のタップされた森を出している。
アタックする?するのはなぜ?あるいはしないのはなぜ?
明らかにこれは小学生レベルの問題だ。こちらは3/3、相手は4/4を出している。アタックすれば相手はブロックし、こちらの生物は死ぬだろう。したがって、アタックしない。
これはどんなプレイヤーでもほとんど頭を使わずに正解を導けるシンプルなシナリオだ。答えは簡単:アタックしない。
オーケー、変数を追加しよう。
今こちらの手札にはGhor-Clan Rampagerが1枚ある。
アタックする?するのはなぜ?あるいはしないのはなぜ?
これもかなり単純だ。ここではこちらにコンバットトリックがある。3/3で相手の4/4に対してアタックしてブロックされた場合、Ghor-Clan RampagerでFlinthoof Boarを守り、相手のLoxodon Smiterを倒し、トランプルダメージを3点与えることができる。ブロックされなかった場合?すばらしい、簡単なアタックだ。
さらに変数を追加しよう。今、こちらの手札にはGhor-Clan Rampagerに加えて、Boros Reckoner、Mogg Flunkies、山がある。
アタックする?するのはなぜ?あるいはしないのはなぜ?
これは少し注意が必要だ。多くのプレイヤーはここで熟考はしないだろう。こちらにはアタッカーとコンバットトリックがあり、相手のブロッカーを乗り越えることができる。したがって、アタックすべきだ。だけど、それはなぜ?今ここで何を目指すべきだろう?もしアタックすれば彼はブロックし、こちらがパンプして彼のLoxodon Smiterが死に、トランプルダメージが入る。
しかし、ゲームに勝つまでの全体プランに照らしてこの状況を見てほしい。こちらは完全にマナカーブから外れることになってしまう。このターンは他のプレイができず、4ターン目に3マナ生物をプレイする羽目になり、Mogg Flunkiesは5ターン目まで出ないことになる。今はアタックすべきタイミングなんだろうか?このターンはBoros Reckonerをキャストするだけにした場合、4ターン目にGhor-Clan Rampagerを使いMogg Flunkiesをキャストして、全てのマナを効果的に使うことができる。
自分の全体プランにとって何がより重要なのか、なぜ自分はこうするのか?と自問する必要がある。
経験豊富なプレイヤーにはこのシナリオでもシンプルすぎたかもしれないね。もちろん、こういった判断の多くで意思決定のツリーはとても複雑になり、続く数ターン先までプランを立てることが必要になる。
プランニングがこの考えの基礎ではあるけれど、「なぜ?」と問うことの本当の力は相手に目を向けたときに発揮される。
推論:なぜ対戦相手はそうしたのか?
このゲームの真の素晴らしさはここにある。
去年あたりにスタンダードをプレイしていた人にとってはシンプルなシナリオだ:
あなたはダイスロールに負け、相手は2ライフを払ってHallowed Fountainをアンタップイン、そしてエンドした。
なぜ相手はそうしたんだろう?
これを読んでいるみんなは即答するんじゃないかな:彼はこちらのエンドに撃つThought Scourを持っている。
わお、君はエスパーかい?彼が何のカードを持っているか、プレイされる前にどうやって正確に知ることができたんだろう?
これは実際とても単純だ――あなたは対戦相手が何をしたか観察し、なぜ彼はそうしたのかと問い、推論を行ってとてもロジカルで合理的な答えにたどり着いた。
今のは合理的な答えがただ一つしかない単純すぎる例だったね。スタンダードでは白か青1マナでプレイに値するインスタントは本当にたった1枚しかない。
もしこれがキューブドラフトの場合、相手が何か持っていることは想像できるけど、それはForce Spikeやらソープロやらミスチューやらのうちのどれかとしか言えない。情報は十分じゃない。
しかし、情報はマジックのゲーム中に常に垂れ流され続けているものの一つだ。情報はいたるところに存在し、あなたに拾い上げられて優位を築くために使われることをただ待っている。
情報を見つける鍵は、「なぜ?」と問うことだ。
一見単純に見えるもう一つのシナリオを取り上げよう:
ここはモダンPTQのラウンド4、あなたがどのデッキを使っていて何をしているかは関係ない。対戦相手はダイスロールに勝ち、先攻を選んだ。彼は1ターン目にScalding Tarnを出し、サクった上で2ライフを払いSteam Ventsをアンタップイン、Serum Visionsをキャストした。1枚引いて占術で2枚をボトムに送り、エンド。彼は2ターン目にはDesolate Lighthouseを出してエンドした。
オーケー、さあどうする?彼はおそらく双子を使っていて、今のようなプレイをしてきた。こちらのターンに何を引くか見てみようじゃないか!
いやいやちょっと待ってくれ。ここまで僕がさんざん言ってきたことは何だっけ?
「なぜ?」と問うんだ。なぜ彼はSerum Visionsの占術で2枚ともボトムに送った?なぜ彼は2ターン目に2枚目の土地としてDesolate Lighthouseを出した?色マナを先に出し、Lighthouseを隠し持っておくべきじゃないのか?
彼は2枚の土地とSerum Visionsのある手札をキープし、占術で見たトップ2枚に土地がなかったため両方ともボトムに送ったと考えるのが合理的だろう。
いいね。彼は土地2枚でキープし、Serum Visionsを空振った――素晴らしい。さあこちらのターンだ、何を引くか見て・・・。
落ち着くんだ――まだ終わりじゃない。そう、もう一度言おう:「なぜ?」
相手が土地2枚とキャントリップでキープしたことは読めた――でも、なぜ彼はそんなリスキーなハンドをキープしたんだろう?そして、なぜ彼は2ターン目に何もしなかったのだろう?相手は6枚のカードを持っており、スペルを一つプレイしている。この6枚のカードが何なのか、今の時点でかなりのことが読み取れる。
6枚はかなりの確率で土地ではない。もし土地ならDesolate Lighthouseの代わりに出してきただろうからだ。
6枚はかなりの確率で追加のキャントリップ(Serum VisionsやSleight of HandやGitaxian Probe)ではない。もしそうならLighthouseを出す前に土地を探すために撃っていただろうからだ。
彼はFlame SlashやIzzet Charmのような受動的なカードを何枚か持っているかもしれない。これは断言するにはまだ情報が足りない。
さあもう一度、なぜ彼はこのハンドをキープした?
僕から見てかなり明確だと思えるのは、彼はおそらく既にコンボ(Deceiver ExarchとSplinter Twin)を手札に持っている、ということだ。これは非常にうなずける――彼は土地でもキャントリップでもない6枚のカードを手札に持っており、それらのためにリスキーな土地2枚キープを選んだ。
ここまでの議論をいくらか揺るがし得る唯一のカードがRemandだ。Steam Ventsを持ってはいたが、アンタップインのダメージを受けずにRemandをキャストするために2ターン目にDesolate Lighthouseをプレイした可能性は捨てきれない。Remandをキャストするためにキャントリップのプレイを控えた可能性もある。最近の双子にRemandが入っていることは少ないが、想定しておくことは理に適っている。
次のように結論づけられる:相手はコンボパーツが揃っていて土地のない手札を持っている可能性が高く、あるいはRemandを持っているかもしれない。
相手がこちらの2ターン目のスペルをRemandしなかった場合、彼の手札はテーブルに表向きで置かれているも同然だ。Remandしてきた場合は相手の次のターンの土地と行動からもう少し考えなおす必要があるが、そんなに難しくはないだろう。
驚くべき点は、僕らは土地2枚とキャントリップ1枚のプレイから以上の推論をしたということだ。
あなたは自分のゲームを十分にじっくりとプレイできているだろうか?目の前にある情報を全て拾い上げているだろうか?十分に「なぜ?」と問うことができているだろうか?
情報はある――それを拾い上げて優位を築くために利用できているだろうか?
まとめ
このウサギの穴はものすごく深く、僕はいずれこの記事の続きを書いて今回取り上げた二つのコンセプトを更に掘り下げるつもりだ。
今後の記事で取り上げようと思っているもう一つの重要な考え方があって、それは「自動操縦」というものだ。今回見たような「なぜ?」の多くは、既に経験していることなので深く考えることなく直感的に答えることができる。これが練習とテストプレイが重要な理由だ――他愛もない「なぜ?」にさっさと答え、本当に難しい選択に集中できるようになるんだ。例えば、コンボデッキで1ターン目にPonderやPreordainをキャストすべきかどうかを知らない状態、あるいはZooでWild NacatlやKird Apeを出していくべきかどうかを知らない状態でトーナメントに臨むべきじゃない。一方、自動操縦には危険とデメリットもある。
読んでくれたみんなに感謝。次回、『自前のデッキなんて作れると思ってるの?』第一話、featuring Yogi Brown and Gary Fingersをお楽しみに!
- Jim Davis
大事な一単語。
久しぶりになってしまいました。
翻訳どころか原文を読む時間もなかなか取れずペースは大幅ダウンですが、やる気は消えていませんのでなんとか続けていければと思っています。
戦略についての記事をいくつか訳しましたが、今回の記事はとても読みやすかったです。
どの記事も見方は違えど同じものを見ているような気がしますね。
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One Word
JIM DAVIS
2013/3/12
http://www.starcitygames.com/article/25815_One-Word.html
僕の見る限り、マジックプレイヤーには3種類いる:
A. マジックが上手くなりたい人。
B. 本気ではなく、ただマジックをプレイするのを楽しみたい人。
C. マジックが上手くなりたいと思っており、そう口にも出すが、実際には本気ではなく、ただマジックをプレイするのを楽しみたい人。
悲しいかな、最も数が多いのはカテゴリCだ。
これはいつだって目にする。プレイヤーたちは上手くなりたいと言う――今度のPTQを勝ちたい、上手くなって今度のGPでマネーフィニッシュしたい。いや、いずれFNMでトップ8に入りたい、ぐらいのものかもしれない。彼らはやりたいことがあるにもかかわらず、それを達成するために不可欠なステップを踏もうとしない――目標を固めることをしないんだ。
彼らが上手くなりたいというのは本心だと僕は思う。でも、どうすれば上手くなれるかが分からず、それを自分で見つけるだけの情熱と気力を持てないでいる。
どうやって上手くなるか。僕は今日それをたったひとつのシンプルな一単語で示そうと思う。
あなたはPTQやSCGオープンの準備のために何時間も費やしているかもしれない。同じぐらいのスキルを持った友人たちとともにデッキを構築し、たくさんのゲームをプレイする。あなたは自分のアイデアに自信があり、イベントに出かけ、5-3でフィニッシュする。
たぶんこれはとてもよくある光景だ。
「同じ行動を何度も繰り返し、異なる結果を期待すること。」
これを狂気という。
上手くなる方法を表す一単語は何だろう?
「睡眠」かな?最高のプレイをするにはよく寝る必要があることは誰でも知ってる。
あるいは「決意」だろうか?可能な限り練習に打ち込まなきゃならないよね。
「サイドボーディング」はどうだろう?サイド後のゲームが過半数。サイドボーディングを練習せずにどうしたら上手くなれる?
これらは全て重要ではあるけれど、プレイヤーとしてより良くなるための基本的な考え方とはほぼ無関係だ。
もしあなたが大学野球で勝つためにカーブの投げ方を身に付ける必要のあるピッチャーをコーチするとして、「ちゃんと食事を取るように」なんて言うかな?「ウェイトルームに戻ってもっと筋トレするように」と言う?「寒い時期に行われるプレーオフに備えて、寒暖両方のコンディションで練習するように」と言うかい?
いや、言わない――これらは重要ではあるけれど、彼が良いピッチャーに育つかどうかには直結しないアドバイスだからだ。
どうすればより良いプレイヤーになれるか理解しなきゃならない。その方法は、あるゲーム中にあなたがなぜそのプレイをしたのか、そして相手がなぜそのプレイをしたのかを理解することだ。そのゲームについて真剣に考えなければならない。
もう分かったかな?
その一単語とは、「なぜ」だ。
プランニング:なぜ自分はこうするのか?
ゲーム中に行う全ての事柄について、「なぜ?」と自問すべきだ。なぜそうするか分かっていないまま、ただアクションするべきではない。
なぜそうするのか答えられないとしたら、いったい何をやっているのだろう。本当に勝とうとしている?それとも形だけゲームをプレイしているに過ぎないんじゃないか?
あるプレイをして、なぜそうしたか答えられないなら、そのゲームのことを真剣に考えていないということになる――間違った理由を持つことは、何も理由を持たないよりも良い。
これは本当に大事なことだからもう一度言わせてほしい。
間違った理由にもとづいてあるプレイをすることは、理由のないプレイをするよりも良い。
オーケー、話を単純にしよう。本当に単純なんだ:
こちらはFlinthoof BoarとStomping Groundと2枚の山を場に出している。
対戦相手はLoxodon Smiterと2枚のタップされた平地と1枚のタップされた森を出している。
アタックする?するのはなぜ?あるいはしないのはなぜ?
明らかにこれは小学生レベルの問題だ。こちらは3/3、相手は4/4を出している。アタックすれば相手はブロックし、こちらの生物は死ぬだろう。したがって、アタックしない。
これはどんなプレイヤーでもほとんど頭を使わずに正解を導けるシンプルなシナリオだ。答えは簡単:アタックしない。
オーケー、変数を追加しよう。
Ghor-Clan Rampager / ゴーア族の暴行者 (2)(R)(G)
クリーチャー - ビースト(Beast)
トランプル
湧血 ― (R)(G),ゴーア族の暴行者を捨てる:攻撃クリーチャー1体を対象とする。それはターン終了時まで+4/+4の修整を受けるとともにトランプルを得る。
4/4
今こちらの手札にはGhor-Clan Rampagerが1枚ある。
アタックする?するのはなぜ?あるいはしないのはなぜ?
これもかなり単純だ。ここではこちらにコンバットトリックがある。3/3で相手の4/4に対してアタックしてブロックされた場合、Ghor-Clan RampagerでFlinthoof Boarを守り、相手のLoxodon Smiterを倒し、トランプルダメージを3点与えることができる。ブロックされなかった場合?すばらしい、簡単なアタックだ。
Boros Reckoner / ボロスの反攻者 (R/W)(R/W)(R/W)
クリーチャー - ミノタウルス(Minotaur) ウィザード(Wizard)
ボロスの反攻者にダメージが与えられるたび、クリーチャー1体かプレイヤー1人を対象とする。ボロスの反攻者はそれに、その点数に等しい点数のダメージを与える。
(R/W):ボロスの反攻者はターン終了時まで先制攻撃を得る。
3/3
Mogg Flunkies / モグの下働き (1)(R)
クリーチャー - ゴブリン(Goblin)
モグの下働きは、単独では攻撃したりブロックしたりできない。
3/3
さらに変数を追加しよう。今、こちらの手札にはGhor-Clan Rampagerに加えて、Boros Reckoner、Mogg Flunkies、山がある。
アタックする?するのはなぜ?あるいはしないのはなぜ?
これは少し注意が必要だ。多くのプレイヤーはここで熟考はしないだろう。こちらにはアタッカーとコンバットトリックがあり、相手のブロッカーを乗り越えることができる。したがって、アタックすべきだ。だけど、それはなぜ?今ここで何を目指すべきだろう?もしアタックすれば彼はブロックし、こちらがパンプして彼のLoxodon Smiterが死に、トランプルダメージが入る。
しかし、ゲームに勝つまでの全体プランに照らしてこの状況を見てほしい。こちらは完全にマナカーブから外れることになってしまう。このターンは他のプレイができず、4ターン目に3マナ生物をプレイする羽目になり、Mogg Flunkiesは5ターン目まで出ないことになる。今はアタックすべきタイミングなんだろうか?このターンはBoros Reckonerをキャストするだけにした場合、4ターン目にGhor-Clan Rampagerを使いMogg Flunkiesをキャストして、全てのマナを効果的に使うことができる。
自分の全体プランにとって何がより重要なのか、なぜ自分はこうするのか?と自問する必要がある。
経験豊富なプレイヤーにはこのシナリオでもシンプルすぎたかもしれないね。もちろん、こういった判断の多くで意思決定のツリーはとても複雑になり、続く数ターン先までプランを立てることが必要になる。
プランニングがこの考えの基礎ではあるけれど、「なぜ?」と問うことの本当の力は相手に目を向けたときに発揮される。
推論:なぜ対戦相手はそうしたのか?
このゲームの真の素晴らしさはここにある。
去年あたりにスタンダードをプレイしていた人にとってはシンプルなシナリオだ:
あなたはダイスロールに負け、相手は2ライフを払ってHallowed Fountainをアンタップイン、そしてエンドした。
なぜ相手はそうしたんだろう?
これを読んでいるみんなは即答するんじゃないかな:彼はこちらのエンドに撃つThought Scourを持っている。
わお、君はエスパーかい?彼が何のカードを持っているか、プレイされる前にどうやって正確に知ることができたんだろう?
これは実際とても単純だ――あなたは対戦相手が何をしたか観察し、なぜ彼はそうしたのかと問い、推論を行ってとてもロジカルで合理的な答えにたどり着いた。
今のは合理的な答えがただ一つしかない単純すぎる例だったね。スタンダードでは白か青1マナでプレイに値するインスタントは本当にたった1枚しかない。
もしこれがキューブドラフトの場合、相手が何か持っていることは想像できるけど、それはForce Spikeやらソープロやらミスチューやらのうちのどれかとしか言えない。情報は十分じゃない。
しかし、情報はマジックのゲーム中に常に垂れ流され続けているものの一つだ。情報はいたるところに存在し、あなたに拾い上げられて優位を築くために使われることをただ待っている。
情報を見つける鍵は、「なぜ?」と問うことだ。
一見単純に見えるもう一つのシナリオを取り上げよう:
ここはモダンPTQのラウンド4、あなたがどのデッキを使っていて何をしているかは関係ない。対戦相手はダイスロールに勝ち、先攻を選んだ。彼は1ターン目にScalding Tarnを出し、サクった上で2ライフを払いSteam Ventsをアンタップイン、Serum Visionsをキャストした。1枚引いて占術で2枚をボトムに送り、エンド。彼は2ターン目にはDesolate Lighthouseを出してエンドした。
オーケー、さあどうする?彼はおそらく双子を使っていて、今のようなプレイをしてきた。こちらのターンに何を引くか見てみようじゃないか!
いやいやちょっと待ってくれ。ここまで僕がさんざん言ってきたことは何だっけ?
「なぜ?」と問うんだ。なぜ彼はSerum Visionsの占術で2枚ともボトムに送った?なぜ彼は2ターン目に2枚目の土地としてDesolate Lighthouseを出した?色マナを先に出し、Lighthouseを隠し持っておくべきじゃないのか?
彼は2枚の土地とSerum Visionsのある手札をキープし、占術で見たトップ2枚に土地がなかったため両方ともボトムに送ったと考えるのが合理的だろう。
いいね。彼は土地2枚でキープし、Serum Visionsを空振った――素晴らしい。さあこちらのターンだ、何を引くか見て・・・。
落ち着くんだ――まだ終わりじゃない。そう、もう一度言おう:「なぜ?」
相手が土地2枚とキャントリップでキープしたことは読めた――でも、なぜ彼はそんなリスキーなハンドをキープしたんだろう?そして、なぜ彼は2ターン目に何もしなかったのだろう?相手は6枚のカードを持っており、スペルを一つプレイしている。この6枚のカードが何なのか、今の時点でかなりのことが読み取れる。
6枚はかなりの確率で土地ではない。もし土地ならDesolate Lighthouseの代わりに出してきただろうからだ。
6枚はかなりの確率で追加のキャントリップ(Serum VisionsやSleight of HandやGitaxian Probe)ではない。もしそうならLighthouseを出す前に土地を探すために撃っていただろうからだ。
彼はFlame SlashやIzzet Charmのような受動的なカードを何枚か持っているかもしれない。これは断言するにはまだ情報が足りない。
さあもう一度、なぜ彼はこのハンドをキープした?
僕から見てかなり明確だと思えるのは、彼はおそらく既にコンボ(Deceiver ExarchとSplinter Twin)を手札に持っている、ということだ。これは非常にうなずける――彼は土地でもキャントリップでもない6枚のカードを手札に持っており、それらのためにリスキーな土地2枚キープを選んだ。
ここまでの議論をいくらか揺るがし得る唯一のカードがRemandだ。Steam Ventsを持ってはいたが、アンタップインのダメージを受けずにRemandをキャストするために2ターン目にDesolate Lighthouseをプレイした可能性は捨てきれない。Remandをキャストするためにキャントリップのプレイを控えた可能性もある。最近の双子にRemandが入っていることは少ないが、想定しておくことは理に適っている。
次のように結論づけられる:相手はコンボパーツが揃っていて土地のない手札を持っている可能性が高く、あるいはRemandを持っているかもしれない。
相手がこちらの2ターン目のスペルをRemandしなかった場合、彼の手札はテーブルに表向きで置かれているも同然だ。Remandしてきた場合は相手の次のターンの土地と行動からもう少し考えなおす必要があるが、そんなに難しくはないだろう。
驚くべき点は、僕らは土地2枚とキャントリップ1枚のプレイから以上の推論をしたということだ。
あなたは自分のゲームを十分にじっくりとプレイできているだろうか?目の前にある情報を全て拾い上げているだろうか?十分に「なぜ?」と問うことができているだろうか?
情報はある――それを拾い上げて優位を築くために利用できているだろうか?
まとめ
このウサギの穴はものすごく深く、僕はいずれこの記事の続きを書いて今回取り上げた二つのコンセプトを更に掘り下げるつもりだ。
今後の記事で取り上げようと思っているもう一つの重要な考え方があって、それは「自動操縦」というものだ。今回見たような「なぜ?」の多くは、既に経験していることなので深く考えることなく直感的に答えることができる。これが練習とテストプレイが重要な理由だ――他愛もない「なぜ?」にさっさと答え、本当に難しい選択に集中できるようになるんだ。例えば、コンボデッキで1ターン目にPonderやPreordainをキャストすべきかどうかを知らない状態、あるいはZooでWild NacatlやKird Apeを出していくべきかどうかを知らない状態でトーナメントに臨むべきじゃない。一方、自動操縦には危険とデメリットもある。
読んでくれたみんなに感謝。次回、『自前のデッキなんて作れると思ってるの?』第一話、featuring Yogi Brown and Gary Fingersをお楽しみに!
- Jim Davis
StarCityGamesより。
コントロールミラーにおける"Who’s the beatdown?"
全体除去が絡んだ押すか抑えるかの判断は昔から本当に難しいですね。
-----
Who’s The Beatdown? (Control Edition)
CHRISTIAN VALENTI
2013/1/04
http://www.starcitygames.com/article/25449_Whos-The-Beatdown-Control-Edition.html
マジックの過去へ旅をしてみよう。
"Who’s The Beatdown?"は最も影響力の大きいマジック戦略記事として今日まで存在し続けている。なぜだろうか?
あの記事には何よりも、ゲームに勝つためのプランを持ち、そして実行することの重要性が描かれている。完璧な記事にケンカを売る理由なんてないので、ここでMikeの記事をそんなに深堀りするつもりはないよ。だけど、このトピックについて少し違うアプローチをしてみたいと思うんだ。
2つの同じデッキが向かい合ったらどうなるだろう?あなたのコントロールデッキが2ターン目からアグロに動いていかなきゃならなくなったとき、何が起きるだろう?
あるカードを持っているからというだけの理由で、その後のプランなくカードを使いたいと思ってしまうことが平均的なプレイヤーたちの最大の弱点だ。これはいろんなマッチアップで起こりうることだけど、特にコントロールミラーでは頻繁に起きる。
Sphinx’s Revelationは客観的に見て今のスタンダードで最も強力なインスタントかもしれない。だけどRestoration Angelだって非常にコストパフォーマンスの良い攻撃性能を持ち、なおかつ相手のアタッカーを強襲することもできる中速の脅威だ。
次のシナリオを想像してほしい。
あなたは青白赤ミッドレンジ同士のミラーマッチでサイド後のゲームをプレイしている。あなたは4枚目の土地を出し、手札に土地3枚とRestoration Angel、Sphinx’s Revelation、Azorius Charm、Thought Scourを持ってエンドした。対戦相手も4枚目の土地を出し、同じくそのままエンドしてきた。
あなたはAngelをキャストする?それはなぜ?あなたのプランはどんなものだろう?どんな結末が予想される?
1. あなたはAngelをキャストし、解決する。アンタップ、ドローして5枚目の土地を出し、アタックして妨害を受けずに3点ダメージを与える。(おそらく最良のシナリオ。)
2. あなたは上記と同じようにアクションする。しかし対戦相手もAngelをキャストしてダメージを防ぐ。(プレインズウォーカーのキャストに対して無防備になるのは彼にとって悲惨なのでこうなる可能性は低い。)
3. 流れは1番のシナリオと同じだが、対戦相手が変わる。あなたがクロックを場に出したため彼はアクションする必要に駆られ、スペルをキャストし始める。こうなると、危険なスペルを通してしまうことで(こちらにカウンターがないという)重要な情報を与えることになり、対戦相手はこちらを脅威で押しつぶそうとし始めるだろう。(こちらの手札で相手の脅威に対処し続けられる可能性は低い。)
4. あなたのAngelがカウンターされ、ドローゴーゲームに戻る。あなたの手札には大量の土地とキャントリップはあるが、相手の脅威に対抗するアクションは不足している。有利か不利かは不明で、相手がこれからどのようにアプローチしようとしているかによって変わる。(ドローゴーが続けば有利だが、相手の手札にアクションが濃い場合は弱い。)
その他いろいろな結末を検討すると、ドローゴーが続くようにゲームを誘導し、(今のところこちらからは回答できない)スペルを使わなければならないと相手に思わせないようにするプランをとるのが合理的だということが分かる。
Restoration Angelをキャストするのは悪いことはなく理に適っているように見えるけど、実際はゲームのペースを変え、こちらの望むプランから遠ざかってしまうことになる。
プランを貫徹する
あるトーナメントで再び青白赤ミッドレンジをプレイしている場面を想像してほしい。よく似たデッキを使っていると思われるプレイヤーが1回戦の相手だ。あなたは先攻で、マリガンして土地3枚とPillar of Flame、Snapcaster Mage、Restoration Angelという手札をキープ。この手札はアグロデッキに対しては素晴らしく、相手が使っているであろうデッキに対しても間違いなくダブマリするよりは良い。
相手はHallowed Fountainをセットして後手1ターン目を終えた。あなたはこの2ターン目のドローステップまでに得た情報で今後のプラン全体を構築することになる。このターン引いたのは――2枚目のPillar of Flameだ。これらのカードを使ってどうやってゲームに勝とう?もちろん明らかだよね!Pillarをプレイして3ターン目に瞬唱でフラッシュバック、クロックを刻み始めるんだ。
対戦相手は2ターン目には土地を出すだけで何もしてこなかった。こちらが3ターン目に引いたカードはThought Scour。さあどうする?新たな情報が明らかになり、Thought Scourで自分のライブラリを削りつつ瞬唱を使うカードアドバンテージプランもとれるようになった。これは良いプランかな?
単純にコントロールの論理で考えれば、ドロースペルを使って序盤に土地を確実に確保するのは必須ということになる。4枚目や5枚目の土地を出すことは勝利の役に立つだろうか?それは間違いないだろう。では、テンポ面での損失はどうだろう?これは明確じゃない。
コントロールミラーにおいて、マリガンする羽目になったうえ2枚のショックを使ってゲームに勝利するには、何かラッキーなことが起きなきゃならない。このゲームの今の状況ではプラン変更は無意味だと断言したい。瞬唱でPillarをフラッシュバックするアグロなプレイをすることで、相手の悠長なスタートにつけ込むチャンスが得られる。
対戦相手は3ターン目にタップインランドを出し、Runechanter’s Pikeをプレイ。ここまでの相手のプレイはいくつかのことを語っている。
たぶん彼はキャントリップ手段を持っていない。もし持っていたらこちらの3ターン目のエンドに使っていたはずだからだ。また、たぶん彼はEssence ScatterやSyncopateのような2マナの妨害手段も持っていない。持っていたらこの状況でPikeをキャストしないはずだからだ。
それじゃあ彼は何を持っている?DissipateやCounterfluxのような重いカウンターを持っているというのはつじつまが合う。いくつかの土地やRestoration Angel、ここまで使う機会のなかった瞬唱を持っているという説もうなずける。
こちらはきっかり4枚目の土地をドロー。これまで集めた情報から、戦闘後に手札のAngelをキャストする。瞬唱ブリンクでPillarを再利用するプレイは諦めることになる。それでも、このゲームでキャストすることになるおそらく(最初で)最後の重要スペルを確実に通せる機会を逃すわけにはいかない。
相手は4枚目の土地をプレイ。このゲームで重要なことは何なのか、この時点でこちらはほぼ完全な情報を手に入れることになる。彼がAngelを持っていることはほぼ明らかだ。もし持っていない場合、そのハンドはキープに値しない。
彼はよく分かっており、こちらがカウンターをトップする前に、ソーサリータイミングでAngelをプレイ。こちらの5ターン目のドローステップでは、既に手札に持っていたPillarとThought Scourに瞬唱が加わることになった。
相手のライフは14だ。Angelと瞬唱でアタックし、彼のAngelで瞬唱を討ち取ることをほぼ強制する。この時点でPillarで相手のAngelを除去することは確定している。プランを貫徹するため残り3マナでPillarを瞬唱で再キャストし、相手のライフをおぼつかない9点まで落とすことにする。
相手は5枚目の土地を出してすぐにエンド。その後こちらはCounterfluxをドロー。情報を整理しよう。
一つ前のターン、相手はカウンターをケアしてソーサリータイミングでAngelをプレイしてきた。何が変わった?Angelを解決させたいなら前のターンと状況は変わらないはずだ。ならばなぜ彼はこちらがタップアウトしているうちにスペルをキャストしようとしなかった?理由として考えられるのは、彼はこのターンにプレイするものをカウンターされても不満はないということだろう。
こちらのアタックで彼のライフは4になった。こちらのエンドに彼がキャストしたSphinx’s Revelation X=2は、カウンターされても構わないと彼が考えているスペルだ。これは通し、彼はライフが6になり、フルの手札でアンタップを迎える。彼はDesperate Ravingsのキャストから始め、Geist of Saint Traftをディスカード。6枚目の土地を置いてエンドする。
こちらのドローはお得な3枚目のPillar of Flame。彼のAngelキャストをCounterfluxで弾き、赤いソーサリーを撃ち込んでゲーム1を取った。3ターン目に引いたThought Scourは結局キャストしていない。
このシナリオは実際にあった僕のゲームなんだ!ロサンゼルスでのインビテーショナルの2回戦、僕はMichael Hetrickとペアリングされた。そのゲーム1を僕の視点から一手一手書いたのがこのシナリオだよ。
この分析で大事なのは僕がゲームに勝ったことじゃない。Supreme Verdictが一発あるだけですぐにHetrickの優勢なゲームになっていたと思う(トラフト入りの彼のデッキにはおそらく入っていなかっただろうけど、ラストターンにトラフトが落ちるまでそのことは知らなかったよ)。
重要なのは自分がゲームにどう勝利するかをイメージすることなんだ。そのイメージの中であなたが勝利した時、ボードはどんな状態だろう?
ゲームが始まったとき僕は2枚のPillarと3枚の土地を持っていて、Revelationとまともにやりあって勝てる状態じゃなかった。それで、彼のカードアドバンテージが問題になるほどの時間をかける前に勝つイメージに合わせてプレイを組み立てたんだ。
ボーナスポイントはない
マッチに勝てば3点がもらえ、負ければ0点。単純だ。信じられないぐらい明確じゃないかな?
それじゃあなぜ多くの人が自らの手で勝つのをとても難しくしてしまうのだろう?ダブマリして勝ったからといって追加でポイントをもらえるわけじゃない。7枚の手札を持った状態で相手を倒しても追加のポイントはもらえない。負けたことに不満を述べたって当然追加のポイントはもらえない。
自分にできることを知るべきだ!さっきのような分析を見たうえで、僕が毎ゲームこんなにじっくりと考えているわけじゃないと聞いたらショックを受ける人もいるかもしれないね。人間には知性があり、長い時間をかければ正しいプレイを見つけることはできるだろう。
じっくり考えずに取った行動で勝てるようになろう!さっきのHetrickとのゲーム1は12分で僕の7ターン目に終わった。取るべき戦略の選択肢はたくさんあったけれど、実際にはどのプレイも時間をかけて考えることなく行なっていた。僕はこのタイプのデッキをシーズン中ずっと使っていて、絶望的に見えるゲームを勝つためにどうアプローチすべきかよく知っていたんだ。Michaelだって同じだよ。
対戦相手は勝とうとしている
インビテーショナルのカバレッジがここ(http://starcitygames.com/events/121216_losangeles.htmlhttp:/starcitygames.com/events/121216_losangeles.html)で見られる。2つ目の事例として4回戦のJoseph Losterとのフィーチャーマッチを取り上げよう。
6:50のところで僕はJace, Memory Adeptをキャスト、自分を対象に1枚引いて1枚削った。
(※訳注:原文ではここにフィーチャーマッチの動画が貼られています。)
この時点で既に僕らは2ゲームを終えており、動画からは分かりにくい情報をJosephはたくさん手に入れていた。一番重要なのは、僕がUnsummonをデッキに入れていないだろうと彼が考えていたことで、おかげで彼は自由に行動できていた。この情報と手札のセレズニアチャームにより、彼はジェイスに対処するために2枚目のAngelを出す必要がなく、やがて来る全体除去からの復旧に備えて手札に残しておけていた。
彼が考慮できていなかったのは、こちらのプレイが全て予め決まっており彼のチャームも念頭に置かれていたことだ。動画では見にくいけど僕がジェイスで引いたのはPillarで、引きたいカードではなかった。これを狼トークンに使うことを考えたけれど、そうするとチャームがジェイスへの回答として使えなくなるため、彼はAngelをプレイせざるを得なくなる(これは僕にとってやってほしくないプレイだ)。
僕がRestoration Angelでのチャンプブロックに時間をかけなかったことに着目してほしい。完全に事前に決まっていたことで、僕がしたのは他のブロックの仕方ではチャームを使われたときにジェイスが生き残れないと再確認することだけだった。
Josephはすぐに何が起きているか気づき、困ってしまった。僕は次のターンにSupreme Verdictをキャストしようとしていた。彼の4枚の土地で可能な選択肢は2つしかなかった:実際に彼がやったようにマナを増やしながらこちらのVerdictプレイを強制するか、ジェイスに2ダメージを与えて続くターンに僕がボードを流した後でAngelをキャストするかだ。いずれにせよ彼にとってはひどいシナリオで、彼の2枚の手札を読んだことと彼が脅威を手札に残そうとしたことを使ってプランを立て、この状況を作ることができた。
対戦相手は勝とうとしている。カメラで撮影されているマッチでは、アマプレイヤーは下手をうつかひどく単調なABCマジックをしてしまうかのどちらかになることがとても多い。
この問題はシンプルだ。対戦相手は合理的で、単調なプレイは最も止められやすいと考えよう。あのチャンプブロックはパッと見ではどれだけ変なプレイだろう?彼のリアクションから、あのブロックが彼のレーダーの外だったのはすぐに分かったよ。
コメント欄でのフィードバックを読むのが本当に楽しみだよ。多くのことが書かれすぎているトーナメントレポートや、テストする時間のあまり取れていないデッキリストなんかよりもセオリーについて書く方が好きなんだ。
それじゃ、お元気で!
コントロールミラーにおける"Who’s the beatdown?"
全体除去が絡んだ押すか抑えるかの判断は昔から本当に難しいですね。
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Who’s The Beatdown? (Control Edition)
CHRISTIAN VALENTI
2013/1/04
http://www.starcitygames.com/article/25449_Whos-The-Beatdown-Control-Edition.html
マジックの過去へ旅をしてみよう。
"Who’s The Beatdown?"は最も影響力の大きいマジック戦略記事として今日まで存在し続けている。なぜだろうか?
あの記事には何よりも、ゲームに勝つためのプランを持ち、そして実行することの重要性が描かれている。完璧な記事にケンカを売る理由なんてないので、ここでMikeの記事をそんなに深堀りするつもりはないよ。だけど、このトピックについて少し違うアプローチをしてみたいと思うんだ。
2つの同じデッキが向かい合ったらどうなるだろう?あなたのコントロールデッキが2ターン目からアグロに動いていかなきゃならなくなったとき、何が起きるだろう?
あるカードを持っているからというだけの理由で、その後のプランなくカードを使いたいと思ってしまうことが平均的なプレイヤーたちの最大の弱点だ。これはいろんなマッチアップで起こりうることだけど、特にコントロールミラーでは頻繁に起きる。
Sphinx’s Revelationは客観的に見て今のスタンダードで最も強力なインスタントかもしれない。だけどRestoration Angelだって非常にコストパフォーマンスの良い攻撃性能を持ち、なおかつ相手のアタッカーを強襲することもできる中速の脅威だ。
次のシナリオを想像してほしい。
あなたは青白赤ミッドレンジ同士のミラーマッチでサイド後のゲームをプレイしている。あなたは4枚目の土地を出し、手札に土地3枚とRestoration Angel、Sphinx’s Revelation、Azorius Charm、Thought Scourを持ってエンドした。対戦相手も4枚目の土地を出し、同じくそのままエンドしてきた。
あなたはAngelをキャストする?それはなぜ?あなたのプランはどんなものだろう?どんな結末が予想される?
1. あなたはAngelをキャストし、解決する。アンタップ、ドローして5枚目の土地を出し、アタックして妨害を受けずに3点ダメージを与える。(おそらく最良のシナリオ。)
2. あなたは上記と同じようにアクションする。しかし対戦相手もAngelをキャストしてダメージを防ぐ。(プレインズウォーカーのキャストに対して無防備になるのは彼にとって悲惨なのでこうなる可能性は低い。)
3. 流れは1番のシナリオと同じだが、対戦相手が変わる。あなたがクロックを場に出したため彼はアクションする必要に駆られ、スペルをキャストし始める。こうなると、危険なスペルを通してしまうことで(こちらにカウンターがないという)重要な情報を与えることになり、対戦相手はこちらを脅威で押しつぶそうとし始めるだろう。(こちらの手札で相手の脅威に対処し続けられる可能性は低い。)
4. あなたのAngelがカウンターされ、ドローゴーゲームに戻る。あなたの手札には大量の土地とキャントリップはあるが、相手の脅威に対抗するアクションは不足している。有利か不利かは不明で、相手がこれからどのようにアプローチしようとしているかによって変わる。(ドローゴーが続けば有利だが、相手の手札にアクションが濃い場合は弱い。)
その他いろいろな結末を検討すると、ドローゴーが続くようにゲームを誘導し、(今のところこちらからは回答できない)スペルを使わなければならないと相手に思わせないようにするプランをとるのが合理的だということが分かる。
Restoration Angelをキャストするのは悪いことはなく理に適っているように見えるけど、実際はゲームのペースを変え、こちらの望むプランから遠ざかってしまうことになる。
プランを貫徹する
あるトーナメントで再び青白赤ミッドレンジをプレイしている場面を想像してほしい。よく似たデッキを使っていると思われるプレイヤーが1回戦の相手だ。あなたは先攻で、マリガンして土地3枚とPillar of Flame、Snapcaster Mage、Restoration Angelという手札をキープ。この手札はアグロデッキに対しては素晴らしく、相手が使っているであろうデッキに対しても間違いなくダブマリするよりは良い。
《火柱/Pillar of Flame》
《瞬唱の魔道士/Snapcaster Mage》
《修復の天使/Restoration Angel》
相手はHallowed Fountainをセットして後手1ターン目を終えた。あなたはこの2ターン目のドローステップまでに得た情報で今後のプラン全体を構築することになる。このターン引いたのは――2枚目のPillar of Flameだ。これらのカードを使ってどうやってゲームに勝とう?もちろん明らかだよね!Pillarをプレイして3ターン目に瞬唱でフラッシュバック、クロックを刻み始めるんだ。
対戦相手は2ターン目には土地を出すだけで何もしてこなかった。こちらが3ターン目に引いたカードはThought Scour。さあどうする?新たな情報が明らかになり、Thought Scourで自分のライブラリを削りつつ瞬唱を使うカードアドバンテージプランもとれるようになった。これは良いプランかな?
