StarCityGamesより。
コントロールミラーにおける"Who’s the beatdown?"

全体除去が絡んだ押すか抑えるかの判断は昔から本当に難しいですね。


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Who’s The Beatdown? (Control Edition)
CHRISTIAN VALENTI
2013/1/04

http://www.starcitygames.com/article/25449_Whos-The-Beatdown-Control-Edition.html

マジックの過去へ旅をしてみよう。

"Who’s The Beatdown?"は最も影響力の大きいマジック戦略記事として今日まで存在し続けている。なぜだろうか?
あの記事には何よりも、ゲームに勝つためのプランを持ち、そして実行することの重要性が描かれている。完璧な記事にケンカを売る理由なんてないので、ここでMikeの記事をそんなに深堀りするつもりはないよ。だけど、このトピックについて少し違うアプローチをしてみたいと思うんだ。
2つの同じデッキが向かい合ったらどうなるだろう?あなたのコントロールデッキが2ターン目からアグロに動いていかなきゃならなくなったとき、何が起きるだろう?

あるカードを持っているからというだけの理由で、その後のプランなくカードを使いたいと思ってしまうことが平均的なプレイヤーたちの最大の弱点だ。これはいろんなマッチアップで起こりうることだけど、特にコントロールミラーでは頻繁に起きる。
Sphinx’s Revelationは客観的に見て今のスタンダードで最も強力なインスタントかもしれない。だけどRestoration Angelだって非常にコストパフォーマンスの良い攻撃性能を持ち、なおかつ相手のアタッカーを強襲することもできる中速の脅威だ。

次のシナリオを想像してほしい。
あなたは青白赤ミッドレンジ同士のミラーマッチでサイド後のゲームをプレイしている。あなたは4枚目の土地を出し、手札に土地3枚とRestoration Angel、Sphinx’s Revelation、Azorius Charm、Thought Scourを持ってエンドした。対戦相手も4枚目の土地を出し、同じくそのままエンドしてきた。
あなたはAngelをキャストする?それはなぜ?あなたのプランはどんなものだろう?どんな結末が予想される?

1. あなたはAngelをキャストし、解決する。アンタップ、ドローして5枚目の土地を出し、アタックして妨害を受けずに3点ダメージを与える。(おそらく最良のシナリオ。)

2. あなたは上記と同じようにアクションする。しかし対戦相手もAngelをキャストしてダメージを防ぐ。(プレインズウォーカーのキャストに対して無防備になるのは彼にとって悲惨なのでこうなる可能性は低い。)

3. 流れは1番のシナリオと同じだが、対戦相手が変わる。あなたがクロックを場に出したため彼はアクションする必要に駆られ、スペルをキャストし始める。こうなると、危険なスペルを通してしまうことで(こちらにカウンターがないという)重要な情報を与えることになり、対戦相手はこちらを脅威で押しつぶそうとし始めるだろう。(こちらの手札で相手の脅威に対処し続けられる可能性は低い。)

4. あなたのAngelがカウンターされ、ドローゴーゲームに戻る。あなたの手札には大量の土地とキャントリップはあるが、相手の脅威に対抗するアクションは不足している。有利か不利かは不明で、相手がこれからどのようにアプローチしようとしているかによって変わる。(ドローゴーが続けば有利だが、相手の手札にアクションが濃い場合は弱い。)

その他いろいろな結末を検討すると、ドローゴーが続くようにゲームを誘導し、(今のところこちらからは回答できない)スペルを使わなければならないと相手に思わせないようにするプランをとるのが合理的だということが分かる。

Restoration Angelをキャストするのは悪いことはなく理に適っているように見えるけど、実際はゲームのペースを変え、こちらの望むプランから遠ざかってしまうことになる。


プランを貫徹する

あるトーナメントで再び青白赤ミッドレンジをプレイしている場面を想像してほしい。よく似たデッキを使っていると思われるプレイヤーが1回戦の相手だ。あなたは先攻で、マリガンして土地3枚とPillar of Flame、Snapcaster Mage、Restoration Angelという手札をキープ。この手札はアグロデッキに対しては素晴らしく、相手が使っているであろうデッキに対しても間違いなくダブマリするよりは良い。

《火柱/Pillar of Flame》
《瞬唱の魔道士/Snapcaster Mage》
《修復の天使/Restoration Angel》


相手はHallowed Fountainをセットして後手1ターン目を終えた。あなたはこの2ターン目のドローステップまでに得た情報で今後のプラン全体を構築することになる。このターン引いたのは――2枚目のPillar of Flameだ。これらのカードを使ってどうやってゲームに勝とう?もちろん明らかだよね!Pillarをプレイして3ターン目に瞬唱でフラッシュバック、クロックを刻み始めるんだ。
対戦相手は2ターン目には土地を出すだけで何もしてこなかった。こちらが3ターン目に引いたカードはThought Scour。さあどうする?新たな情報が明らかになり、Thought Scourで自分のライブラリを削りつつ瞬唱を使うカードアドバンテージプランもとれるようになった。これは良いプランかな?