単純にコントロールの論理で考えれば、ドロースペルを使って序盤に土地を確実に確保するのは必須ということになる。4枚目や5枚目の土地を出すことは勝利の役に立つだろうか?それは間違いないだろう。では、テンポ面での損失はどうだろう?これは明確じゃない。
コントロールミラーにおいて、マリガンする羽目になったうえ2枚のショックを使ってゲームに勝利するには、何かラッキーなことが起きなきゃならない。このゲームの今の状況ではプラン変更は無意味だと断言したい。瞬唱でPillarをフラッシュバックするアグロなプレイをすることで、相手の悠長なスタートにつけ込むチャンスが得られる。
対戦相手は3ターン目にタップインランドを出し、Runechanter’s Pikeをプレイ。ここまでの相手のプレイはいくつかのことを語っている。
たぶん彼はキャントリップ手段を持っていない。もし持っていたらこちらの3ターン目のエンドに使っていたはずだからだ。また、たぶん彼はEssence ScatterやSyncopateのような2マナの妨害手段も持っていない。持っていたらこの状況でPikeをキャストしないはずだからだ。
それじゃあ彼は何を持っている?DissipateやCounterfluxのような重いカウンターを持っているというのはつじつまが合う。いくつかの土地やRestoration Angel、ここまで使う機会のなかった瞬唱を持っているという説もうなずける。
こちらはきっかり4枚目の土地をドロー。これまで集めた情報から、戦闘後に手札のAngelをキャストする。瞬唱ブリンクでPillarを再利用するプレイは諦めることになる。それでも、このゲームでキャストすることになるおそらく(最初で)最後の重要スペルを確実に通せる機会を逃すわけにはいかない。
相手は4枚目の土地をプレイ。このゲームで重要なことは何なのか、この時点でこちらはほぼ完全な情報を手に入れることになる。彼がAngelを持っていることはほぼ明らかだ。もし持っていない場合、そのハンドはキープに値しない。
彼はよく分かっており、こちらがカウンターをトップする前に、ソーサリータイミングでAngelをプレイ。こちらの5ターン目のドローステップでは、既に手札に持っていたPillarとThought Scourに瞬唱が加わることになった。
相手のライフは14だ。Angelと瞬唱でアタックし、彼のAngelで瞬唱を討ち取ることをほぼ強制する。この時点でPillarで相手のAngelを除去することは確定している。プランを貫徹するため残り3マナでPillarを瞬唱で再キャストし、相手のライフをおぼつかない9点まで落とすことにする。
《思考掃き/Thought Scour》
《対抗変転/Counterflux》
相手は5枚目の土地を出してすぐにエンド。その後こちらはCounterfluxをドロー。情報を整理しよう。
一つ前のターン、相手はカウンターをケアしてソーサリータイミングでAngelをプレイしてきた。何が変わった?Angelを解決させたいなら前のターンと状況は変わらないはずだ。ならばなぜ彼はこちらがタップアウトしているうちにスペルをキャストしようとしなかった?理由として考えられるのは、彼はこのターンにプレイするものをカウンターされても不満はないということだろう。
こちらのアタックで彼のライフは4になった。こちらのエンドに彼がキャストしたSphinx’s Revelation X=2は、カウンターされても構わないと彼が考えているスペルだ。これは通し、彼はライフが6になり、フルの手札でアンタップを迎える。彼はDesperate Ravingsのキャストから始め、Geist of Saint Traftをディスカード。6枚目の土地を置いてエンドする。
こちらのドローはお得な3枚目のPillar of Flame。彼のAngelキャストをCounterfluxで弾き、赤いソーサリーを撃ち込んでゲーム1を取った。3ターン目に引いたThought Scourは結局キャストしていない。
このシナリオは実際にあった僕のゲームなんだ!ロサンゼルスでのインビテーショナルの2回戦、僕はMichael Hetrickとペアリングされた。そのゲーム1を僕の視点から一手一手書いたのがこのシナリオだよ。
この分析で大事なのは僕がゲームに勝ったことじゃない。Supreme Verdictが一発あるだけですぐにHetrickの優勢なゲームになっていたと思う(トラフト入りの彼のデッキにはおそらく入っていなかっただろうけど、ラストターンにトラフトが落ちるまでそのことは知らなかったよ)。
重要なのは自分がゲームにどう勝利するかをイメージすることなんだ。そのイメージの中であなたが勝利した時、ボードはどんな状態だろう?
ゲームが始まったとき僕は2枚のPillarと3枚の土地を持っていて、Revelationとまともにやりあって勝てる状態じゃなかった。それで、彼のカードアドバンテージが問題になるほどの時間をかける前に勝つイメージに合わせてプレイを組み立てたんだ。
ボーナスポイントはない
マッチに勝てば3点がもらえ、負ければ0点。単純だ。信じられないぐらい明確じゃないかな?
それじゃあなぜ多くの人が自らの手で勝つのをとても難しくしてしまうのだろう?ダブマリして勝ったからといって追加でポイントをもらえるわけじゃない。7枚の手札を持った状態で相手を倒しても追加のポイントはもらえない。負けたことに不満を述べたって当然追加のポイントはもらえない。
自分にできることを知るべきだ!さっきのような分析を見たうえで、僕が毎ゲームこんなにじっくりと考えているわけじゃないと聞いたらショックを受ける人もいるかもしれないね。人間には知性があり、長い時間をかければ正しいプレイを見つけることはできるだろう。
じっくり考えずに取った行動で勝てるようになろう!さっきのHetrickとのゲーム1は12分で僕の7ターン目に終わった。取るべき戦略の選択肢はたくさんあったけれど、実際にはどのプレイも時間をかけて考えることなく行なっていた。僕はこのタイプのデッキをシーズン中ずっと使っていて、絶望的に見えるゲームを勝つためにどうアプローチすべきかよく知っていたんだ。Michaelだって同じだよ。
対戦相手は勝とうとしている
インビテーショナルのカバレッジがここ(http://starcitygames.com/events/121216_losangeles.htmlhttp:/starcitygames.com/events/121216_losangeles.html)で見られる。2つ目の事例として4回戦のJoseph Losterとのフィーチャーマッチを取り上げよう。
6:50のところで僕はJace, Memory Adeptをキャスト、自分を対象に1枚引いて1枚削った。
(※訳注:原文ではここにフィーチャーマッチの動画が貼られています。)
この時点で既に僕らは2ゲームを終えており、動画からは分かりにくい情報をJosephはたくさん手に入れていた。一番重要なのは、僕がUnsummonをデッキに入れていないだろうと彼が考えていたことで、おかげで彼は自由に行動できていた。この情報と手札のセレズニアチャームにより、彼はジェイスに対処するために2枚目のAngelを出す必要がなく、やがて来る全体除去からの復旧に備えて手札に残しておけていた。
彼が考慮できていなかったのは、こちらのプレイが全て予め決まっており彼のチャームも念頭に置かれていたことだ。動画では見にくいけど僕がジェイスで引いたのはPillarで、引きたいカードではなかった。これを狼トークンに使うことを考えたけれど、そうするとチャームがジェイスへの回答として使えなくなるため、彼はAngelをプレイせざるを得なくなる(これは僕にとってやってほしくないプレイだ)。
僕がRestoration Angelでのチャンプブロックに時間をかけなかったことに着目してほしい。完全に事前に決まっていたことで、僕がしたのは他のブロックの仕方ではチャームを使われたときにジェイスが生き残れないと再確認することだけだった。
Josephはすぐに何が起きているか気づき、困ってしまった。僕は次のターンにSupreme Verdictをキャストしようとしていた。彼の4枚の土地で可能な選択肢は2つしかなかった:実際に彼がやったようにマナを増やしながらこちらのVerdictプレイを強制するか、ジェイスに2ダメージを与えて続くターンに僕がボードを流した後でAngelをキャストするかだ。いずれにせよ彼にとってはひどいシナリオで、彼の2枚の手札を読んだことと彼が脅威を手札に残そうとしたことを使ってプランを立て、この状況を作ることができた。
対戦相手は勝とうとしている。カメラで撮影されているマッチでは、アマプレイヤーは下手をうつかひどく単調なABCマジックをしてしまうかのどちらかになることがとても多い。
この問題はシンプルだ。対戦相手は合理的で、単調なプレイは最も止められやすいと考えよう。あのチャンプブロックはパッと見ではどれだけ変なプレイだろう?彼のリアクションから、あのブロックが彼のレーダーの外だったのはすぐに分かったよ。
コメント欄でのフィードバックを読むのが本当に楽しみだよ。多くのことが書かれすぎているトーナメントレポートや、テストする時間のあまり取れていないデッキリストなんかよりもセオリーについて書く方が好きなんだ。
それじゃ、お元気で!
ChannelFireballより。
土地の出し方、使い方。
目立ちにくい部分ですが、実はたくさんミスをしているところなのかもしれません。
年内はこれで最後の更新です。
それでは良いお年を。
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PV’s Playhouse―Learning to Play Lands
Posted by Paulo Vitor Damo da Rosa
November 14, 2012
http://www.channelfireball.com/articles/pvs-playhouse-learning-to-play-lands/
こんにちは!
記事の前にまずはこの画像を見てください。このスクリーンショットは僕のラヴニカへの回帰ドラフトでの一幕です。まさにあなたのターンが始まったところ――まだ何もしていない状態です。どうプレイするか教えてください(とってもシンプルですよ)。
答えは出ましたか?よろしい。それじゃあ1ターン進めてみましょう。これが僕のしたプレイで、そこで起きた出来事です:
困ってしまいましたね?
あなたは僕が平地ではなく森を出す間違った判断をしたと言うかもしれません。それは形の上では正しいのですが、ここで起きたことを正確に表してはいません――僕はなんの判断もしなかったのです!
僕は土地をプレイしたくて、ただ1枚の土地を出しました。平地と森のどちらをプレイすべきかは考えておらず、つまり何も考えていなかったのです。
考えない――これは土地をプレイするときにありがちなことです。それで問題になることはあまりありません。だから僕らは考えないんです。しかし、これはしばしば僕らが気づかないとても微妙な形で問題になります。
あなたの土地を正しく出して使うこと――これが今日取り組みたい問題です。単純なトピックのように思えるかもしれません。しかし、もしあなたが自分が判断を下していることに気づいていないなら、その判断が単純かどうかは問題になりません。今回僕が示そうと思っているのは、一見なにかを判断しているようには見えない場面でも実は判断を下せるということです。
1枚目の土地をプレイする
最初の土地を出すことはゲームに2つの影響を与えます――続くターンにプレイ可能なカードを決め、そして対戦相手に情報を与えます。二つ目よりも一つ目の方がずっと大切です。例えば、もしWWを要求するカードがあなたのデッキにあるなら、たとえそれが手札になくてもとにかく平地を出すべきです。特にシールドデッキでは、デッキをプレイし始めたら自分の使っている色マナ2つ以上を要求するカードが何なのか、必ず確認する時間をとってください。来たる時に正しい土地を1ターン目にプレイできるようにするために。
正解が明らかでないこともあります。例えばズーで5色全てを使っていて、大量のフェッチが入っていて望みの組み合わせを持ってこられるとしましょう。このとき、何を持ってきたとしても4ターン目までに唱えられないスペルが出てくる可能性があります。この場合、1,2ターン先を見越す必要があります。2色土地がたくさん入ったデッキでの次の手札を想像してみましょう:
このような手札の場合、少し時間を使ってこれから何をしていくか考えることが絶対に必要です――頭を使わずにこのゲームをプレイすることはできません。土地でしくじれば大きな代償を支払うことになります。だからあらゆる行動の前にしっかり考えましょう。
この手札では3つの重要な条件があります:1ターン目にKird Apeをプレイできること、2ターン目に森があること、3ターン目に青白が出ること。手札にはまだ3枚目の土地はなく、関係ない色の土地を3枚目として引くかもしれません。山やBlood Crypt、Stomping Groundをドローしてもトラフトをキャストできるように、2ターン目に既にUWが出ているのが理想的なシナリオです。つまり、ここでフェッチする2枚の土地は青か白を出せるものが理想的ということになります。
幸い、それが可能です:まずArid MesaをサクってSteam Ventsを持ってきてKird Apeをプレイし、次にTarnをサクってTemple Gardenを手に入れてタルモをプレイします。
そう、これはおかしいですね。Scalding TarnでTemple Gardenをサーチすることはできません――白マナを諦めてStomping Groundをサーチするか、緑マナを諦めてSacred FoundryやHallowed Fountainをサーチするかのどちらかしかありません。こんなことをしていれば、自分の土地に十分な注意を払っていなかったせいでおそらく負けることになります。これがあなたの身に起きないようにしましょう。
さて、今度は同じ手札ですが土地が2枚ともScalding Tarnだった場合を想像してみましょう。この場合は判断が必要です――Stomping Groundの次にHallowed Fountainと持ってくると、3枚目の土地でトラフトがプレイできないかもしれないリスクを抱えることになります。あるいはSacred Foundry、Breeding Poolと持ってきた場合、Lightning Helixをプレイできない可能性が残ります。また、前者を選んだ場合は3枚目の土地としてBlood Cryptを持ってくるわけにはいかないため、フルパワーのTribal Flamesを4ターン目まで撃てないことになります。
このケースに正しい答えはありません――いま目の前にしているゲームで何をより重要だと考えるか、ジャッジする必要があります。これがあなたの下す判断だということを理解してください。1ターン目ですが、その後の試合全体に影響を与える判断です。
2つ目の要素――情報――は、相手があなたのデッキについてどの程度のことを既に知っているかに大きく依存します。もしゲーム2であれば隠しておくべきことはそれほどないでしょう。しかしゲーム1で、なおかつこちらが何をプレイしているか相手が知らないのであれば、どの土地を出すかによって相手の序盤のプレイに影響を与えることになります。
さっき、僕は友達がMOでブロック構築をプレイするのを見ていました。相手がタップアウトしてロッテスを出してきた場面で、彼は自分もタップアウトしてロッテスを出していくべきかどうか悩んでいました。僕は出さないべきだと主張しました。相手が2枚のクリーチャーを手札に持っていたら彼はかなりマズイ状況に陥るからです(彼は生物を持っていませんでした)。しかし彼は、相手はBlood Cryptを出してきたからラクドスデッキで、ラクドスは普通ゴルガリほどには多くのクリーチャーが入らないので相手はおそらく2枚の生物は持っていないだろう、と反論しました。
この事例ではBlood Cryptをプレイしたことが友達に意味のある情報を与えています(彼の反論が正しいかどうかではなく、彼が土地から得た情報を使っていることに注目してください)。
世界選手権2010の準決勝は、出された土地から得られる情報についての興味深い事例でした。この中のあるゲームで、Matignonは僕に対して序盤にTectonic Edgeをプレイしてきました。僕はCreeping Tar Pitを含むとても重い手札を抱えていて、彼のEdgeにSpreading Seasを貼りたくなりました。しかし問題がありました:海を貼ることで相手を助けてしまう可能性があったのです。他に良い土地があるのなら序盤にTectonic Edgeをさらす必要はどこにもありません。
このとき、彼の土地の選択は彼の手札について実に多くを語っています。
結局、僕は手札にある土地をどうしても失いたくなかったため、リスクを受け入れてSpreading Seasをプレイしました。そしてこれはやはりひどいミスでした(自覚していたとはいえ)。実のところ彼は青マナを必要としていたのです。
さて、この場面を別の視点から眺めてみましょう――もし彼の手札が全て土地だったらどうなるでしょう?
この場合でも彼は結局Tectonic Edgeをプレイしたはずです!必要もないのに彼がEdgeをさらすことはないだろうと僕が考えていることを彼は分かっています。そこでまずEdgeから出すことによって、ごく簡単に彼の手札がスペルで一杯だと僕に信じこませることができます。
島もEdgeもこのターンに使う予定がないときにEdgeを先に出すというのはとても小さなプレイですが、とても効果的に相手をミスリードするプレイでもあるのです。
立たせている土地はあなたの手札のショーケース
何かアクションしようとしている様子を見せつけたいなら、それをキャストするためのマナが必要だということはみんなが知っています。例えばあなたがUUを立たせていなければ相手は対抗呪文を恐れたりしないでしょう。あなたが赤マナを立てていなければ相手が稲妻を恐れることはないでしょう。つまり、もしあなたが何かを構えているように見せたいなら、正しいマナを立てておくことです。
しかし、みんながたびたび忘れがちなのはそれの逆のことです――あなたが何かをプレイしないということを見せつけたいなら、それを確実にキャスト不可能にすべきです。
なぜそんなことを相手に示すのか?あなたがそのカードかそれに似たカードを実際に持っている(そしてプレイしたくない)からです。
GPサンティアゴで面白い場面がありました。
最終的に優勝者となるIgorを相手にMartin Juzaがトップ8で戦っていました。IgorがBloodline Keeperをデッキに入れていることはみんなが知っていました(両面カードですからね)。Igorが4マナに届く直前のターン、MartinはFrightful Delusionを使えるマナを立ててエンドしました――血統の守り手を待ち構えて。
この場面でDelusionは完璧なカードでした。そんなに良いカードではないので多くの人が存在を忘れており、ブッパしてきたところを捕まえられることもあるカードです。
何が問題か?Martinは1UUを立てていたのです。それにより、彼はDelusionではなくDissipateを構えているように見えてしまっていました――Dissipateは通常Delusionよりもかなり良いカードで、しかも1UUという非常に特徴的なマナコストを持っています。彼の対戦相手はDissipateを恐れ、そのターンにBloodline Keeperをプレイしませんでした。
もし島の代わりに別の土地を出して、例えばUBBを立ててエンドしていれば相手はおそらく守り手をプレイしてきてそれをカウンターできただろう、と後にMartinは語っていました。僕もそれには同意で、狙い通りに進める大きなチャンスがあったと思います。
このエピソードでは、おそらくMartinは自分を大きく見せすぎたために負けています。もしここでMartinがDelusionを持っていなかったなら島をプレイするのは最高のプレイです。血統の守り手をどうしてもプレイされたくありませんから。
もう一つ別の例を。今度はGPフィラデルフィアのトップ8――中村修平 vs. LSVです。試合のある場面で、中村は是非プレイしたいKnightly Valorを持っていました。他にDispelが手札にあり、Valorをプレイしつつギルドメイジの能力かDispelを使えるマナがありました――ギルドメイジとDispelの両方は無理です。彼はDispelを構える方がギルドメイジより重要だと考えましたが、ギルドメイジを起動できるマナがあるのに起動しないということを一度やってしまうと、Luisを警戒させることになってしまいます。明らかに構えていると示すことになってしまうのです。たしかに彼はDispelを持っていますがそれを表に出したくない、これが問題です。
中村の答え?彼は5マナのKnightly Valorをプレイするためにあえて土地6枚をタップし、LuisのターンにDispelはプレイできるがギルドメイジは起動できないマナを残したのです。そうすることで彼はDispelを実質さらしてしまうことを回避しました。ギルドメイジを起動不可能にすることで、起動しないことに疑問を持たれないようにしたのです。*
*: 中村はその後ツイッターで、これは単なるタップミスでアクシデントだったと言っていました。Luisに何か他の選択肢があったかどうかも分かりません。僕の考えでは、中村はたとえDispelをさらすことになってもValorはプレイすべきです。他に道がありませんから。そして、たとえあれがアクシデントだったり、あるいは特にゲームに影響を与えていなかったとしても、やはりこれは土地のタップによって持っているものを悟らせないようにすることの重要さを示す興味深いエピソードです。
立たせたままにする土地には気をつけて
普段あなたはできるだけ多くの可能性を残すように土地を立たせているかもしれませんが、それが良くないこともあります。
Counterspellが手札にあると想像し、Tundraと島を立たせるか、島2枚を立たせるかを選んでください。もしTundraと島を立たせた場合、あなたはソープロも構えているように見せていることになります。しかしこれには代償が伴います――相手が不毛の大地を使ってきたらCounterspellをキャストできなくなってしまいます。Counterspellをキャストすることがとにかく重要なら、おそらくブラフのことは忘れて安全にプレイすべきでしょう。
モダンで、Tectonic Edgeが入っている可能性のある相手に対して青白デッキをプレイしているところを想像してください。あなたはHallowed Fountain、Seachrome Coast、Celestial Colonnade、島、平地を出しています。Path to Exileをプレイする必要のある状況です。
このとき、あなたはCryptic Commandを確実に撃つことは諦めなければなりません――あなたがどうプレイしたとしても、起きている土地を4枚まで減らしてしまうと相手は青コマのプレイを止めることが可能です。こちらの場に4枚の基本土地がないからです。
やはりここでも判断を下す必要があります。そして実は唯一の正解があります――Colonnadeをタップすべきです。
なぜか?ミシュランは相手が最も壊したい土地だからです。Colonnadeを立たせておいた場合、相手のやりたいこと全てをやらせてしまうことになります――彼はあなたの最高の土地を除去し、なおかつ青コマのプレイを止めることになります。Colonnadeをタップすることによって相手に選択を迫ることができます――そう、彼はこのターンの青コマプレイを止めることはできますが、その場合Tectonic Edgeを単なる2色土地に使って「不毛に」消費することになります。
土地を出そう!
僕が土地について言えることの中でも最も重要なことの一つは、とにかく出すべきだということです。プロフェッショナルのように土地を手札に持っておくべきだと考えてしまうことにより、多くの敗北が生まれています。ほとんどの場合、土地は手札ではなく場に出しておきたいというのが実際のところです。
これについては前に書いたことがあるのであまり深掘りするつもりはありませんが、手札に土地を持っておくことには3つの良い面があります:
・実際には何も持っていないときに、こちらが何か持っていると相手に考えさせることができる。
・ハンデスに対して他のカードを守ることができる。
・負けたときにマナフラッドのせいにすることが簡単にできる。もちろん土地が場にあってもそうすることはできますが、土地5枚の手札をテーブルに投げ出したときほどの効果は得られません。これにより、「見てよ、5ターン連続で土地を引いたんだ。これが君が勝った理由だよ」と自信を持って言うことができます。
まあそういうことです。上記以外の場合、土地はとにかく出すべきです。
多くの人が犯しているミスは上に書いた1点目を過大評価することです――相手は馬鹿ではありません。あなたが何もしていなければ、彼はあなたが何も持っていないことに気づきます。クリーチャーならプレイしているはずだ、除去ならプレイしているはずだ、カウンターなら撃ってきたはずだ――他に持っているとしたら何でしょう?2枚や3枚のカードを持っていても違いはありません。「全て土地ではないだろう」と彼が考えてくれたりはしません。こういう状況ではたいてい土地は出すべきで、特にドロースペルやギルドメイジがデッキに入っているならなおさらです。
フェッチの切り方、テイク2
フェッチランドについては章を設けて話そうと思います。というのも、フェッチは特殊だからです。
フェッチランドはいろいろな使われ方をします:
・色マナを見つける。
・デッキをシャッフルする。
・デッキを圧縮する。
・墓地を肥やす。
・上陸を誘発させる。
フェッチランドについての最大のアドバイスは、「切るな」ということです。必要でない限り、ですが。
僕が目にするミスのほとんどは早すぎるタイミングで――例えば必要な色マナが確定する前に――切ってしまうことです。Volcanic IslandとTropical Islandとフェッチランドを出している場面を想像してください。もしフェッチを切って2枚目のボルカを持ってきたら、相手はトロピを不毛してくるかもしれません。そうなると緑マナを出せなくなってしまいます。
フェッチを場に残しておけばこの状況を避けることができます。
特にレガシーでは、フェッチにはBrainstorm(または独楽)の後にシャッフルするというとても重要な役割があります。たとえブレストが手札になかったとしても、フェッチを切ることによるちっぽけなデッキ圧縮と比べればとてもとても高い確率でブレストを引くことになります(これについては後でもう少し書きます)。ですので、できるだけ長い間フェッチは場に残しておくべきです。
フェッチしたい土地を手札に持っていないか確認しよう!
フェッチを切ったあと、持ってこようとしていた土地がないことに気づくというのは人によってはけっこうやってしまうことです。僕も最近、プレイヤー選手権でやらかしてしまいました。Sacred Foundryを持ってこようとフェッチをサクったのですが、それをデッキに1枚も入れていなかったことを忘れていたんです。僕がそれまでにプレイしてきたどのズーにも1枚は入っていたので。
世界選手権2010のあるゲームで、僕は2枚の土地――Scalding Tarnと島――だけを残して他の土地をタップしていました。こちらのライフは6。そして対戦相手がタップアウトしてCruel Ultimatumをプレイしました。
僕はNegateを撃つためにフェッチを切りました――ところがデッキには島も山も残っていなかったのです。僕はクルーエルの解決を許したばかりでなく、その場で死ぬことになってしまいました。フェッチでライフが5になっていたので。
これら2つの事例はもっぱら僕の不注意から起きたことですが、それだけとも限りません。
例えば、僕らがモダンのドレッジをテストしている中で、フェッチを出してHedron Crabで3枚削り、それからフェッチを切るというプレイを誰かがしていました――はじめの3枚でBloodghastが落ちたときにすぐに場に戻せるのでこの順序でプレイしていたのです。しかしあるとき、誰かがフェッチで持ってこようとしていた土地をはじめの3枚で落としてしまったことがあり、それ以降僕らはある特定の土地が欲しいときにはCrabの誘発がスタックにあるうちにフェッチを切るようになりました。
デッキ圧縮は思っているほど役に立たない
フェッチランドに関する最も大きな勘違いの一つが、できる限りフェッチを切ってデッキを圧縮すべきだ、というものです。もちろんデッキ圧縮にはなります。しかしその効果が支払うライフに見合わないことも多々あるのです。僕は科学者ではありませんが、シンプルな数字をいくつか見てみることにしましょう:
あなたのデッキに45枚のカードが残っていて、4枚積んでいる特定のカードを引きたいとします。通常、1回のドローでそれを引く確率は8.89%(4/45)です。フェッチを1枚切った場合は9.09%(4/44)になります。
これはつまり、この状況が1000回あったとき、フェッチを切らない場合はそのうち89回、切った場合は91回で欲しいカードを引けることが期待される、ということです。違いはたったの2回です――1000回のうちの。
これら1000回全てにおいて、あなたは1点のダメージを受けなければなりません――欲しいカードを2回引くために。ここで、1点のダメージがどの程度重要なのか疑問に思うんじゃないでしょうか――1000回のうち2回以上、1ダメージによって負けることになると思いますか?
僕はこの問いに答えることができません。でも、デッキ圧縮の恩恵が実際どれだけ小さいか、正しくとらえる役には立ちますよね(まあ、いずれにせよ死ぬ状況ならやった方がマシなのですが)。
もちろん2枚以上カードを引ける場合の計算はもう少し複雑になり、フェッチによるデッキ圧縮の効果は多少良くなります。ここで大切なのはあらゆる状況での厳密なパーセンテージを求めることではありません――ほぼ間違いなく、デッキから1枚の土地を取り除くことはあなたが考えているほどの影響をゲームに与えず、1ライフ、あるいは必要なときにシャッフルしたり色を揃えたりするためにフェッチを残しておくことの方がより重要だということです。
自分ではデッキの濃度を高めたつもりでもそうなっていない場合がある、ということにも注意してください。これはPeer Through Depthsの入ったScapeshiftデッキでよく起こります。
Peerをプレイして4枚の土地(もしくは不要牌)をボトムに送った場面を想像してください。もし土地を引きたくないのであればボトムに送った4枚は既にデッキに入っていないようなものです。デッキに45枚残っていたとすると、(例えば12枚の)有効牌をあなたがドローする確率は12/41です。ここでシャッフルしてしまうと、土地を1枚取り除いたとしても確率は12/44に落ちてしまいます。フェッチを切るべきでないのはもちろん、例えばFarseekのキャストもしない方が良いでしょう。本当に追加の土地を有効活用できるのでなければ。
このケースでは5枚の土地をサーチしてはじめてデッキ中の脅威の濃度が高まることになります。
さて、今日はここまで。土地のプレイは一見簡単そうに見えて実は奥が深いということが分かってもらえたでしょうか。
楽しんでくれたら嬉しいです。また来週!
- PV
土地の出し方、使い方。
目立ちにくい部分ですが、実はたくさんミスをしているところなのかもしれません。
年内はこれで最後の更新です。
それでは良いお年を。
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PV’s Playhouse―Learning to Play Lands
Posted by Paulo Vitor Damo da Rosa
November 14, 2012
http://www.channelfireball.com/articles/pvs-playhouse-learning-to-play-lands/
こんにちは!
記事の前にまずはこの画像を見てください。このスクリーンショットは僕のラヴニカへの回帰ドラフトでの一幕です。まさにあなたのターンが始まったところ――まだ何もしていない状態です。どうプレイするか教えてください(とってもシンプルですよ)。
相手の場:
平地2枚、森1枚
相手の手札:
6枚
自分の場:
森1枚、平地1枚
自分の手札:
《トロスターニの裁き/Trostani’s Judgment》
《コロズダのギルド魔道士/Korozda Guildmage》
《平地/Plains》
《突然の衰微/Abrupt Decay》
《ゴルガリの魔鍵/Golgari Keyrune》
《騎士の勇気/Knightly Valor》
《空印のロック/Skymark Roc》
《森/Forest》
※訳注:画像は元記事を参照してください。
答えは出ましたか?よろしい。それじゃあ1ターン進めてみましょう。これが僕のしたプレイで、そこで起きた出来事です:
相手の場:
平地3枚(うち2枚タップ)、森1枚
相手の手札:
5枚
自分の場:
森2枚、平地1枚(Soul Titheを支払って3枚ともタップ)
《魂の税収/Soul Tithe》がエンチャントされた《ゴルガリの魔鍵/Golgari Keyrune》
自分の手札:
《トロスターニの裁き/Trostani’s Judgment》
《コロズダのギルド魔道士/Korozda Guildmage》
《平地/Plains》
《突然の衰微/Abrupt Decay》
《騎士の勇気/Knightly Valor》
《空印のロック/Skymark Roc》
《ロクソドンの強打者/Loxodon Smiter》
困ってしまいましたね?
あなたは僕が平地ではなく森を出す間違った判断をしたと言うかもしれません。それは形の上では正しいのですが、ここで起きたことを正確に表してはいません――僕はなんの判断もしなかったのです!
僕は土地をプレイしたくて、ただ1枚の土地を出しました。平地と森のどちらをプレイすべきかは考えておらず、つまり何も考えていなかったのです。
考えない――これは土地をプレイするときにありがちなことです。それで問題になることはあまりありません。だから僕らは考えないんです。しかし、これはしばしば僕らが気づかないとても微妙な形で問題になります。
あなたの土地を正しく出して使うこと――これが今日取り組みたい問題です。単純なトピックのように思えるかもしれません。しかし、もしあなたが自分が判断を下していることに気づいていないなら、その判断が単純かどうかは問題になりません。今回僕が示そうと思っているのは、一見なにかを判断しているようには見えない場面でも実は判断を下せるということです。
1枚目の土地をプレイする
最初の土地を出すことはゲームに2つの影響を与えます――続くターンにプレイ可能なカードを決め、そして対戦相手に情報を与えます。二つ目よりも一つ目の方がずっと大切です。例えば、もしWWを要求するカードがあなたのデッキにあるなら、たとえそれが手札になくてもとにかく平地を出すべきです。特にシールドデッキでは、デッキをプレイし始めたら自分の使っている色マナ2つ以上を要求するカードが何なのか、必ず確認する時間をとってください。来たる時に正しい土地を1ターン目にプレイできるようにするために。
正解が明らかでないこともあります。例えばズーで5色全てを使っていて、大量のフェッチが入っていて望みの組み合わせを持ってこられるとしましょう。このとき、何を持ってきたとしても4ターン目までに唱えられないスペルが出てくる可能性があります。この場合、1,2ターン先を見越す必要があります。2色土地がたくさん入ったデッキでの次の手札を想像してみましょう:
《密林の猿人/Kird Ape》
《稲妻のらせん/Lightning Helix》
《部族の炎/Tribal Flames》
《聖トラフトの霊/Geist of Saint Traft》
《タルモゴイフ/Tarmogoyf》
《乾燥台地/Arid Mesa》
《沸騰する小湖/Scalding Tarn》
このような手札の場合、少し時間を使ってこれから何をしていくか考えることが絶対に必要です――頭を使わずにこのゲームをプレイすることはできません。土地でしくじれば大きな代償を支払うことになります。だからあらゆる行動の前にしっかり考えましょう。
この手札では3つの重要な条件があります:1ターン目にKird Apeをプレイできること、2ターン目に森があること、3ターン目に青白が出ること。手札にはまだ3枚目の土地はなく、関係ない色の土地を3枚目として引くかもしれません。山やBlood Crypt、Stomping Groundをドローしてもトラフトをキャストできるように、2ターン目に既にUWが出ているのが理想的なシナリオです。つまり、ここでフェッチする2枚の土地は青か白を出せるものが理想的ということになります。
幸い、それが可能です:まずArid MesaをサクってSteam Ventsを持ってきてKird Apeをプレイし、次にTarnをサクってTemple Gardenを手に入れてタルモをプレイします。
そう、これはおかしいですね。Scalding TarnでTemple Gardenをサーチすることはできません――白マナを諦めてStomping Groundをサーチするか、緑マナを諦めてSacred FoundryやHallowed Fountainをサーチするかのどちらかしかありません。こんなことをしていれば、自分の土地に十分な注意を払っていなかったせいでおそらく負けることになります。これがあなたの身に起きないようにしましょう。
さて、今度は同じ手札ですが土地が2枚ともScalding Tarnだった場合を想像してみましょう。この場合は判断が必要です――Stomping Groundの次にHallowed Fountainと持ってくると、3枚目の土地でトラフトがプレイできないかもしれないリスクを抱えることになります。あるいはSacred Foundry、Breeding Poolと持ってきた場合、Lightning Helixをプレイできない可能性が残ります。また、前者を選んだ場合は3枚目の土地としてBlood Cryptを持ってくるわけにはいかないため、フルパワーのTribal Flamesを4ターン目まで撃てないことになります。
このケースに正しい答えはありません――いま目の前にしているゲームで何をより重要だと考えるか、ジャッジする必要があります。これがあなたの下す判断だということを理解してください。1ターン目ですが、その後の試合全体に影響を与える判断です。
2つ目の要素――情報――は、相手があなたのデッキについてどの程度のことを既に知っているかに大きく依存します。もしゲーム2であれば隠しておくべきことはそれほどないでしょう。しかしゲーム1で、なおかつこちらが何をプレイしているか相手が知らないのであれば、どの土地を出すかによって相手の序盤のプレイに影響を与えることになります。
さっき、僕は友達がMOでブロック構築をプレイするのを見ていました。相手がタップアウトしてロッテスを出してきた場面で、彼は自分もタップアウトしてロッテスを出していくべきかどうか悩んでいました。僕は出さないべきだと主張しました。相手が2枚のクリーチャーを手札に持っていたら彼はかなりマズイ状況に陥るからです(彼は生物を持っていませんでした)。しかし彼は、相手はBlood Cryptを出してきたからラクドスデッキで、ラクドスは普通ゴルガリほどには多くのクリーチャーが入らないので相手はおそらく2枚の生物は持っていないだろう、と反論しました。
この事例ではBlood Cryptをプレイしたことが友達に意味のある情報を与えています(彼の反論が正しいかどうかではなく、彼が土地から得た情報を使っていることに注目してください)。
世界選手権2010の準決勝は、出された土地から得られる情報についての興味深い事例でした。この中のあるゲームで、Matignonは僕に対して序盤にTectonic Edgeをプレイしてきました。僕はCreeping Tar Pitを含むとても重い手札を抱えていて、彼のEdgeにSpreading Seasを貼りたくなりました。しかし問題がありました:海を貼ることで相手を助けてしまう可能性があったのです。他に良い土地があるのなら序盤にTectonic Edgeをさらす必要はどこにもありません。
このとき、彼の土地の選択は彼の手札について実に多くを語っています。
結局、僕は手札にある土地をどうしても失いたくなかったため、リスクを受け入れてSpreading Seasをプレイしました。そしてこれはやはりひどいミスでした(自覚していたとはいえ)。実のところ彼は青マナを必要としていたのです。
さて、この場面を別の視点から眺めてみましょう――もし彼の手札が全て土地だったらどうなるでしょう?
この場合でも彼は結局Tectonic Edgeをプレイしたはずです!必要もないのに彼がEdgeをさらすことはないだろうと僕が考えていることを彼は分かっています。そこでまずEdgeから出すことによって、ごく簡単に彼の手札がスペルで一杯だと僕に信じこませることができます。
島もEdgeもこのターンに使う予定がないときにEdgeを先に出すというのはとても小さなプレイですが、とても効果的に相手をミスリードするプレイでもあるのです。
立たせている土地はあなたの手札のショーケース
何かアクションしようとしている様子を見せつけたいなら、それをキャストするためのマナが必要だということはみんなが知っています。例えばあなたがUUを立たせていなければ相手は対抗呪文を恐れたりしないでしょう。あなたが赤マナを立てていなければ相手が稲妻を恐れることはないでしょう。つまり、もしあなたが何かを構えているように見せたいなら、正しいマナを立てておくことです。
しかし、みんながたびたび忘れがちなのはそれの逆のことです――あなたが何かをプレイしないということを見せつけたいなら、それを確実にキャスト不可能にすべきです。
なぜそんなことを相手に示すのか?あなたがそのカードかそれに似たカードを実際に持っている(そしてプレイしたくない)からです。
GPサンティアゴで面白い場面がありました。
最終的に優勝者となるIgorを相手にMartin Juzaがトップ8で戦っていました。IgorがBloodline Keeperをデッキに入れていることはみんなが知っていました(両面カードですからね)。Igorが4マナに届く直前のターン、MartinはFrightful Delusionを使えるマナを立ててエンドしました――血統の守り手を待ち構えて。
この場面でDelusionは完璧なカードでした。そんなに良いカードではないので多くの人が存在を忘れており、ブッパしてきたところを捕まえられることもあるカードです。
何が問題か?Martinは1UUを立てていたのです。それにより、彼はDelusionではなくDissipateを構えているように見えてしまっていました――Dissipateは通常Delusionよりもかなり良いカードで、しかも1UUという非常に特徴的なマナコストを持っています。彼の対戦相手はDissipateを恐れ、そのターンにBloodline Keeperをプレイしませんでした。
もし島の代わりに別の土地を出して、例えばUBBを立ててエンドしていれば相手はおそらく守り手をプレイしてきてそれをカウンターできただろう、と後にMartinは語っていました。僕もそれには同意で、狙い通りに進める大きなチャンスがあったと思います。
このエピソードでは、おそらくMartinは自分を大きく見せすぎたために負けています。もしここでMartinがDelusionを持っていなかったなら島をプレイするのは最高のプレイです。血統の守り手をどうしてもプレイされたくありませんから。
もう一つ別の例を。今度はGPフィラデルフィアのトップ8――中村修平 vs. LSVです。試合のある場面で、中村は是非プレイしたいKnightly Valorを持っていました。他にDispelが手札にあり、Valorをプレイしつつギルドメイジの能力かDispelを使えるマナがありました――ギルドメイジとDispelの両方は無理です。彼はDispelを構える方がギルドメイジより重要だと考えましたが、ギルドメイジを起動できるマナがあるのに起動しないということを一度やってしまうと、Luisを警戒させることになってしまいます。明らかに構えていると示すことになってしまうのです。たしかに彼はDispelを持っていますがそれを表に出したくない、これが問題です。
中村の答え?彼は5マナのKnightly Valorをプレイするためにあえて土地6枚をタップし、LuisのターンにDispelはプレイできるがギルドメイジは起動できないマナを残したのです。そうすることで彼はDispelを実質さらしてしまうことを回避しました。ギルドメイジを起動不可能にすることで、起動しないことに疑問を持たれないようにしたのです。*
*: 中村はその後ツイッターで、これは単なるタップミスでアクシデントだったと言っていました。Luisに何か他の選択肢があったかどうかも分かりません。僕の考えでは、中村はたとえDispelをさらすことになってもValorはプレイすべきです。他に道がありませんから。そして、たとえあれがアクシデントだったり、あるいは特にゲームに影響を与えていなかったとしても、やはりこれは土地のタップによって持っているものを悟らせないようにすることの重要さを示す興味深いエピソードです。
立たせたままにする土地には気をつけて
普段あなたはできるだけ多くの可能性を残すように土地を立たせているかもしれませんが、それが良くないこともあります。
Counterspellが手札にあると想像し、Tundraと島を立たせるか、島2枚を立たせるかを選んでください。もしTundraと島を立たせた場合、あなたはソープロも構えているように見せていることになります。しかしこれには代償が伴います――相手が不毛の大地を使ってきたらCounterspellをキャストできなくなってしまいます。Counterspellをキャストすることがとにかく重要なら、おそらくブラフのことは忘れて安全にプレイすべきでしょう。
モダンで、Tectonic Edgeが入っている可能性のある相手に対して青白デッキをプレイしているところを想像してください。あなたはHallowed Fountain、Seachrome Coast、Celestial Colonnade、島、平地を出しています。Path to Exileをプレイする必要のある状況です。
このとき、あなたはCryptic Commandを確実に撃つことは諦めなければなりません――あなたがどうプレイしたとしても、起きている土地を4枚まで減らしてしまうと相手は青コマのプレイを止めることが可能です。こちらの場に4枚の基本土地がないからです。
やはりここでも判断を下す必要があります。そして実は唯一の正解があります――Colonnadeをタップすべきです。
なぜか?ミシュランは相手が最も壊したい土地だからです。Colonnadeを立たせておいた場合、相手のやりたいこと全てをやらせてしまうことになります――彼はあなたの最高の土地を除去し、なおかつ青コマのプレイを止めることになります。Colonnadeをタップすることによって相手に選択を迫ることができます――そう、彼はこのターンの青コマプレイを止めることはできますが、その場合Tectonic Edgeを単なる2色土地に使って「不毛に」消費することになります。
土地を出そう!
僕が土地について言えることの中でも最も重要なことの一つは、とにかく出すべきだということです。プロフェッショナルのように土地を手札に持っておくべきだと考えてしまうことにより、多くの敗北が生まれています。ほとんどの場合、土地は手札ではなく場に出しておきたいというのが実際のところです。
これについては前に書いたことがあるのであまり深掘りするつもりはありませんが、手札に土地を持っておくことには3つの良い面があります:
・実際には何も持っていないときに、こちらが何か持っていると相手に考えさせることができる。
・ハンデスに対して他のカードを守ることができる。
・負けたときにマナフラッドのせいにすることが簡単にできる。もちろん土地が場にあってもそうすることはできますが、土地5枚の手札をテーブルに投げ出したときほどの効果は得られません。これにより、「見てよ、5ターン連続で土地を引いたんだ。これが君が勝った理由だよ」と自信を持って言うことができます。
まあそういうことです。上記以外の場合、土地はとにかく出すべきです。
多くの人が犯しているミスは上に書いた1点目を過大評価することです――相手は馬鹿ではありません。あなたが何もしていなければ、彼はあなたが何も持っていないことに気づきます。クリーチャーならプレイしているはずだ、除去ならプレイしているはずだ、カウンターなら撃ってきたはずだ――他に持っているとしたら何でしょう?2枚や3枚のカードを持っていても違いはありません。「全て土地ではないだろう」と彼が考えてくれたりはしません。こういう状況ではたいてい土地は出すべきで、特にドロースペルやギルドメイジがデッキに入っているならなおさらです。
フェッチの切り方、テイク2
フェッチランドについては章を設けて話そうと思います。というのも、フェッチは特殊だからです。
フェッチランドはいろいろな使われ方をします:
・色マナを見つける。
・デッキをシャッフルする。
・デッキを圧縮する。
・墓地を肥やす。
・上陸を誘発させる。
フェッチランドについての最大のアドバイスは、「切るな」ということです。必要でない限り、ですが。
僕が目にするミスのほとんどは早すぎるタイミングで――例えば必要な色マナが確定する前に――切ってしまうことです。Volcanic IslandとTropical Islandとフェッチランドを出している場面を想像してください。もしフェッチを切って2枚目のボルカを持ってきたら、相手はトロピを不毛してくるかもしれません。そうなると緑マナを出せなくなってしまいます。
フェッチを場に残しておけばこの状況を避けることができます。
特にレガシーでは、フェッチにはBrainstorm(または独楽)の後にシャッフルするというとても重要な役割があります。たとえブレストが手札になかったとしても、フェッチを切ることによるちっぽけなデッキ圧縮と比べればとてもとても高い確率でブレストを引くことになります(これについては後でもう少し書きます)。ですので、できるだけ長い間フェッチは場に残しておくべきです。
フェッチしたい土地を手札に持っていないか確認しよう!
フェッチを切ったあと、持ってこようとしていた土地がないことに気づくというのは人によってはけっこうやってしまうことです。僕も最近、プレイヤー選手権でやらかしてしまいました。Sacred Foundryを持ってこようとフェッチをサクったのですが、それをデッキに1枚も入れていなかったことを忘れていたんです。僕がそれまでにプレイしてきたどのズーにも1枚は入っていたので。
世界選手権2010のあるゲームで、僕は2枚の土地――Scalding Tarnと島――だけを残して他の土地をタップしていました。こちらのライフは6。そして対戦相手がタップアウトしてCruel Ultimatumをプレイしました。
僕はNegateを撃つためにフェッチを切りました――ところがデッキには島も山も残っていなかったのです。僕はクルーエルの解決を許したばかりでなく、その場で死ぬことになってしまいました。フェッチでライフが5になっていたので。
これら2つの事例はもっぱら僕の不注意から起きたことですが、それだけとも限りません。
例えば、僕らがモダンのドレッジをテストしている中で、フェッチを出してHedron Crabで3枚削り、それからフェッチを切るというプレイを誰かがしていました――はじめの3枚でBloodghastが落ちたときにすぐに場に戻せるのでこの順序でプレイしていたのです。しかしあるとき、誰かがフェッチで持ってこようとしていた土地をはじめの3枚で落としてしまったことがあり、それ以降僕らはある特定の土地が欲しいときにはCrabの誘発がスタックにあるうちにフェッチを切るようになりました。
デッキ圧縮は思っているほど役に立たない
フェッチランドに関する最も大きな勘違いの一つが、できる限りフェッチを切ってデッキを圧縮すべきだ、というものです。もちろんデッキ圧縮にはなります。しかしその効果が支払うライフに見合わないことも多々あるのです。僕は科学者ではありませんが、シンプルな数字をいくつか見てみることにしましょう:
あなたのデッキに45枚のカードが残っていて、4枚積んでいる特定のカードを引きたいとします。通常、1回のドローでそれを引く確率は8.89%(4/45)です。フェッチを1枚切った場合は9.09%(4/44)になります。
これはつまり、この状況が1000回あったとき、フェッチを切らない場合はそのうち89回、切った場合は91回で欲しいカードを引けることが期待される、ということです。違いはたったの2回です――1000回のうちの。
これら1000回全てにおいて、あなたは1点のダメージを受けなければなりません――欲しいカードを2回引くために。ここで、1点のダメージがどの程度重要なのか疑問に思うんじゃないでしょうか――1000回のうち2回以上、1ダメージによって負けることになると思いますか?
僕はこの問いに答えることができません。でも、デッキ圧縮の恩恵が実際どれだけ小さいか、正しくとらえる役には立ちますよね(まあ、いずれにせよ死ぬ状況ならやった方がマシなのですが)。
もちろん2枚以上カードを引ける場合の計算はもう少し複雑になり、フェッチによるデッキ圧縮の効果は多少良くなります。ここで大切なのはあらゆる状況での厳密なパーセンテージを求めることではありません――ほぼ間違いなく、デッキから1枚の土地を取り除くことはあなたが考えているほどの影響をゲームに与えず、1ライフ、あるいは必要なときにシャッフルしたり色を揃えたりするためにフェッチを残しておくことの方がより重要だということです。
自分ではデッキの濃度を高めたつもりでもそうなっていない場合がある、ということにも注意してください。これはPeer Through Depthsの入ったScapeshiftデッキでよく起こります。
Peerをプレイして4枚の土地(もしくは不要牌)をボトムに送った場面を想像してください。もし土地を引きたくないのであればボトムに送った4枚は既にデッキに入っていないようなものです。デッキに45枚残っていたとすると、(例えば12枚の)有効牌をあなたがドローする確率は12/41です。ここでシャッフルしてしまうと、土地を1枚取り除いたとしても確率は12/44に落ちてしまいます。フェッチを切るべきでないのはもちろん、例えばFarseekのキャストもしない方が良いでしょう。本当に追加の土地を有効活用できるのでなければ。
このケースでは5枚の土地をサーチしてはじめてデッキ中の脅威の濃度が高まることになります。
さて、今日はここまで。土地のプレイは一見簡単そうに見えて実は奥が深いということが分かってもらえたでしょうか。
楽しんでくれたら嬉しいです。また来週!
- PV
ChannelFireballより。
マリガン判断について。
マリガンについてはいったいどこまで考えればいいのか・・・奥が深すぎです。
Reid Dukeのマリガン基準についての記事も合わせてどうぞ。
http://radish.diarynote.jp/201207300022328650/
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Legacy Weapon - Keeping Cards, Not Hands
Posted by Caleb Durward
November 21, 2012
http://www.channelfireball.com/articles/legacy-weapon-keeping-cards-not-hands/
ある1枚のスペルと数枚の土地さえ
あればよいと考えていたら
あまりにも緩い秒キープが
素晴らしいものに見えることだろう
以前、アメリカのレガシーのメタゲームでは、初手はGoblin Lackyに対処できるものでなければならなかった。Force of WillもブロッカーもSwords to Plowsharesもない?出直しだ。
この頃はそんなことはないが、個々のマッチアップではやはり同じような状況になり、ある特定のカードが他のカードよりも高い価値を持つことがしばしばある。最も分かりやすい例は、リアニに対するRest in Peaceやゴブリンに対するEngineered Plagueのような対策カードだ。何しろこれらのカードはまさにそのために存在しているのだから。
カードの使い道がそこまで限定的でない場合はもっと難しい。あなたは6枚の土地とOblivion Ringという手札をスニークショー相手にキープするだろうか?Force of Willがあるが青いカードがない手札をTEPS相手にキープするだろうか?
これらの問いへの答えはあなたのデッキの残りという文脈に依存するが、試合の行方はやはり特定の切り札に左右される。そして、切り札がいつどこで重要になるかを知ることはデータマイニングの問題だ。
先日のモダンGPに参加しているあいだ、私はこの問題の影響を感じていた。モダンをプレイするときはいつもそうだが。
ジャンドに対してはLingering Soulsがあれば勝つ。ストームに対しては対策カードがあれば勝つ。ストームとのマッチアップでは、サイド後に相手がいつも入れてくるEmpty the Warrensに対してZealous Persecutionがまた別の対策カードになる。
正しい手順でプレイするスキルや複雑な盤面を評価するスキルが褒めそやされているが、どのカードが重要かを知り、そのカードを手に入れるスキルの方が重要になることはよくある。
マリガン
かつてPVはマリガンをこう定義した。「この手札よりも1枚少ない新しい手札の方がゲームに勝つ可能性が高いと信じること。」
私はこの捉え方をとても気に入っている。明確で、感情論が排除されている。
いったん定義をすれば、過ちに目を向けることができるようになる。誰かがマリガンするときにこう言っているのを聞いたことがないだろうか、「うーん、これは既にマリガンしてるのと同じだな。」
もしマリガンのゴールが死に札をなくすことであるなら、「死に札があるからマリガンした方がよい」というのはこの上ない根拠になる。しかし、これは悪いゴールだ(PVの定義を見てほしい)。手札に効果的な6枚があるのなら、それをマリガン後に引くであろう平均的な6枚と比較すべきであって、死に札を判断基準として使うべきではない。
どのみち、多くのカードは自分で思っているよりも弱い(死に札に近い)。そのThink Twiceをフラッシュバックするチャンスは訪れないかもしれないし、そのPillar of Flameは実際には何も殺せないかもしれないし、そのフィニッシャーを手遅れになる前に出せるマナは得られないかもしれない。同様に、初手にある死に札がゲーム全体を通して死に札になるとも限らない。例えば、相手はLiliana of the Veilを出してくるかもしれない。
基礎
みんな知っているように、マナソース、スペル、マナカーブ、そしてその手札で実際に何ができるかに基いて初手は評価される。非常に曖昧で、多くの人をつまづかせる部分だ。
一般に、私は最初の数ターンの大雑把なプランと、デッキの残りによってそのプランをどれぐらいうまくサポートできるかを合わせて考える。もし導き出したプランが自分のデッキに合っていないなら、そのハンドでは何もできないのでマリガンする。
次の手札を考えてみよう:
これは5色コントロールでは即キープで、4色Zooでは即マリガンだ。
通常アグロデッキは長期戦に弱く、プレッシャーをかけていくために脅威が必要なため、このハンドでは何もできない。同じ手札も、単純に時間を稼ぐ必要のあるコントロールデッキでは理想的になる。
もちろん別の考え方もある。一般に環境が遅いほど、緩いキープから立ち直るためのドローをする時間も多くなる。
いくつかのスタンダードの環境では3ターン目まで動きのないハンドをキープすることがよくあり、遅い手札にも有効牌を引き込むための時間が与えられる。そうでない環境では手遅れになってしまうだろう。
そのマッチアップのペースももちろん考える要素になる。コントロール同士のミラーでは両プレイヤーがかなりの量の土地を並べるまでは脅威が現れないケースがあり、そのような状況では土地7枚の手札が強くなる。
赤単ミラーのような軽い脅威と軽い回答を持ったデッキ同士の対戦は消耗戦となり、土地の少ない手札をキープすることが合理的になる。
個々のカードの要素
マジックをプレイすればするほど、特定のパワーカードの存在がゲームの結末に影響を与えることが分かってくる。それを探すべきときに一見堅実に見えるハンドをキープしてしまうプレイヤーは多い。これは最初の土地をプレイする前に負けている、気づきにくい負け方の一つだ。
私がこれにはじめて出くわしたのはBitterblossomがスタンダードを支配していたときに遡る。私はフェアリーを使っていなかったが、こう聞いたのは覚えている。「フェアリーミラーは苦花を引くまでマリガンするか、相手の苦花に負けるかだ。」
その後、青緑サバイバルを使っていたとき、デッキ名になっているカードを引くまでマリガンしたときに劇的に勝率が上がることに気づいた。もちろん他のそこそこ良いハンドもあったが、速攻Vengevineができないか4枚になるまでは、基本的にはマリガンをした。
最近は、マリガンをする場合はほとんどいつも特定のカードを探している。探しているのは切り札なので、4枚までマリガンして勝つことは特別珍しいことではない。そのようなケースのほとんどで、私は相手の戦略全体を否定する1枚のカード、例えばAether Vialに対するTrygon Predator、を手に入れていた。
一度、ドレッジに対して1枚までマリガンして勝ったこともある。私はゲーム2を勝利に導くLeyline of the Voidを探していたが、手に入ったのは1枚のVerdant Catacombだった。はじめの数ターンの間、相手はNarcomoebaを出すだけで止まっており、私は完璧な土地、土地、Green Sun’s Zenith(Scavenging Oozeをサーチ)という引きだった。相手はイオナをDread Returnしたが時すでに遅く、ウーズがダメージレースを制した。
いくつか例を見てみよう。
サイドボード前
チームドラフト
色をタッチした感染デッキをチームドラフトで使っていたときの以下のハンドを覚えている:
プラスの側面としては、この手札には素晴らしいマナと除去スペルがある。一方、このデッキの主軸にしている4枚のPlague Stingerが1枚も来ていない。
チームメイトにキープするよう説得され、最終的にいやいや従った。私はプレッシャーを展開していくプランでドラフトしており、この手札はぱっと見れば良く見えるけれども、このデッキはコントロール側の役割を担えるわけではなかった。
結局このキープは問題にはならなかった。というのも、私が2ラウンド目を終える前にYuya(渡辺雄也)があっさり3-0してくれたためだ。ありがたいことに、彼はまだまだ勝つつもりのようだった。
青白フラッシュ(スタンダード)
青白フラッシュはエンジンデッキだ。つまり、毎ゲーム大量のキャントリップを連鎖させようとする。このデッキは4枚の土地で運用可能で、Sphinx’s Revelationが少なくとも1枚入っているのが普通ではあるが、上の手札にある5枚目の土地はたいていは不要だ。
上の手札の2枚の島と1枚のGlacial FortressがDissipateとThought Scourに置き換わったと想像してみよう。最高の6枚じゃないか?
さらに上のハンドで2枚の島を抜いてみよう。7枚のときとたいして違わず、5枚の手札としては素晴らしいものだ。実際、そこまでレベルの高くないイベントでは毎ゲームその5枚でスタートしてもおそらく勝てるだろう。
レベルの高くないイベント――これは主観的だが、私は誰を相手にしているかによってマリガン基準を調整している。
普段この考えを述べることはしない。というのも、多くの人たちが相手のスキルのことを考えすぎてしまい、強い相手に対してマリガン地獄に陥ってしまうことになりそうだからだ。それは生き残るためのまっとうなやり方ではない。
しかしこれは私が使う戦略だ。易しい舞台では初手の許容範囲を広げることが重要だと考えている。ポーカーでやるのに似ているね。
一息入れてこのシンプルなグラフを見てみよう。
相手が弱い場合、こちらのカードはより働きを増すことになり、マリガンして勝つことも、マナフラッドの危険のある緩いハンドをキープして勝つこともより多くなるだろう。それなのに、キープ基準を変えなければ同じ確率でマリガン地獄に陥ることになる。
上のグラフで見られるように、敗北の中でマリガンが占める割合は易しい相手に対するときの方が大きい。この数字を小さくするためには手札の許容範囲を広げる必要がある。
ここが気を付けないといけないところだ。易しい舞台であなたの勝率が高くなる理由の一部は、あなたが相手よりも平均的に強いハンドをキープしていることだ。これが多くの人が許容範囲を変えることを考えない理由だ。許容範囲を広げることで良くなる以上に痛手をこうむるかもしれない。
このスキルを身に付けたとしても、それによって勝率が一気に跳ね上がることはない。
マリガン地獄の確率は例えば3%まで下がるかもしれないが、弱いハンドをキープすることで負ける確率が1%上がるだろう。勝率の増加は結局1%だ。スイス10ラウンドで25ゲームプレイするとして、4つのトーナメントを通して追加で1ゲーム拾えるかどうかという数字だ。大したことないように思えるが、1ゲームがトップ8か否かを決めることはしばしばある。
ここまで手札の許容範囲を「なぜ広げるか」あるいは「なぜ広げないか」を見てきた。「どのように広げるか」にはさらに注意が必要だ。
オープントーナメントやPTQのはじめの6,7回戦では、私は平均的な5枚の手札よりも良い初手であればなんでもキープする。たとえそれが平均的な6枚の手札より悪かったとしても。繰り返しになるが、このように許容範囲を広げられる理由は、1)こちらのカードは強い相手に対しているときよりもよく働き、2)そうしたとしても相手のキープ基準がこちらよりもなお緩いためだ。
大会後半になれば、キープ基準は普段通りに戻すべきだ。基準を戻す正しいタイミングは相手が強くなってきたことに気づいたときだ。それが早いか遅いかはイベントによる。
重要なのは、相手の手札の許容範囲が厳しくなるにしたがって、競争力を維持するためにあなたの許容範囲も同じように厳しくする必要があるということだ。
サイドボード後
今度はサイド後に分析がどう変わるかに着目して、続きの例を見ていこう。
RUG対ハイタイド
まず、基本土地しか入っていないデッキが相手の2戦目に不毛を持つ理由が分からない。実質何もしないカードに比べればForked Boltの方がまだマシだろう。2つ目に、ハイタイド相手のゲームではプレッシャーが絶対に必要だ。相手が早めに仕掛けざるを得ない状況にできればカウンター呪文が仕事をする。息をつく余裕を与えてしまうとカウンターではどうにもならない。
デルバー、タルモ、もしくはそれらをできるだけ早く見つけ出せる手札を探しに行き、それらが来るまでマリガンするだろう。
Nimble Mongooseは除去のないデッキ相手では魅力を失う。特にこのハンドにはキャントリップもない。最速のマングースは3ターン目には大きくなるが、このマッチアップではそれでも遅すぎる。
ゴブリン対エルフ
相手が分からない場合、これは良い手札だ。エルフが相手の場合、これでは欠けている。
Goblin Piledriverと不毛はどちらもおそらく働かず、リングリーダーの最高の仕事は追加のインシネレーターを見つけることか、Pyrokinesis後に引き増すことだ。
Pyrokinesisについて言うと、これは記事の初めの方で述べたスーパーパワーカードの一つだ。ピッチコストとして1枚カードが必要とはいえ、パイロはたいてい相手のカード3,4枚を奪う。相手のテンポを破壊し、こちらがGoblin Sharpshooterを見つけるための時間を稼ぐ。
上の手札には何でも探せるチューターはあるが、エルフの決着ターン(3~4)には間に合わない。
私は上の手札は喜んでマリガンし、ただでPyrokinesis目当ての6ドローをしに行く。もしくは、少なくともGempalm Incineratorと1マナゴブリンのある手札までは。
サイド後はどれがパワーカードか特定するのがかなり簡単だということに気をつけてほしい。
RUGの例では正しい脅威を見つける必要があった。ゴブリンの例では探すべきサイドカードが入っていた。
Caw-Bladeミラー(新たなるファイレクシア以前)
オンラインのPTQで出くわした以下の手札は深いものだった。私はダイスロールに勝ち、一度マリガンした。そして引いたのがこれだ:
私はこの手札を長い間凝視して、それからキープした。
Craig Wescoeが肩越しに言った。
「何やってんの!?」
彼が思ったことは分かる。これは呪文を一つも唱えられない手札だ。
しかし、このマッチアップはStoneforge Mysticを出せるかどうかに大きく依存し、私はこの手札は十分好ましいと考えた。土地を引く賭けに勝つ確率は、マリガンして石鍛冶と土地を同時に引く賭けよりも良い。
当然のことながら、私は石鍛冶を2ターン目に、鷹を3ターン目に、そしてジェイスを4ターン目にキャストした。相手もこちらと同じ展開をしてきたが、2枚目のジェイスは生き残った。
私が話すエピソードの多くは私の引きが良かっただけのように見えるかもしれないが、かつては私もひどい負け方をしていたことは知っておいてほしい。少なくとも自分ではそう思っている。懐かしいな。
私の一般的な話なんかよりももっと大切なことは、私がようやくこの記事を書いた、ということだ。
ここにあるのは、数年間の長きに渡って多くの人が放置してきたこと、皆が知っていて誰か書くだろうと思っていたこと、そして語られることなく頭の中にのみ存在していたことだ。
Caleb Durward
※訳注:最終段落"sackitude"の意味がどうしても分からず("More important than my general sackitude is that I’ve finally penned this article.")、訳文では完全に推測で「話」としています。
マリガン判断について。
マリガンについてはいったいどこまで考えればいいのか・・・奥が深すぎです。
Reid Dukeのマリガン基準についての記事も合わせてどうぞ。
http://radish.diarynote.jp/201207300022328650/
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Legacy Weapon - Keeping Cards, Not Hands
Posted by Caleb Durward
November 21, 2012
http://www.channelfireball.com/articles/legacy-weapon-keeping-cards-not-hands/
ある1枚のスペルと数枚の土地さえ
あればよいと考えていたら
あまりにも緩い秒キープが
素晴らしいものに見えることだろう
以前、アメリカのレガシーのメタゲームでは、初手はGoblin Lackyに対処できるものでなければならなかった。Force of WillもブロッカーもSwords to Plowsharesもない?出直しだ。
この頃はそんなことはないが、個々のマッチアップではやはり同じような状況になり、ある特定のカードが他のカードよりも高い価値を持つことがしばしばある。最も分かりやすい例は、リアニに対するRest in Peaceやゴブリンに対するEngineered Plagueのような対策カードだ。何しろこれらのカードはまさにそのために存在しているのだから。
カードの使い道がそこまで限定的でない場合はもっと難しい。あなたは6枚の土地とOblivion Ringという手札をスニークショー相手にキープするだろうか?Force of Willがあるが青いカードがない手札をTEPS相手にキープするだろうか?
これらの問いへの答えはあなたのデッキの残りという文脈に依存するが、試合の行方はやはり特定の切り札に左右される。そして、切り札がいつどこで重要になるかを知ることはデータマイニングの問題だ。
先日のモダンGPに参加しているあいだ、私はこの問題の影響を感じていた。モダンをプレイするときはいつもそうだが。
ジャンドに対してはLingering Soulsがあれば勝つ。ストームに対しては対策カードがあれば勝つ。ストームとのマッチアップでは、サイド後に相手がいつも入れてくるEmpty the Warrensに対してZealous Persecutionがまた別の対策カードになる。
正しい手順でプレイするスキルや複雑な盤面を評価するスキルが褒めそやされているが、どのカードが重要かを知り、そのカードを手に入れるスキルの方が重要になることはよくある。
マリガン
かつてPVはマリガンをこう定義した。「この手札よりも1枚少ない新しい手札の方がゲームに勝つ可能性が高いと信じること。」
私はこの捉え方をとても気に入っている。明確で、感情論が排除されている。
いったん定義をすれば、過ちに目を向けることができるようになる。誰かがマリガンするときにこう言っているのを聞いたことがないだろうか、「うーん、これは既にマリガンしてるのと同じだな。」
もしマリガンのゴールが死に札をなくすことであるなら、「死に札があるからマリガンした方がよい」というのはこの上ない根拠になる。しかし、これは悪いゴールだ(PVの定義を見てほしい)。手札に効果的な6枚があるのなら、それをマリガン後に引くであろう平均的な6枚と比較すべきであって、死に札を判断基準として使うべきではない。
どのみち、多くのカードは自分で思っているよりも弱い(死に札に近い)。そのThink Twiceをフラッシュバックするチャンスは訪れないかもしれないし、そのPillar of Flameは実際には何も殺せないかもしれないし、そのフィニッシャーを手遅れになる前に出せるマナは得られないかもしれない。同様に、初手にある死に札がゲーム全体を通して死に札になるとも限らない。例えば、相手はLiliana of the Veilを出してくるかもしれない。
基礎
みんな知っているように、マナソース、スペル、マナカーブ、そしてその手札で実際に何ができるかに基いて初手は評価される。非常に曖昧で、多くの人をつまづかせる部分だ。
一般に、私は最初の数ターンの大雑把なプランと、デッキの残りによってそのプランをどれぐらいうまくサポートできるかを合わせて考える。もし導き出したプランが自分のデッキに合っていないなら、そのハンドでは何もできないのでマリガンする。
次の手札を考えてみよう:
《流刑への道/Path to Exile》
《稲妻/Lightning Bolt》
《マナ漏出/Mana Leak》
《稲妻のらせん/Lightning Helix》
《霧深い雨林/Misty Rainforest》
《神聖なる泉/Hallowed Fountain》
《沸騰する小湖/Scalding Tarn》
これは5色コントロールでは即キープで、4色Zooでは即マリガンだ。
通常アグロデッキは長期戦に弱く、プレッシャーをかけていくために脅威が必要なため、このハンドでは何もできない。同じ手札も、単純に時間を稼ぐ必要のあるコントロールデッキでは理想的になる。
もちろん別の考え方もある。一般に環境が遅いほど、緩いキープから立ち直るためのドローをする時間も多くなる。
いくつかのスタンダードの環境では3ターン目まで動きのないハンドをキープすることがよくあり、遅い手札にも有効牌を引き込むための時間が与えられる。そうでない環境では手遅れになってしまうだろう。
そのマッチアップのペースももちろん考える要素になる。コントロール同士のミラーでは両プレイヤーがかなりの量の土地を並べるまでは脅威が現れないケースがあり、そのような状況では土地7枚の手札が強くなる。
赤単ミラーのような軽い脅威と軽い回答を持ったデッキ同士の対戦は消耗戦となり、土地の少ない手札をキープすることが合理的になる。
個々のカードの要素
マジックをプレイすればするほど、特定のパワーカードの存在がゲームの結末に影響を与えることが分かってくる。それを探すべきときに一見堅実に見えるハンドをキープしてしまうプレイヤーは多い。これは最初の土地をプレイする前に負けている、気づきにくい負け方の一つだ。
私がこれにはじめて出くわしたのはBitterblossomがスタンダードを支配していたときに遡る。私はフェアリーを使っていなかったが、こう聞いたのは覚えている。「フェアリーミラーは苦花を引くまでマリガンするか、相手の苦花に負けるかだ。」
その後、青緑サバイバルを使っていたとき、デッキ名になっているカードを引くまでマリガンしたときに劇的に勝率が上がることに気づいた。もちろん他のそこそこ良いハンドもあったが、速攻Vengevineができないか4枚になるまでは、基本的にはマリガンをした。
最近は、マリガンをする場合はほとんどいつも特定のカードを探している。探しているのは切り札なので、4枚までマリガンして勝つことは特別珍しいことではない。そのようなケースのほとんどで、私は相手の戦略全体を否定する1枚のカード、例えばAether Vialに対するTrygon Predator、を手に入れていた。
一度、ドレッジに対して1枚までマリガンして勝ったこともある。私はゲーム2を勝利に導くLeyline of the Voidを探していたが、手に入ったのは1枚のVerdant Catacombだった。はじめの数ターンの間、相手はNarcomoebaを出すだけで止まっており、私は完璧な土地、土地、Green Sun’s Zenith(Scavenging Oozeをサーチ)という引きだった。相手はイオナをDread Returnしたが時すでに遅く、ウーズがダメージレースを制した。
いくつか例を見てみよう。
サイドボード前
チームドラフト
色をタッチした感染デッキをチームドラフトで使っていたときの以下のハンドを覚えている:
《山/Mountain》
《沼/Swamp》
《森/Forest》
《森/Forest》
《鉄のマイア/Iron Myr》
《金屑化/Turn to Slag》
《荒々しき力/Untamed Might》
プラスの側面としては、この手札には素晴らしいマナと除去スペルがある。一方、このデッキの主軸にしている4枚のPlague Stingerが1枚も来ていない。
チームメイトにキープするよう説得され、最終的にいやいや従った。私はプレッシャーを展開していくプランでドラフトしており、この手札はぱっと見れば良く見えるけれども、このデッキはコントロール側の役割を担えるわけではなかった。
結局このキープは問題にはならなかった。というのも、私が2ラウンド目を終える前にYuya(渡辺雄也)があっさり3-0してくれたためだ。ありがたいことに、彼はまだまだ勝つつもりのようだった。
青白フラッシュ(スタンダード)
《神聖なる泉/Hallowed Fountain》
《氷河の城砦/Glacial Fortress》
《氷河の城砦/Glacial Fortress》
《島/Island》
《島/Island》
《熟慮/Think Twice》
《ボーラスの占い師/Augur of Bolas》
青白フラッシュはエンジンデッキだ。つまり、毎ゲーム大量のキャントリップを連鎖させようとする。このデッキは4枚の土地で運用可能で、Sphinx’s Revelationが少なくとも1枚入っているのが普通ではあるが、上の手札にある5枚目の土地はたいていは不要だ。
上の手札の2枚の島と1枚のGlacial FortressがDissipateとThought Scourに置き換わったと想像してみよう。最高の6枚じゃないか?
さらに上のハンドで2枚の島を抜いてみよう。7枚のときとたいして違わず、5枚の手札としては素晴らしいものだ。実際、そこまでレベルの高くないイベントでは毎ゲームその5枚でスタートしてもおそらく勝てるだろう。
レベルの高くないイベント――これは主観的だが、私は誰を相手にしているかによってマリガン基準を調整している。
普段この考えを述べることはしない。というのも、多くの人たちが相手のスキルのことを考えすぎてしまい、強い相手に対してマリガン地獄に陥ってしまうことになりそうだからだ。それは生き残るためのまっとうなやり方ではない。
しかしこれは私が使う戦略だ。易しい舞台では初手の許容範囲を広げることが重要だと考えている。ポーカーでやるのに似ているね。
一息入れてこのシンプルなグラフを見てみよう。
【キツい舞台】
・勝利:50%
・敗北(マリガン地獄によるもの):5%
・敗北(その他):45%
【易しい舞台】
・勝利:70%
・敗北(マリガン地獄によるもの):5%
・敗北(その他):25%
※訳注:グラフは元記事を見てください。
相手が弱い場合、こちらのカードはより働きを増すことになり、マリガンして勝つことも、マナフラッドの危険のある緩いハンドをキープして勝つこともより多くなるだろう。それなのに、キープ基準を変えなければ同じ確率でマリガン地獄に陥ることになる。
上のグラフで見られるように、敗北の中でマリガンが占める割合は易しい相手に対するときの方が大きい。この数字を小さくするためには手札の許容範囲を広げる必要がある。
ここが気を付けないといけないところだ。易しい舞台であなたの勝率が高くなる理由の一部は、あなたが相手よりも平均的に強いハンドをキープしていることだ。これが多くの人が許容範囲を変えることを考えない理由だ。許容範囲を広げることで良くなる以上に痛手をこうむるかもしれない。
このスキルを身に付けたとしても、それによって勝率が一気に跳ね上がることはない。
マリガン地獄の確率は例えば3%まで下がるかもしれないが、弱いハンドをキープすることで負ける確率が1%上がるだろう。勝率の増加は結局1%だ。スイス10ラウンドで25ゲームプレイするとして、4つのトーナメントを通して追加で1ゲーム拾えるかどうかという数字だ。大したことないように思えるが、1ゲームがトップ8か否かを決めることはしばしばある。
ここまで手札の許容範囲を「なぜ広げるか」あるいは「なぜ広げないか」を見てきた。「どのように広げるか」にはさらに注意が必要だ。
オープントーナメントやPTQのはじめの6,7回戦では、私は平均的な5枚の手札よりも良い初手であればなんでもキープする。たとえそれが平均的な6枚の手札より悪かったとしても。繰り返しになるが、このように許容範囲を広げられる理由は、1)こちらのカードは強い相手に対しているときよりもよく働き、2)そうしたとしても相手のキープ基準がこちらよりもなお緩いためだ。
大会後半になれば、キープ基準は普段通りに戻すべきだ。基準を戻す正しいタイミングは相手が強くなってきたことに気づいたときだ。それが早いか遅いかはイベントによる。
重要なのは、相手の手札の許容範囲が厳しくなるにしたがって、競争力を維持するためにあなたの許容範囲も同じように厳しくする必要があるということだ。
サイドボード後
今度はサイド後に分析がどう変わるかに着目して、続きの例を見ていこう。
RUG対ハイタイド
《不毛の大地/Wasteland》
《霧深い雨林/Misty Rainforest》
《Volcanic Island》
《目くらまし/Daze》
《目くらまし/Daze》
《敏捷なマングース/Nimble Mongoose》
《Force of Will》
まず、基本土地しか入っていないデッキが相手の2戦目に不毛を持つ理由が分からない。実質何もしないカードに比べればForked Boltの方がまだマシだろう。2つ目に、ハイタイド相手のゲームではプレッシャーが絶対に必要だ。相手が早めに仕掛けざるを得ない状況にできればカウンター呪文が仕事をする。息をつく余裕を与えてしまうとカウンターではどうにもならない。
デルバー、タルモ、もしくはそれらをできるだけ早く見つけ出せる手札を探しに行き、それらが来るまでマリガンするだろう。
Nimble Mongooseは除去のないデッキ相手では魅力を失う。特にこのハンドにはキャントリップもない。最速のマングースは3ターン目には大きくなるが、このマッチアップではそれでも遅すぎる。
ゴブリン対エルフ
《不毛の大地/Wasteland》
《不毛の大地/Wasteland》
《山/Mountain》
《霊気の薬瓶/AEther Vial》
《ゴブリンの群衆追い/Goblin Piledriver》
《ゴブリンの女看守/Goblin Matron》
《ゴブリンの首謀者/Goblin Ringleader》
相手が分からない場合、これは良い手札だ。エルフが相手の場合、これでは欠けている。
Goblin Piledriverと不毛はどちらもおそらく働かず、リングリーダーの最高の仕事は追加のインシネレーターを見つけることか、Pyrokinesis後に引き増すことだ。
Pyrokinesisについて言うと、これは記事の初めの方で述べたスーパーパワーカードの一つだ。ピッチコストとして1枚カードが必要とはいえ、パイロはたいてい相手のカード3,4枚を奪う。相手のテンポを破壊し、こちらがGoblin Sharpshooterを見つけるための時間を稼ぐ。
上の手札には何でも探せるチューターはあるが、エルフの決着ターン(3~4)には間に合わない。
私は上の手札は喜んでマリガンし、ただでPyrokinesis目当ての6ドローをしに行く。もしくは、少なくともGempalm Incineratorと1マナゴブリンのある手札までは。
サイド後はどれがパワーカードか特定するのがかなり簡単だということに気をつけてほしい。
RUGの例では正しい脅威を見つける必要があった。ゴブリンの例では探すべきサイドカードが入っていた。
Caw-Bladeミラー(新たなるファイレクシア以前)
オンラインのPTQで出くわした以下の手札は深いものだった。私はダイスロールに勝ち、一度マリガンした。そして引いたのがこれだ:
《地盤の際/Tectonic Edge》
《石鍛冶の神秘家/Stoneforge Mystic》
《戦隊の鷹/Squadron Hawk》
《精神を刻む者、ジェイス/Jace, the Mind Sculptor》
《精神を刻む者、ジェイス/Jace, the Mind Sculptor》
《乱動への突入/Into the Roil》
私はこの手札を長い間凝視して、それからキープした。
Craig Wescoeが肩越しに言った。
「何やってんの!?」
彼が思ったことは分かる。これは呪文を一つも唱えられない手札だ。
しかし、このマッチアップはStoneforge Mysticを出せるかどうかに大きく依存し、私はこの手札は十分好ましいと考えた。土地を引く賭けに勝つ確率は、マリガンして石鍛冶と土地を同時に引く賭けよりも良い。
当然のことながら、私は石鍛冶を2ターン目に、鷹を3ターン目に、そしてジェイスを4ターン目にキャストした。相手もこちらと同じ展開をしてきたが、2枚目のジェイスは生き残った。
私が話すエピソードの多くは私の引きが良かっただけのように見えるかもしれないが、かつては私もひどい負け方をしていたことは知っておいてほしい。少なくとも自分ではそう思っている。懐かしいな。
私の一般的な話なんかよりももっと大切なことは、私がようやくこの記事を書いた、ということだ。
ここにあるのは、数年間の長きに渡って多くの人が放置してきたこと、皆が知っていて誰か書くだろうと思っていたこと、そして語られることなく頭の中にのみ存在していたことだ。
Caleb Durward
※訳注:最終段落"sackitude"の意味がどうしても分からず("More important than my general sackitude is that I’ve finally penned this article.")、訳文では完全に推測で「話」としています。
Channel Fireballより。
戦略と戦術。
全ての手に意味がある、と言うのは簡単ですが、やれるようになりたいものです。
なかなか時間が取れず短めの記事を訳しました。
試しにですます調に挑戦。読みにくかったらすみません。
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PV’s Playhouse - Strategy and Tactics
Posted by Paulo Vitor Damo da Rosa
October 11, 2012
http://www.channelfireball.com/articles/pvs-playhouse-strategy-and-tactics/
こんにちは!