単純にコントロールの論理で考えれば、ドロースペルを使って序盤に土地を確実に確保するのは必須ということになる。4枚目や5枚目の土地を出すことは勝利の役に立つだろうか?それは間違いないだろう。では、テンポ面での損失はどうだろう?これは明確じゃない。
コントロールミラーにおいて、マリガンする羽目になったうえ2枚のショックを使ってゲームに勝利するには、何かラッキーなことが起きなきゃならない。このゲームの今の状況ではプラン変更は無意味だと断言したい。瞬唱でPillarをフラッシュバックするアグロなプレイをすることで、相手の悠長なスタートにつけ込むチャンスが得られる。

対戦相手は3ターン目にタップインランドを出し、Runechanter’s Pikeをプレイ。ここまでの相手のプレイはいくつかのことを語っている。
たぶん彼はキャントリップ手段を持っていない。もし持っていたらこちらの3ターン目のエンドに使っていたはずだからだ。また、たぶん彼はEssence ScatterやSyncopateのような2マナの妨害手段も持っていない。持っていたらこの状況でPikeをキャストしないはずだからだ。
それじゃあ彼は何を持っている?DissipateやCounterfluxのような重いカウンターを持っているというのはつじつまが合う。いくつかの土地やRestoration Angel、ここまで使う機会のなかった瞬唱を持っているという説もうなずける。

こちらはきっかり4枚目の土地をドロー。これまで集めた情報から、戦闘後に手札のAngelをキャストする。瞬唱ブリンクでPillarを再利用するプレイは諦めることになる。それでも、このゲームでキャストすることになるおそらく(最初で)最後の重要スペルを確実に通せる機会を逃すわけにはいかない。

相手は4枚目の土地をプレイ。このゲームで重要なことは何なのか、この時点でこちらはほぼ完全な情報を手に入れることになる。彼がAngelを持っていることはほぼ明らかだ。もし持っていない場合、そのハンドはキープに値しない。
彼はよく分かっており、こちらがカウンターをトップする前に、ソーサリータイミングでAngelをプレイ。こちらの5ターン目のドローステップでは、既に手札に持っていたPillarとThought Scourに瞬唱が加わることになった。

相手のライフは14だ。Angelと瞬唱でアタックし、彼のAngelで瞬唱を討ち取ることをほぼ強制する。この時点でPillarで相手のAngelを除去することは確定している。プランを貫徹するため残り3マナでPillarを瞬唱で再キャストし、相手のライフをおぼつかない9点まで落とすことにする。

《思考掃き/Thought Scour》
《対抗変転/Counterflux》


相手は5枚目の土地を出してすぐにエンド。その後こちらはCounterfluxをドロー。情報を整理しよう。
一つ前のターン、相手はカウンターをケアしてソーサリータイミングでAngelをプレイしてきた。何が変わった?Angelを解決させたいなら前のターンと状況は変わらないはずだ。ならばなぜ彼はこちらがタップアウトしているうちにスペルをキャストしようとしなかった?理由として考えられるのは、彼はこのターンにプレイするものをカウンターされても不満はないということだろう。

こちらのアタックで彼のライフは4になった。こちらのエンドに彼がキャストしたSphinx’s Revelation X=2は、カウンターされても構わないと彼が考えているスペルだ。これは通し、彼はライフが6になり、フルの手札でアンタップを迎える。彼はDesperate Ravingsのキャストから始め、Geist of Saint Traftをディスカード。6枚目の土地を置いてエンドする。
こちらのドローはお得な3枚目のPillar of Flame。彼のAngelキャストをCounterfluxで弾き、赤いソーサリーを撃ち込んでゲーム1を取った。3ターン目に引いたThought Scourは結局キャストしていない。

このシナリオは実際にあった僕のゲームなんだ!ロサンゼルスでのインビテーショナルの2回戦、僕はMichael Hetrickとペアリングされた。そのゲーム1を僕の視点から一手一手書いたのがこのシナリオだよ。
この分析で大事なのは僕がゲームに勝ったことじゃない。Supreme Verdictが一発あるだけですぐにHetrickの優勢なゲームになっていたと思う(トラフト入りの彼のデッキにはおそらく入っていなかっただろうけど、ラストターンにトラフトが落ちるまでそのことは知らなかったよ)。
重要なのは自分がゲームにどう勝利するかをイメージすることなんだ。そのイメージの中であなたが勝利した時、ボードはどんな状態だろう?
ゲームが始まったとき僕は2枚のPillarと3枚の土地を持っていて、Revelationとまともにやりあって勝てる状態じゃなかった。それで、彼のカードアドバンテージが問題になるほどの時間をかける前に勝つイメージに合わせてプレイを組み立てたんだ。