僕は今チームChannelfireballのみんなとサンノゼに来て、GPとPTに向けた練習をしています。モダンをプレイしているか、ドラフトをやっているか、食事をしているか、学校の宿題のためにClausewitzの本『On War』を読んでいるかの毎日です。
この本を読んで、そこに書かれている多くの考え方が色々な形でマジックにも適用できることに気づき、今回の記事では戦略とプランニングについて書くことに決めました。
戦略
少し前ツイッターで、僕がいつも何ターン先までプランを立てているかを誰かに聞かれました。理想的な答えは明らかに「最後までだよ、当たり前じゃないか」となるのでしょうが、しかし現実的な答えは1サイクルまで――こちらがしたことに対して相手が自分のターンにどう対応してくるか、そしてそれにどう答えるか、ということになります。
ときにはかなり先のターンまでプランを立てる必要もありますが、そこまでのプランニングは実際にやるのが不可能だったり、やっても意味がなかったりすることもあります。これから起こることがあなたのその後のプレイに影響を及ぼすからです。
とはいえ、個々のプレイをするときにどれだけ先までプランを立てるかに関わらず、まずカードをプレイする前にはプランと戦略を持っておくべきです。
プランというのは基本的にはゴール、つまり試合全体を通してあなたをガイドする目標のことを指す、ということに気を付けるのが大切です。ここでは明らかに「ゲームに勝つ」というのが大目標ではありますが、本質的にはどのようにゲームに勝つかをゴールとすべきです――例えば「6マナ出せるようになるまで生き残る」や「序盤のうちに相手の全クリーチャーを殺す」、もしくは「3ターン目にコンボ開始する」などのように。
いったん戦略を持てば、それがあなたのガイドラインになります――守らなければならない複雑なルール一式ではなく、あなたの全てのアクションを導く一つの大きな方向性を与えるものが戦略です。
もしそのゲームで重要になることをあなたが分かっていなければ、何か新たなことが起こるたびに毎回状況を考えなおさなければならなくなるでしょう。方向性を持っていれば、あなたは新たな要素をそのモデルに組み入れるだけでいつでも簡単に状況を分析できるようになります。
例えば、あなたは「相手がこちらを倒す前に焼き殺す」というプランで行くことに決め、相手が3/3でアタックしてきた場合、あなたはおそらく新しく引いたLightning Boltをそこで消費しようとはしないでしょう――「焼き殺す」プランに反するので。
しかし、あなたのプランが「Nicol Bolasをプレイするまで生き残る」だとすると、アタッカーを焼きたくなる可能性はかなり高くなります。
毎回毎回あらゆることを考える必要がなくなれば、時間と脳細胞を節約できます。
戦術
一度ゴールを定めたら、実行する必要があります。Carlos Romaoが2002年に世界選手権でサイカトグを使った場面を例として取り上げましょう。このトーナメントでCarlosはサイカ同士のミラーにおいて、Upheavalを解決させる、というゴールを置いていました。
それが彼が勝った理由だったのでしょうか?いいえ、そうではありません――どのサイカトグプレイヤーも同じゴールを置いていました。全員がその同じゴールに向かうゲームプランを立てていたのです。
違いは、どうやってそこに到るか――つまり彼らの戦術にありました。
Upheavalを解決させるためのCarlosの戦術は、カードを引くことを対戦相手よりも軽視して、激動をめぐるただ一度の折衝のためにカウンターを温存する、というものでした。その一回のやり取りに勝ちさえすれば他のことはどうでもよい、と彼が考えていたのが理由です。
相手が追加で10枚のカードを引いたかどうかには関係なく、Mana ShortからのUpheaval + Psychatogをすれば相手は死にます。それだけでなく、このことを念頭においた構築も彼はしていました――例えば、他のプレイヤーが使っていたForce Spikeを彼は入れていません。激動をめぐる折衝では役に立たないだろうからです。
手段、つまりゴールに到達するために使う物について考えずに目標を語ることには意味がありません。目標と手段には一種の相互依存性があり、手段は目標をものがたり、目標はどんな手段でそこに向かうかを示します――到達不可能な目標設定はあなたにとって弊害にしかなりません。
僕は地球の支配者になるというゴールを定めることはできますが、そうする手段がない(今後目にするかもしれませんが、少なくとも近いうちにはない)ため、これは役に立つゴールではありません。同じく、僕は今この目の前にある壁をパンチすることができます――そうする手段は間違いなくあります――が、何の目標達成にも繋がらないためパンチはしません。
これをマジックに持ち込むと――例えば、もし僕がコントロールデッキをプレイしていたら「相手がコンボを始める前に倒す」というプランはとれませんし、緑単をプレイしていたら「相手のクリーチャーを全て殺す」というプランはとれません――僕は別のプランを見つけるか、もしくはデッキを変える必要があります。
もしもCarlosのデッキにForce Spikeが入っていて、カウンター以上に除去が入っていたら、おそらく彼には自分の戦略を実行する手段がなく、彼のドロースペルを相手がカウンターしてくれるように祈るしかなくなるでしょう。
また、もし僕が赤単バーンをプレイしていたら「相手のクリーチャーを殺す」プランはとても簡単にとることができます――そうする道具があります――しかし赤単バーンでは対戦相手を焼くべきなので、このプランは意味のある目標達成には繋がりません。
これは特に初心者がリミテッドをプレイしている場面で数多く見かけます――彼らは使えるスペルを何でも、それが使えるからという理由でプレイするだけで、その結果ゴールに近づくかどうかは考えません。プレリリースで、ある人がライフ18で0/2を出しているときにStab Woundを相手の1/1に使うのを見ました――これは明らかに目的がなく、なぜそうしてしまったのでしょうか?ただできるからという理由で何かをやらないようにしましょう。
SCGインビテーショナルを観戦していたとき、興味深い戦略間違いを目撃しました。
名前を思い出せないのですが青白を使っていた相手に対して、Todd AndersonがRUGをプレイしていました。Toddは2体のデルバーを出していましたが、土地が1枚しかありませんでした。対戦相手は4枚ぐらいの土地を出していましたが、デルバーを止める手段を探す必要のある状況でした。
ある時点でToddがBrainstormを引いてプレイしました。対戦相手は少し考えてForce of Willをプレイしました。これはなかなか論理的なプレイです。Toddは土地が1枚で詰まっており、Brainstormでそこから抜けだそうと願っているのは明白でしたから。
そして、その次のターン、対戦相手の彼はついに全体除去――TerminusかたぶんEngineered Explosivesか――にたどり着きましたが、ToddはForce of Willを握っており、Toddが2枚目の土地をプレイすることなく相手は死ぬことになりました。
このエピソードでは、対戦相手の男は手段を持っていた――相手が土地を探していて、それを止めることができた――ことに明らかにエキサイトしすぎです。彼には止める理由がまったくなかった、つまり、相手が追加の土地を見つけるのを妨げることは彼の全体プランの一部にはなっていなかったのです。彼のプランは生きながらえることでした。そしてあのBrainstormをカウンターすることはそのプランを推し進めることにはなりません。全体除去を通すときのためにForce of Willを温存することは間違いなくプランの一部になったはずなのですが。
Toddが、Brainstormを通すためにForce of Willを使うこともできたのに、それをせずForce of Willを握っていたことに目を向けると面白いでしょう。彼は2枚目の土地を見つける手段を持ってはいましたが、そうすることは彼の目標達成には繋がりません。そこで彼はそうしないことに決め、結果ゲームに勝ちました。
重要なのは、達成を望んでいて、なおかつ実際に手持ちの手段で達成できる目標を見つけることです。そして、目標と手段が同時に存在しない場合は、手段に合わせて目標を変えるか、目標に合わせて手段を変えるかのどちらかが必要になります。
例えば、よくあるジャンドの対コンボのマッチアップでは、コンボを始動できないように妨害し、妨害から立ち直る前に倒すことが目標になります。もしかなりの量の妨害を入れても相手が立ち直る前に倒すことができないとすれば、立ち直るための時間を与えないためにあなたはより速くなろうとするでしょう。そしてそうしても勝てない場合、それはもはや手段の問題ではありません――目標に問題があります。そうしようとしてもできないのですから。この場合、目標を変えるべきです。例えば、相手が回答不可能な一つのパーマネント、相手が墓地ベースならLeyline of the Voidなど、を着地させることが目標となり得ます。
良い戦略を組み上げることの本質は、自分の限界を知ることです。
サンフランシスコに向けたテストの最中、僕らはBig ZooはSmall Zooに勝てるだろうという想定のもとで調整を続けていました。最初にプレイしたときにはそれは確かに正しかったのですが、我々がそのマッチアップについて学ぶにつれて、実はSmall Zooが勝てることが分かってきました。
僕らははじめ、相手の土俵で戦おうとするというミスを犯していました――相手のクリーチャーを殺して盤面での優位を築こうとしていたのです。普通のZoo同士のミラーは「最後に立っていた方の勝ち」みたいなもので、相手の生物を殺すことで勝てたためです。しかし、(単純に相手の方が大きいために)その戦いに勝つ手段がないことにいったん気づくと、僕らは目標を変え、相手を焼き殺すことにしたのです。
相手のフェッチによるダメージや序盤のアタック、Bolt、Helix、Tribal Flames、そして瞬唱によって、実際に焼き殺すことが可能でした。そして、相手がタルモと5/5の聖遺を出しているにも関わらずゲームに勝つことがしばしばありました。
もう一つ別の例を挙げましょう:
少し前、ブラジルのサイトでEdb(Eduardo Borges)が書いた記事を読みました。その記事ではレガシーの青白デッキに関する彼の思考過程が説明されていました。彼は、何度もOmni-Tell相手にプレイしたが、ほとんどの場合でShow and Tellをうまくカウンターできなかった、と述べていました。Force of Will、Pyroblast、そしてOvermasterはカウンターしきるには多すぎて、ふつうは彼はカウンター合戦に負け、そして結果的にゲームにも負けました。
そう、理想的な戦略はShow and Tellを決して解決させず、相手が勝てないようにすることでしたが、彼にはそうする手段がありませんでした。そのため、それは意味のない目標でした。そこで彼は目標を変える必要がありました――彼はOblivion Ringのようなカードを使い、Show and Tellを解決させつつ勝とうとすることに決めたのです。
このように彼は新たな目標に合わせて手段を調整し、そしてこの目標は実際に納得のいく頻度で達成できることが分かりました。
あるデッキが全てのマッチアップに対して同じプランを持つということはほぼ不可能です。また、一つの試合の中ですら同じプランを持ち続けることはできないでしょう。Zooのような能動的なデッキでさえ、そのときどきでプランを変えます――例えば、他のZooデッキを相手にする場合はコントロールゲームをしたくなるでしょう。
一般に重要となる要素はマッチアップとあなたの初手です――もし手札に複数のLynxとBoltがあればアグレッシブにいきたくなるでしょうし、一方、聖遺とタルモが何体かいる場合はおそらくディフェンシブになるべきです。単純に先手か後手かによってもプランは根本的に変わり得るため、注意を払っておくべきです。
どんなプランを取るべきか分からない場合は、対戦相手をよく見て、その反対のことをやるのは悪くない戦略です――もし彼が何点かダメージを与えるために生物を自殺させているなら、あなたはそれを防ぐために自分の生物を自殺させたくなるでしょう。(※訳注:対ドレッジのことだと思われる。)
なにがあろうと、適当にカードをプレイすることだけはやめましょう。もしどんなゴールに向かうべきか分からないなら、考え出しましょう!それは間違っているかもしれません。しかし、方向性のないプレイもまた間違っている可能性が高いのです。
この記事を楽しんでもらえたら幸いです。また来週!
PV
戦略と戦術。
全ての手に意味がある、と言うのは簡単ですが、やれるようになりたいものです。
なかなか時間が取れず短めの記事を訳しました。
試しにですます調に挑戦。読みにくかったらすみません。
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PV’s Playhouse - Strategy and Tactics
Posted by Paulo Vitor Damo da Rosa
October 11, 2012
http://www.channelfireball.com/articles/pvs-playhouse-strategy-and-tactics/
こんにちは!
僕は今チームChannelfireballのみんなとサンノゼに来て、GPとPTに向けた練習をしています。モダンをプレイしているか、ドラフトをやっているか、食事をしているか、学校の宿題のためにClausewitzの本『On War』を読んでいるかの毎日です。
この本を読んで、そこに書かれている多くの考え方が色々な形でマジックにも適用できることに気づき、今回の記事では戦略とプランニングについて書くことに決めました。
戦略
少し前ツイッターで、僕がいつも何ターン先までプランを立てているかを誰かに聞かれました。理想的な答えは明らかに「最後までだよ、当たり前じゃないか」となるのでしょうが、しかし現実的な答えは1サイクルまで――こちらがしたことに対して相手が自分のターンにどう対応してくるか、そしてそれにどう答えるか、ということになります。
ときにはかなり先のターンまでプランを立てる必要もありますが、そこまでのプランニングは実際にやるのが不可能だったり、やっても意味がなかったりすることもあります。これから起こることがあなたのその後のプレイに影響を及ぼすからです。
とはいえ、個々のプレイをするときにどれだけ先までプランを立てるかに関わらず、まずカードをプレイする前にはプランと戦略を持っておくべきです。
プランというのは基本的にはゴール、つまり試合全体を通してあなたをガイドする目標のことを指す、ということに気を付けるのが大切です。ここでは明らかに「ゲームに勝つ」というのが大目標ではありますが、本質的にはどのようにゲームに勝つかをゴールとすべきです――例えば「6マナ出せるようになるまで生き残る」や「序盤のうちに相手の全クリーチャーを殺す」、もしくは「3ターン目にコンボ開始する」などのように。
いったん戦略を持てば、それがあなたのガイドラインになります――守らなければならない複雑なルール一式ではなく、あなたの全てのアクションを導く一つの大きな方向性を与えるものが戦略です。
もしそのゲームで重要になることをあなたが分かっていなければ、何か新たなことが起こるたびに毎回状況を考えなおさなければならなくなるでしょう。方向性を持っていれば、あなたは新たな要素をそのモデルに組み入れるだけでいつでも簡単に状況を分析できるようになります。
例えば、あなたは「相手がこちらを倒す前に焼き殺す」というプランで行くことに決め、相手が3/3でアタックしてきた場合、あなたはおそらく新しく引いたLightning Boltをそこで消費しようとはしないでしょう――「焼き殺す」プランに反するので。
《野生のナカティル/Wild Nacatl》
《稲妻/Lightning Bolt》
しかし、あなたのプランが「Nicol Bolasをプレイするまで生き残る」だとすると、アタッカーを焼きたくなる可能性はかなり高くなります。
毎回毎回あらゆることを考える必要がなくなれば、時間と脳細胞を節約できます。
戦術
一度ゴールを定めたら、実行する必要があります。Carlos Romaoが2002年に世界選手権でサイカトグを使った場面を例として取り上げましょう。このトーナメントでCarlosはサイカ同士のミラーにおいて、Upheavalを解決させる、というゴールを置いていました。
それが彼が勝った理由だったのでしょうか?いいえ、そうではありません――どのサイカトグプレイヤーも同じゴールを置いていました。全員がその同じゴールに向かうゲームプランを立てていたのです。
違いは、どうやってそこに到るか――つまり彼らの戦術にありました。
《サイカトグ/Psychatog》
《激動/Upheaval》
Upheavalを解決させるためのCarlosの戦術は、カードを引くことを対戦相手よりも軽視して、激動をめぐるただ一度の折衝のためにカウンターを温存する、というものでした。その一回のやり取りに勝ちさえすれば他のことはどうでもよい、と彼が考えていたのが理由です。
相手が追加で10枚のカードを引いたかどうかには関係なく、Mana ShortからのUpheaval + Psychatogをすれば相手は死にます。それだけでなく、このことを念頭においた構築も彼はしていました――例えば、他のプレイヤーが使っていたForce Spikeを彼は入れていません。激動をめぐる折衝では役に立たないだろうからです。
手段、つまりゴールに到達するために使う物について考えずに目標を語ることには意味がありません。目標と手段には一種の相互依存性があり、手段は目標をものがたり、目標はどんな手段でそこに向かうかを示します――到達不可能な目標設定はあなたにとって弊害にしかなりません。
僕は地球の支配者になるというゴールを定めることはできますが、そうする手段がない(今後目にするかもしれませんが、少なくとも近いうちにはない)ため、これは役に立つゴールではありません。同じく、僕は今この目の前にある壁をパンチすることができます――そうする手段は間違いなくあります――が、何の目標達成にも繋がらないためパンチはしません。
これをマジックに持ち込むと――例えば、もし僕がコントロールデッキをプレイしていたら「相手がコンボを始める前に倒す」というプランはとれませんし、緑単をプレイしていたら「相手のクリーチャーを全て殺す」というプランはとれません――僕は別のプランを見つけるか、もしくはデッキを変える必要があります。
もしもCarlosのデッキにForce Spikeが入っていて、カウンター以上に除去が入っていたら、おそらく彼には自分の戦略を実行する手段がなく、彼のドロースペルを相手がカウンターしてくれるように祈るしかなくなるでしょう。
また、もし僕が赤単バーンをプレイしていたら「相手のクリーチャーを殺す」プランはとても簡単にとることができます――そうする道具があります――しかし赤単バーンでは対戦相手を焼くべきなので、このプランは意味のある目標達成には繋がりません。
これは特に初心者がリミテッドをプレイしている場面で数多く見かけます――彼らは使えるスペルを何でも、それが使えるからという理由でプレイするだけで、その結果ゴールに近づくかどうかは考えません。プレリリースで、ある人がライフ18で0/2を出しているときにStab Woundを相手の1/1に使うのを見ました――これは明らかに目的がなく、なぜそうしてしまったのでしょうか?ただできるからという理由で何かをやらないようにしましょう。
SCGインビテーショナルを観戦していたとき、興味深い戦略間違いを目撃しました。
名前を思い出せないのですが青白を使っていた相手に対して、Todd AndersonがRUGをプレイしていました。Toddは2体のデルバーを出していましたが、土地が1枚しかありませんでした。対戦相手は4枚ぐらいの土地を出していましたが、デルバーを止める手段を探す必要のある状況でした。
ある時点でToddがBrainstormを引いてプレイしました。対戦相手は少し考えてForce of Willをプレイしました。これはなかなか論理的なプレイです。Toddは土地が1枚で詰まっており、Brainstormでそこから抜けだそうと願っているのは明白でしたから。
そして、その次のターン、対戦相手の彼はついに全体除去――TerminusかたぶんEngineered Explosivesか――にたどり着きましたが、ToddはForce of Willを握っており、Toddが2枚目の土地をプレイすることなく相手は死ぬことになりました。
《秘密を掘り下げる者/Delver of Secrets》
《渦まく知識/Brainstorm》
《終末/Terminus》
このエピソードでは、対戦相手の男は手段を持っていた――相手が土地を探していて、それを止めることができた――ことに明らかにエキサイトしすぎです。彼には止める理由がまったくなかった、つまり、相手が追加の土地を見つけるのを妨げることは彼の全体プランの一部にはなっていなかったのです。彼のプランは生きながらえることでした。そしてあのBrainstormをカウンターすることはそのプランを推し進めることにはなりません。全体除去を通すときのためにForce of Willを温存することは間違いなくプランの一部になったはずなのですが。
Toddが、Brainstormを通すためにForce of Willを使うこともできたのに、それをせずForce of Willを握っていたことに目を向けると面白いでしょう。彼は2枚目の土地を見つける手段を持ってはいましたが、そうすることは彼の目標達成には繋がりません。そこで彼はそうしないことに決め、結果ゲームに勝ちました。
重要なのは、達成を望んでいて、なおかつ実際に手持ちの手段で達成できる目標を見つけることです。そして、目標と手段が同時に存在しない場合は、手段に合わせて目標を変えるか、目標に合わせて手段を変えるかのどちらかが必要になります。
例えば、よくあるジャンドの対コンボのマッチアップでは、コンボを始動できないように妨害し、妨害から立ち直る前に倒すことが目標になります。もしかなりの量の妨害を入れても相手が立ち直る前に倒すことができないとすれば、立ち直るための時間を与えないためにあなたはより速くなろうとするでしょう。そしてそうしても勝てない場合、それはもはや手段の問題ではありません――目標に問題があります。そうしようとしてもできないのですから。この場合、目標を変えるべきです。例えば、相手が回答不可能な一つのパーマネント、相手が墓地ベースならLeyline of the Voidなど、を着地させることが目標となり得ます。
良い戦略を組み上げることの本質は、自分の限界を知ることです。
サンフランシスコに向けたテストの最中、僕らはBig ZooはSmall Zooに勝てるだろうという想定のもとで調整を続けていました。最初にプレイしたときにはそれは確かに正しかったのですが、我々がそのマッチアップについて学ぶにつれて、実はSmall Zooが勝てることが分かってきました。
僕らははじめ、相手の土俵で戦おうとするというミスを犯していました――相手のクリーチャーを殺して盤面での優位を築こうとしていたのです。普通のZoo同士のミラーは「最後に立っていた方の勝ち」みたいなもので、相手の生物を殺すことで勝てたためです。しかし、(単純に相手の方が大きいために)その戦いに勝つ手段がないことにいったん気づくと、僕らは目標を変え、相手を焼き殺すことにしたのです。
《稲妻のらせん/Lightning Helix》
《稲妻/Lightning Bolt》
《部族の炎/Tribal Flames》
相手のフェッチによるダメージや序盤のアタック、Bolt、Helix、Tribal Flames、そして瞬唱によって、実際に焼き殺すことが可能でした。そして、相手がタルモと5/5の聖遺を出しているにも関わらずゲームに勝つことがしばしばありました。
もう一つ別の例を挙げましょう:
少し前、ブラジルのサイトでEdb(Eduardo Borges)が書いた記事を読みました。その記事ではレガシーの青白デッキに関する彼の思考過程が説明されていました。彼は、何度もOmni-Tell相手にプレイしたが、ほとんどの場合でShow and Tellをうまくカウンターできなかった、と述べていました。Force of Will、Pyroblast、そしてOvermasterはカウンターしきるには多すぎて、ふつうは彼はカウンター合戦に負け、そして結果的にゲームにも負けました。
《圧服/Overmaster》
《紅蓮破/Pyroblast》
《Force of Will》
そう、理想的な戦略はShow and Tellを決して解決させず、相手が勝てないようにすることでしたが、彼にはそうする手段がありませんでした。そのため、それは意味のない目標でした。そこで彼は目標を変える必要がありました――彼はOblivion Ringのようなカードを使い、Show and Tellを解決させつつ勝とうとすることに決めたのです。
このように彼は新たな目標に合わせて手段を調整し、そしてこの目標は実際に納得のいく頻度で達成できることが分かりました。
あるデッキが全てのマッチアップに対して同じプランを持つということはほぼ不可能です。また、一つの試合の中ですら同じプランを持ち続けることはできないでしょう。Zooのような能動的なデッキでさえ、そのときどきでプランを変えます――例えば、他のZooデッキを相手にする場合はコントロールゲームをしたくなるでしょう。
一般に重要となる要素はマッチアップとあなたの初手です――もし手札に複数のLynxとBoltがあればアグレッシブにいきたくなるでしょうし、一方、聖遺とタルモが何体かいる場合はおそらくディフェンシブになるべきです。単純に先手か後手かによってもプランは根本的に変わり得るため、注意を払っておくべきです。
どんなプランを取るべきか分からない場合は、対戦相手をよく見て、その反対のことをやるのは悪くない戦略です――もし彼が何点かダメージを与えるために生物を自殺させているなら、あなたはそれを防ぐために自分の生物を自殺させたくなるでしょう。(※訳注:対ドレッジのことだと思われる。)
なにがあろうと、適当にカードをプレイすることだけはやめましょう。もしどんなゴールに向かうべきか分からないなら、考え出しましょう!それは間違っているかもしれません。しかし、方向性のないプレイもまた間違っている可能性が高いのです。
この記事を楽しんでもらえたら幸いです。また来週!
PV
【翻訳】Risky Moves - Jeremy Neeman
2012年9月28日 翻訳(プレイング) コメント (4)StarCityGamesより。
リスク評価の落とし穴。
久々に純粋なプレイング記事を翻訳。
大事な場面ほどカバを恐れてしまいがちです。
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Risky Moves
By Jeremy Neeman
11/01/2011
http://www.starcitygames.com/magic/fundamentals/23044_Risky_Moves.html
やあみんな!
僕はJeremy Neeman。そしてこれは素晴らしいウェブサイトのひとつ、StarCityGames.comに寄せる僕の初めての記事だ。
もしあなたが僕と同じようにこの記事にエキサイトしてくれたなら、すぐさまSCGのオンラインショップに飛んで必要のない高価なものを買おう。チャック・ノリスがOKしてくれるよ。
オーケー。ここがどこか分かってるのかって?これじゃあスパムだね、たしかに。
役立つ情報や戦略についての価値ある洞察でいっぱいの記事?そう、その通り。ただいまお持ちします。
あなたが取るべきリスク
たぶん、あなたは保守的にプレイしすぎている。
悪く思わないでほしい。リスクは量るのがとても難しい。金融機関はリスクを量るために自ら数百万ドルを使い、投資先のやっている仕事がどれぐらい良いかしっかり見た上で支払いを決定する。マジックプレイヤーがそれをうまくできないからといって驚くべきことかな?
僕らはただの人間だ。頭の中で複雑な統計分析をするのではなく、バナナを食べるように進化してきた。
人々はいわゆる「Narrative fallacy」(※訳注:後付けでストーリーを構築し、事象に特定可能な原因があると思い込むこと)に陥りがちだ。これはつまり、僕らは物事を統計では考えておらず、物語で考えているということだ。
「彼がここでDevil’s PlayかBrimstone Volleyをドローする確率は8.6%あり、そのいずれかによって95.4%の確からしさで彼はゲームに勝利するだろう」というように僕らは計算したりはしない。僕らが考えるのは「頼む、Devil’s Playを引かないでくれ」ということだ。
実質的に、僕らは簡単に想像できるリスクを大きく見積もりすぎ、すぐには思いつかないリスクを小さく見積もりすぎることになる。
あそこにいるJoe Averageを見てみよう。
彼の対戦相手はダブマリしたうえにちょっとマナフラッド気味で、Joeは並べた生物でビートダウンしている。Joeは自分が勝つだろうと思っているが、相手のトップFireballには負ける可能性があり、それを心配し始める。対戦相手がFireballをトップデッキする可能性はかなり現実的だ。Joeはその場面を簡単に想像できるし、そうなってほしくない――そして彼はそれをケアしはじめる。
Joeは致命的でないアタックに対して、おそらく必要ないだろうUnsummonを使う。「僕はプロだ!」彼は考える。「弱いプレイヤーはこの可能性を完全に失念してしまうだろう。」
そして対戦相手がまったくたいしたことのないSiege Mastodonを場に出し、Joeは自分のプレイ――このターンにFireballで死なないようにしたプレイ――のおかげで、もはや必ずしもゲームに勝てなくなってしまっていることに気づく。それから数ターンのやりとりがあった。Joeが2枚の土地を引き、相手がフライヤーを引いてJoeを殴り、そして最終的にFireballをドローして最後の7点を削った。
Joeは何か間違ったことをした?間違いない!対戦相手がそこでFireballを引く可能性は、何かのクリーチャーを引く可能性よりもずっとずっと小さい。JoeはFireballをケアすべき場面にいるのではなかった。なぜならSiege Mastodonを安全にかわす手段がなかったためだ。
この「ケアすべき場面にいる」というフレーズは乱用されている。そしていま、あなたはこのフレーズにどんな意味があるのかを知った。多くの場合、こちらは土地と生物を並べてビートしているけれども大きな脅威が現れれば負ける、というリスクは受け入れなければならない。もし彼がFireballやOverrunやDivil’s Playをドローすれば、あなたは負ける。例えばBloodline KeeperをDissipateせずに通す余裕があるのは、あなたが大幅に優勢で、Devil’s Playを引くことが相手の唯一の生存手段になっている場合だけだ。
カバとクマの話
状況を絞って考えてみよう。シーンはオーストラリア選手権2010の第9ラウンドで、あなたはこのM11ドラフトの最終ラウンドを勝って9-0でトップ8を狙いたい。あなたはForeseeのために青をタッチしたなかなか良い赤緑タッチ青コントロールをドラフトしており、よりアグロな赤緑デッキを相手に戦っている。いまはゲーム2で、お互いにVolcanic Strengthの付いたブロックされないクリーチャーを使って殴り合いをしている。
あなたのボードはこうだ:Volcanic Strengthの付いたSylvan Ranger1体、Stone Golem1体、Awakener Druid1体と4/5になった森1体(全てタップ状態)。ライフは10点。
相手のボードはVolcanic Strengthの付いたGarruk’s Companion1体(こちらもタップ状態)で、ライフは6点。彼は2枚の手札を持っている。あなたも相手も適切な色の土地6枚を出している。
いまはあなたの戦闘後メインフェイズ。あなたの手札はPyroclasm、Pyroclasm、Berserkers of Blood Ridge(コスト4R、4/4、毎ターンアタックする必要あり)だ。
さてどうする?
これはあなたがかなり優勢な盤面の一例で、そしてこのゲームは一つの問いに集約される:Lava AxeかFireballがあるかないか?
ここでPyroclasmを2発撃ち、あなたのカード6枚と相手の2枚を交換するのが正しいプレイだと提案するのはクレイジーに思えるかもしれない。しかし彼がAxeを持っている場合、敗北を避ける唯一の方法がこのプレイだ。彼が何も持っていない場合、あなたはBerserkersをプレイすれば次のターンに間違いなく彼を倒せるだろう――だがこれは引き受けるべきリスクなんだろうか?Pyroclasm2発の後にはあなたの手札にBerserkersがまだ残っており、これは相手のトップから出てくる生物よりも大きい可能性が高い。
僕は去年の選手権のレポートの中でこの問いを提示した。そして集まった回答にびっくりした。
道を間違えた人が少なくなかった――多くの読者がトップ8への強い願望からAxeの可能性を心配し、Pyroclasmでボードを流すことを選んだんだ。
僕はこのプレイは完全に間違いだと思っている。これが理由だ:
理由1.彼の手札はもちろん、デッキにLava Axeが入っているかどうか分からない。
Lava Axeはコモンだが、Chandra’s Outrageのように赤プレイヤーなら何が何でも使うカードではない。多くの赤デッキはLava Axeをサイドボードに入れる。単純にデッキが十分にアグレッシブではなく、使う理由がないためにそうなるんだ。これは特にM11の遅い環境では正しい。
相手がLava Axeをピックしてデッキに入れている可能性を、奮発して見積もって50%としてみよう。彼はデッキの1/4を見ていることになるので、彼が手札にAxeを持っている確率は12.5%だ。Fireballを考慮する場合はもう少し高い値になるけど、Fireballはいずれにしてもあなたにとって非常に悪いということを思い出そう――彼があなた本体を殺さない場合でも、(パイロ2発の後に)あなたのBerserkersを殺して何も残らない状態にできる。
レッスン1:「現実的であれ。」
山とBlasphemous Actが青白デッキから出てくることをケアしてはいけない。仮にそれがあり得る場合にはケアすることも可能だが、実際にそれが起きる可能性は1%もない。
理由2.そんな余裕はない。Lava Axeをケアすることで、それ以外の無視したカードたち全部に対して敗れることになる。
あなたはBerserkers of Blood Ridgeを持っている。相手は2枚の手札を持っている。その手札はYavimaya WurmとSpined Wurmかもしれないし、Grizzly BearsとGiant Growthかもしれない。森と山の可能性もあるが、デッキの上にはYavimaya Wurmから3枚のクリーチャーが続いており、あなたが土地を置いている間に殴りかかってくるかもしれない。ライフ10のプレイヤーが1体の4/4を出している状況を打ち破れるカードは、ライフ5のプレイヤーが2体の4/4、1体の1/1、1体の4/5、そして1体の3/3山渡りを出している状況を打破できるカードよりもずっとずっと多い。
リミテッドにおいて対戦相手が何を持っているか考える場合、特定のカードを明らかに示すプレイがなければ「何らかのクリーチャーたちがいる」というのがもっともよくあるケースとしてまず考えるべきものだ。
レッスン2:「勝率を考えてプレイしよう。」
1体の4/4とあなたのデッキのトップによって、相手の2枚の未知カードと彼のデッキトップを打ち破れる可能性は50/50より高くはない。じゃあ、あなたがここで4/4を出すことにした場合、彼が一撃であなたを殺せるカードを持っていない可能性は?
ずっといい。上で書いたように、もしあなたがLava Axeをケアしなければこの時点でおそらく90%の勝率がある。
これらは全てとても当たり前に思える。それじゃあ、どうして多くの人が間違ったプレイを選んでしまうのだろう?その理由は、彼らがレッスン3:「勇敢になれ!」を無視しているためだ。
そう、その場で自分の下した判断が原因でゲームに負けるかもしれないと考えるのは恐ろしいことだ。友人があなたを笑うかもしれない、あなたをヘタクソだと言うかもしれない、あるいは「なんでLava Axeがくると思わなかったの??」と聞いてくるかもしれない。
これは僕らがすぐ目の前にあるものを恐れるようにできているのが原因だ。有史以前の僕らの祖先は次の週に襲ってくるかもしれないクマのことを心配している暇はなく、ほら穴のすぐ外にいて既にAndyを襲っているカバに対処しなければならなかった。同じように、マジックの試合をするとき、あなたの反射反応は7ターンかけてあなたを倒すしょぼい生物たちよりも、今すぐにあなたを殺せる強力なスペルのことを考える。僕らはカバを心配しすぎて、クマを完全に無視してしまうんだ。
(ポイントを伝えるための余談だけど、例えば、多くの人は糖尿病よりもテロを恐れている。あなたが糖尿病で死ぬ確率はテロリストの攻撃によって死ぬ確率の数千倍は高い。これはテロがカバ、つまり、まれに起こり、即時性があり、あなたを殺す、そういうものだからだ。糖尿病はクマだ。ありふれていてすぐさま危険ではないが、長期的にとても多くの死をもたらす。)
死にたくない!
イニストラードによるスタンダードローテの前に戻ろう。僕はMOで青赤双子コンボをよく使っていた。
特によく覚えているゲームがある。僕はCaw-Bladeを相手にプレイしていて、相手の手札をGitaxian Probeで見ていた。彼はHero of Bladeholdと2枚のFlashfreeze、それとたいして影響のないいくつかのカード(たしかラスとギデオン)を持っていた。僕にとってツイていたのは、彼が土地3枚で止まっていて、こちらはJace Belerenを着地させて追加のカードをドローし始めていたことだ。残念なことに僕の手札は満杯だったけどガラクタの山だった。手札には複数のSplinter Twinと多すぎる土地があり、Deceiver Exarchもなければ1枚のMana Leakすらなかった。彼が4枚目の土地をトップしてHeroを着地させれば勝つのはかなり大変になるだろう。
彼はドローして4枚目の土地をプレイし、そして・・・エンドしてきた!
こんなに嬉しいことはない。ジェイスのおかげで1ターンに2枚のカードを引き、僕はどんどん差をつけた。最終的に2体のDeceiver Exarchで相手をタップさせ、タイミングよく引き込んだMana Leakの助けも得ながらコンボ始動した。
対戦相手のプレイに何が起きたんだろう?
双子はある意味カバを詰め込んだデッキだ。3マナを立てている双子デッキに対してタップアウトすることは巨大なリスクになる。そういうことをする人を殺せるように双子デッキは構築されている。それで僕の対戦相手は負けることを恐れた――しかし彼がやったのは、かなり高い確率で即座に負けることを、同じぐらいの確率で時間をかけて負けることに置き換えただけだ。
土地が詰まり、ボードにプレッシャーを出せておらず、そしてタップアウトすらできないのでは、アクティブなJace Belerenを倒すことを彼はまったく望めない。こちらは徐々に必要なカードを見つけ、必要な土地を手に入れ、そして彼がどんな妨害をキャストしようともくぐり抜けてコンボを始めてしまうだろう。
このシチュエーションでは、Caw-Bladeプレイヤーにとってゲームがクマになっている!今から5ターン後、彼が今よりも悪いポジションに立たされることはほとんど保証されているようなものだ。Hero of Bladeholdをキャストすればタップアウトしてしまうかもしれないが、それでも今チャンスを掴みにいく必要がある。たしかにこれはカバのいる水中に歩いて踏み込むようなものだ。しかしHeroを場に出しつつアンタップを迎えるチャンスは存在して、そうなればゲームを終わらせる素晴らしい一撃を放つ権利が得られる。
負けさえしなければ勝ったようなもの、そうじゃないの?
みんなに話しておきたい最後のリスクに関するエピソードはつい最近のことで、僕自身がカバの牙をかわしてクマにつかまった話だ。
イニストラード3パックのドラフトだった。僕はとても堅実な緑白アグロデッキを作り、決勝戦で青赤を使う対戦相手と戦っていた。彼は若干土地が詰まり気味だったけれど、裏返ったDelver of SecretsにSpectral Flightを付ける強い出だしをしてきた。彼の5/4をダブルブロックできる2体のパワー2のフライヤーを出して反撃開始したとき、僕のライフは2になっていた。
そして、彼が場に出しているのはビート要員の虫と3枚の島だけという状況になった。僕はVillagers of Estwald、Silverchase Fox、Voiceless Spirit、そしてChapel Geistを出していた。彼のライフは10で僕は2。しかし僕はかなりの燃料を手札に持っていた――Festerhide Boar、Avacynian Priest、2枚目のChapel Geist、そしてMausoleum Guardだ。土地は4枚しかなかったけれども。
この時点で僕は自分が有利で、やるべきなのは負けないことだとかなり確信していた。(あなたがこの記事のテーマに注意すれば、リスクを避けることが実に頻繁に「負けない」プレイになっていて、リスクを引き受けることが「勝つ」プレイになることに気づくだろうね。)
こちらを殺すプレイとして僕が想像したのは、彼が山をトップしてNightbird’s Clutchesをキャストし、こちらのフライヤー2体をブロック不能にして最後のダメージを与えてくることだった。たしかにこれはカバ的だ。それで僕はVillagers of Estwaldだけでアタックし、3体目のChapel Geistをボードに追加した。
「もう山+Brimstone Volley以外には負けないぞ!」僕は思った。「これで彼の勝率を半減させた。素晴らしいね。」
対戦相手は山を出し、そして僕がまったく考えていなかったクマを出してきた――Mindshriekerだ。突如として僕のアタックは機能停止した。彼が自分のライブラリからスペルを削りこちらのクリーチャー1体をタダで倒すリスクは取れず、いまや僕は不便な除去呪文を引く可能性に賭けることしかできなくなってしまった。Avacynian Priestは変わらずプレッシャーとして機能したけど、彼はすぐに土地を引き込んで追加のフライヤーをプレイし、僕のボードアドバンテージは一瞬でなくなってしまった。
結局そのゲームは僕が勝ったけれど、彼はLost in the Mistを持っていてほとんど殴り切る寸前だった。彼が土地3枚で止まり、こちらの5体に対して1体のクリーチャーしか出していなかったとき、僕はLost in the Mistに負けるかもしれないと考えただろうか?それは絶対無理だ。それに、仮にそれをケアしたとしてもどのみちNightbird’s Clutchesに負けることになっただろう。実際、僕は彼にClutchesを探すためのターンを何度も与えてしまっていた。
おわりに
もしこの記事を一文にまとめるなら、僕はこう言うね:
「最も恐ろしいことではなく、最も起きそうなことを心配しよう!」
(そしてクマにハチミツを取られないようにしよう。)
それじゃあまた次回。
Jeremy
リスク評価の落とし穴。
久々に純粋なプレイング記事を翻訳。
大事な場面ほどカバを恐れてしまいがちです。
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Risky Moves
By Jeremy Neeman
11/01/2011
http://www.starcitygames.com/magic/fundamentals/23044_Risky_Moves.html
やあみんな!
僕はJeremy Neeman。そしてこれは素晴らしいウェブサイトのひとつ、StarCityGames.comに寄せる僕の初めての記事だ。
もしあなたが僕と同じようにこの記事にエキサイトしてくれたなら、すぐさまSCGのオンラインショップに飛んで必要のない高価なものを買おう。チャック・ノリスがOKしてくれるよ。
オーケー。ここがどこか分かってるのかって?これじゃあスパムだね、たしかに。
役立つ情報や戦略についての価値ある洞察でいっぱいの記事?そう、その通り。ただいまお持ちします。
あなたが取るべきリスク
たぶん、あなたは保守的にプレイしすぎている。
悪く思わないでほしい。リスクは量るのがとても難しい。金融機関はリスクを量るために自ら数百万ドルを使い、投資先のやっている仕事がどれぐらい良いかしっかり見た上で支払いを決定する。マジックプレイヤーがそれをうまくできないからといって驚くべきことかな?
僕らはただの人間だ。頭の中で複雑な統計分析をするのではなく、バナナを食べるように進化してきた。
人々はいわゆる「Narrative fallacy」(※訳注:後付けでストーリーを構築し、事象に特定可能な原因があると思い込むこと)に陥りがちだ。これはつまり、僕らは物事を統計では考えておらず、物語で考えているということだ。
「彼がここでDevil’s PlayかBrimstone Volleyをドローする確率は8.6%あり、そのいずれかによって95.4%の確からしさで彼はゲームに勝利するだろう」というように僕らは計算したりはしない。僕らが考えるのは「頼む、Devil’s Playを引かないでくれ」ということだ。
実質的に、僕らは簡単に想像できるリスクを大きく見積もりすぎ、すぐには思いつかないリスクを小さく見積もりすぎることになる。
あそこにいるJoe Averageを見てみよう。
彼の対戦相手はダブマリしたうえにちょっとマナフラッド気味で、Joeは並べた生物でビートダウンしている。Joeは自分が勝つだろうと思っているが、相手のトップFireballには負ける可能性があり、それを心配し始める。対戦相手がFireballをトップデッキする可能性はかなり現実的だ。Joeはその場面を簡単に想像できるし、そうなってほしくない――そして彼はそれをケアしはじめる。
Joeは致命的でないアタックに対して、おそらく必要ないだろうUnsummonを使う。「僕はプロだ!」彼は考える。「弱いプレイヤーはこの可能性を完全に失念してしまうだろう。」
そして対戦相手がまったくたいしたことのないSiege Mastodonを場に出し、Joeは自分のプレイ――このターンにFireballで死なないようにしたプレイ――のおかげで、もはや必ずしもゲームに勝てなくなってしまっていることに気づく。それから数ターンのやりとりがあった。Joeが2枚の土地を引き、相手がフライヤーを引いてJoeを殴り、そして最終的にFireballをドローして最後の7点を削った。
Joeは何か間違ったことをした?間違いない!対戦相手がそこでFireballを引く可能性は、何かのクリーチャーを引く可能性よりもずっとずっと小さい。JoeはFireballをケアすべき場面にいるのではなかった。なぜならSiege Mastodonを安全にかわす手段がなかったためだ。
この「ケアすべき場面にいる」というフレーズは乱用されている。そしていま、あなたはこのフレーズにどんな意味があるのかを知った。多くの場合、こちらは土地と生物を並べてビートしているけれども大きな脅威が現れれば負ける、というリスクは受け入れなければならない。もし彼がFireballやOverrunやDivil’s Playをドローすれば、あなたは負ける。例えばBloodline KeeperをDissipateせずに通す余裕があるのは、あなたが大幅に優勢で、Devil’s Playを引くことが相手の唯一の生存手段になっている場合だけだ。
カバとクマの話
状況を絞って考えてみよう。シーンはオーストラリア選手権2010の第9ラウンドで、あなたはこのM11ドラフトの最終ラウンドを勝って9-0でトップ8を狙いたい。あなたはForeseeのために青をタッチしたなかなか良い赤緑タッチ青コントロールをドラフトしており、よりアグロな赤緑デッキを相手に戦っている。いまはゲーム2で、お互いにVolcanic Strengthの付いたブロックされないクリーチャーを使って殴り合いをしている。
あなたのボードはこうだ:Volcanic Strengthの付いたSylvan Ranger1体、Stone Golem1体、Awakener Druid1体と4/5になった森1体(全てタップ状態)。ライフは10点。
相手のボードはVolcanic Strengthの付いたGarruk’s Companion1体(こちらもタップ状態)で、ライフは6点。彼は2枚の手札を持っている。あなたも相手も適切な色の土地6枚を出している。
いまはあなたの戦闘後メインフェイズ。あなたの手札はPyroclasm、Pyroclasm、Berserkers of Blood Ridge(コスト4R、4/4、毎ターンアタックする必要あり)だ。
さてどうする?
これはあなたがかなり優勢な盤面の一例で、そしてこのゲームは一つの問いに集約される:Lava AxeかFireballがあるかないか?
ここでPyroclasmを2発撃ち、あなたのカード6枚と相手の2枚を交換するのが正しいプレイだと提案するのはクレイジーに思えるかもしれない。しかし彼がAxeを持っている場合、敗北を避ける唯一の方法がこのプレイだ。彼が何も持っていない場合、あなたはBerserkersをプレイすれば次のターンに間違いなく彼を倒せるだろう――だがこれは引き受けるべきリスクなんだろうか?Pyroclasm2発の後にはあなたの手札にBerserkersがまだ残っており、これは相手のトップから出てくる生物よりも大きい可能性が高い。
僕は去年の選手権のレポートの中でこの問いを提示した。そして集まった回答にびっくりした。
道を間違えた人が少なくなかった――多くの読者がトップ8への強い願望からAxeの可能性を心配し、Pyroclasmでボードを流すことを選んだんだ。
僕はこのプレイは完全に間違いだと思っている。これが理由だ:
理由1.彼の手札はもちろん、デッキにLava Axeが入っているかどうか分からない。
Lava Axeはコモンだが、Chandra’s Outrageのように赤プレイヤーなら何が何でも使うカードではない。多くの赤デッキはLava Axeをサイドボードに入れる。単純にデッキが十分にアグレッシブではなく、使う理由がないためにそうなるんだ。これは特にM11の遅い環境では正しい。
相手がLava Axeをピックしてデッキに入れている可能性を、奮発して見積もって50%としてみよう。彼はデッキの1/4を見ていることになるので、彼が手札にAxeを持っている確率は12.5%だ。Fireballを考慮する場合はもう少し高い値になるけど、Fireballはいずれにしてもあなたにとって非常に悪いということを思い出そう――彼があなた本体を殺さない場合でも、(パイロ2発の後に)あなたのBerserkersを殺して何も残らない状態にできる。
レッスン1:「現実的であれ。」
山とBlasphemous Actが青白デッキから出てくることをケアしてはいけない。仮にそれがあり得る場合にはケアすることも可能だが、実際にそれが起きる可能性は1%もない。
理由2.そんな余裕はない。Lava Axeをケアすることで、それ以外の無視したカードたち全部に対して敗れることになる。
あなたはBerserkers of Blood Ridgeを持っている。相手は2枚の手札を持っている。その手札はYavimaya WurmとSpined Wurmかもしれないし、Grizzly BearsとGiant Growthかもしれない。森と山の可能性もあるが、デッキの上にはYavimaya Wurmから3枚のクリーチャーが続いており、あなたが土地を置いている間に殴りかかってくるかもしれない。ライフ10のプレイヤーが1体の4/4を出している状況を打ち破れるカードは、ライフ5のプレイヤーが2体の4/4、1体の1/1、1体の4/5、そして1体の3/3山渡りを出している状況を打破できるカードよりもずっとずっと多い。
リミテッドにおいて対戦相手が何を持っているか考える場合、特定のカードを明らかに示すプレイがなければ「何らかのクリーチャーたちがいる」というのがもっともよくあるケースとしてまず考えるべきものだ。
レッスン2:「勝率を考えてプレイしよう。」
1体の4/4とあなたのデッキのトップによって、相手の2枚の未知カードと彼のデッキトップを打ち破れる可能性は50/50より高くはない。じゃあ、あなたがここで4/4を出すことにした場合、彼が一撃であなたを殺せるカードを持っていない可能性は?
ずっといい。上で書いたように、もしあなたがLava Axeをケアしなければこの時点でおそらく90%の勝率がある。
これらは全てとても当たり前に思える。それじゃあ、どうして多くの人が間違ったプレイを選んでしまうのだろう?その理由は、彼らがレッスン3:「勇敢になれ!」を無視しているためだ。
そう、その場で自分の下した判断が原因でゲームに負けるかもしれないと考えるのは恐ろしいことだ。友人があなたを笑うかもしれない、あなたをヘタクソだと言うかもしれない、あるいは「なんでLava Axeがくると思わなかったの??」と聞いてくるかもしれない。
これは僕らがすぐ目の前にあるものを恐れるようにできているのが原因だ。有史以前の僕らの祖先は次の週に襲ってくるかもしれないクマのことを心配している暇はなく、ほら穴のすぐ外にいて既にAndyを襲っているカバに対処しなければならなかった。同じように、マジックの試合をするとき、あなたの反射反応は7ターンかけてあなたを倒すしょぼい生物たちよりも、今すぐにあなたを殺せる強力なスペルのことを考える。僕らはカバを心配しすぎて、クマを完全に無視してしまうんだ。
(ポイントを伝えるための余談だけど、例えば、多くの人は糖尿病よりもテロを恐れている。あなたが糖尿病で死ぬ確率はテロリストの攻撃によって死ぬ確率の数千倍は高い。これはテロがカバ、つまり、まれに起こり、即時性があり、あなたを殺す、そういうものだからだ。糖尿病はクマだ。ありふれていてすぐさま危険ではないが、長期的にとても多くの死をもたらす。)
死にたくない!
イニストラードによるスタンダードローテの前に戻ろう。僕はMOで青赤双子コンボをよく使っていた。
特によく覚えているゲームがある。僕はCaw-Bladeを相手にプレイしていて、相手の手札をGitaxian Probeで見ていた。彼はHero of Bladeholdと2枚のFlashfreeze、それとたいして影響のないいくつかのカード(たしかラスとギデオン)を持っていた。僕にとってツイていたのは、彼が土地3枚で止まっていて、こちらはJace Belerenを着地させて追加のカードをドローし始めていたことだ。残念なことに僕の手札は満杯だったけどガラクタの山だった。手札には複数のSplinter Twinと多すぎる土地があり、Deceiver Exarchもなければ1枚のMana Leakすらなかった。彼が4枚目の土地をトップしてHeroを着地させれば勝つのはかなり大変になるだろう。
彼はドローして4枚目の土地をプレイし、そして・・・エンドしてきた!
こんなに嬉しいことはない。ジェイスのおかげで1ターンに2枚のカードを引き、僕はどんどん差をつけた。最終的に2体のDeceiver Exarchで相手をタップさせ、タイミングよく引き込んだMana Leakの助けも得ながらコンボ始動した。
対戦相手のプレイに何が起きたんだろう?
双子はある意味カバを詰め込んだデッキだ。3マナを立てている双子デッキに対してタップアウトすることは巨大なリスクになる。そういうことをする人を殺せるように双子デッキは構築されている。それで僕の対戦相手は負けることを恐れた――しかし彼がやったのは、かなり高い確率で即座に負けることを、同じぐらいの確率で時間をかけて負けることに置き換えただけだ。
土地が詰まり、ボードにプレッシャーを出せておらず、そしてタップアウトすらできないのでは、アクティブなJace Belerenを倒すことを彼はまったく望めない。こちらは徐々に必要なカードを見つけ、必要な土地を手に入れ、そして彼がどんな妨害をキャストしようともくぐり抜けてコンボを始めてしまうだろう。
このシチュエーションでは、Caw-Bladeプレイヤーにとってゲームがクマになっている!今から5ターン後、彼が今よりも悪いポジションに立たされることはほとんど保証されているようなものだ。Hero of Bladeholdをキャストすればタップアウトしてしまうかもしれないが、それでも今チャンスを掴みにいく必要がある。たしかにこれはカバのいる水中に歩いて踏み込むようなものだ。しかしHeroを場に出しつつアンタップを迎えるチャンスは存在して、そうなればゲームを終わらせる素晴らしい一撃を放つ権利が得られる。
負けさえしなければ勝ったようなもの、そうじゃないの?
みんなに話しておきたい最後のリスクに関するエピソードはつい最近のことで、僕自身がカバの牙をかわしてクマにつかまった話だ。
イニストラード3パックのドラフトだった。僕はとても堅実な緑白アグロデッキを作り、決勝戦で青赤を使う対戦相手と戦っていた。彼は若干土地が詰まり気味だったけれど、裏返ったDelver of SecretsにSpectral Flightを付ける強い出だしをしてきた。彼の5/4をダブルブロックできる2体のパワー2のフライヤーを出して反撃開始したとき、僕のライフは2になっていた。
そして、彼が場に出しているのはビート要員の虫と3枚の島だけという状況になった。僕はVillagers of Estwald、Silverchase Fox、Voiceless Spirit、そしてChapel Geistを出していた。彼のライフは10で僕は2。しかし僕はかなりの燃料を手札に持っていた――Festerhide Boar、Avacynian Priest、2枚目のChapel Geist、そしてMausoleum Guardだ。土地は4枚しかなかったけれども。
この時点で僕は自分が有利で、やるべきなのは負けないことだとかなり確信していた。(あなたがこの記事のテーマに注意すれば、リスクを避けることが実に頻繁に「負けない」プレイになっていて、リスクを引き受けることが「勝つ」プレイになることに気づくだろうね。)
こちらを殺すプレイとして僕が想像したのは、彼が山をトップしてNightbird’s Clutchesをキャストし、こちらのフライヤー2体をブロック不能にして最後のダメージを与えてくることだった。たしかにこれはカバ的だ。それで僕はVillagers of Estwaldだけでアタックし、3体目のChapel Geistをボードに追加した。
「もう山+Brimstone Volley以外には負けないぞ!」僕は思った。「これで彼の勝率を半減させた。素晴らしいね。」
対戦相手は山を出し、そして僕がまったく考えていなかったクマを出してきた――Mindshriekerだ。突如として僕のアタックは機能停止した。彼が自分のライブラリからスペルを削りこちらのクリーチャー1体をタダで倒すリスクは取れず、いまや僕は不便な除去呪文を引く可能性に賭けることしかできなくなってしまった。Avacynian Priestは変わらずプレッシャーとして機能したけど、彼はすぐに土地を引き込んで追加のフライヤーをプレイし、僕のボードアドバンテージは一瞬でなくなってしまった。
結局そのゲームは僕が勝ったけれど、彼はLost in the Mistを持っていてほとんど殴り切る寸前だった。彼が土地3枚で止まり、こちらの5体に対して1体のクリーチャーしか出していなかったとき、僕はLost in the Mistに負けるかもしれないと考えただろうか?それは絶対無理だ。それに、仮にそれをケアしたとしてもどのみちNightbird’s Clutchesに負けることになっただろう。実際、僕は彼にClutchesを探すためのターンを何度も与えてしまっていた。
おわりに
もしこの記事を一文にまとめるなら、僕はこう言うね:
「最も恐ろしいことではなく、最も起きそうなことを心配しよう!」
(そしてクマにハチミツを取られないようにしよう。)
それじゃあまた次回。
Jeremy
TCGplayerより。
「読み合い」の分析。
具体例が分かりやすく最後までついていけました。
デッキの構築/選択論と比べると陽に語られることは少ないですが、これがすごく上手い人っていますよね。
対人戦の醍醐味だとも思います。
※2016/7/9: 続編を翻訳しました。
http://radish.diarynote.jp/201607091512155095/
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Multilevel Thinking
Craig Wescoe
8/9/2012 10:00:00 AM
http://magic.tcgplayer.com/db/article.asp?ID=10632
2011年11月、Chris Mascioliが「Leveled Thinking」というタイトルの記事を掲載した。この記事で彼は、ポーカーではポピュラーな考え方をDavid Sklanskyの本「No Limit Hold’Em: Theory and Practice」から借りてきて、マジックのプレイに対して適用した。その後、Mike Floresが「Practical Leveled Thinking」というタイトルで記事を書き、セオリーを拡張した。
今回の記事では、それぞれの思考レベルごとに具体例と説明を加えるとともに、ある状況でどの思考レベルを使うのが最適かを考える指針を示して、このアイデアをさらに深く掘り下げようと思う。このセオリーはまだ生まれたばかりの段階なので、議論するのに必要となる用語の解説も載せることにした。
この記事が、自分のプレイを改善したいと思うプレイヤーにとって役に立ち、なおかつプレイヤーとライターがより気軽に議論できるようにする基本的な言葉を提供できれば幸いだ。
パートI: 特殊な用語の解説
レベル付け/Leveling: マルチレベル・シンキングのゴール。可能な限り高いレベルを使うことがゴールなのではなく、対戦相手がどのレベルを使っているかを特定し、そのちょうど1つ上のレベルを使うことがゴールだ。
使えるレンジ/Range of Operation: あるプレイヤーが何種類のレベルを使うことができるか。プレイヤーは使えるレベルのレンジを最大化しようとするのが望ましい。これによって、例えばレベル3を使っている相手に対してレベル4のプレイをする、ということが可能になる。
変動/Fluctuation: 自分の使えるレンジ(使えると思っているレンジでは必ずしもない)に常に限定はされるが、プレイヤーはゲーム全体を通して複数の異なるレベルを使うことになる(使えるレンジがレベル1以上であれば)。
レンジの見積りミス/Misevaluation of Range: 対戦相手が使っているレベルを予測し、それが実際と違うこと。対戦相手より2つ以上高いレベルを使ってしまうことは、相手より1つ低いレベルを使ったときと同じ不都合な結果につながる。対戦相手のちょうど1レベル上を使うことが重要だ。
予測されるレベル/Expected Level of Operation: 対戦相手が使っていると予測される、ある一つのレベル。これは必ず相手の使えるレンジのうちのどれかになる。レベルは変動するため、予測は一般的/全体的にするものではなく、ある特定のプレイへの相手の反応に対してなされるべきだ。
アクティブの指標/Indicators of Activity: 対戦相手の使えるレンジにどのレベルが入っているかを示す相手の判断や行動。例えば、Mana Leakをケアしたプレイは対戦相手がレベル1以上を使えることを示す。
非アクティブの指標/Indicators of Inactivity: 対戦相手の使えるレンジにどのレベルが入って「いない」かを示す相手の判断や行動。例えば、対戦相手がCrushing Vinesを匂わせ私がそれをケアした場合、次のターンも再びCrushing Vinesを匂わせることで同じ良い効果が得られるにもかかわらず、そうせずにそれより劣ったプレイをしたとき、対戦相手が使えるレンジにレベル3(相手が何を持っていると私が考えているかを考えるレベル)が含まれていないことを示唆する。
偽の指標/False Indicators: 他のあらゆるセオリーと同じく、このセオリーももちろん完璧ではない。マジックのゲームの複雑さと時間制限のために、特にトーナメントマジックでは、プレイヤーはミスをしがちだ。そういったミスはアクティブや非アクティブの偽の指標になる。特にブラフを考慮に入れたとき、真の指標と偽の指標を見分ける確固たるルールを私は提供できない。とはいえ、セオリーがどこまでカバーするかを明確にするため簡単にここで触れておく。
囮/Decoy: 対戦相手をレベル付けするための一つのアプローチは、その後のゲームを見越した囮プレイをすることだ。相手に囮プレイを指標にさせることで自分の「使えるレンジ」を偽り、それに含まれないレベルでその後のプレイを行う。例えばゲーム1でもう勝つ見込みがないとき、自分がレベル0より高いレベルを使えないという印象を与えるためにスペルを最適でない順序で使い、残りのゲームで対戦相手にレベル1を使うように仕向け、自分はレベル2でプレイする手がある。これはめったにできないプレイだが、正しい状況で行えば効果的だ。
パートII: セオリーの解説
レベル0: 私は何を持っているか?
両プレイヤーのスキルレベルによらず、マジックにおける判断の大半はレベル0で行われる。レベルは積み上がる性質のもので、より高いレベルは全てレベル0で起きていることがベースになっている。レベル0は考えを組み立てる基礎だと考えよう。
例えば以下のような考えがレベル0の判断に含まれる:
* 私のスペルを全てキャストするにはどのショックランドをフェッチしてくればよいか?
* どのコンボパーツが足りず、探してくる必要があるか?
* このAncestral Visionsの最後の待機カウンターが取り除かれるのは何ターン目か?
* トークンが喊声の効果を得るためにはどの順序で誘発型能力をスタックに積めばよいか?
* 手札にあるスペルをこのターンに両方ともキャストできるように土地をタップする方法はあるか?
これらの問いがどれも、もっぱらあなた自身のカードにのみ関連していることに注意してほしい。これらは相手が何を持っているかとは無関係だ。通常このレベルでミスをするプレイヤーは、非常に簡単なケースを除いてレベル1を使うことはできない。
しかし、相手が持っているものを考慮しながらもレベル0に入る、別のタイプのプレイがある。次のようなものだ:
* 私のAugur of Bolasでアタックできるようにするため、手札にあるこのDismemberで相手のBorderland Rangerを殺すことができる。
この例は対戦相手が既にボード上に持っているものを考慮しているが、レベル1の問いにはなっていない。レベル1の問いとはつまり、「(公開情報を超えて)相手は何を持っているか?」というものだ。
レベル0の判断は完全に公開情報のみにもとづいて行われ、あなたのライブラリ以外の非公開情報は考慮しない。例えば、以下の例はレベル0の中で最もレベル1に近く、それゆえレベル1のアクティブの指標にもなる例だが、これはレベル0だと考える:
* これが次善の手となるには、何をドローすればよいか?
Evolving Wildsを持っており、今すぐフェッチすることとフェッチを待つことのメリットについて考えているとき、この種のレベル0判断によく直面する。例えば、今フェッチを切って直後に2マナスペルをドローした場合、そのスペルをすぐにキャストできるのでフェッチを切ったのは良かったことになる。しかし、フェッチを待てば、どの土地をフェッチすべきかを決めるための貴重な情報を1回のドローステップから得られる。
レベル1: (公開情報を超えて)相手は何を持っているか?
多くの判断はレベル0で行われるとはいえ、レベル1の判断もかなりありふれており、一般に1ゲームに数回は発生する。レベル1の判断はまずレベル0の情報をベースにするが、もう一歩先まで踏み込んで、対戦相手の手札、ライブラリ、サイドボード等にあるカードという我々にとっての非公開情報にいかに配慮するかを考える。
どこからどこまでのカードが相手の手札にあり得るかを思い浮かべ、それらを確率によって順位付けすることがゴールだ。これはそもそも途方も無い作業で、特に時間制限のあるマッチではなおさらだ。そこで、もっともありふれた(もしくは優先度の高い)カードだけが相手の手札にあり得ると考えることで我々はよくショートカットする。けれども理想的には、全ての可能なカードの組み合わせを相手が持ちうると考えたくなるだろう。
例えば以下のような考えがレベル1の判断に含まれる:
* あの1枚のアンタップ状態の森から相手は何のインスタントをキャストしてくるだろうか?
* 相手はMana Leakをサイドアウトしたのだろうか?それともマナを残しているのはリークを構えるためなんだろうか?
* 相手が手札に残している可能性のあるクリーチャーは何だろうか?それに備えてこの除去スペルを残しておいた方がよいだろうか?
* Duressで最後に相手の手札を見てから、彼は何をドローしただろうか?
* これから数ターンの間に相手が引くカードはどんなものだろうか?このNegateはいま撃たずに持っておいた方がよいのだろうか?
見ての通り、レベル0とレベル1の判断の重要な違いは、対戦相手が持っている/持ち得るものに関する非公開情報をレベル1では考慮していることだ。
このレベルのアクティブの指標は、あなたの森が起きているときに相手がGiant Growthをケアしてきたことや、Mana Leakをケアするために5マナ揃うまで待ってから重要な2マナスペルをキャストしてきたことだ。
非アクティブの指標は、これらの「罠」をケアせず踏み込んでくることだ。注意点として、特にゲーム序盤では、これらのスペルをケアしないことが相手にとって正しいプレイである場合もある。この場合、真相が次の3つのうちどれなのかをあなたは見極める必要がある:
* 対戦相手の使えるレンジは0である。もしも、使えるレンジが0だと示すプレイを何度も相手がしているようならこの可能性が高い。
* こちらのMana LeakやGiant Growthとの交換をすることが良いプレイになる何かが対戦相手の手札にある。レンジが0であることを示すプレイを相手が他にしていないなら、彼の手札にはおそらくより多くの脅威があり、それが喜んで交換をする理由だろう。
* 対戦相手にはこちらのトリックを破る手段がなく、やむを得ずブッパした。あなたが例えばGeist of Saint Traftのような形でプレッシャーを与えている場合、相手にはあなたが何も持っていないことを祈ってプレイする以外の選択肢がないことが多い。
レベル2: (相手にとっての公開情報を超えて)私が何を持っていると相手は考えているか?
レベル2の思考は人々に良いことをもたらすのと同じくらいトラブルを引き起こす。その理由は多くの場合、このレベルを使える人が、いつレベル2を使い、いつ使わないかを理解できていないためだ。
一方、このレベルを使うことが正しいタイミングはたくさんある。一般則として、相手の立場から見て私が持っているのが理に適っているカードは何かをいつも心の中で考えておくようにしたい。そしてその時が来たら考えておいたことに従ってプレイする。
レベル2のプレイは出番がないことも多い。とはいえ出番が来たときにはレベル2のプレイはしばしばゲームを決める。それゆえ、相手にとっての公開情報から考えてあなたが持っていそうなカードは何か、をチェックするのに頭を使う価値は十分にある。
例えば以下のような考えがレベル2の判断に含まれる:
* 前のターン、私はCrushing Vinesを使えるマナを立てておき、相手はそれをケアした。私はこのターンもそれを続けるべきだろうか?それとも別のプレイをすべきだろうか?
* 前のゲームで相手は常にMana Leakをケアして動いていた。では、ゲーム2に向けてリークをサイドアウトすべきだろうか?
* 相手は私のデッキが青赤ストームだと考えてゲーム2に向けてクリーチャー除去を全てアウトしてくるだろうか?それとも私がSplinter Twinコンボをサイドインすると考えて除去を残すだろうか?
* 私がエムラクールの即死パンチを防ぐブロッカーを残さずアタックした場合、彼は私がSurgical Extractionを握っていると考えてGoryo’s Vengeanceコンボを待つだろうか?それとも構わずブッパしてくるだろうか?
* 私の飛行クリーチャーで2回殴れば相手を倒せるが、このOblivion Ringを彼のBirds of Paradise(彼の唯一の飛行ブロッカー)に使うのを1ターン待てるだろうか?あるいは次のターンにリングされることをケアしてここでブロックしてくる可能性があるので今すぐ使うべきだろうか?
レベル1の思考では、こちらにとっての公開情報を超えて相手が何を持っているかを考える。それに対してレベル2の思考では、相手にとっての非公開情報(つまり、こちらの手札、ライブラリ、サイドボード)について対戦相手がどのようなレベル1の判断をするかを考える。
レベル3ではこれをさらに一歩先に進める。
レベル3: 相手が持っていると私が予想しているカードは何だと相手は考えているか?
これの意味を説明する前に、まずここで何が言われているかを理解しておこう。ここで我々が気にかけるのは、対戦相手の非公開情報(手札、ライブラリ、サイドボードのカード)に関することだ。これらの情報について、このレベル3では対戦相手を自分の立場に置いて考える。
基本的にはレベル1と同じ問いを考えることになるが、判断するのは、対戦相手だったらこれらの情報をどのように活用するか、ということになる。
例えば以下のような考えがレベル3の判断に含まれる:
* 相手が森を1枚立てているのはGiant Growthをキャストするためだろうか?それとも存在しないGiant Growthをケアさせて私のアタックを防ぐためだろうか?
* 相手がMana Leakを撃てる構えを見せているのは、私がゲーム1でリークをケアしたからだろうか?それとも彼が本当にMana Leakを手札に持っているからだろうか?
* (Duressによって)手札にあることがバレているChandra’s Phoenixを相手がキャストしなかったのはなぜだろうか?彼がIncinerateをドローしたのが理由で、私はAngelic Destinyをゴーレムトークンにプレイすべきではないのだろうか?もしくは私にそう考えさせるのが目的で、実際はもっていなくともIncinerateの構えを見せているのだろうか?
* 相手のこのアタックは、レベル0の観点からは彼が(とどめとなる)Nameless Inversionを手札に持っていないと説明がつかない。では、彼はそれを持っているのだろうか?それとも彼は単にこのアタックが私の盤面、もう数ターンしたら逆転不可能になるだろう盤面に対抗する最高の機会だと見ただけなのだろうか?つまり、彼はNameless Inversionを持っているのか、あるいは私がそれをケアすることに望みをつなごうとしているのか?
* 相手はこのSerra Angelによって除去を釣り出そうとしているのか?それともこれが彼の最も危険な脅威で、私がここにDoom Bladeを使う価値があるのか?
レベル3の判断がブラフのメリットを量ることと無関係とは考えられない。そんな判断はあり得ないと言い切ってしまうことにはためらいがあり、思い切って少なくともこうは言っておこう:多くの場合レベル3の判断は、あるカードを相手が本当に持っているかどうか、またはブラフをしているのかどうかを見極めることと深く関連する。
レベル3ではレンジの指標が特に重要だ。プレイヤーたちがレベル3でミスをする最大の理由は対戦相手のレンジを誤認識(「見積りミス」とも言われる)することだ。これは以下のことが組み合わさって引き起こされる:
* アクティブの指標を見逃す
* 非アクティブの指標を見逃す
* 偽の指標を真の指標だと受け取る
あるいはより追い詰められた状況として、以下のどちらかによってもミスは引き起こされる:
* 囮にひっかかる
* レベル4のプレイをされる
通常はレベル3を使うよりもレベル1を使う方が良い。特別な理由がなければ、その方が多くの場合に正しいプレイができるだろう。高いスキルを持ったプレイヤーでさえレベル2よりもレベル0を使うことの方がかなり多い!
とはいえ、ゲームに勝つためにレベル3の判断が必要とされるタイミングは間違いなくある。
あるプレイをするのにレベル3を使うと決めるときには、対戦相手のレンジが少なくとも2はあることを確かめ、レベル0やレベル4のプレイに粉砕されるリスクと比べても、なおレベル3のプレイで得られるメリットの期待値(メリット×確率)が高いと確信を持つ必要がある。
レベル4: 私が持っていることを相手が予想しているだろうと私が考えているカードは何だと相手は考えているか?
今回も、まずはじめにここで何が言われているかを考えよう。ベースになるのは、私が何を持っていると相手は考えているか(レベル2)だ。
レベル4で考えるのは、対戦相手がこちらの立場でレベル2の思考をしたらどうなるか、ということだ。
このタイプの思考は、両プレイヤーが普段よりも多くの情報にアクセスできるときに生じやすい。さらに、レベル4の思考はたいてい二択をともなう。つまり、ちょうど2つの選択肢があり、両プレイヤーが共にその状況に気づいているとき、どちらの選択肢を選ぶかに関わるのがレベル4だ。
以下に載せる例からも分かるように、いったんレベル4を超えれば、あとはどこまでいってもレベル4に戻ってくることになる。レベル5は単純にレベル4の反対の選択で、その後のレベルは全て対戦相手を一つ前のレベルにおき、その反対の選択をするだけだ。
レベル4の思考を理解することで、本質的に全てのレベルを理解したことになる。
例えば以下のような考えがレベル4の判断に含まれる:
* 相手は私が青赤ストームデッキにSplinter Twinをサイドインすることを読んでいるだろう。というのも彼とはこのトーナメントの前のラウンドで一度当たっており、そこで私がそのようにサイドしたからだ。しかし私がこのように考えていることも彼にはお見通しだろう。さて、彼は私がSplinter Twinをサイドインしない場合への準備をして、私より1レベル上に立とうとしてくるだろうか?
* 相手がMenacing Ogreをプレイした。直前のゲームでも、今とほとんど同じ盤面で彼はMenacing Ogreをプレイしてきた。そのときはOgreの能力で彼は1を選び、私は0を選んだ。すると今回は私は2を選ぶべきだろう。しかし私が2を選びそうだと彼が考えていれば、彼も2を選んでくるだろう。そうすると私は3を選ぶべきだ。しかし、彼が2を選ぶと私が考えていることを彼は読んでいるだろうか?その場合は私は4を選ぶべきだが、それとも安全に3にしておくべきだろうか?
* 前のターン、相手は私にDuressを撃ち、エンドステップに私は彼を対象にVendilion Cliqueをプレイした(Deceiver Exarchをボトムに送ったが、その後のドローで彼はすぐにもう1枚を引き入れ、すぐにキャストした)。今、その直後の私のアップキープ、Delver of Secretsの誘発で見たライブラリトップはDismemberだったが私はそれを公開しないことを選んだ。彼の手札にSplinter Twinがあるのを知っていて、それを防御スペル(SpellskiteやDispelなど)を引く前にブッパして欲しいからだ。彼は私の手札に双子を止めるカードがなかったのを見ているためブッパしてくれるだろうか?それとも、双子を釣り出すために私がこのプレイをしたことを考え、防御スペルを待つだろうか?
* 私はShow and Tellをプレイしたところだ。相手のデッキには2枚のGilded Drakeが入っているのを知っている。彼はすぐさま実物提示教育の授業に持ち込む1枚のカードを手札から場に伏せた。レベル2で考えれば、私がエムラクールを持っていると彼は思っているのだろう。しかし私がそう考えていることも彼にはおそらく分かっている。さて、彼が伏せたカードはエムラクール対策のGilded Drakeだろうか?それとも、次のShow and Tellの前にGilded Drakeを無駄遣いさせようと私がエムラクール以外のカードを選ぶことを狙っているだけなのだろうか?
* 対戦相手はレガシーのエルフを使っており、今はゲーム3で彼が先攻だ。私の2ターン目、次のターンにEngineered Plagueを出せる状況で私がMeddling Mageをキャストした。相手は十分な数のエルフとマナを展開しており、返しのターンにMirror Entityをプレイすれば間違いなく即死のアタックをしてくる。一方、彼の手札にMirror Entiryがない場合、Glimpse of Natureを指定すればほぼ確実に勝つことができる。それでMeddling Mageをプレイするとき、彼に「2枚の間で悩んでるんだ」と言った。明らかにGlimpseとMirror Entityで悩む場面だが、彼は「GlimpseとGreen Sun’s Zenithかな?」と答えた。さて、相手はMirror Entityを持っていてそれを指定させまいとしているのだろうか?それとも彼はEntityを持っておらず、GlimpseよりもMirror Entityの方を指定させようとしているのだろうか?もし、彼がGlimpseを提案することでMirror Entityを指定させようとしていることに私が気づくことを彼が想定している場合、私はMirror Entityを指定すべきだ。しかし、そうくるだろうと考えて彼が逆のことをしている場合、明らかに彼はMirror Entityを持っていないので、私はGlimpse of Natureを指定すべきだ。
私に言えるかぎり、実際のマジックのゲーム中に現れる思考レベルの中ではレベル4が循環しない中で最高だ。循環しない第5のレベルが必要になるほどこのゲームには複雑な要素がたくさんあるようにも思うが、マジックのほぼ全てのゲームでレベル5はただ結論を逆にしただけのレベル4で、それは相手がレベル4を使っていると思われるときに選ばれる結論だ。レベル5に対しては同様にレベル6があり、以降は無限に続く。
おわりに
もともとはさらにいくつかの例をより詳しく見ていくことを予定しており、そこにはMike Floresが挙げていた素晴らしい例も含まれる。この例では白青人間を使う対戦相手がMirran Crusaderをプレイし、あなたはGalvanic Blastを持っている。あなたが判断するのは、今すぐCrusaderにBlastをプレイするか、もしくはAngelic Destinyのプレイにレスポンスで撃ってさらなる価値を得るために待つかだ。相手がDestinyをプレイしなかった場合、BlastがMana LeakやFaith’s Shieldでカウンターされることがコストになる。
私はこの例についてたくさん言いたいことがあるのだが、この記事は既に十分に長くなってしまったのでまた別の日に残しておこうと思う。今後の記事でこのセオリーについての議論の続きを読みたい場合は、フォーラムにそう書き込んでほしい。
この記事がマルチレベル・シンキングでの思考プロセスを理解する助けとなればと思う。このゲームのトッププレイヤーの多くは暗黙のうちに使っているものではあるが、このセオリー自体は比較的新しい。この記事は、マジックにおいてマルチレベル・シンキングをするプレイヤーたちの頭の中で働いている思考プロセスと、その根底にある要素を言葉で明らかにしようとする私の試みだ。
Craig Wescoe
「読み合い」の分析。
具体例が分かりやすく最後までついていけました。
デッキの構築/選択論と比べると陽に語られることは少ないですが、これがすごく上手い人っていますよね。
対人戦の醍醐味だとも思います。
※2016/7/9: 続編を翻訳しました。
http://radish.diarynote.jp/201607091512155095/
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Multilevel Thinking
Craig Wescoe
8/9/2012 10:00:00 AM
http://magic.tcgplayer.com/db/article.asp?ID=10632
2011年11月、Chris Mascioliが「Leveled Thinking」というタイトルの記事を掲載した。この記事で彼は、ポーカーではポピュラーな考え方をDavid Sklanskyの本「No Limit Hold’Em: Theory and Practice」から借りてきて、マジックのプレイに対して適用した。その後、Mike Floresが「Practical Leveled Thinking」というタイトルで記事を書き、セオリーを拡張した。
今回の記事では、それぞれの思考レベルごとに具体例と説明を加えるとともに、ある状況でどの思考レベルを使うのが最適かを考える指針を示して、このアイデアをさらに深く掘り下げようと思う。このセオリーはまだ生まれたばかりの段階なので、議論するのに必要となる用語の解説も載せることにした。
この記事が、自分のプレイを改善したいと思うプレイヤーにとって役に立ち、なおかつプレイヤーとライターがより気軽に議論できるようにする基本的な言葉を提供できれば幸いだ。
パートI: 特殊な用語の解説
レベル付け/Leveling: マルチレベル・シンキングのゴール。可能な限り高いレベルを使うことがゴールなのではなく、対戦相手がどのレベルを使っているかを特定し、そのちょうど1つ上のレベルを使うことがゴールだ。
使えるレンジ/Range of Operation: あるプレイヤーが何種類のレベルを使うことができるか。プレイヤーは使えるレベルのレンジを最大化しようとするのが望ましい。これによって、例えばレベル3を使っている相手に対してレベル4のプレイをする、ということが可能になる。
変動/Fluctuation: 自分の使えるレンジ(使えると思っているレンジでは必ずしもない)に常に限定はされるが、プレイヤーはゲーム全体を通して複数の異なるレベルを使うことになる(使えるレンジがレベル1以上であれば)。
レンジの見積りミス/Misevaluation of Range: 対戦相手が使っているレベルを予測し、それが実際と違うこと。対戦相手より2つ以上高いレベルを使ってしまうことは、相手より1つ低いレベルを使ったときと同じ不都合な結果につながる。対戦相手のちょうど1レベル上を使うことが重要だ。
予測されるレベル/Expected Level of Operation: 対戦相手が使っていると予測される、ある一つのレベル。これは必ず相手の使えるレンジのうちのどれかになる。レベルは変動するため、予測は一般的/全体的にするものではなく、ある特定のプレイへの相手の反応に対してなされるべきだ。
アクティブの指標/Indicators of Activity: 対戦相手の使えるレンジにどのレベルが入っているかを示す相手の判断や行動。例えば、Mana Leakをケアしたプレイは対戦相手がレベル1以上を使えることを示す。
非アクティブの指標/Indicators of Inactivity: 対戦相手の使えるレンジにどのレベルが入って「いない」かを示す相手の判断や行動。例えば、対戦相手がCrushing Vinesを匂わせ私がそれをケアした場合、次のターンも再びCrushing Vinesを匂わせることで同じ良い効果が得られるにもかかわらず、そうせずにそれより劣ったプレイをしたとき、対戦相手が使えるレンジにレベル3(相手が何を持っていると私が考えているかを考えるレベル)が含まれていないことを示唆する。
偽の指標/False Indicators: 他のあらゆるセオリーと同じく、このセオリーももちろん完璧ではない。マジックのゲームの複雑さと時間制限のために、特にトーナメントマジックでは、プレイヤーはミスをしがちだ。そういったミスはアクティブや非アクティブの偽の指標になる。特にブラフを考慮に入れたとき、真の指標と偽の指標を見分ける確固たるルールを私は提供できない。とはいえ、セオリーがどこまでカバーするかを明確にするため簡単にここで触れておく。
囮/Decoy: 対戦相手をレベル付けするための一つのアプローチは、その後のゲームを見越した囮プレイをすることだ。相手に囮プレイを指標にさせることで自分の「使えるレンジ」を偽り、それに含まれないレベルでその後のプレイを行う。例えばゲーム1でもう勝つ見込みがないとき、自分がレベル0より高いレベルを使えないという印象を与えるためにスペルを最適でない順序で使い、残りのゲームで対戦相手にレベル1を使うように仕向け、自分はレベル2でプレイする手がある。これはめったにできないプレイだが、正しい状況で行えば効果的だ。
パートII: セオリーの解説
レベル0: 私は何を持っているか?
両プレイヤーのスキルレベルによらず、マジックにおける判断の大半はレベル0で行われる。レベルは積み上がる性質のもので、より高いレベルは全てレベル0で起きていることがベースになっている。レベル0は考えを組み立てる基礎だと考えよう。
例えば以下のような考えがレベル0の判断に含まれる:
* 私のスペルを全てキャストするにはどのショックランドをフェッチしてくればよいか?
* どのコンボパーツが足りず、探してくる必要があるか?
* このAncestral Visionsの最後の待機カウンターが取り除かれるのは何ターン目か?
* トークンが喊声の効果を得るためにはどの順序で誘発型能力をスタックに積めばよいか?
* 手札にあるスペルをこのターンに両方ともキャストできるように土地をタップする方法はあるか?
これらの問いがどれも、もっぱらあなた自身のカードにのみ関連していることに注意してほしい。これらは相手が何を持っているかとは無関係だ。通常このレベルでミスをするプレイヤーは、非常に簡単なケースを除いてレベル1を使うことはできない。
しかし、相手が持っているものを考慮しながらもレベル0に入る、別のタイプのプレイがある。次のようなものだ:
* 私のAugur of Bolasでアタックできるようにするため、手札にあるこのDismemberで相手のBorderland Rangerを殺すことができる。
この例は対戦相手が既にボード上に持っているものを考慮しているが、レベル1の問いにはなっていない。レベル1の問いとはつまり、「(公開情報を超えて)相手は何を持っているか?」というものだ。
レベル0の判断は完全に公開情報のみにもとづいて行われ、あなたのライブラリ以外の非公開情報は考慮しない。例えば、以下の例はレベル0の中で最もレベル1に近く、それゆえレベル1のアクティブの指標にもなる例だが、これはレベル0だと考える:
* これが次善の手となるには、何をドローすればよいか?
Evolving Wildsを持っており、今すぐフェッチすることとフェッチを待つことのメリットについて考えているとき、この種のレベル0判断によく直面する。例えば、今フェッチを切って直後に2マナスペルをドローした場合、そのスペルをすぐにキャストできるのでフェッチを切ったのは良かったことになる。しかし、フェッチを待てば、どの土地をフェッチすべきかを決めるための貴重な情報を1回のドローステップから得られる。
レベル1: (公開情報を超えて)相手は何を持っているか?
多くの判断はレベル0で行われるとはいえ、レベル1の判断もかなりありふれており、一般に1ゲームに数回は発生する。レベル1の判断はまずレベル0の情報をベースにするが、もう一歩先まで踏み込んで、対戦相手の手札、ライブラリ、サイドボード等にあるカードという我々にとっての非公開情報にいかに配慮するかを考える。
どこからどこまでのカードが相手の手札にあり得るかを思い浮かべ、それらを確率によって順位付けすることがゴールだ。これはそもそも途方も無い作業で、特に時間制限のあるマッチではなおさらだ。そこで、もっともありふれた(もしくは優先度の高い)カードだけが相手の手札にあり得ると考えることで我々はよくショートカットする。けれども理想的には、全ての可能なカードの組み合わせを相手が持ちうると考えたくなるだろう。
例えば以下のような考えがレベル1の判断に含まれる:
* あの1枚のアンタップ状態の森から相手は何のインスタントをキャストしてくるだろうか?
* 相手はMana Leakをサイドアウトしたのだろうか?それともマナを残しているのはリークを構えるためなんだろうか?
* 相手が手札に残している可能性のあるクリーチャーは何だろうか?それに備えてこの除去スペルを残しておいた方がよいだろうか?
* Duressで最後に相手の手札を見てから、彼は何をドローしただろうか?
* これから数ターンの間に相手が引くカードはどんなものだろうか?このNegateはいま撃たずに持っておいた方がよいのだろうか?
見ての通り、レベル0とレベル1の判断の重要な違いは、対戦相手が持っている/持ち得るものに関する非公開情報をレベル1では考慮していることだ。
このレベルのアクティブの指標は、あなたの森が起きているときに相手がGiant Growthをケアしてきたことや、Mana Leakをケアするために5マナ揃うまで待ってから重要な2マナスペルをキャストしてきたことだ。
非アクティブの指標は、これらの「罠」をケアせず踏み込んでくることだ。注意点として、特にゲーム序盤では、これらのスペルをケアしないことが相手にとって正しいプレイである場合もある。この場合、真相が次の3つのうちどれなのかをあなたは見極める必要がある:
* 対戦相手の使えるレンジは0である。もしも、使えるレンジが0だと示すプレイを何度も相手がしているようならこの可能性が高い。
* こちらのMana LeakやGiant Growthとの交換をすることが良いプレイになる何かが対戦相手の手札にある。レンジが0であることを示すプレイを相手が他にしていないなら、彼の手札にはおそらくより多くの脅威があり、それが喜んで交換をする理由だろう。
* 対戦相手にはこちらのトリックを破る手段がなく、やむを得ずブッパした。あなたが例えばGeist of Saint Traftのような形でプレッシャーを与えている場合、相手にはあなたが何も持っていないことを祈ってプレイする以外の選択肢がないことが多い。
レベル2: (相手にとっての公開情報を超えて)私が何を持っていると相手は考えているか?
レベル2の思考は人々に良いことをもたらすのと同じくらいトラブルを引き起こす。その理由は多くの場合、このレベルを使える人が、いつレベル2を使い、いつ使わないかを理解できていないためだ。
一方、このレベルを使うことが正しいタイミングはたくさんある。一般則として、相手の立場から見て私が持っているのが理に適っているカードは何かをいつも心の中で考えておくようにしたい。そしてその時が来たら考えておいたことに従ってプレイする。
レベル2のプレイは出番がないことも多い。とはいえ出番が来たときにはレベル2のプレイはしばしばゲームを決める。それゆえ、相手にとっての公開情報から考えてあなたが持っていそうなカードは何か、をチェックするのに頭を使う価値は十分にある。
例えば以下のような考えがレベル2の判断に含まれる:
* 前のターン、私はCrushing Vinesを使えるマナを立てておき、相手はそれをケアした。私はこのターンもそれを続けるべきだろうか?それとも別のプレイをすべきだろうか?
* 前のゲームで相手は常にMana Leakをケアして動いていた。では、ゲーム2に向けてリークをサイドアウトすべきだろうか?
* 相手は私のデッキが青赤ストームだと考えてゲーム2に向けてクリーチャー除去を全てアウトしてくるだろうか?それとも私がSplinter Twinコンボをサイドインすると考えて除去を残すだろうか?
* 私がエムラクールの即死パンチを防ぐブロッカーを残さずアタックした場合、彼は私がSurgical Extractionを握っていると考えてGoryo’s Vengeanceコンボを待つだろうか?それとも構わずブッパしてくるだろうか?
* 私の飛行クリーチャーで2回殴れば相手を倒せるが、このOblivion Ringを彼のBirds of Paradise(彼の唯一の飛行ブロッカー)に使うのを1ターン待てるだろうか?あるいは次のターンにリングされることをケアしてここでブロックしてくる可能性があるので今すぐ使うべきだろうか?
レベル1の思考では、こちらにとっての公開情報を超えて相手が何を持っているかを考える。それに対してレベル2の思考では、相手にとっての非公開情報(つまり、こちらの手札、ライブラリ、サイドボード)について対戦相手がどのようなレベル1の判断をするかを考える。
レベル3ではこれをさらに一歩先に進める。
レベル3: 相手が持っていると私が予想しているカードは何だと相手は考えているか?
これの意味を説明する前に、まずここで何が言われているかを理解しておこう。ここで我々が気にかけるのは、対戦相手の非公開情報(手札、ライブラリ、サイドボードのカード)に関することだ。これらの情報について、このレベル3では対戦相手を自分の立場に置いて考える。
基本的にはレベル1と同じ問いを考えることになるが、判断するのは、対戦相手だったらこれらの情報をどのように活用するか、ということになる。
例えば以下のような考えがレベル3の判断に含まれる:
* 相手が森を1枚立てているのはGiant Growthをキャストするためだろうか?それとも存在しないGiant Growthをケアさせて私のアタックを防ぐためだろうか?
* 相手がMana Leakを撃てる構えを見せているのは、私がゲーム1でリークをケアしたからだろうか?それとも彼が本当にMana Leakを手札に持っているからだろうか?
* (Duressによって)手札にあることがバレているChandra’s Phoenixを相手がキャストしなかったのはなぜだろうか?彼がIncinerateをドローしたのが理由で、私はAngelic Destinyをゴーレムトークンにプレイすべきではないのだろうか?もしくは私にそう考えさせるのが目的で、実際はもっていなくともIncinerateの構えを見せているのだろうか?
* 相手のこのアタックは、レベル0の観点からは彼が(とどめとなる)Nameless Inversionを手札に持っていないと説明がつかない。では、彼はそれを持っているのだろうか?それとも彼は単にこのアタックが私の盤面、もう数ターンしたら逆転不可能になるだろう盤面に対抗する最高の機会だと見ただけなのだろうか?つまり、彼はNameless Inversionを持っているのか、あるいは私がそれをケアすることに望みをつなごうとしているのか?
* 相手はこのSerra Angelによって除去を釣り出そうとしているのか?それともこれが彼の最も危険な脅威で、私がここにDoom Bladeを使う価値があるのか?
レベル3の判断がブラフのメリットを量ることと無関係とは考えられない。そんな判断はあり得ないと言い切ってしまうことにはためらいがあり、思い切って少なくともこうは言っておこう:多くの場合レベル3の判断は、あるカードを相手が本当に持っているかどうか、またはブラフをしているのかどうかを見極めることと深く関連する。
レベル3ではレンジの指標が特に重要だ。プレイヤーたちがレベル3でミスをする最大の理由は対戦相手のレンジを誤認識(「見積りミス」とも言われる)することだ。これは以下のことが組み合わさって引き起こされる:
* アクティブの指標を見逃す
* 非アクティブの指標を見逃す
* 偽の指標を真の指標だと受け取る
あるいはより追い詰められた状況として、以下のどちらかによってもミスは引き起こされる:
* 囮にひっかかる
* レベル4のプレイをされる
通常はレベル3を使うよりもレベル1を使う方が良い。特別な理由がなければ、その方が多くの場合に正しいプレイができるだろう。高いスキルを持ったプレイヤーでさえレベル2よりもレベル0を使うことの方がかなり多い!
とはいえ、ゲームに勝つためにレベル3の判断が必要とされるタイミングは間違いなくある。
あるプレイをするのにレベル3を使うと決めるときには、対戦相手のレンジが少なくとも2はあることを確かめ、レベル0やレベル4のプレイに粉砕されるリスクと比べても、なおレベル3のプレイで得られるメリットの期待値(メリット×確率)が高いと確信を持つ必要がある。
レベル4: 私が持っていることを相手が予想しているだろうと私が考えているカードは何だと相手は考えているか?
今回も、まずはじめにここで何が言われているかを考えよう。ベースになるのは、私が何を持っていると相手は考えているか(レベル2)だ。
レベル4で考えるのは、対戦相手がこちらの立場でレベル2の思考をしたらどうなるか、ということだ。
このタイプの思考は、両プレイヤーが普段よりも多くの情報にアクセスできるときに生じやすい。さらに、レベル4の思考はたいてい二択をともなう。つまり、ちょうど2つの選択肢があり、両プレイヤーが共にその状況に気づいているとき、どちらの選択肢を選ぶかに関わるのがレベル4だ。
以下に載せる例からも分かるように、いったんレベル4を超えれば、あとはどこまでいってもレベル4に戻ってくることになる。レベル5は単純にレベル4の反対の選択で、その後のレベルは全て対戦相手を一つ前のレベルにおき、その反対の選択をするだけだ。
レベル4の思考を理解することで、本質的に全てのレベルを理解したことになる。
例えば以下のような考えがレベル4の判断に含まれる:
* 相手は私が青赤ストームデッキにSplinter Twinをサイドインすることを読んでいるだろう。というのも彼とはこのトーナメントの前のラウンドで一度当たっており、そこで私がそのようにサイドしたからだ。しかし私がこのように考えていることも彼にはお見通しだろう。さて、彼は私がSplinter Twinをサイドインしない場合への準備をして、私より1レベル上に立とうとしてくるだろうか?
* 相手がMenacing Ogreをプレイした。直前のゲームでも、今とほとんど同じ盤面で彼はMenacing Ogreをプレイしてきた。そのときはOgreの能力で彼は1を選び、私は0を選んだ。すると今回は私は2を選ぶべきだろう。しかし私が2を選びそうだと彼が考えていれば、彼も2を選んでくるだろう。そうすると私は3を選ぶべきだ。しかし、彼が2を選ぶと私が考えていることを彼は読んでいるだろうか?その場合は私は4を選ぶべきだが、それとも安全に3にしておくべきだろうか?
* 前のターン、相手は私にDuressを撃ち、エンドステップに私は彼を対象にVendilion Cliqueをプレイした(Deceiver Exarchをボトムに送ったが、その後のドローで彼はすぐにもう1枚を引き入れ、すぐにキャストした)。今、その直後の私のアップキープ、Delver of Secretsの誘発で見たライブラリトップはDismemberだったが私はそれを公開しないことを選んだ。彼の手札にSplinter Twinがあるのを知っていて、それを防御スペル(SpellskiteやDispelなど)を引く前にブッパして欲しいからだ。彼は私の手札に双子を止めるカードがなかったのを見ているためブッパしてくれるだろうか?それとも、双子を釣り出すために私がこのプレイをしたことを考え、防御スペルを待つだろうか?
* 私はShow and Tellをプレイしたところだ。相手のデッキには2枚のGilded Drakeが入っているのを知っている。彼はすぐさま実物提示教育の授業に持ち込む1枚のカードを手札から場に伏せた。レベル2で考えれば、私がエムラクールを持っていると彼は思っているのだろう。しかし私がそう考えていることも彼にはおそらく分かっている。さて、彼が伏せたカードはエムラクール対策のGilded Drakeだろうか?それとも、次のShow and Tellの前にGilded Drakeを無駄遣いさせようと私がエムラクール以外のカードを選ぶことを狙っているだけなのだろうか?
* 対戦相手はレガシーのエルフを使っており、今はゲーム3で彼が先攻だ。私の2ターン目、次のターンにEngineered Plagueを出せる状況で私がMeddling Mageをキャストした。相手は十分な数のエルフとマナを展開しており、返しのターンにMirror Entityをプレイすれば間違いなく即死のアタックをしてくる。一方、彼の手札にMirror Entiryがない場合、Glimpse of Natureを指定すればほぼ確実に勝つことができる。それでMeddling Mageをプレイするとき、彼に「2枚の間で悩んでるんだ」と言った。明らかにGlimpseとMirror Entityで悩む場面だが、彼は「GlimpseとGreen Sun’s Zenithかな?」と答えた。さて、相手はMirror Entityを持っていてそれを指定させまいとしているのだろうか?それとも彼はEntityを持っておらず、GlimpseよりもMirror Entityの方を指定させようとしているのだろうか?もし、彼がGlimpseを提案することでMirror Entityを指定させようとしていることに私が気づくことを彼が想定している場合、私はMirror Entityを指定すべきだ。しかし、そうくるだろうと考えて彼が逆のことをしている場合、明らかに彼はMirror Entityを持っていないので、私はGlimpse of Natureを指定すべきだ。
私に言えるかぎり、実際のマジックのゲーム中に現れる思考レベルの中ではレベル4が循環しない中で最高だ。循環しない第5のレベルが必要になるほどこのゲームには複雑な要素がたくさんあるようにも思うが、マジックのほぼ全てのゲームでレベル5はただ結論を逆にしただけのレベル4で、それは相手がレベル4を使っていると思われるときに選ばれる結論だ。レベル5に対しては同様にレベル6があり、以降は無限に続く。
おわりに
もともとはさらにいくつかの例をより詳しく見ていくことを予定しており、そこにはMike Floresが挙げていた素晴らしい例も含まれる。この例では白青人間を使う対戦相手がMirran Crusaderをプレイし、あなたはGalvanic Blastを持っている。あなたが判断するのは、今すぐCrusaderにBlastをプレイするか、もしくはAngelic Destinyのプレイにレスポンスで撃ってさらなる価値を得るために待つかだ。相手がDestinyをプレイしなかった場合、BlastがMana LeakやFaith’s Shieldでカウンターされることがコストになる。
私はこの例についてたくさん言いたいことがあるのだが、この記事は既に十分に長くなってしまったのでまた別の日に残しておこうと思う。今後の記事でこのセオリーについての議論の続きを読みたい場合は、フォーラムにそう書き込んでほしい。
この記事がマルチレベル・シンキングでの思考プロセスを理解する助けとなればと思う。このゲームのトッププレイヤーの多くは暗黙のうちに使っているものではあるが、このセオリー自体は比較的新しい。この記事は、マジックにおいてマルチレベル・シンキングをするプレイヤーたちの頭の中で働いている思考プロセスと、その根底にある要素を言葉で明らかにしようとする私の試みだ。
Craig Wescoe
StarCityGamesより。
マリガン判断について。
先日の記事を訳して、リスク評価が難しい場面といえばマリガン判断だよなあと思いながらSCGを眺めていたら、こんな記事があるのを見つけました。
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Reasons To Keep Keeping
By Reid Duke
06/07/2012
http://www.starcitygames.com/magic/fundamentals/24240_Reasons_To_Keep_Keeping.html
私はよくみんなにマリガン判断が「ルーズ」だと責められる。ある基準では、それは完全に正しい。
しかしこの言葉――ルーズ――は私にとっては何の意味もない。私の中では「ルーズ」も「タイト」もない。あるのはただ良い判断と悪い判断だけだ。
マリガンは我々がマジックで直面する一番大変な選択の一つだろう。良いプレイヤーはたくさんマリガンし、弱いプレイヤーは十分にマリガンしない、という多くのプレイヤーに広まっているメンタリティーによってマリガンはさらに困難なものになる。
ぎりぎりな初手について何人かの人に尋ねれば、いつも多くの人が「マリガンだ」と答えるだろうが、彼らが自分自身で判断するとき実際にマリガンする人はもっと少ないだろう。「キープがルーズな人」なんて汚名を着たい人はいない。
悪いハンドをキープして負けたとき、自分が馬鹿者のような気持ちになるだろう。自分の小さな汚点を見た人に馬鹿者だと思われることを考えると、いっそう切なくなる。その一方で、マリガンして負けたとき、誰があなたを非難できるだろう。
「負けたよ。でもゲーム3はダブマリだったんだ。」
「可哀想に。悔しかっただろうが、運命は残酷なものだよ。」
我々はこれを乗り越える必要がある!勝ちは勝ち、負けは負けだ。判断をくだすとき、他人があなたの判断をどう考えるかなんてことは考慮すべきではない。
弱いプレイヤーがキープしすぎるというのは事実かもしれないが、マリガンが足りないことと同じぐらいマリガンしすぎることも問題なんだ!
これは多くの才能あるプレイヤーたちを悩ませている問題だと私は考えている。アグレッシブにマリガンすべきときもあれば、そうすべきでないときもある。
GPミネアポリスでの準々決勝。青白デルバーを使うBenjamin "The Beast" Friedmanが先手1ターン目にGitaxian Probeをプレイし、Brad Nelsonがテーブルに広げた6枚の手札が上記のものだ。
観客が集まってきて、この瞬間を語り継ぐために携帯やカメラを準備した。今頃は数千人のプレイヤーがこのノーランドキープを目にし、Nelson老の手痛い出費を大笑いしていることだろう。
しかし私はそうはできなかった。
これは良いキープだ。このハンドはキープに値するだけでなく、マリガンすることは取り返しのつかないミスだろうと思う。
この2つのデッキのマッチアップでは、Nelsonが序盤のうちにFriedmanの答えられないことをやれる見込みはほとんどない。Bradは「まともなゲーム」の末に勝つしかないとすると、5枚までマリガンすることは巨大な――ほとんど乗り越えられない――ディスアドバンテージになる。
この6枚のハンドは合理的で、勝利への道筋(島をドローする)が見えている。しかしマリガンした5枚のハンドはそうではない。
Bradはこのハンドをキープしてゲームに、そしてマッチに勝ち、グランプリ決勝にまでたどり着いた。
必要だった土地をうまくトップしたという点で彼は「ツイて」いた。しかし、この場面でマリガンするプレイヤーは数え切れないほどいて、彼らは5枚(あるいは4枚、3枚、2枚)のカードでスタートし、勝つためにはもっと大幅に「ツイて」いなければならなくなる。
悪い局面で最高の選択をしたミスターNelsonに拍手喝采しよう!他の多くのトッププレイヤーたちはマリガンをして、生きて帰っては来ないだろう。
マジックに関するシンプルで重要な事実を一度は書き下しておいた方が良いだろう:マリガンは悪い。少ないカードでゲームを始めることはあなたの勝率を劇的に落とす。
良くない初手に出くわしたとき、あなたは2つの良くない選択肢(キープかマリガン)から選ぶ必要のある悪い局面にいる、と捉えよう。
しかし絶望する必要はないし、手の施しようがないわけではない。マリガンについて、落ち着いて、思慮深く、正しい判断をする助けとなるのがこの記事の目標だ。
マリガン基準は単純化しすぎてしまう傾向がある。
あり得る無数の初手に対して役に立つガイドラインや比較の基準があれば楽なものだ。しかし現実には、まったく同じプレイヤーがおらず、まったく同じマッチアップがないのと同じように、まったく同じ手札もない。
マリガン基準を単純化しすぎるのは危険だ。具体的に、多くの人が誤って頼りにしている2つの「偽のガイドライン」を取り上げようと思う。
「このカードは既にマリガンしているのと同じだ」
これはいつも耳にする。初手にあるカードをキャストするための正しい土地が同時にない場合、彼らは7枚の手札が既に6枚になっているかのように考え、「タダで」マリガンできると自分を納得させてしまうのだろう。
極端な場合を除き、これは良くない態度だ。
このハンドには白マナを生む手段がなく、2枚の白いカードがある。とはいえ、先手後手によらず私はこれをキープする。
青マナだけで勝つのではなく、どこかの時点で(はじめの4ターンでなくてもよい)白マナを引き込んでトラフトや修復の天使を唱え、そこから勝ちにいくプランだ。手札にある青いカードとライブラリに残っているカードでそのための時間を稼げる。
「このカードは既にマリガン」のガイドラインに従えば、5枚のカード、Island, Island, Vapor Snag, Mana Leak, Snapcaster Mageを見て、これらを新たな6枚のカードに交換するかどうか考えるのだろう。それならマリガンだ。
これが、このガイドラインがミスリーディングだという理由だ。
たしかに白マナのないハンドをキープするのは理想的ではない。しかし、白カード2枚の存在と、白マナを引く可能性、そして後からこれらのカードをキャストすることを考えれば、判断はキープの方に傾く。
「土地を引けなかったら負けだ」
土地が置けないのを好む人はいない。私は特に2枚目や3枚目の土地が置けないのが嫌いだ。思うに、Brad Nelsonだって1枚目の土地が置けないのは同じぐらい嫌なはずだ!
しかし、もしそうなっても、彼がすぐに投了する必要があるわけではない。
死が差し迫っていないのならば、マナスクリューから抜け出すためのドローをする絶好のタイミングだ。あなたには溜めておいた手札がある!
単に、土地が詰まっている間にあなたを倒せる適切なドローを対戦相手がしないこともときどきある。そのうえ、私は土地の少ない初手が来たら、マナスクリューを抜け出すドローをする時間を稼ぐ手段を探しにかかる。
経験から言うと、このハンドは何があろうとマリガンする人が多いだろう。上に挙げた「偽のガイドライン」の両方が適用できるためだ。
対戦相手のデッキが分からない場合、後手のグリクシスコントロールとしては私はこれをキープする。
私がすぐにゲームに負ける可能性がかなりある、と偽のガイドラインを適用して異議を唱える人がいるかもしれない。デッキには26枚(残り25枚)の土地が入っており、私が2枚目の土地を置けずに負ける確率は(28/53)(27/52)=27%ある。
これには、2枚目の土地を置けなくとも自動的に負けになるわけではない、と反論しよう。相手はおそらくPillar of Flameが効くカードを引くだろう。私がSlagstormを撃てるマナを揃えた瞬間、これが復活の時だ。
2つ目の異議として、Karn Liberatedは「既にマリガンだ」と考える人がいるかもしれない。これは7マナで、私の手札には1枚の土地しかない。
グリクシスコントロールは勝つときに6マナか7マナまで到達する必要がある。つまり、私のプランはカーンをキャストできるようになるまでゲームを引き伸ばすことだ。私は結局カーンを使えるようになるだろう。
特にこの例では、私はDesperate Ravingsも持っている。Desperate Ravingsによって手札で最も価値の低いカードを「サイクリング」することができる一方で、マリガンして6枚になった場合、純粋にカードの量からくるリソース不足に私は苦しむことになるだろう。
私がこれらを「偽のガイドライン」と呼ぶのは、これらが常に適用できるわけではないからで、常に間違っているからではない。土地を置けないことが敗北に等しいマッチアップはたしかにある。あるカードを「既にマリガンだ」と考えてよい場面はたしかにある。
1つの例は、コントロールデッキでフィニッシャーがたくさん初手に来てしまった場合だ。初手にGrave Titanが3枚ある場合、2枚目はそんなに良くないし、3枚目はおそらくマリガンと同じだと考えられる(誰が勝つために3枚のGrave Titanをキャストする必要があるんだ!?)
いくつかのデッキには実際は引きたくないカードが入っている。アグロな殻デッキで手札に来てしまった1枚挿しのエリシュにはほとんど意味がない。
Natural Orderデッキで初手にProgenitusが来てしまったら大問題だ!これを「サイクリング」できるBrainstormの存在によって多少複雑ではあるが、この場合Progenitusはマリガン以上に悪い。
ここまで、マリガンしすぎることとマリガン基準を単純化しすぎることの危険性を指摘してきた。しかしこういった情報が役に立つのは、マリガン判断に影響を与えるのは何かを知ってこそだ。
どれぐらいアグレッシブにマリガンすべきか?
マリガン基準の全てを網羅するガイドラインがあり得ない理由は、マリガン判断が完全に試合のコンテキストにもとづいてなされるためだ。
賢いマリガンをするには、あなたのデッキが対戦相手に対してどのように闘うのか、そのゲームがどのような展開になりそうか、そして勝敗を決めるのに何が重要になるかを理解することが必要だ。
カードの量はどの程度重要か?
ゲーム終盤まで土地を置き続ける必要はあるだろうか?もしそうならマリガンはなるべくしない方がよい。
あなたのデッキでは、あるいはそのマッチアップでは、弱いカードを何らかの方法で「サイクリング」(キャストせずに有効活用)できるだろうか?つまり、Brainstormでライブラリに戻したり、Faithless Lootingで捨てたり、Force of Willのピッチコストにしたりといった、死に札を活用する方法だ。
もし対戦相手が1ターン目に「Raven’s Crimeをそちらに」とやってくる可能性が高いなら、なるべくマリガンしない方がよい。
あなたのデッキは何か?
あなたのデッキのゲームプランはどんなものだろうか?
上で例を挙げたグリクシスコントロールの場合、相手との交換をたくさん行い、遅いドロースペルを使って小さなアドバンテージを継続的に積み重ねるプランだ。ゲーム開始時のカードを自発的に減らすことはこのプランとまったく正反対で、このデッキの使い手はアグレッシブにマリガンすべきではない。
一方で、イニストラードブロック構築のボロスアグロを取り上げよう。これはスピードをアドバンテージとするデッキだ。
同じように終盤に突入した場合、ボロスは大きなディスアドバンテージを背負うことになる。複数の軽く、効率の良いカードが、対戦相手の積んでいる高原の狩りの達人や忌むべき者のかがり火と交換されてしまうからだ。
このデッキの力を引き出すには速い手札であることを確かめる必要があるため、ボロスの使い手はよりアグレッシブにマリガンをすべきだ。
例としてイニストラードブロック構築のボロスを選んだのは、マリガン判断で重要となるもう一つ別の要素、ゲームに尋常でなく大きな影響を与える1枚のカード、をこのデッキが持っているためだ。
ブロック構築ではカードプールの制約が厳しいため、カードパワーの大きな不均衡が生じることがある。例えば、ボロスは初手にChampion of the Parishがない場合と比べて、ある場合には劇的に勝率が向上する。このことを認識し、初手にChampionがある場合はあまりマリガンせず、ない場合は積極的にマリガンするようにすべきだ。
どんなマッチアップか?
多くの人にとってよりなじみのあるシチュエーションは、極端なデッキ(ストームコンボ、ドレッジ、赤単アグロなど)に対するサイド後の場面だ。引ければ劇的に勝率を向上させるサイドカードが1種類はデッキに入っているだろう。アグレッシブにマリガンだ!
ゲームプランの修正が必要なマッチアップがあるかもしれない。マリガン基準もそれにしたがって変えるべきだ。
同じ例で話をすると、グリクシスコントロールは赤緑ビートダウン相手には他のデッキと同じやり方では勝てない。赤緑は速く獰猛で、回答するのが難しいクリーチャーと装備品が入っており、1体のBirds of Paradiseすら致命的な脅威だ。
グリクシスはゲームプランを変える必要があり、この場合、ゲームを延々と引き伸ばすことではなく、単純にGrave Titanをキャストするまで生き残ることがゴールになる。Grave Titanはそれだけでゲームに勝てる可能性が高いので、タイタンの後に何枚の手札が残っているかは問題にならない。
この場合、タイタンとそれをキャストするためのマナと序盤を生き残るための道具を入手することが全てなので、よりアグレッシブにマリガンして差し支えない。
今度は4枚のPillar of Flame、4枚のShock、4枚のMagma Sprayを積んだ赤単デッキを相手にボロス教区の勇者デッキを使っている場面を想像してみよう。
この場合、アグレッシブにマリガンする必要は少ない。勇者はどのみち生き残りそうにないからね!
さらに言えば、あなたとの1対1交換に力を注ぐデッキ相手の場合は確実にカードを減らしたくない。実際これは、息切れしないために私が喜んで土地の少ないハンドをキープするマッチアップだ。
リミテッドか?
通常、リミテッドではアグレッシブにマリガンすべきではない。
よく作られた、バランスの良いデッキが2つある場合、ゲーム全体を通して両者のパワーレベルは均衡しやすい。多くの1対1交換が発生し、カードディスアドバンテージを簡単に埋め合わせる方法はないことが多い。
それゆえ、カードが1枚減ることはとりわけつらい。ゲームに尋常でなく大きな影響を与えるカードがあるとしても、普通は終盤用で1枚挿しだ。それを探してマリガンすることは必要ないか、もしくは不可能だ。
自分のデッキに確信が持てるか?
「自分のデッキへの確信」という要素は、いとこのリミテッドのスペシャリストLogan "Jaberwocki" Nettlesから学んだ。MOでの長いやり取りの中で、私は頻繁にLoganにぎりぎりのハンドについてアドバイスを求めた:
「この土地1枚のハンドを後手でキープすべきだろうか?」
彼の返信はしばしば「うーん、君のデッキはどれぐらい良いの?」というものだった。
とてもダメなシールドデッキを使っている場合、なんらかのチャンスを掴みに行く必要がある。上の「リミテッド」についての話で述べた問題はもっと極端になり、具体的には、カードディスアドバンテージを埋め合わせることはまったく不可能になる。
しかし、素晴らしいデッキを使っている場合は楽にマリガンできる。マナスクリューしない限り、多少のディスアドバンテージがあっても勝率はかなり高いためだ。
マッチアップに依存するところはあるが、同じことが構築でも言える(格別に良い、もしくはひどいデッキ選択をしていない限り)。実際、Brad Nelsonはノーランドキープでチャンスを掴みにいった理由の一つとして、Ben Friedmanとのマッチアップが良くなかったことを挙げていた。
「・・・僕がプレイしたバージョンの大建築家デッキはデルバーにとても弱くて、1対1交換を何度も繰り返してマナフラッドしてくれるのを祈るしかない・・・カードが少ないとそれができなくなってしまうので、5枚までマリガンすることはこのデッキにとって死刑宣告なんだ。今の6枚に近いパワーレベルの5枚が手に入る可能性より、最初の2ターンで17枚の土地のうち1枚を引く可能性の方が高いと考えた。デルバー相手のゲームに勝つにはとてもリスキーなプレイをしなきゃならない・・・」
マリガン判断は完全にコンテキスト=あなたのデッキとマッチアップに依存する。マリガンに関する断固としたルールは存在せず、あなたにできるのは経験を積み、難しい選択を前にして慎重に考えることだけだ。
いくつかの事例と、そこで私がどうするかを説明して締めくくろうと思う。この記事に出てくる全ての事例は、それがぎりぎりの選択だから取り上げられていることには留意してほしい。
モダン:RUG Delver vs. Hive Mind(後手)
これは今日、執筆の休憩中のゲームで実際に出てきた手札だ。
稲妻はゲーム中に引きこむのに良いカードだが、初手にあっても決定的な働きはしない。4枚目の土地も同じだ。
妨害を持っておらず、血清の幻視はカードを探すのに役には立つが、素晴らしいとは言えない。これを2ターン目にキャストしてトップにカウンターを積んだ場合、相手の先手3ターン目に何の防御もできず死ぬかもしれない。
このマッチアップは極めて速度重視で、消耗戦にはならないだろう。カードが減ることは取り返しのつかないディスアドバンテージにはならない。
マリガン。
昔のスタンダード:徴兵バント vs. 相手は不明
今回も、徴兵バントは消耗戦デッキではない。1体の回答されない脅威でゲームを終わらせることがゴールだ。(あなたの初手にマナ加速があり)速やかに脅威を出せれば、対戦相手はほとんど何もできないだろう。
初動が3ターン目のクリーチャーではカウンター、忘却の輪、精神ジェイスに対して脆弱で、最も力を発揮できるゲーム中盤でビハインドを背負うことになるだろう。
マリガン。
ブロック構築:ボロス vs. 相手は不明
あなたが正しいカードを引くことができれば、この手札は良いフレームワークとなるだろう。しかしボロスの力が発揮されるのは序盤で、その時点では一握りのドローしか得られないため、あなたは既に初手にあるカードでプランを立てる必要がある。
初動が深夜の出没になった場合、あなたは劣勢に立たされるだろう。そして地獄乗りを適切なタイミングでトップしたとしても、それに対処する準備をする暇な時間を相手に与えてしまっている。
マリガン。
教区の勇者は、このデッキで他とかなりの差をつけて最高のカードで、簡単に諦めたくはない。これは適切な土地を引ければベストな手札で、2枚目の土地を3,4ターン目まで引けなかったとしても十分にアグレッシブだ。
先手でも後手でもキープ。
レガシー:RUG Delver vs. 黒単Pox
Poxデッキが苦手としている序盤の数ターン、RUG Delverにはできることがない。RUGはまともなゲームをして勝つ必要のあるデッキで、Poxは強烈なリソース否定デッキなため、カードが減った状態でスタートするのは絶対にマズイ。
この手札では、Poxデッキがコジレックの審問をスカり、何もせずにカード量の面でアドバンテージを得られる可能性がある。
さらに、このマッチアップでは死に札を「サイクリング」する方法がたくさんある。RUG DelverがBrainstormを引けば余計な土地は有用だ。PoxがHymn to Tourachをプレイした場合も余計な土地は有用だ。Poxがリリアナを解決した場合にも、(ピンチではあるが)余計な土地は有用だ。
キープ。
「これキープ?」ゲーム
「これキープ?」ゲームは一人でもグループでも遊ぶことができる。そして、一般的な、あるいは特定のデッキにおけるあなたのマリガンスキルを高める良い方法だ。
あなたのデッキをシャッフルし、7枚のカードをテーブルに並べる。「これキープ?」とシャウトし、みんなで答える。その手札は脇によけ、デッキを全て使い切るまでこれを繰り返す。途中でシャッフルしないように。たくさんのハンドを素早く見ていくのがポイントだ!
グループでやると、刺激的で役に立つ議論がたくさん起こる。
一人の場合、見た手札をキープかマリガンかで2つの山に分けておくと、あなたが特定のデッキでどれぐらいの頻度でマリガンしているか一目瞭然になる。アグレッシブにマリガンしすぎていることが分かるかもしれない。あるいは、別のデッキを選ぶべきだと分かるかもしれない!
通常、「これキープ?」ゲームは先手で相手のデッキが不明な場面を想定する。しかし、遠慮せずに次のようなエキサイティングなバリエーションに挑戦してみてほしい:「デルバー相手にこれキープ?」、「Ben Friedman相手にこれキープ?」、「脱衣これキープ?」
マリガン判断について。
先日の記事を訳して、リスク評価が難しい場面といえばマリガン判断だよなあと思いながらSCGを眺めていたら、こんな記事があるのを見つけました。
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Reasons To Keep Keeping
By Reid Duke
06/07/2012
http://www.starcitygames.com/magic/fundamentals/24240_Reasons_To_Keep_Keeping.html
私はよくみんなにマリガン判断が「ルーズ」だと責められる。ある基準では、それは完全に正しい。
しかしこの言葉――ルーズ――は私にとっては何の意味もない。私の中では「ルーズ」も「タイト」もない。あるのはただ良い判断と悪い判断だけだ。
マリガンは我々がマジックで直面する一番大変な選択の一つだろう。良いプレイヤーはたくさんマリガンし、弱いプレイヤーは十分にマリガンしない、という多くのプレイヤーに広まっているメンタリティーによってマリガンはさらに困難なものになる。
ぎりぎりな初手について何人かの人に尋ねれば、いつも多くの人が「マリガンだ」と答えるだろうが、彼らが自分自身で判断するとき実際にマリガンする人はもっと少ないだろう。「キープがルーズな人」なんて汚名を着たい人はいない。
悪いハンドをキープして負けたとき、自分が馬鹿者のような気持ちになるだろう。自分の小さな汚点を見た人に馬鹿者だと思われることを考えると、いっそう切なくなる。その一方で、マリガンして負けたとき、誰があなたを非難できるだろう。
「負けたよ。でもゲーム3はダブマリだったんだ。」
「可哀想に。悔しかっただろうが、運命は残酷なものだよ。」
我々はこれを乗り越える必要がある!勝ちは勝ち、負けは負けだ。判断をくだすとき、他人があなたの判断をどう考えるかなんてことは考慮すべきではない。
弱いプレイヤーがキープしすぎるというのは事実かもしれないが、マリガンが足りないことと同じぐらいマリガンしすぎることも問題なんだ!
これは多くの才能あるプレイヤーたちを悩ませている問題だと私は考えている。アグレッシブにマリガンすべきときもあれば、そうすべきでないときもある。
ギタクシア派の調査/Gitaxian Probe
思案/Ponder
漸増爆弾/Ratchet Bomb
蒸気の絡みつき/Vapor Snag
大建築家/Grand Architect
呪文滑り/Spellskite
GPミネアポリスでの準々決勝。青白デルバーを使うBenjamin "The Beast" Friedmanが先手1ターン目にGitaxian Probeをプレイし、Brad Nelsonがテーブルに広げた6枚の手札が上記のものだ。
観客が集まってきて、この瞬間を語り継ぐために携帯やカメラを準備した。今頃は数千人のプレイヤーがこのノーランドキープを目にし、Nelson老の手痛い出費を大笑いしていることだろう。
しかし私はそうはできなかった。
これは良いキープだ。このハンドはキープに値するだけでなく、マリガンすることは取り返しのつかないミスだろうと思う。
この2つのデッキのマッチアップでは、Nelsonが序盤のうちにFriedmanの答えられないことをやれる見込みはほとんどない。Bradは「まともなゲーム」の末に勝つしかないとすると、5枚までマリガンすることは巨大な――ほとんど乗り越えられない――ディスアドバンテージになる。
この6枚のハンドは合理的で、勝利への道筋(島をドローする)が見えている。しかしマリガンした5枚のハンドはそうではない。
Bradはこのハンドをキープしてゲームに、そしてマッチに勝ち、グランプリ決勝にまでたどり着いた。
必要だった土地をうまくトップしたという点で彼は「ツイて」いた。しかし、この場面でマリガンするプレイヤーは数え切れないほどいて、彼らは5枚(あるいは4枚、3枚、2枚)のカードでスタートし、勝つためにはもっと大幅に「ツイて」いなければならなくなる。
悪い局面で最高の選択をしたミスターNelsonに拍手喝采しよう!他の多くのトッププレイヤーたちはマリガンをして、生きて帰っては来ないだろう。
マジックに関するシンプルで重要な事実を一度は書き下しておいた方が良いだろう:マリガンは悪い。少ないカードでゲームを始めることはあなたの勝率を劇的に落とす。
良くない初手に出くわしたとき、あなたは2つの良くない選択肢(キープかマリガン)から選ぶ必要のある悪い局面にいる、と捉えよう。
しかし絶望する必要はないし、手の施しようがないわけではない。マリガンについて、落ち着いて、思慮深く、正しい判断をする助けとなるのがこの記事の目標だ。
マリガン基準は単純化しすぎてしまう傾向がある。
あり得る無数の初手に対して役に立つガイドラインや比較の基準があれば楽なものだ。しかし現実には、まったく同じプレイヤーがおらず、まったく同じマッチアップがないのと同じように、まったく同じ手札もない。
マリガン基準を単純化しすぎるのは危険だ。具体的に、多くの人が誤って頼りにしている2つの「偽のガイドライン」を取り上げようと思う。
「このカードは既にマリガンしているのと同じだ」
これはいつも耳にする。初手にあるカードをキャストするための正しい土地が同時にない場合、彼らは7枚の手札が既に6枚になっているかのように考え、「タダで」マリガンできると自分を納得させてしまうのだろう。
極端な場合を除き、これは良くない態度だ。
島/Island
島/Island
蒸気の絡みつき/Vapor Snag
マナ漏出/Mana Leak
瞬唱の魔道士/Snapcaster Mage
聖トラフトの霊/Geist of Saint Traft
修復の天使/Restoration Angel
このハンドには白マナを生む手段がなく、2枚の白いカードがある。とはいえ、先手後手によらず私はこれをキープする。
青マナだけで勝つのではなく、どこかの時点で(はじめの4ターンでなくてもよい)白マナを引き込んでトラフトや修復の天使を唱え、そこから勝ちにいくプランだ。手札にある青いカードとライブラリに残っているカードでそのための時間を稼げる。
「このカードは既にマリガン」のガイドラインに従えば、5枚のカード、Island, Island, Vapor Snag, Mana Leak, Snapcaster Mageを見て、これらを新たな6枚のカードに交換するかどうか考えるのだろう。それならマリガンだ。
これが、このガイドラインがミスリーディングだという理由だ。
たしかに白マナのないハンドをキープするのは理想的ではない。しかし、白カード2枚の存在と、白マナを引く可能性、そして後からこれらのカードをキャストすることを考えれば、判断はキープの方に傾く。
「土地を引けなかったら負けだ」
土地が置けないのを好む人はいない。私は特に2枚目や3枚目の土地が置けないのが嫌いだ。思うに、Brad Nelsonだって1枚目の土地が置けないのは同じぐらい嫌なはずだ!
しかし、もしそうなっても、彼がすぐに投了する必要があるわけではない。
死が差し迫っていないのならば、マナスクリューから抜け出すためのドローをする絶好のタイミングだ。あなたには溜めておいた手札がある!
単に、土地が詰まっている間にあなたを倒せる適切なドローを対戦相手がしないこともときどきある。そのうえ、私は土地の少ない初手が来たら、マナスクリューを抜け出すドローをする時間を稼ぐ手段を探しにかかる。
黒割れの崖/Blackcleave Cliffs
火柱/Pillar of Flame
捨て身の狂乱/Desperate Ravings
捨て身の狂乱/Desperate Ravings
マナ漏出/Mana Leak
金屑の嵐/Slagstorm
解放された者、カーン/Karn Liberated
経験から言うと、このハンドは何があろうとマリガンする人が多いだろう。上に挙げた「偽のガイドライン」の両方が適用できるためだ。
対戦相手のデッキが分からない場合、後手のグリクシスコントロールとしては私はこれをキープする。
私がすぐにゲームに負ける可能性がかなりある、と偽のガイドラインを適用して異議を唱える人がいるかもしれない。デッキには26枚(残り25枚)の土地が入っており、私が2枚目の土地を置けずに負ける確率は(28/53)(27/52)=27%ある。
これには、2枚目の土地を置けなくとも自動的に負けになるわけではない、と反論しよう。相手はおそらくPillar of Flameが効くカードを引くだろう。私がSlagstormを撃てるマナを揃えた瞬間、これが復活の時だ。
2つ目の異議として、Karn Liberatedは「既にマリガンだ」と考える人がいるかもしれない。これは7マナで、私の手札には1枚の土地しかない。
グリクシスコントロールは勝つときに6マナか7マナまで到達する必要がある。つまり、私のプランはカーンをキャストできるようになるまでゲームを引き伸ばすことだ。私は結局カーンを使えるようになるだろう。
特にこの例では、私はDesperate Ravingsも持っている。Desperate Ravingsによって手札で最も価値の低いカードを「サイクリング」することができる一方で、マリガンして6枚になった場合、純粋にカードの量からくるリソース不足に私は苦しむことになるだろう。
私がこれらを「偽のガイドライン」と呼ぶのは、これらが常に適用できるわけではないからで、常に間違っているからではない。土地を置けないことが敗北に等しいマッチアップはたしかにある。あるカードを「既にマリガンだ」と考えてよい場面はたしかにある。
1つの例は、コントロールデッキでフィニッシャーがたくさん初手に来てしまった場合だ。初手にGrave Titanが3枚ある場合、2枚目はそんなに良くないし、3枚目はおそらくマリガンと同じだと考えられる(誰が勝つために3枚のGrave Titanをキャストする必要があるんだ!?)
いくつかのデッキには実際は引きたくないカードが入っている。アグロな殻デッキで手札に来てしまった1枚挿しのエリシュにはほとんど意味がない。
Natural Orderデッキで初手にProgenitusが来てしまったら大問題だ!これを「サイクリング」できるBrainstormの存在によって多少複雑ではあるが、この場合Progenitusはマリガン以上に悪い。
ここまで、マリガンしすぎることとマリガン基準を単純化しすぎることの危険性を指摘してきた。しかしこういった情報が役に立つのは、マリガン判断に影響を与えるのは何かを知ってこそだ。
どれぐらいアグレッシブにマリガンすべきか?
マリガン基準の全てを網羅するガイドラインがあり得ない理由は、マリガン判断が完全に試合のコンテキストにもとづいてなされるためだ。
賢いマリガンをするには、あなたのデッキが対戦相手に対してどのように闘うのか、そのゲームがどのような展開になりそうか、そして勝敗を決めるのに何が重要になるかを理解することが必要だ。
カードの量はどの程度重要か?
ゲーム終盤まで土地を置き続ける必要はあるだろうか?もしそうならマリガンはなるべくしない方がよい。
あなたのデッキでは、あるいはそのマッチアップでは、弱いカードを何らかの方法で「サイクリング」(キャストせずに有効活用)できるだろうか?つまり、Brainstormでライブラリに戻したり、Faithless Lootingで捨てたり、Force of Willのピッチコストにしたりといった、死に札を活用する方法だ。
もし対戦相手が1ターン目に「Raven’s Crimeをそちらに」とやってくる可能性が高いなら、なるべくマリガンしない方がよい。
あなたのデッキは何か?
あなたのデッキのゲームプランはどんなものだろうか?
上で例を挙げたグリクシスコントロールの場合、相手との交換をたくさん行い、遅いドロースペルを使って小さなアドバンテージを継続的に積み重ねるプランだ。ゲーム開始時のカードを自発的に減らすことはこのプランとまったく正反対で、このデッキの使い手はアグレッシブにマリガンすべきではない。
一方で、イニストラードブロック構築のボロスアグロを取り上げよう。これはスピードをアドバンテージとするデッキだ。
同じように終盤に突入した場合、ボロスは大きなディスアドバンテージを背負うことになる。複数の軽く、効率の良いカードが、対戦相手の積んでいる高原の狩りの達人や忌むべき者のかがり火と交換されてしまうからだ。
このデッキの力を引き出すには速い手札であることを確かめる必要があるため、ボロスの使い手はよりアグレッシブにマリガンをすべきだ。
例としてイニストラードブロック構築のボロスを選んだのは、マリガン判断で重要となるもう一つ別の要素、ゲームに尋常でなく大きな影響を与える1枚のカード、をこのデッキが持っているためだ。
ブロック構築ではカードプールの制約が厳しいため、カードパワーの大きな不均衡が生じることがある。例えば、ボロスは初手にChampion of the Parishがない場合と比べて、ある場合には劇的に勝率が向上する。このことを認識し、初手にChampionがある場合はあまりマリガンせず、ない場合は積極的にマリガンするようにすべきだ。
どんなマッチアップか?
多くの人にとってよりなじみのあるシチュエーションは、極端なデッキ(ストームコンボ、ドレッジ、赤単アグロなど)に対するサイド後の場面だ。引ければ劇的に勝率を向上させるサイドカードが1種類はデッキに入っているだろう。アグレッシブにマリガンだ!
ゲームプランの修正が必要なマッチアップがあるかもしれない。マリガン基準もそれにしたがって変えるべきだ。
同じ例で話をすると、グリクシスコントロールは赤緑ビートダウン相手には他のデッキと同じやり方では勝てない。赤緑は速く獰猛で、回答するのが難しいクリーチャーと装備品が入っており、1体のBirds of Paradiseすら致命的な脅威だ。
グリクシスはゲームプランを変える必要があり、この場合、ゲームを延々と引き伸ばすことではなく、単純にGrave Titanをキャストするまで生き残ることがゴールになる。Grave Titanはそれだけでゲームに勝てる可能性が高いので、タイタンの後に何枚の手札が残っているかは問題にならない。
この場合、タイタンとそれをキャストするためのマナと序盤を生き残るための道具を入手することが全てなので、よりアグレッシブにマリガンして差し支えない。
今度は4枚のPillar of Flame、4枚のShock、4枚のMagma Sprayを積んだ赤単デッキを相手にボロス教区の勇者デッキを使っている場面を想像してみよう。
この場合、アグレッシブにマリガンする必要は少ない。勇者はどのみち生き残りそうにないからね!
さらに言えば、あなたとの1対1交換に力を注ぐデッキ相手の場合は確実にカードを減らしたくない。実際これは、息切れしないために私が喜んで土地の少ないハンドをキープするマッチアップだ。
リミテッドか?
通常、リミテッドではアグレッシブにマリガンすべきではない。
よく作られた、バランスの良いデッキが2つある場合、ゲーム全体を通して両者のパワーレベルは均衡しやすい。多くの1対1交換が発生し、カードディスアドバンテージを簡単に埋め合わせる方法はないことが多い。
それゆえ、カードが1枚減ることはとりわけつらい。ゲームに尋常でなく大きな影響を与えるカードがあるとしても、普通は終盤用で1枚挿しだ。それを探してマリガンすることは必要ないか、もしくは不可能だ。
自分のデッキに確信が持てるか?
「自分のデッキへの確信」という要素は、いとこのリミテッドのスペシャリストLogan "Jaberwocki" Nettlesから学んだ。MOでの長いやり取りの中で、私は頻繁にLoganにぎりぎりのハンドについてアドバイスを求めた:
「この土地1枚のハンドを後手でキープすべきだろうか?」
彼の返信はしばしば「うーん、君のデッキはどれぐらい良いの?」というものだった。
とてもダメなシールドデッキを使っている場合、なんらかのチャンスを掴みに行く必要がある。上の「リミテッド」についての話で述べた問題はもっと極端になり、具体的には、カードディスアドバンテージを埋め合わせることはまったく不可能になる。
しかし、素晴らしいデッキを使っている場合は楽にマリガンできる。マナスクリューしない限り、多少のディスアドバンテージがあっても勝率はかなり高いためだ。
マッチアップに依存するところはあるが、同じことが構築でも言える(格別に良い、もしくはひどいデッキ選択をしていない限り)。実際、Brad Nelsonはノーランドキープでチャンスを掴みにいった理由の一つとして、Ben Friedmanとのマッチアップが良くなかったことを挙げていた。
「・・・僕がプレイしたバージョンの大建築家デッキはデルバーにとても弱くて、1対1交換を何度も繰り返してマナフラッドしてくれるのを祈るしかない・・・カードが少ないとそれができなくなってしまうので、5枚までマリガンすることはこのデッキにとって死刑宣告なんだ。今の6枚に近いパワーレベルの5枚が手に入る可能性より、最初の2ターンで17枚の土地のうち1枚を引く可能性の方が高いと考えた。デルバー相手のゲームに勝つにはとてもリスキーなプレイをしなきゃならない・・・」
マリガン判断は完全にコンテキスト=あなたのデッキとマッチアップに依存する。マリガンに関する断固としたルールは存在せず、あなたにできるのは経験を積み、難しい選択を前にして慎重に考えることだけだ。
いくつかの事例と、そこで私がどうするかを説明して締めくくろうと思う。この記事に出てくる全ての事例は、それがぎりぎりの選択だから取り上げられていることには留意してほしい。
モダン:RUG Delver vs. Hive Mind(後手)
島/Island
山/Mountain
繁殖池/Breeding Pool
踏み鳴らされる地/Stomping Ground
秘密を掘り下げる者/Delver of Secrets
血清の幻視/Serum Visions
稲妻/Lightning Bolt
これは今日、執筆の休憩中のゲームで実際に出てきた手札だ。
稲妻はゲーム中に引きこむのに良いカードだが、初手にあっても決定的な働きはしない。4枚目の土地も同じだ。
妨害を持っておらず、血清の幻視はカードを探すのに役には立つが、素晴らしいとは言えない。これを2ターン目にキャストしてトップにカウンターを積んだ場合、相手の先手3ターン目に何の防御もできず死ぬかもしれない。
このマッチアップは極めて速度重視で、消耗戦にはならないだろう。カードが減ることは取り返しのつかないディスアドバンテージにはならない。
マリガン。
昔のスタンダード:徴兵バント vs. 相手は不明
平地/Plains
霧深い雨林/Misty Rainforest
霧深い雨林/Misty Rainforest
天界の列柱/Celestial Colonnade
聖遺の騎士/Knight of the Reliquary
悪斬の天使/Baneslayer Angel
失われたアラーラの君主/Sovereigns of Lost Alara
今回も、徴兵バントは消耗戦デッキではない。1体の回答されない脅威でゲームを終わらせることがゴールだ。(あなたの初手にマナ加速があり)速やかに脅威を出せれば、対戦相手はほとんど何もできないだろう。
初動が3ターン目のクリーチャーではカウンター、忘却の輪、精神ジェイスに対して脆弱で、最も力を発揮できるゲーム中盤でビハインドを背負うことになるだろう。
マリガン。
ブロック構築:ボロス vs. 相手は不明
平地/Plains
山/Mountain
断崖の避難所/Clifftop Retreat
魂の洞窟/Cavern of Souls
深夜の出没/Midnight Haunting
深夜の出没/Midnight Haunting
硫黄の流弾/Brimstone Volley
あなたが正しいカードを引くことができれば、この手札は良いフレームワークとなるだろう。しかしボロスの力が発揮されるのは序盤で、その時点では一握りのドローしか得られないため、あなたは既に初手にあるカードでプランを立てる必要がある。
初動が深夜の出没になった場合、あなたは劣勢に立たされるだろう。そして地獄乗りを適切なタイミングでトップしたとしても、それに対処する準備をする暇な時間を相手に与えてしまっている。
マリガン。
平地/Plains
教区の勇者/Champion of the Parish
教区の勇者/Champion of the Parish
月皇ミケウス/Mikaeus, the Lunarch
深夜の出没/Midnight Haunting
硫黄の流弾/Brimstone Volley
地獄乗り/Hellrider
教区の勇者は、このデッキで他とかなりの差をつけて最高のカードで、簡単に諦めたくはない。これは適切な土地を引ければベストな手札で、2枚目の土地を3,4ターン目まで引けなかったとしても十分にアグレッシブだ。
先手でも後手でもキープ。
レガシー:RUG Delver vs. 黒単Pox
Tropical Island
Tropical Island
Tropical Island
Volcanic Island
Volcanic Island
霧深い雨林/Misty Rainforest
沸騰する小湖/Scalding Tarn
Poxデッキが苦手としている序盤の数ターン、RUG Delverにはできることがない。RUGはまともなゲームをして勝つ必要のあるデッキで、Poxは強烈なリソース否定デッキなため、カードが減った状態でスタートするのは絶対にマズイ。
この手札では、Poxデッキがコジレックの審問をスカり、何もせずにカード量の面でアドバンテージを得られる可能性がある。
さらに、このマッチアップでは死に札を「サイクリング」する方法がたくさんある。RUG DelverがBrainstormを引けば余計な土地は有用だ。PoxがHymn to Tourachをプレイした場合も余計な土地は有用だ。Poxがリリアナを解決した場合にも、(ピンチではあるが)余計な土地は有用だ。
キープ。
「これキープ?」ゲーム
「これキープ?」ゲームは一人でもグループでも遊ぶことができる。そして、一般的な、あるいは特定のデッキにおけるあなたのマリガンスキルを高める良い方法だ。
あなたのデッキをシャッフルし、7枚のカードをテーブルに並べる。「これキープ?」とシャウトし、みんなで答える。その手札は脇によけ、デッキを全て使い切るまでこれを繰り返す。途中でシャッフルしないように。たくさんのハンドを素早く見ていくのがポイントだ!
グループでやると、刺激的で役に立つ議論がたくさん起こる。
一人の場合、見た手札をキープかマリガンかで2つの山に分けておくと、あなたが特定のデッキでどれぐらいの頻度でマリガンしているか一目瞭然になる。アグレッシブにマリガンしすぎていることが分かるかもしれない。あるいは、別のデッキを選ぶべきだと分かるかもしれない!
通常、「これキープ?」ゲームは先手で相手のデッキが不明な場面を想定する。しかし、遠慮せずに次のようなエキサイティングなバリエーションに挑戦してみてほしい:「デルバー相手にこれキープ?」、「Ben Friedman相手にこれキープ?」、「脱衣これキープ?」
StarCityGamesより。
マジックのプレイスキルについてのRaphael Levyの記事。
2年前の記事なのですがなぜか先日Googleリーダーに上がってきて、とても面白かったので翻訳。
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The Pro Perspective - Sharpening Your Skills
By Raphael Levy
05/13/2010
http://www.starcitygames.com/magic/fundamentals/19325_The_Pro_Perspective_Sharpening_Your_Skills.html
はじめに
こんな言い習わしがある・・・
「プレイすればするほど、上手くなる。」
これは、どんなプレイをしようが上手くなる、というニュアンスだ。プレイし続けている限り上達し続ける。
私はこれには同意できない。
私は、以前書いた記事"Reflex versus Automatism"からこのことについて考え始めた。
多くの人は、トーナメントでの試合になると練習試合でやったことのあるプレイを繰り返す傾向があると記事で述べた。残念なことに、あなたがこれまでのゲームでやってきたプレイが、あらゆるゲームにおいて正しいプレイだと教えてくれる魔法の呪文はない。
もちろん、あるプレイがベターであることに気づけるのは他でもない練習期間だ。しかしプレイを最適化するには、「ベストな」プレイを見つけ出す必要がある。
より多くのゲームを行い、より多くのことを試せば、ある状況でのベストなプレイを見つけられる可能性がある。もしとんでもなく時間があってあらゆる組み合わせを試す練習ができるなら、これはうまくいくだろう。実際にはだれもそんな時間は持ち合わせていない。
しかし再び言うと、ハイレベルなマジックのプレイというのは既に見たことのあるプレイを繰り返すことではない。正確な反射神経によって対応すること、そしてあなたの頭脳に前もって用意しておいたツールを使って正解を見つけることだ。
私は人にマジックについて話すとき、ポーカーとチェスをミックスしたものだと言う。
たいてい私が何を言わんとしているかは理解してもらえないが、以下の話を読んでもらえば非常にクリアになるはずだ。
マジックはチェスのような戦略ゲームで、あなたは頭脳とリソースを使って勝利を目指す。
思考の方法は異なり(当然だが)、起きていることが全て分かるチェスとは違ってマジックでは相手が手札に何を持っているか、彼が何をドローするか、自分がこれから何をドローするかは分からない。
ゲーム内の非公開情報はポーカーにはあり、チェスにはない。知られざる情報を発見し、活用することがポーカーの全てだ。
私がマジックをこのように説明する理由は、マジックのスキルはどこから手に入れるのか、また、より優れたマジックプレイヤーになるためにスキルを高めるには何をすればよいのかを理解してもらうためだ。
あなたはチェスプレイヤーとポーカープレイヤーのスキルを極める必要がある。
1- チェスプレイヤーのスキル
「優れたチェスプレイヤーは序盤の定石とゲーム中の状況を認識し、それにしたがいプレイする。」
良いチェスプレイヤーは決まりきった自動操縦のプレイを続ければ相手の罠に嵌まることを知っている。そして、いつギアチェンジをすべきかを知っている。
彼は可能な限り早期に導き出したゲームプランを持っており、それが失敗した場合の代替手段も知っている。
例としてハイレベルなチェスの試合を取り上げよう。
最初の10手かそこらは両プレイヤーにとって完全に自動操縦になる。どちらのプレイヤーも、あり得る序盤の定石は全て何度も何度も見たことがある。しかし、いったんどちらかのプレイヤーがクラシックな定石にない、あるいは本に載っていない手を指したとき、彼らの技術が機能し始める。
二人はそれ以降の全ての手について論理的に答えを導き出す必要がある。そして、あり得る全てのシナリオを考慮することはできない。数が多すぎるためだ。たとえその能力があっても、対局時計がそれをしている時間はないことを告げる。
そう、彼らは高速に考える方法を見つける必要がある。
そして・・・あなたはスタンダードの白ウィニーを、青白コントロールデッキ(Wrath of God、ドロースペル、終盤のコントロール、そしてフィニッシャー入り)を相手に使っている。
はじめの2ターンは教科書通りの進行になるだろう。あなたは最も速いアタッカーを出し、対戦相手はマナを伸ばし、ドローしたりあなたの脅威をいくつかカウンターしたりして終盤に備える。
4ターン目になり、Wrath of Godが使える4マナに相手が到達した瞬間、これがあなたがギアチェンジするタイミングだ。
あなたはさらにクリーチャーを召喚してボード上のプレッシャーを強めるべきだろうか?クリーチャーは手札に持っておき、来たる全体除去によって壊滅するのを避けるべきだろうか?
この問いに決定的な答えはない。クリーチャーをプレイし、全てラスで流されて負けるかもしれないし、手札に持っておくことで対戦相手に時間を与えてしまい、彼の長期的なプランの前に結局敗れるかもしれない。
この状況に可能な限り最善の方法で答えるには、それまでに得た情報を使う必要がある。それまでに対戦相手がとった全ての行動が手がかりになる。
例えば・・・彼があなたの2体目の脅威をRemove Soulでカウンターした理由を考えてみよう。これは彼がWrath of Godを持っていないことを意味しているかもしれない。それとも彼はラスを持っており、単に時間を稼ぐためだったかもしれないし、あるいはあなたに全展開させて流すために、ラスを持っていないフリでもしているのかもしれない。
情報によって、あなたは最善手をプレイできるようになるはずだ。それまでの相手の全行動があなたの頭脳を始動させるトリガーとなり、状況を分析する助けとなる。
対戦相手が片方のナイトの駒を動かしている、これによりあなたの駒のいくつかが直接/間接的に攻撃されるだろう。今やこのナイトは新たな8つのマスを守っている。たった一手の動きがトリガーとなってこれらのことがあなたの頭に想起される。
(あなたが訓練を積んだチェスプレイヤーなら)これらのことは一瞬で思い浮かべることができる。次に考えるべきことは、相手が何を企んでいるのか、それに対する正しい回答は何か、あなたの戦線をどうやって維持するかだ。
そしてこれはまさにマジックプレイヤーが身に付けているべきスキルの一つだ。
状況を認識し、それが何を示しているかを理解し、それにしたがって対応する。
こんなことをあえて言うのは滑稽に聞こえるかもしれない。しかし、多くの場合2番目のステップが飛ばされる。
状況を認識し、正しいと思った行動をする、というように。それが何を示しているかを理解することなく、正しいと思ったことにしたがって。
「彼はナイトを動かしビショップの守りが外れた。よし、ビショップを攻撃しよう。」
現実には対戦相手は危険なプランを思い描いており、あなたはただ罠に飛び込むだけになる。
あなたは対戦相手がとった全ての手をトリガーとして頭を働かせ、状況をじっくり考える助けとする必要がある。このトリガー(頭の始動スイッチ)は自然に得られるものではないし、自分自身だけで鍛えることも難しい。
この得難いスキルを鍛え自分のものにする最も良い方法は、他人のプレイを見ることだ。
あなたのレベルによらず、他人のプレイを見るのはとても面白いものだ。
もしあまり良くないプレイヤーを見ているなら、彼の立場で考えてみよう。彼の立場だったら何をするだろう、と考えよう。
彼がミスをしたら、それがどこからきたものか推測するんだ。見逃しがあった?状況の分析が良くなかった?これはあなたの頭の始動スイッチがどのように働くかを理解する助けになるだろう。
そうしたら今度は、プロのプレイをチェックしてみよう。全てのプロのゲームが完璧だとは言えないが、彼らのゲームからはより多くのことを学べる可能性が高い。
良くないプレイヤーを見ているときにやったのとまったく同じことをしよう。今回の場合、あなたは劣った手を思い浮かべる可能性が高い。
考えたこともなかったような手を見て驚くことがときどきあるだろう。これがまさに埋めるべきギャップだ。あなたがその手について考えなかったのはなぜだろう?プロは何を考えてその手をとったのだろう?何が彼らの頭のトリガーとなったのかを理解し、それを自分のものにしようとしてみよう。あなたが見ておらず、彼が見ていたものはなんだろう?
これは複雑だが、あなたが良いゲームをしたいと思うならキーとなる考え方だ。
プロはあなたが理解していない何かを理解しているプレイヤーだ。それが何なのかを見つけようとしてほしい。
一緒にプレイした人たちと議論するのをためらわないでほしい。彼らは素晴らしい助けになるだろう。
2- ポーカープレイヤーのスキル
「ポーカープレイヤーたちはゲームを暗記する。彼らは自分の勝つ確率を知り、それにしたがいプレイする。」
ポーカープレイヤーは対戦相手を読み、非公開情報を活用する。
ポーカーではブラフをして、「相手を読む」ことは誰でも知っている。マジックでは、これらのスキルは完全に役に立たないわけではないが、使うことはかなり難しい(特にMOでは)。
全てのプロポーカープレイヤーが持っているメインスキルはリスクを考える能力だ。
リスクを考えることについて、その裏にある科学的な意味について話そうと思う。
例えば、次のような文を取り上げよう:「もし私がコールしたら、私がフラッシュをヒットしてポットを得る確率が25%ある。」
マジックで言えば次の文と同じだ:「もし私がこれをプレイしたら、私が土地を引いてすぐにゲームに勝つ確率が45%ある。」
これはとても単純な例だが、あなたはほとんどのゲームでこれと同じような勝率計算に直面しているだろう。・・・そしてときどき解くのが非常に難しい式に出会うこともあるだろう。
あなたのとる手の多くで、あなたはリスクを引き受けている。手のリスクは、それがミスであることだ。
まったくリスクがないこともときどきある。この場合、あなたは優れたプレイヤーである必要はない。
手がミスになる可能性があるとき、リスクを評価する必要がある。
次のようには簡単に考えられるだろう:「この手がミスである確率は50%ある、つまり相手が回答を持っているか持っていないかだ。」
こう考えてしまうと、あなたは自分のとる手をまるごと「母なる自然」つまり「運」に委ねてしまうことになる。
おそらく現実にはより正確に計算する方法がたくさんある。あなたは得られた全てのデータを1つの巨大な式、最善手を打つために解く必要のある式に放り込む。
「このターン、彼はチップを追加で賭けなかった。彼が罠をしかけている確率はどれぐらいあるか?」
これは次のようにうまく言い換えられる:「彼は2枚のカードを持っており、置ければ恩恵を得られるはずの土地をこのターン出さなかった・・・彼が1枚の対抗呪文や除去を持っている確率はどれぐらいあるか?2枚持っている確率は?あるいはただプレイできないカード2枚を持っている確率は?」
これらの問いに最も正確な答えを出すには、使える情報をできるだけたくさん集める必要がある。つまり、フォーマットを知り、対戦相手がデッキに入れているであろうカードを知る必要がある(基本的には家でやっておくことだ)。
彼のそれまでのプレイにあなたの知識を関連づけて、彼が持っているものを推測しなければならない。チェスのスキルを使っているときと同様、対戦相手がとった全ての行動をトリガーに頭を始動させ、彼が潜在的に持っている可能性のあるカードを考える。
対戦相手をよく見て読みのスキルを使ったり、より多くの情報を引き出すために相手に話しかけたりすることもできるが、このやり方で得た情報はそれほど信じられない。自分の推論スキルの方を信じよう。
いったん全ての情報を集めたら、あなたは式を解き始められる。ときには煮詰まって「もし彼がアレを持っていたら、どうやろうが死ぬ」となり、あながち悪いとは言えない当初のプラン(「オールイン」して祈ったり・・・)を進めなければならなくなる。(※訳注:「オールイン」はポーカー用語で手持ちのチップ全てを賭けるプレイ。)
しかし重要な問題こそ、正しく解く必要がある。
勝つ確率を徹底的に考える必要のある一番ありふれたシチュエーションはリミテッドのゲーム中、ダメージレースの最中だ。
クリーチャーのうち1体を次のターンの防御用に残すべきか否か、もしくはオールアタックすべきかまったく殴らないべきかをあなたは知らない。もう1体追加でアタックすることによって引き受けるリスクはどの程度あるだろう?簡単に言えば、それはゲームに敗北するリスクかもしれない。
ただ1体だけを殴らず残した場合、相手はそれを処理して殴り殺しにくる。そのクリーチャーで追加のダメージを与えることがゲームの結果にどの程度影響を与えるだろう?そのクリーチャーでアタックしなかった場合、あるいは1体も殴らず膠着させた場合に、相手が決定的なアドバンテージを築く手段を引きこむためのドローを何枚与えることになるだろう?
これは簡単な計算ではまったくない。与えるダメージ量次第で計算結果は変わる。また相手のデッキに入っているカードによっても変わり、その全てを知ることはできないだろう。
これら全ての過程を一つ一つ実行することなく正解にかなり近づくスキルをポーカープレイヤーは持っている。しかし他の多くのことと同じく、正しい答えを得るために何を探せば良いか、には気づく必要がある。
このような状況での考え方が変われば、あなたのプレイは見違えるほど変わるだろう。「彼はアレを持っているか、あるいは持っていないか」と考える代わりに、「こうプレイした場合、どんなリスクを引き受けることになるのか」と考えよう。これは練習すればできるようになる。
もちろん、紙の上に数字を書き出して解こうとすることもできる。これはゲームで自分がどんな位置にいるかを理解するとても良い方法だが、トーナメントのゲームでそれができるかどうかは分からない。
簡潔に言えば、ゲームの状態を理解するためにチェスプレイヤーのスキルを使い、リスクを評価するためにポーカープレイヤーのスキルを使い、それから決断をくだそう。
今後の記事ではより詳しい例や状況に踏み込もうと思う。今回は基本的なところまでだ。
その間、遠慮せずに今回挙げた素材について考えてみてほしい。
あなたのゲームを見る目が少しでも変わりますように。
Raph
マジックのプレイスキルについてのRaphael Levyの記事。
2年前の記事なのですがなぜか先日Googleリーダーに上がってきて、とても面白かったので翻訳。
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The Pro Perspective - Sharpening Your Skills
By Raphael Levy
05/13/2010
http://www.starcitygames.com/magic/fundamentals/19325_The_Pro_Perspective_Sharpening_Your_Skills.html
はじめに
こんな言い習わしがある・・・
「プレイすればするほど、上手くなる。」
これは、どんなプレイをしようが上手くなる、というニュアンスだ。プレイし続けている限り上達し続ける。
私はこれには同意できない。
私は、以前書いた記事"Reflex versus Automatism"からこのことについて考え始めた。
多くの人は、トーナメントでの試合になると練習試合でやったことのあるプレイを繰り返す傾向があると記事で述べた。残念なことに、あなたがこれまでのゲームでやってきたプレイが、あらゆるゲームにおいて正しいプレイだと教えてくれる魔法の呪文はない。
もちろん、あるプレイがベターであることに気づけるのは他でもない練習期間だ。しかしプレイを最適化するには、「ベストな」プレイを見つけ出す必要がある。
より多くのゲームを行い、より多くのことを試せば、ある状況でのベストなプレイを見つけられる可能性がある。もしとんでもなく時間があってあらゆる組み合わせを試す練習ができるなら、これはうまくいくだろう。実際にはだれもそんな時間は持ち合わせていない。
しかし再び言うと、ハイレベルなマジックのプレイというのは既に見たことのあるプレイを繰り返すことではない。正確な反射神経によって対応すること、そしてあなたの頭脳に前もって用意しておいたツールを使って正解を見つけることだ。
私は人にマジックについて話すとき、ポーカーとチェスをミックスしたものだと言う。
たいてい私が何を言わんとしているかは理解してもらえないが、以下の話を読んでもらえば非常にクリアになるはずだ。
マジックはチェスのような戦略ゲームで、あなたは頭脳とリソースを使って勝利を目指す。
思考の方法は異なり(当然だが)、起きていることが全て分かるチェスとは違ってマジックでは相手が手札に何を持っているか、彼が何をドローするか、自分がこれから何をドローするかは分からない。
ゲーム内の非公開情報はポーカーにはあり、チェスにはない。知られざる情報を発見し、活用することがポーカーの全てだ。
私がマジックをこのように説明する理由は、マジックのスキルはどこから手に入れるのか、また、より優れたマジックプレイヤーになるためにスキルを高めるには何をすればよいのかを理解してもらうためだ。
あなたはチェスプレイヤーとポーカープレイヤーのスキルを極める必要がある。
1- チェスプレイヤーのスキル
「優れたチェスプレイヤーは序盤の定石とゲーム中の状況を認識し、それにしたがいプレイする。」
良いチェスプレイヤーは決まりきった自動操縦のプレイを続ければ相手の罠に嵌まることを知っている。そして、いつギアチェンジをすべきかを知っている。
彼は可能な限り早期に導き出したゲームプランを持っており、それが失敗した場合の代替手段も知っている。
例としてハイレベルなチェスの試合を取り上げよう。
最初の10手かそこらは両プレイヤーにとって完全に自動操縦になる。どちらのプレイヤーも、あり得る序盤の定石は全て何度も何度も見たことがある。しかし、いったんどちらかのプレイヤーがクラシックな定石にない、あるいは本に載っていない手を指したとき、彼らの技術が機能し始める。
二人はそれ以降の全ての手について論理的に答えを導き出す必要がある。そして、あり得る全てのシナリオを考慮することはできない。数が多すぎるためだ。たとえその能力があっても、対局時計がそれをしている時間はないことを告げる。
そう、彼らは高速に考える方法を見つける必要がある。
そして・・・あなたはスタンダードの白ウィニーを、青白コントロールデッキ(Wrath of God、ドロースペル、終盤のコントロール、そしてフィニッシャー入り)を相手に使っている。
はじめの2ターンは教科書通りの進行になるだろう。あなたは最も速いアタッカーを出し、対戦相手はマナを伸ばし、ドローしたりあなたの脅威をいくつかカウンターしたりして終盤に備える。
4ターン目になり、Wrath of Godが使える4マナに相手が到達した瞬間、これがあなたがギアチェンジするタイミングだ。
あなたはさらにクリーチャーを召喚してボード上のプレッシャーを強めるべきだろうか?クリーチャーは手札に持っておき、来たる全体除去によって壊滅するのを避けるべきだろうか?
この問いに決定的な答えはない。クリーチャーをプレイし、全てラスで流されて負けるかもしれないし、手札に持っておくことで対戦相手に時間を与えてしまい、彼の長期的なプランの前に結局敗れるかもしれない。
この状況に可能な限り最善の方法で答えるには、それまでに得た情報を使う必要がある。それまでに対戦相手がとった全ての行動が手がかりになる。
例えば・・・彼があなたの2体目の脅威をRemove Soulでカウンターした理由を考えてみよう。これは彼がWrath of Godを持っていないことを意味しているかもしれない。それとも彼はラスを持っており、単に時間を稼ぐためだったかもしれないし、あるいはあなたに全展開させて流すために、ラスを持っていないフリでもしているのかもしれない。
情報によって、あなたは最善手をプレイできるようになるはずだ。それまでの相手の全行動があなたの頭脳を始動させるトリガーとなり、状況を分析する助けとなる。
対戦相手が片方のナイトの駒を動かしている、これによりあなたの駒のいくつかが直接/間接的に攻撃されるだろう。今やこのナイトは新たな8つのマスを守っている。たった一手の動きがトリガーとなってこれらのことがあなたの頭に想起される。
(あなたが訓練を積んだチェスプレイヤーなら)これらのことは一瞬で思い浮かべることができる。次に考えるべきことは、相手が何を企んでいるのか、それに対する正しい回答は何か、あなたの戦線をどうやって維持するかだ。
そしてこれはまさにマジックプレイヤーが身に付けているべきスキルの一つだ。
状況を認識し、それが何を示しているかを理解し、それにしたがって対応する。
こんなことをあえて言うのは滑稽に聞こえるかもしれない。しかし、多くの場合2番目のステップが飛ばされる。
状況を認識し、正しいと思った行動をする、というように。それが何を示しているかを理解することなく、正しいと思ったことにしたがって。
「彼はナイトを動かしビショップの守りが外れた。よし、ビショップを攻撃しよう。」
現実には対戦相手は危険なプランを思い描いており、あなたはただ罠に飛び込むだけになる。
あなたは対戦相手がとった全ての手をトリガーとして頭を働かせ、状況をじっくり考える助けとする必要がある。このトリガー(頭の始動スイッチ)は自然に得られるものではないし、自分自身だけで鍛えることも難しい。
この得難いスキルを鍛え自分のものにする最も良い方法は、他人のプレイを見ることだ。
あなたのレベルによらず、他人のプレイを見るのはとても面白いものだ。
もしあまり良くないプレイヤーを見ているなら、彼の立場で考えてみよう。彼の立場だったら何をするだろう、と考えよう。
彼がミスをしたら、それがどこからきたものか推測するんだ。見逃しがあった?状況の分析が良くなかった?これはあなたの頭の始動スイッチがどのように働くかを理解する助けになるだろう。
そうしたら今度は、プロのプレイをチェックしてみよう。全てのプロのゲームが完璧だとは言えないが、彼らのゲームからはより多くのことを学べる可能性が高い。
良くないプレイヤーを見ているときにやったのとまったく同じことをしよう。今回の場合、あなたは劣った手を思い浮かべる可能性が高い。
考えたこともなかったような手を見て驚くことがときどきあるだろう。これがまさに埋めるべきギャップだ。あなたがその手について考えなかったのはなぜだろう?プロは何を考えてその手をとったのだろう?何が彼らの頭のトリガーとなったのかを理解し、それを自分のものにしようとしてみよう。あなたが見ておらず、彼が見ていたものはなんだろう?
これは複雑だが、あなたが良いゲームをしたいと思うならキーとなる考え方だ。
プロはあなたが理解していない何かを理解しているプレイヤーだ。それが何なのかを見つけようとしてほしい。
一緒にプレイした人たちと議論するのをためらわないでほしい。彼らは素晴らしい助けになるだろう。
2- ポーカープレイヤーのスキル
「ポーカープレイヤーたちはゲームを暗記する。彼らは自分の勝つ確率を知り、それにしたがいプレイする。」
ポーカープレイヤーは対戦相手を読み、非公開情報を活用する。
ポーカーではブラフをして、「相手を読む」ことは誰でも知っている。マジックでは、これらのスキルは完全に役に立たないわけではないが、使うことはかなり難しい(特にMOでは)。
全てのプロポーカープレイヤーが持っているメインスキルはリスクを考える能力だ。
リスクを考えることについて、その裏にある科学的な意味について話そうと思う。
例えば、次のような文を取り上げよう:「もし私がコールしたら、私がフラッシュをヒットしてポットを得る確率が25%ある。」
マジックで言えば次の文と同じだ:「もし私がこれをプレイしたら、私が土地を引いてすぐにゲームに勝つ確率が45%ある。」
これはとても単純な例だが、あなたはほとんどのゲームでこれと同じような勝率計算に直面しているだろう。・・・そしてときどき解くのが非常に難しい式に出会うこともあるだろう。
あなたのとる手の多くで、あなたはリスクを引き受けている。手のリスクは、それがミスであることだ。
まったくリスクがないこともときどきある。この場合、あなたは優れたプレイヤーである必要はない。
手がミスになる可能性があるとき、リスクを評価する必要がある。
次のようには簡単に考えられるだろう:「この手がミスである確率は50%ある、つまり相手が回答を持っているか持っていないかだ。」
こう考えてしまうと、あなたは自分のとる手をまるごと「母なる自然」つまり「運」に委ねてしまうことになる。
おそらく現実にはより正確に計算する方法がたくさんある。あなたは得られた全てのデータを1つの巨大な式、最善手を打つために解く必要のある式に放り込む。
「このターン、彼はチップを追加で賭けなかった。彼が罠をしかけている確率はどれぐらいあるか?」
これは次のようにうまく言い換えられる:「彼は2枚のカードを持っており、置ければ恩恵を得られるはずの土地をこのターン出さなかった・・・彼が1枚の対抗呪文や除去を持っている確率はどれぐらいあるか?2枚持っている確率は?あるいはただプレイできないカード2枚を持っている確率は?」
これらの問いに最も正確な答えを出すには、使える情報をできるだけたくさん集める必要がある。つまり、フォーマットを知り、対戦相手がデッキに入れているであろうカードを知る必要がある(基本的には家でやっておくことだ)。
彼のそれまでのプレイにあなたの知識を関連づけて、彼が持っているものを推測しなければならない。チェスのスキルを使っているときと同様、対戦相手がとった全ての行動をトリガーに頭を始動させ、彼が潜在的に持っている可能性のあるカードを考える。
対戦相手をよく見て読みのスキルを使ったり、より多くの情報を引き出すために相手に話しかけたりすることもできるが、このやり方で得た情報はそれほど信じられない。自分の推論スキルの方を信じよう。
いったん全ての情報を集めたら、あなたは式を解き始められる。ときには煮詰まって「もし彼がアレを持っていたら、どうやろうが死ぬ」となり、あながち悪いとは言えない当初のプラン(「オールイン」して祈ったり・・・)を進めなければならなくなる。(※訳注:「オールイン」はポーカー用語で手持ちのチップ全てを賭けるプレイ。)
しかし重要な問題こそ、正しく解く必要がある。
勝つ確率を徹底的に考える必要のある一番ありふれたシチュエーションはリミテッドのゲーム中、ダメージレースの最中だ。
クリーチャーのうち1体を次のターンの防御用に残すべきか否か、もしくはオールアタックすべきかまったく殴らないべきかをあなたは知らない。もう1体追加でアタックすることによって引き受けるリスクはどの程度あるだろう?簡単に言えば、それはゲームに敗北するリスクかもしれない。
ただ1体だけを殴らず残した場合、相手はそれを処理して殴り殺しにくる。そのクリーチャーで追加のダメージを与えることがゲームの結果にどの程度影響を与えるだろう?そのクリーチャーでアタックしなかった場合、あるいは1体も殴らず膠着させた場合に、相手が決定的なアドバンテージを築く手段を引きこむためのドローを何枚与えることになるだろう?
これは簡単な計算ではまったくない。与えるダメージ量次第で計算結果は変わる。また相手のデッキに入っているカードによっても変わり、その全てを知ることはできないだろう。
これら全ての過程を一つ一つ実行することなく正解にかなり近づくスキルをポーカープレイヤーは持っている。しかし他の多くのことと同じく、正しい答えを得るために何を探せば良いか、には気づく必要がある。
このような状況での考え方が変われば、あなたのプレイは見違えるほど変わるだろう。「彼はアレを持っているか、あるいは持っていないか」と考える代わりに、「こうプレイした場合、どんなリスクを引き受けることになるのか」と考えよう。これは練習すればできるようになる。
もちろん、紙の上に数字を書き出して解こうとすることもできる。これはゲームで自分がどんな位置にいるかを理解するとても良い方法だが、トーナメントのゲームでそれができるかどうかは分からない。
簡潔に言えば、ゲームの状態を理解するためにチェスプレイヤーのスキルを使い、リスクを評価するためにポーカープレイヤーのスキルを使い、それから決断をくだそう。
今後の記事ではより詳しい例や状況に踏み込もうと思う。今回は基本的なところまでだ。
その間、遠慮せずに今回挙げた素材について考えてみてほしい。
あなたのゲームを見る目が少しでも変わりますように。
Raph
StarCityGamesより。
マジック戦略記事の金字塔"Who’s the Beatdown?"を、筆者Mike Flores自身が深掘りするという趣旨。
こういうプレイング、戦略、戦術記事を読むのも好きなのでときどきやっていこうかなあと思っています。
オリジナルの"Who’s the Beatdown?"はDNで訳された方がいらっしゃいます。
短めの記事ですし未読の方はぜひ:
http://72743.diarynote.jp/200612211801140000/
http://regiant.diarynote.jp/201107161651198667/
今のレガシーは「ビートダウン側」の戦略が多様化&洗練されていて、はじめからコントロール側を選ぶつもりのデッキはなかなか息がつらそうですが、青白奇跡が頑張っていたりSCG OpenでLandsが優勝したりまだまだ終わってはいなさそうです。
それに、たとえショーテルミラーでもどちらかはコントロール側に立つのですよね。
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Eight Core Principles Of "Who’s The Beatdown?"
By Mike Flores
03/16/2012
http://www.starcitygames.com/magic/fundamentals/23775_Eight_CorePrinciples_Of_Whos_The_Beatdown.html
「Cursed Scrollが悪いんじゃないの?」――あなたの読者より。
先週末のFloresフライデー大殺戮の直後、編集者のピストル女子Lauren Lee(以前はハンガー戦闘員だった)が今後の探求に向けた14のトピックを陳列した。その中の最初のものが先日書いた"Lies Your Teacher Told You; Truths Mine Told Me"だ(※訳注:2012/3/14の記事)。
2つ目が、どれだけ難しいのか想像もできない過去への挑戦、"Who’s the Beatdown?"を最新のスタンダードの例を使って書きなおす、というものだった。
これまでの歴史の中で、最も象徴的で、最も影響力があり、「最高」と呼ぶのに身震いするような、そんなマジックの記事を一つだけ選び出すとしたら、間違いなくその記事は・・・"Timmy, Johnny, and Spike"だろう。
だが、ベスト中のベストの戦略記事を選ぶとすれば、それは・・・"Magic: The Intangibles"か"Information Cascades"か、たぶん"How to Win a PTQ"かな。
まあ冗談はさておき、何年もの間もっとも参照され、影響力の大きかった戦略記事の一つといえば、もちろん1999年に書いた"Who’s the Beatdown?"だ。
実際これは優れた、そして深いマジック記事だ。
今回私は"Who’s the Beatdown?"の物語を2012年の語り口で作りなおそうとするのではなく、記事に含まれる時代によらない知恵を8つのポイントとして選び出した:
私はよく"Who’s the Beatdown?"の単語数がSCGの規定に満たないことをジョークにしている。しかしそれでもこの記事は、マジックあるいは一般的なゲームの戦略について、たくさんの深く時代によらない真実を直接/間接的に述べており、これまで多くの敬意を受けながらも色褪せていない(例えばZvi Mowshowitzは彼自身の最高の記事"Who’s the Beatdown II: Multitasking"を書き、上の4番にも挙げた「勝利の確実性/inevitability」という概念をはじめて作った)。
ゆえに、この機会を使って8つのポイントそれぞれについてさらに深いところまで行ってみようじゃないか。
(※訳注:"Who’s the Beatdown II: Multitasking"の翻訳はこちらで読めます→http://72743.diarynote.jp/200705152108330000/ )
2種類のデッキがあり、その立場は流動的
デッキをそれ自身の分類(ビートダウンやコントロール、コンボ、さらにその中の8つぐらいのサブジャンル)で扱うよりも、ただ2つの分類「ビートダウン側かコントロール側か」にまで減らしたモデルで捉えた方がより役に立つ、というのが"Who’s the Beatdown?"の核となっている原則だ。
13年後の今以上に、1999年当時、この単純化は多くの議論を呼んだ。
「コンボデッキは存在しないっていうのか?」あるいは、「PVはアグロコントロールが最高のアーキタイプだと言っているが・・・そんなものはないっていうのか?」
"Who’s the Beatdown?"の主張は、ゲーム中の個々の状況においてそのような分類は役に立たない、というものだ。
実際、パズルは個々の状況――ヴォーロンとシャドウの質問「おまえは誰だ」と「おまえが欲するのは何だ」――次第で全て異なる。
(※訳注:ヴォーロンとシャドウはTVドラマ『バビロン5』に登場する異星人の種族。)
あなたは・・・
1. 相手を殺そうとする人なのか、それとも・・・
2. カードアドバンテージを得ようとする人なのか
この質問に究極的に答えるには、いつでもどこでも通用するあなたの立場や、プレイヤーまたは人としてのアイデンティティ(Joey Pascoは「親和(島)」を持っており青使いを自認している、というような)ではなく、単に目の前のゲームの状況においてあなたがどのように振る舞うかを述べることになる。
例としてJoeyの話を続けよう。
Joeyは島を愛している。
構築デッキを作るとき、彼はMana LeakやSnapcaster Mageを入れるのが大好きだ。・・・しかし彼がリアニ呪文やプレインズウォーカー、はたまたコンボを使うこともあるだろう。
表面的に(あるいは彼が"Who’s the Beatdown?"を読んだことがなければ)、自分を「青の人」だと考えているJoeyはいつも島を並べているときと同じように、かたくなに自分を「コントロール側」に位置づけてしまうかもしれない。
例えば緑赤ケッシグ相手にJoeyがSam Blackのエスパースピリットをプレイしている場合、このことがどんな問題を起こすか分かるかな?
昔は――"Who’s the Beatdown?"が書かれた1999年の頃は間違いなく――山と森が一緒に出てくればまず「ビートダウン側」だと考えられた。島ならとにかくコントロール側だったように。
しかしスピリット対ケッシグの状況で、スピリットデッキが攻めるよりもカードアドバンテージを重視したコントロール側のプレイをした場合、うまくいく可能性は低い。
デルバーの入ったデッキは1ターン目にパワー3を出すことができる(※訳注:スピリットデッキはデルバー入り)。
そして、このデッキにはカウンターも入っている。だがこのカウンター呪文は、カードアドバンテージを得るための時間を買う「コントロール」スペルとして使うよりも、テンポを保ち、クロックを守り、また相手のマナ加速を食い止めるために使うほうが良い。
もちろん、スピリットデッキにはいくつかの「ボードコントロール」も入っている(正統なコントロールデッキのように、Revoke ExistenceやDivine Offeringみたいな専用呪文すら入る)。
しかし実際には、流行りのVapor Snagが素晴らしい。なぜなら、このスペルは1枚で相手への通り道を作り、アグレッシブに時間をリソースとして食い尽くす手段の一つになっているからだ。
この勝負でカードアドバンテージをより重視するデッキはどちらだろう?
ケッシグはWhipflare(軽い赤のラス)のようなカードを使うし、Green Sun’s ZenithやPrimeval Titanによって青デッキのようにライブラリをサーチして2枚や3枚のカードを一度に手に入れ、大きなカードアドバンテージを得る。
ほとんどの読者がもう理解していることを繰り返し述べるかわりに、次のような世界を想像してみよう。
デルバーデッキが2ターン目にMana Leakを撃てるマナを揃えてドローゴースタイルを取り、最終的にケッシグをLingering SoulsとMoorland Haunt(アウトポスト!)で蹂躙するために、Vapor Snag(とかGut ShotとかDismember)をソープロに見立てて使う。こうも言おう、スピリット側はこれら除去呪文やGitaxian Probeのコストを普通に支払ってファイレクシアマナを台無しにする(コントロール側はライフ総量を保たなきゃいけないからね!)・・・。
こんなゲームをしていて、Joeyが勝てると思うかい?
これが"Who’s the Beatdown?"の物語の核心だ。
あなたの想像の中で、自分の立場を間違えたスピリットとケッシグは滑稽に見えただろうが、同じデッキでも何を目の前にしているかによって立場は流動的に変わる。
ケッシグに対して、成功しているスピリットデッキはマナ効率の悪さを突く。スピリットは脅威を突き出し、走らせて(さらに普通はどんどん盤上のパワーを追加して)、対戦相手の手がタイタンに届く前に勝とうとしなければならない。
ゲーム序盤はDelverへのGalvanic Blastのような一種のマナの交換になる。
中盤の間は問いの連続だ・・・もうじきタイタンが現れて主導権を奪われそうな差し迫った状況でこれは良い脅威なのか?もしくは、Drogskol Captainのオーバーラン的能力でスピリットが爆発するか?
そしてタイタンが現れ・・・トップデッキされたDungeon Geistに観衆はoohとかahとか声を漏らすのか(攻撃力と回避力のあるボディの追加だけじゃなくコントロール的な効果も持っているね)・・・それとも現状のカードパワー、カードアドバンテージ、勝利の確実性で我慢するのか?
ケッシグを黒青コントロールの前に置いてみよう。そのときケッシグはもはやコントロール側ではない。
相手はおそらく直前に戦ったスピリットデッキよりは文字通り青は少ないが、この状況ではケッシグはコントロール側の立場を失う。Galvanic Blastは最高のカードから最低のカードになり、タイタンは勝利を確実にする存在(そう、スピリットはこれを除去するか無効化するかダメージレースするかしかない)からお試しスペルになる。
並べたタイタンに何体回答できますか?というのも、これがあなたを倒せる最後のファッティなんです。
ビートダウンかコントロールになっているだろう?
スピリットを真のデルバーデッキの前に置いても同じことが起こり、スピリットはアグロ側からコントロール側にシフトする。
Lingering Soulsはカードアドバンテージの源となり、今やその仕事はDelverと価値ある相打ちをするか時間を稼ぐかだ。Drogskol Captainは相変わらず良いが、サイズの増加はアタックのためよりも、1/1スピリットを2/2にして相手が殴れないようにする意味合いの方が大きい。
見ての通り、ただ2種類のデッキしか存在しない・・・が、その立場は流動的なため、ゲームが始まるまであなたは自分がどちらなのかを知ることすらできない。
欲はスピードによってバランスされる
"Who’s the Beatdown?"では、ルームメイトのAl Tran――PTQでトップ8に残るプレイヤーだ――が前節で述べたような破滅的な配役ミスをおかし・・・予想の通り残念な結果に終わったことについて書いた。
彼の罪はなんだろう?
彼はスピードを無視して自らの欲を選んだ。
脅威に対処するために急いで自分のマナを使うのではなく、後のダメージ量を最大化するために待った(彼は自分をビートダウン側に位置づけてしまったんだ。対戦相手が1マナでパワー2のクリーチャーを「場に」出していたにもかからわず)。
手札にGalvanic BlastとIncinerateがあるとき、相手の1ターン目Stromkirk Nobleからの2ターン目Stormblood Berserkerから身を守るのに、Day of Judgmentを撃つまで待ってしまうというのも同じことだ。
あなたはDay of Judgmentで2対1交換をすごくしたいのかもしれない。対戦相手に欲張った7点を与えるために火力を温存しているのかもしれない。
しかしその過程で、あなたは6~12ダメージ(先攻か後攻かによる)を受けている自分に気づく。
そして4枚目の土地を置けなかったら?
19点かい?
かつてMike Longは「俺達は2対1交換じゃなくてマジックがしたいんじゃないのか?」と言っていた。
10ライフ以上残して5ターン目のアンタップ・ステップを迎えていたらどうだったかなんて知らないね。
とはいえ、普通コントロール側の役割ではカードアドバンテージを得るプレイをするように仕向けられる。
ここで必要なのは、ただ圧倒的なカードアドバンテージ差をつけることではなく、残された時間と長期的な戦略の両方に配慮して決断のバランスを取ることだ。
これとは別に、同型デッキと相対したとき、状況に応じてプランを立てるのに役立つガイドラインを"Who’s the Beatdown?"は与えてくれる(別のところで読んだことがあるかもしれないけど)。
「同じ結末を目指す2つのデッキがある場合、一般に、速い方が有利だ。」
これは勝利の確実性/inevitabilityの考え方とまったく同じではないが、関連している。
つまり、あなたと対戦相手がともにダメージ差によって相手を殺すプランを採用し、どちらも巨大なDivil’s Playをフィニッシュ手段としている場合、あなたは次の2つのうちどちらかを目指すことになる:
1. 相手に対してDevil’s Playが意味を持ち始めるポイントまでライフアドバンテージを広げる。
2. 特に序盤のビートダウンを受けてしまった場合、Devil’s Playに一刻も早く、より多くのマナが使える状態でアクセスする方法を見つける。
先攻か後攻かでプレイは変わる
特にこの点について、"Who’s the Beatdown?"は深く言及していない。
そう、いつも成り立つルールというのはたしかに存在しない。しかし、直感的にはみんな分かっていることだと思う。
例として赤単同士のミラーを挙げよう。
おそらく先攻のときにはあなたはよりアグロ側に立ちたいと考えるだろう。そしてうまくカーブに沿った引きをしたり、対戦相手が展開につまづいたときにはより大きな恩恵を得られる。
一方、後攻で自然にカードアドバンテージを得た(2番手を選びタダでカードを手に入れた)場合は、かわりにダメージを抑えるためにマナを使う権利がある。
勝利の確実性と一般則
マジック用語として勝利の確実性/inevitabilityという名前を使ったのはZvi Mowshowitzの"Who’s the Beatdown II: Multitasing"が最初だが、もともと暗黙のうちに存在はしていたものだ。
「同じ結末を目指す2つのデッキがある場合、一般に、速い方が有利だ」という自明の理に加えて、私の1999年の記事ではもう少し違うことを言っている。
ゲームの最序盤(例えば1ターン目)に下した決断は、目の前のゲームでどちらのプレイヤーが勝利の確実性を持つかに影響を与える。
2つ前の節に出てきたGalvanic Blast / Incinerate / Day of Judgmentのケースに戻ると、対戦相手のスピードに合わせず欲張った2対1交換をすることでそもそも受ける必要のない12ダメージを受け、良くない状況に追い込まれそうだということが分かった。
単純にStromkirk NobleをBlastした場合、状況はどう変わるのだろうか?
対戦相手は狂喜なしのStormblood Berserkerを出そうとするだろうか?
コントロール側にいるとき、ビートダウン側のアグロなスタートについていくことはできる。
だがビートダウン側はどうだろう?
彼らは何を引いたかに強く束縛され、それゆえに様々な権利をなくしている。ビート側の対戦相手が2ターン目に石のように何もせず、こちらがフリーパスを手に入れることはいつもあり得る。
兵は詭道なり
ここでは孫子の言葉を借りたが、この『兵法』で最も有名な1行は"Who’s the Beatdown?"においても輝いている。
ゲームプレイではごく一般的な注意点だが、多くのプレイヤーが取り入れていないのが「あなたが何者かを隠すことがゲームで優位を築く方法の一つだ」ということだ。"Who’s the Beatdown?"には次のようなシーンが出てくる:
私が青コントロールデッキを装い、対戦相手は彼の基本プラン通りのアクションを続ける。そして、彼のマナがタップしている間に私がコンボを決めて殺す。
どこかで聞いたことがないかな?
去年、私が双子デッキを使ったときのやり方(Gerry Thompsonが「コントロール型の」双子戦略と呼んだ方法)だよ!
12年経ったけど、新しいトリックはなにもない!
明らかにいつも使える超強力な手法というわけではないが(トップ8までいけば対戦相手はたいていお互いのデッキリストを知っている)、ときには使える道具になるし、対戦相手に自分の立場を勘違いさせて噛み合わない行動をしてもらえれば本質的に優位に立てる。
すなわち、次の節のようなことだ:
立場を見極め、アクションする
戦略的に正しいプレイをするための第一歩は、自分がビートダウン側とコントロール側のどちらの役割を担うべきかを見極めることだ。
オリジナルの"Who’s the Beatdown?"で私は以下のチェックリストを作った。これは今日再考すべきものだと思う:
特に3番は現在では微妙なところだ。
デルバーのようなデッキはコントロール側に立つ相手デッキよりも多くのカードドロー(Gitaxian ProbeやPonder)を積んでいるだろうし、いわゆる「コントロール」のためというよりはテンポを守るためにカウンターを使うだろう。・・・そう、自分で「ほとんどいつも」と言った、その例外を実際に見つけてしまった。
この立場を見極める手続きはほとんどのプレイヤーが十分に実行していない――各アーキタイプがこんなに洗練された現代でさえ。
この節のタイトルの後半、アクションをする部分は実際にはさらに重要だ。
もしあなたがJon Finkelのような「天才」なら、はじめに何をすべきかを考えたりすることなく、正しい行動が取れるだろう・・・。だが私達はただの人間で、まず調べ、多彩なオプションの中から選ぶ必要がある。
例えば、対戦相手がやりたいと思っている立場を乗っ取る方法はないだろうか?
もしそれがうまくいけば、相手の行動全てを邪魔してやることができる(つまり、彼は立場を見誤った行動をしてしまう)。
ではどうやってアクションを決めればいいのだろう?
"Who’s the Beatdown?"では一般化した答えまでは語られていない。そこで同列のプロセス理論から借りてくることにした:
(※訳注:PDCAそのままですね。)
マジックの特にタイトなゲーム(例えばレガシーで2ターンデッキを使っている場合など)では、フィードバックと修正は不可能だが、そうでない多くの場合(長期戦や普通のライフの取り合い)ではしっかり行うことができる。
重要なのは、アクションが戦略に則っていることと、戦略がゴールに向かっていることだ。
悪いマッチアップとは
前の節で「最高のデッキ」の一つの定義について話した。ビートダウン側とコントロール側の両方をこなせるデッキなんて可能なんだろうか?
1999年に私が"Who’s the Beatdown?"を書いたときには、この問いへの答えがイエスであることに気づいていなかった。
「ひどいマッチアップ」というのは、ひとつの役割が完全に駄目になる場合のことを言う。
私がJoey Pascoと実況をした2,3ヶ月前のオープンで、Caleb Durwardがトップ8に入ったときに使っていた黒青デッキを相手にクリーチャーデッキをプレイしている場面を想像してほしい。
U/B Control
by Caleb Durward
6th place at a SCG Standard Open Nashville on 2011-10-09
Maindeck:
1 Solemn Simulacrum
1 Spellskite
2 Consecrated Sphinx
2 Grave Titan
1 Skinrender
4 Snapcaster Mage
1 Karn Liberated
3 Liliana of the Veil
2 Mana Leak
1 Dissipate
3 Dismember
1 Doom Blade
1 Go for the Throat
1 Tribute to Hunger
1 Twisted Image
2 Victim of Night
3 Black Sun’s Zenith
2 Divination
3 Nihil Spellbomb
8 Island
9 Swamp
4 Darkslick Shores
4 Drowned Catacomb
Sideboard:
2 Spellskite
3 Azure Mage
1 Volition Reins
1 Dissipate
2 Flashfreeze
1 Negate
2 Sorin’s Thirst
2 Surgical Extraction
1 Black Sun’s Zenith
あなたはビートダウン側に立つだろう。
小さな生物をプレイし、アタックしたりする。
問題なのはCalebのデッキにはSnapcaster Mageと除去しか入っていないことだ。
いくつかの私が見た試合では、彼は対戦相手からよりも自分のDismemberから受けるダメージの方が大きかったんだ!
そう、あなたはビートダウン側では満足な仕事ができない。
突如コントロール側にプレイを切り替える?
それはなかなかできるものじゃない。
自然は真空を嫌う。
もしあなたが先にアタックを仕掛けようとしても・・・Calebもそれをやるだろう。
彼は3ターン目のLiliana of the Veilのような先回りしたプレイをするだろうし、あなたがクリーチャーを場に保てないのでLillyは去らない。
(※訳注:「自然は真空を嫌う」は、自然界では足りない部分が何らかの物質で埋められるはたらきがある、という諺。)
このゲームを何と呼んだらいいのだろう?
もしカードアドバンテージだらけの黒青デッキが場を固定してしまったら?
私のビートダウンフレンドであるあなたは良い状況にはない。
もはやそこに役割はない。
最後には彼は何らかの脅威を手に入れ、あなたを打ち倒すだろう。
サイドボーディングで重荷を取り除く
「抜くことによる追加」つまりマイナスを取り除くことで得るものがある、という考え方は多くの人が理解していると思う。
元の"Who’s the Beatdown?"では、ほとんど見込みのないマッチアップでも賢いサイドボーディングによって対戦相手が苦手とする役割を手に入れることができる、というようなことを述べた。
デッキデザイナーPatrick ChapinとGrixis Desperate Ravingsでの彼のお気に入りの戦略を挙げよう。
Grixis Control
by Patrick Chapin
2nd place at a GP Orlando on 2012-01-15
Maindeck:
1 Inferno Titan
2 Snapcaster Mage
2 Olivia Voldaren
2 Liliana of the Veil
1 Sorin Markov
4 Desperate Ravings
3 Forbidden Alchemy
2 Ponder
1 Batterskull
3 Mana Leak
3 Pristine Talisman
2 Ratchet Bomb
1 Ancient Grudge
2 Curse of Death’s Hold
1 Doom Blade
1 Go for the Throat
1 Black Sun’s Zenith
1 Devil’s Play
2 Whipflare
4 Island
2 Mountain
2 Swamp
4 Blackcleave Cliffs
1 Copperline Gorge
4 Darkslick Shores
2 Drowned Catacomb
2 Shimmering Grotto
4 Sulfur Falls
Sideboard:
1 Ratchet Bomb
1 Curse of Death’s Hold
2 Ancient Grudge
2 Blue Sun’s Zenith
2 Dissipate
1 Mana Leak
2 Negate
1 Karn Liberated
1 Liliana of the Veil
1 Life’s Finale
1 Sorin’s Vengeance
最近Patrickはこの手のデッキを使ってグランプリの決勝に進出した。
このデッキはトレードオフの連続だ。ベースはコントロール側に立つデッキで、より数の多いデッキYと競えるようにするためにデッキXとの相性は悪化させる、という選択をPatrickは絶え間なくし続けなければならない。
PatrickはTwitterの#PTDKAで私に、人間デッキ対策のサイド戦略のブレインストーミングを持ちかけてきた。人間デッキの攻めは非常に速く、単体除去に対してトークンが自然にカードアドバンテージとなり、Doomed Travelerのようなクリーチャーは、リリアナなどの先回りした対応の効果を薄める。
最終的に、Patrickが既にFaithless Looting、Desperate Ravings、Liliana of the Veilを積んでいること、またChapinのトレードマークでもある、何でもプレイできる「野心的なマナベース」を活かして、サイド後リアニデッキに変身することを提案した。
人間デッキは明確にビートダウン側だが、同時にカードアドバンテージ手段が多く、Patrickのデッキのアイデンティティを実質台なしにしてしまうためいくぶん問題だった。Strangleroot Geistのような他のアグロなカードも似たような影響があり、ついていくためにマナカーブに合った正しい回答を見つけ出すのはチャレンジングだ。
それなら、ビートダウン側に回ろう。
奴らを生かしたまま勝ってしまおう。
4ターン目に流すのでは遅すぎるのなら、4ターン目に乗り越えられない脅威を出してしまおう。
受動者から能動者になるんだ!
エリシュの常在型能力はDoomed TravelerとStrangleroot Geistをともに断固として、ゴホン、常在させない。
(※訳注:・・・オヤジギャグらしい。)
Patrickは結局このアイデアを使わなかったけど、その理由は単に私がちゃんと、今ここでやったように"Who’s the Beatdown?"の文脈で説明しなかったからだと思っているよ。
LOVE
MIKE
マジック戦略記事の金字塔"Who’s the Beatdown?"を、筆者Mike Flores自身が深掘りするという趣旨。
こういうプレイング、戦略、戦術記事を読むのも好きなのでときどきやっていこうかなあと思っています。
オリジナルの"Who’s the Beatdown?"はDNで訳された方がいらっしゃいます。
短めの記事ですし未読の方はぜひ:
http://72743.diarynote.jp/200612211801140000/
http://regiant.diarynote.jp/201107161651198667/
今のレガシーは「ビートダウン側」の戦略が多様化&洗練されていて、はじめからコントロール側を選ぶつもりのデッキはなかなか息がつらそうですが、青白奇跡が頑張っていたりSCG OpenでLandsが優勝したりまだまだ終わってはいなさそうです。
それに、たとえショーテルミラーでもどちらかはコントロール側に立つのですよね。
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Eight Core Principles Of "Who’s The Beatdown?"
By Mike Flores
03/16/2012
http://www.starcitygames.com/magic/fundamentals/23775_Eight_CorePrinciples_Of_Whos_The_Beatdown.html
「Cursed Scrollが悪いんじゃないの?」――あなたの読者より。
先週末のFloresフライデー大殺戮の直後、編集者のピストル女子Lauren Lee(以前はハンガー戦闘員だった)が今後の探求に向けた14のトピックを陳列した。その中の最初のものが先日書いた"Lies Your Teacher Told You; Truths Mine Told Me"だ(※訳注:2012/3/14の記事)。
2つ目が、どれだけ難しいのか想像もできない過去への挑戦、"Who’s the Beatdown?"を最新のスタンダードの例を使って書きなおす、というものだった。
これまでの歴史の中で、最も象徴的で、最も影響力があり、「最高」と呼ぶのに身震いするような、そんなマジックの記事を一つだけ選び出すとしたら、間違いなくその記事は・・・"Timmy, Johnny, and Spike"だろう。
だが、ベスト中のベストの戦略記事を選ぶとすれば、それは・・・"Magic: The Intangibles"か"Information Cascades"か、たぶん"How to Win a PTQ"かな。
まあ冗談はさておき、何年もの間もっとも参照され、影響力の大きかった戦略記事の一つといえば、もちろん1999年に書いた"Who’s the Beatdown?"だ。
実際これは優れた、そして深いマジック記事だ。
今回私は"Who’s the Beatdown?"の物語を2012年の語り口で作りなおそうとするのではなく、記事に含まれる時代によらない知恵を8つのポイントとして選び出した:
1. 2種類のデッキがあり、その立場は流動的
2. 欲はスピードによってバランスされる
3. 先攻か後攻かでプレイは変わる
4. 勝利の確実性と一般則
5. 兵は詭道なり
6. 立場を見極め、アクションする
7. 悪いマッチアップとは
8. サイドボーディングで重荷を取り除く
私はよく"Who’s the Beatdown?"の単語数がSCGの規定に満たないことをジョークにしている。しかしそれでもこの記事は、マジックあるいは一般的なゲームの戦略について、たくさんの深く時代によらない真実を直接/間接的に述べており、これまで多くの敬意を受けながらも色褪せていない(例えばZvi Mowshowitzは彼自身の最高の記事"Who’s the Beatdown II: Multitasking"を書き、上の4番にも挙げた「勝利の確実性/inevitability」という概念をはじめて作った)。
ゆえに、この機会を使って8つのポイントそれぞれについてさらに深いところまで行ってみようじゃないか。
(※訳注:"Who’s the Beatdown II: Multitasking"の翻訳はこちらで読めます→http://72743.diarynote.jp/200705152108330000/ )
2種類のデッキがあり、その立場は流動的
デッキをそれ自身の分類(ビートダウンやコントロール、コンボ、さらにその中の8つぐらいのサブジャンル)で扱うよりも、ただ2つの分類「ビートダウン側かコントロール側か」にまで減らしたモデルで捉えた方がより役に立つ、というのが"Who’s the Beatdown?"の核となっている原則だ。
13年後の今以上に、1999年当時、この単純化は多くの議論を呼んだ。
「コンボデッキは存在しないっていうのか?」あるいは、「PVはアグロコントロールが最高のアーキタイプだと言っているが・・・そんなものはないっていうのか?」
"Who’s the Beatdown?"の主張は、ゲーム中の個々の状況においてそのような分類は役に立たない、というものだ。
実際、パズルは個々の状況――ヴォーロンとシャドウの質問「おまえは誰だ」と「おまえが欲するのは何だ」――次第で全て異なる。
(※訳注:ヴォーロンとシャドウはTVドラマ『バビロン5』に登場する異星人の種族。)
あなたは・・・
1. 相手を殺そうとする人なのか、それとも・・・
2. カードアドバンテージを得ようとする人なのか
この質問に究極的に答えるには、いつでもどこでも通用するあなたの立場や、プレイヤーまたは人としてのアイデンティティ(Joey Pascoは「親和(島)」を持っており青使いを自認している、というような)ではなく、単に目の前のゲームの状況においてあなたがどのように振る舞うかを述べることになる。
例としてJoeyの話を続けよう。
Joeyは島を愛している。
構築デッキを作るとき、彼はMana LeakやSnapcaster Mageを入れるのが大好きだ。・・・しかし彼がリアニ呪文やプレインズウォーカー、はたまたコンボを使うこともあるだろう。
表面的に(あるいは彼が"Who’s the Beatdown?"を読んだことがなければ)、自分を「青の人」だと考えているJoeyはいつも島を並べているときと同じように、かたくなに自分を「コントロール側」に位置づけてしまうかもしれない。
例えば緑赤ケッシグ相手にJoeyがSam Blackのエスパースピリットをプレイしている場合、このことがどんな問題を起こすか分かるかな?
昔は――"Who’s the Beatdown?"が書かれた1999年の頃は間違いなく――山と森が一緒に出てくればまず「ビートダウン側」だと考えられた。島ならとにかくコントロール側だったように。
しかしスピリット対ケッシグの状況で、スピリットデッキが攻めるよりもカードアドバンテージを重視したコントロール側のプレイをした場合、うまくいく可能性は低い。
デルバーの入ったデッキは1ターン目にパワー3を出すことができる(※訳注:スピリットデッキはデルバー入り)。
そして、このデッキにはカウンターも入っている。だがこのカウンター呪文は、カードアドバンテージを得るための時間を買う「コントロール」スペルとして使うよりも、テンポを保ち、クロックを守り、また相手のマナ加速を食い止めるために使うほうが良い。
もちろん、スピリットデッキにはいくつかの「ボードコントロール」も入っている(正統なコントロールデッキのように、Revoke ExistenceやDivine Offeringみたいな専用呪文すら入る)。
しかし実際には、流行りのVapor Snagが素晴らしい。なぜなら、このスペルは1枚で相手への通り道を作り、アグレッシブに時間をリソースとして食い尽くす手段の一つになっているからだ。
この勝負でカードアドバンテージをより重視するデッキはどちらだろう?
ケッシグはWhipflare(軽い赤のラス)のようなカードを使うし、Green Sun’s ZenithやPrimeval Titanによって青デッキのようにライブラリをサーチして2枚や3枚のカードを一度に手に入れ、大きなカードアドバンテージを得る。
ほとんどの読者がもう理解していることを繰り返し述べるかわりに、次のような世界を想像してみよう。
デルバーデッキが2ターン目にMana Leakを撃てるマナを揃えてドローゴースタイルを取り、最終的にケッシグをLingering SoulsとMoorland Haunt(アウトポスト!)で蹂躙するために、Vapor Snag(とかGut ShotとかDismember)をソープロに見立てて使う。こうも言おう、スピリット側はこれら除去呪文やGitaxian Probeのコストを普通に支払ってファイレクシアマナを台無しにする(コントロール側はライフ総量を保たなきゃいけないからね!)・・・。
こんなゲームをしていて、Joeyが勝てると思うかい?
これが"Who’s the Beatdown?"の物語の核心だ。
あなたの想像の中で、自分の立場を間違えたスピリットとケッシグは滑稽に見えただろうが、同じデッキでも何を目の前にしているかによって立場は流動的に変わる。
ケッシグに対して、成功しているスピリットデッキはマナ効率の悪さを突く。スピリットは脅威を突き出し、走らせて(さらに普通はどんどん盤上のパワーを追加して)、対戦相手の手がタイタンに届く前に勝とうとしなければならない。
ゲーム序盤はDelverへのGalvanic Blastのような一種のマナの交換になる。
中盤の間は問いの連続だ・・・もうじきタイタンが現れて主導権を奪われそうな差し迫った状況でこれは良い脅威なのか?もしくは、Drogskol Captainのオーバーラン的能力でスピリットが爆発するか?
そしてタイタンが現れ・・・トップデッキされたDungeon Geistに観衆はoohとかahとか声を漏らすのか(攻撃力と回避力のあるボディの追加だけじゃなくコントロール的な効果も持っているね)・・・それとも現状のカードパワー、カードアドバンテージ、勝利の確実性で我慢するのか?
ケッシグを黒青コントロールの前に置いてみよう。そのときケッシグはもはやコントロール側ではない。
相手はおそらく直前に戦ったスピリットデッキよりは文字通り青は少ないが、この状況ではケッシグはコントロール側の立場を失う。Galvanic Blastは最高のカードから最低のカードになり、タイタンは勝利を確実にする存在(そう、スピリットはこれを除去するか無効化するかダメージレースするかしかない)からお試しスペルになる。
並べたタイタンに何体回答できますか?というのも、これがあなたを倒せる最後のファッティなんです。
ビートダウンかコントロールになっているだろう?
スピリットを真のデルバーデッキの前に置いても同じことが起こり、スピリットはアグロ側からコントロール側にシフトする。
Lingering Soulsはカードアドバンテージの源となり、今やその仕事はDelverと価値ある相打ちをするか時間を稼ぐかだ。Drogskol Captainは相変わらず良いが、サイズの増加はアタックのためよりも、1/1スピリットを2/2にして相手が殴れないようにする意味合いの方が大きい。
見ての通り、ただ2種類のデッキしか存在しない・・・が、その立場は流動的なため、ゲームが始まるまであなたは自分がどちらなのかを知ることすらできない。
欲はスピードによってバランスされる
"Who’s the Beatdown?"では、ルームメイトのAl Tran――PTQでトップ8に残るプレイヤーだ――が前節で述べたような破滅的な配役ミスをおかし・・・予想の通り残念な結果に終わったことについて書いた。
彼の罪はなんだろう?
彼はスピードを無視して自らの欲を選んだ。
脅威に対処するために急いで自分のマナを使うのではなく、後のダメージ量を最大化するために待った(彼は自分をビートダウン側に位置づけてしまったんだ。対戦相手が1マナでパワー2のクリーチャーを「場に」出していたにもかからわず)。
手札にGalvanic BlastとIncinerateがあるとき、相手の1ターン目Stromkirk Nobleからの2ターン目Stormblood Berserkerから身を守るのに、Day of Judgmentを撃つまで待ってしまうというのも同じことだ。
あなたはDay of Judgmentで2対1交換をすごくしたいのかもしれない。対戦相手に欲張った7点を与えるために火力を温存しているのかもしれない。
しかしその過程で、あなたは6~12ダメージ(先攻か後攻かによる)を受けている自分に気づく。
そして4枚目の土地を置けなかったら?
19点かい?
かつてMike Longは「俺達は2対1交換じゃなくてマジックがしたいんじゃないのか?」と言っていた。
10ライフ以上残して5ターン目のアンタップ・ステップを迎えていたらどうだったかなんて知らないね。
とはいえ、普通コントロール側の役割ではカードアドバンテージを得るプレイをするように仕向けられる。
ここで必要なのは、ただ圧倒的なカードアドバンテージ差をつけることではなく、残された時間と長期的な戦略の両方に配慮して決断のバランスを取ることだ。
これとは別に、同型デッキと相対したとき、状況に応じてプランを立てるのに役立つガイドラインを"Who’s the Beatdown?"は与えてくれる(別のところで読んだことがあるかもしれないけど)。
「同じ結末を目指す2つのデッキがある場合、一般に、速い方が有利だ。」
これは勝利の確実性/inevitabilityの考え方とまったく同じではないが、関連している。
つまり、あなたと対戦相手がともにダメージ差によって相手を殺すプランを採用し、どちらも巨大なDivil’s Playをフィニッシュ手段としている場合、あなたは次の2つのうちどちらかを目指すことになる:
1. 相手に対してDevil’s Playが意味を持ち始めるポイントまでライフアドバンテージを広げる。
2. 特に序盤のビートダウンを受けてしまった場合、Devil’s Playに一刻も早く、より多くのマナが使える状態でアクセスする方法を見つける。
先攻か後攻かでプレイは変わる
特にこの点について、"Who’s the Beatdown?"は深く言及していない。
そう、いつも成り立つルールというのはたしかに存在しない。しかし、直感的にはみんな分かっていることだと思う。
例として赤単同士のミラーを挙げよう。
おそらく先攻のときにはあなたはよりアグロ側に立ちたいと考えるだろう。そしてうまくカーブに沿った引きをしたり、対戦相手が展開につまづいたときにはより大きな恩恵を得られる。
一方、後攻で自然にカードアドバンテージを得た(2番手を選びタダでカードを手に入れた)場合は、かわりにダメージを抑えるためにマナを使う権利がある。
勝利の確実性と一般則
マジック用語として勝利の確実性/inevitabilityという名前を使ったのはZvi Mowshowitzの"Who’s the Beatdown II: Multitasing"が最初だが、もともと暗黙のうちに存在はしていたものだ。
Zviの定義:
あるプレイヤーが現在おかれた状況から長期戦を勝つ見込みがある場合、そのプレイヤーは勝利の確実性を持つ、と言う。
あるプレイヤーがあるマッチアップの1ターン目に勝利の確実性を持つ場合、そのプレイヤーはそのマッチアップについて勝利の確実性を持つ、と言う。
「同じ結末を目指す2つのデッキがある場合、一般に、速い方が有利だ」という自明の理に加えて、私の1999年の記事ではもう少し違うことを言っている。
ゲームの最序盤(例えば1ターン目)に下した決断は、目の前のゲームでどちらのプレイヤーが勝利の確実性を持つかに影響を与える。
2つ前の節に出てきたGalvanic Blast / Incinerate / Day of Judgmentのケースに戻ると、対戦相手のスピードに合わせず欲張った2対1交換をすることでそもそも受ける必要のない12ダメージを受け、良くない状況に追い込まれそうだということが分かった。
単純にStromkirk NobleをBlastした場合、状況はどう変わるのだろうか?
対戦相手は狂喜なしのStormblood Berserkerを出そうとするだろうか?
コントロール側にいるとき、ビートダウン側のアグロなスタートについていくことはできる。
だがビートダウン側はどうだろう?
彼らは何を引いたかに強く束縛され、それゆえに様々な権利をなくしている。ビート側の対戦相手が2ターン目に石のように何もせず、こちらがフリーパスを手に入れることはいつもあり得る。
兵は詭道なり
ここでは孫子の言葉を借りたが、この『兵法』で最も有名な1行は"Who’s the Beatdown?"においても輝いている。
ゲームプレイではごく一般的な注意点だが、多くのプレイヤーが取り入れていないのが「あなたが何者かを隠すことがゲームで優位を築く方法の一つだ」ということだ。"Who’s the Beatdown?"には次のようなシーンが出てくる:
私が青コントロールデッキを装い、対戦相手は彼の基本プラン通りのアクションを続ける。そして、彼のマナがタップしている間に私がコンボを決めて殺す。
どこかで聞いたことがないかな?
去年、私が双子デッキを使ったときのやり方(Gerry Thompsonが「コントロール型の」双子戦略と呼んだ方法)だよ!
12年経ったけど、新しいトリックはなにもない!
明らかにいつも使える超強力な手法というわけではないが(トップ8までいけば対戦相手はたいていお互いのデッキリストを知っている)、ときには使える道具になるし、対戦相手に自分の立場を勘違いさせて噛み合わない行動をしてもらえれば本質的に優位に立てる。
すなわち、次の節のようなことだ:
立場を見極め、アクションする
戦略的に正しいプレイをするための第一歩は、自分がビートダウン側とコントロール側のどちらの役割を担うべきかを見極めることだ。
オリジナルの"Who’s the Beatdown?"で私は以下のチェックリストを作った。これは今日再考すべきものだと思う:
1. ダメージ源が多いのはどちらか?通常そちらがビートダウン側だ。
2. 除去の量が多いのはどちらか?通常そちらがコントロール側だ。
3. カウンターとドローの量が多いのはどちらか?ほとんどいつもそちらがコントロール側だ。
特に3番は現在では微妙なところだ。
デルバーのようなデッキはコントロール側に立つ相手デッキよりも多くのカードドロー(Gitaxian ProbeやPonder)を積んでいるだろうし、いわゆる「コントロール」のためというよりはテンポを守るためにカウンターを使うだろう。・・・そう、自分で「ほとんどいつも」と言った、その例外を実際に見つけてしまった。
この立場を見極める手続きはほとんどのプレイヤーが十分に実行していない――各アーキタイプがこんなに洗練された現代でさえ。
この節のタイトルの後半、アクションをする部分は実際にはさらに重要だ。
もしあなたがJon Finkelのような「天才」なら、はじめに何をすべきかを考えたりすることなく、正しい行動が取れるだろう・・・。だが私達はただの人間で、まず調べ、多彩なオプションの中から選ぶ必要がある。
例えば、対戦相手がやりたいと思っている立場を乗っ取る方法はないだろうか?
もしそれがうまくいけば、相手の行動全てを邪魔してやることができる(つまり、彼は立場を見誤った行動をしてしまう)。
余談:
「最高のデッキ」を、多くのマッチアップでビートダウン側とコントロール側の両方をこなせるデッキだと定義した点でZviと私は一致している。
ではどうやってアクションを決めればいいのだろう?
"Who’s the Beatdown?"では一般化した答えまでは語られていない。そこで同列のプロセス理論から借りてくることにした:
1. 何がゴールか?ゴールを設定する。
2. ゴールに到達するまでの戦略を考え、それに則ってアクションをする。
3. フィードバックを得る。戦略は機能しているか?
4. 必要ならば修正する。
(※訳注:PDCAそのままですね。)
マジックの特にタイトなゲーム(例えばレガシーで2ターンデッキを使っている場合など)では、フィードバックと修正は不可能だが、そうでない多くの場合(長期戦や普通のライフの取り合い)ではしっかり行うことができる。
重要なのは、アクションが戦略に則っていることと、戦略がゴールに向かっていることだ。
悪いマッチアップとは
前の節で「最高のデッキ」の一つの定義について話した。ビートダウン側とコントロール側の両方をこなせるデッキなんて可能なんだろうか?
1999年に私が"Who’s the Beatdown?"を書いたときには、この問いへの答えがイエスであることに気づいていなかった。
「ひどいマッチアップ」というのは、ひとつの役割が完全に駄目になる場合のことを言う。
私がJoey Pascoと実況をした2,3ヶ月前のオープンで、Caleb Durwardがトップ8に入ったときに使っていた黒青デッキを相手にクリーチャーデッキをプレイしている場面を想像してほしい。
U/B Control
by Caleb Durward
6th place at a SCG Standard Open Nashville on 2011-10-09
Maindeck:
1 Solemn Simulacrum
1 Spellskite
2 Consecrated Sphinx
2 Grave Titan
1 Skinrender
4 Snapcaster Mage
1 Karn Liberated
3 Liliana of the Veil
2 Mana Leak
1 Dissipate
3 Dismember
1 Doom Blade
1 Go for the Throat
1 Tribute to Hunger
1 Twisted Image
2 Victim of Night
3 Black Sun’s Zenith
2 Divination
3 Nihil Spellbomb
8 Island
9 Swamp
4 Darkslick Shores
4 Drowned Catacomb
Sideboard:
2 Spellskite
3 Azure Mage
1 Volition Reins
1 Dissipate
2 Flashfreeze
1 Negate
2 Sorin’s Thirst
2 Surgical Extraction
1 Black Sun’s Zenith
あなたはビートダウン側に立つだろう。
小さな生物をプレイし、アタックしたりする。
問題なのはCalebのデッキにはSnapcaster Mageと除去しか入っていないことだ。
いくつかの私が見た試合では、彼は対戦相手からよりも自分のDismemberから受けるダメージの方が大きかったんだ!
そう、あなたはビートダウン側では満足な仕事ができない。
突如コントロール側にプレイを切り替える?
それはなかなかできるものじゃない。
自然は真空を嫌う。
もしあなたが先にアタックを仕掛けようとしても・・・Calebもそれをやるだろう。
彼は3ターン目のLiliana of the Veilのような先回りしたプレイをするだろうし、あなたがクリーチャーを場に保てないのでLillyは去らない。
(※訳注:「自然は真空を嫌う」は、自然界では足りない部分が何らかの物質で埋められるはたらきがある、という諺。)
このゲームを何と呼んだらいいのだろう?
もしカードアドバンテージだらけの黒青デッキが場を固定してしまったら?
私のビートダウンフレンドであるあなたは良い状況にはない。
もはやそこに役割はない。
最後には彼は何らかの脅威を手に入れ、あなたを打ち倒すだろう。
サイドボーディングで重荷を取り除く
「抜くことによる追加」つまりマイナスを取り除くことで得るものがある、という考え方は多くの人が理解していると思う。
元の"Who’s the Beatdown?"では、ほとんど見込みのないマッチアップでも賢いサイドボーディングによって対戦相手が苦手とする役割を手に入れることができる、というようなことを述べた。
デッキデザイナーPatrick ChapinとGrixis Desperate Ravingsでの彼のお気に入りの戦略を挙げよう。
Grixis Control
by Patrick Chapin
2nd place at a GP Orlando on 2012-01-15
Maindeck:
1 Inferno Titan
2 Snapcaster Mage
2 Olivia Voldaren
2 Liliana of the Veil
1 Sorin Markov
4 Desperate Ravings
3 Forbidden Alchemy
2 Ponder
1 Batterskull
3 Mana Leak
3 Pristine Talisman
2 Ratchet Bomb
1 Ancient Grudge
2 Curse of Death’s Hold
1 Doom Blade
1 Go for the Throat
1 Black Sun’s Zenith
1 Devil’s Play
2 Whipflare
4 Island
2 Mountain
2 Swamp
4 Blackcleave Cliffs
1 Copperline Gorge
4 Darkslick Shores
2 Drowned Catacomb
2 Shimmering Grotto
4 Sulfur Falls
Sideboard:
1 Ratchet Bomb
1 Curse of Death’s Hold
2 Ancient Grudge
2 Blue Sun’s Zenith
2 Dissipate
1 Mana Leak
2 Negate
1 Karn Liberated
1 Liliana of the Veil
1 Life’s Finale
1 Sorin’s Vengeance
最近Patrickはこの手のデッキを使ってグランプリの決勝に進出した。
このデッキはトレードオフの連続だ。ベースはコントロール側に立つデッキで、より数の多いデッキYと競えるようにするためにデッキXとの相性は悪化させる、という選択をPatrickは絶え間なくし続けなければならない。
PatrickはTwitterの#PTDKAで私に、人間デッキ対策のサイド戦略のブレインストーミングを持ちかけてきた。人間デッキの攻めは非常に速く、単体除去に対してトークンが自然にカードアドバンテージとなり、Doomed Travelerのようなクリーチャーは、リリアナなどの先回りした対応の効果を薄める。
最終的に、Patrickが既にFaithless Looting、Desperate Ravings、Liliana of the Veilを積んでいること、またChapinのトレードマークでもある、何でもプレイできる「野心的なマナベース」を活かして、サイド後リアニデッキに変身することを提案した。
人間デッキは明確にビートダウン側だが、同時にカードアドバンテージ手段が多く、Patrickのデッキのアイデンティティを実質台なしにしてしまうためいくぶん問題だった。Strangleroot Geistのような他のアグロなカードも似たような影響があり、ついていくためにマナカーブに合った正しい回答を見つけ出すのはチャレンジングだ。
それなら、ビートダウン側に回ろう。
奴らを生かしたまま勝ってしまおう。
4ターン目に流すのでは遅すぎるのなら、4ターン目に乗り越えられない脅威を出してしまおう。
受動者から能動者になるんだ!
エリシュの常在型能力はDoomed TravelerとStrangleroot Geistをともに断固として、ゴホン、常在させない。
(※訳注:・・・オヤジギャグらしい。)
Patrickは結局このアイデアを使わなかったけど、その理由は単に私がちゃんと、今ここでやったように"Who’s the Beatdown?"の文脈で説明しなかったからだと思っているよ。
LOVE
MIKE