ボーナスポイントはない

マッチに勝てば3点がもらえ、負ければ0点。単純だ。信じられないぐらい明確じゃないかな?
それじゃあなぜ多くの人が自らの手で勝つのをとても難しくしてしまうのだろう?ダブマリして勝ったからといって追加でポイントをもらえるわけじゃない。7枚の手札を持った状態で相手を倒しても追加のポイントはもらえない。負けたことに不満を述べたって当然追加のポイントはもらえない。

自分にできることを知るべきだ!さっきのような分析を見たうえで、僕が毎ゲームこんなにじっくりと考えているわけじゃないと聞いたらショックを受ける人もいるかもしれないね。人間には知性があり、長い時間をかければ正しいプレイを見つけることはできるだろう。
じっくり考えずに取った行動で勝てるようになろう!さっきのHetrickとのゲーム1は12分で僕の7ターン目に終わった。取るべき戦略の選択肢はたくさんあったけれど、実際にはどのプレイも時間をかけて考えることなく行なっていた。僕はこのタイプのデッキをシーズン中ずっと使っていて、絶望的に見えるゲームを勝つためにどうアプローチすべきかよく知っていたんだ。Michaelだって同じだよ。


対戦相手は勝とうとしている

インビテーショナルのカバレッジがここ(http://starcitygames.com/events/121216_losangeles.htmlhttp:/starcitygames.com/events/121216_losangeles.html)で見られる。2つ目の事例として4回戦のJoseph Losterとのフィーチャーマッチを取り上げよう。
6:50のところで僕はJace, Memory Adeptをキャスト、自分を対象に1枚引いて1枚削った。

(※訳注:原文ではここにフィーチャーマッチの動画が貼られています。)

この時点で既に僕らは2ゲームを終えており、動画からは分かりにくい情報をJosephはたくさん手に入れていた。一番重要なのは、僕がUnsummonをデッキに入れていないだろうと彼が考えていたことで、おかげで彼は自由に行動できていた。この情報と手札のセレズニアチャームにより、彼はジェイスに対処するために2枚目のAngelを出す必要がなく、やがて来る全体除去からの復旧に備えて手札に残しておけていた。

彼が考慮できていなかったのは、こちらのプレイが全て予め決まっており彼のチャームも念頭に置かれていたことだ。動画では見にくいけど僕がジェイスで引いたのはPillarで、引きたいカードではなかった。これを狼トークンに使うことを考えたけれど、そうするとチャームがジェイスへの回答として使えなくなるため、彼はAngelをプレイせざるを得なくなる(これは僕にとってやってほしくないプレイだ)。

僕がRestoration Angelでのチャンプブロックに時間をかけなかったことに着目してほしい。完全に事前に決まっていたことで、僕がしたのは他のブロックの仕方ではチャームを使われたときにジェイスが生き残れないと再確認することだけだった。
Josephはすぐに何が起きているか気づき、困ってしまった。僕は次のターンにSupreme Verdictをキャストしようとしていた。彼の4枚の土地で可能な選択肢は2つしかなかった:実際に彼がやったようにマナを増やしながらこちらのVerdictプレイを強制するか、ジェイスに2ダメージを与えて続くターンに僕がボードを流した後でAngelをキャストするかだ。いずれにせよ彼にとってはひどいシナリオで、彼の2枚の手札を読んだことと彼が脅威を手札に残そうとしたことを使ってプランを立て、この状況を作ることができた。

対戦相手は勝とうとしている。カメラで撮影されているマッチでは、アマプレイヤーは下手をうつかひどく単調なABCマジックをしてしまうかのどちらかになることがとても多い。
この問題はシンプルだ。対戦相手は合理的で、単調なプレイは最も止められやすいと考えよう。あのチャンプブロックはパッと見ではどれだけ変なプレイだろう?彼のリアクションから、あのブロックが彼のレーダーの外だったのはすぐに分かったよ。

コメント欄でのフィードバックを読むのが本当に楽しみだよ。多くのことが書かれすぎているトーナメントレポートや、テストする時間のあまり取れていないデッキリストなんかよりもセオリーについて書く方が好きなんだ。
それじゃ、お元気で!

コメント

nophoto
通りすがり
2013年2月5日23:30

素晴らしい記事を翻訳ありがとうございます。
JunkやJundは組んでも純粋なコントロールを組んだ事のないビート脳な自分には非常に考えさせられる記事でした。

特に最初の問は1、2、4までしか浮かばず天使キャストでいいじゃんになっており視野の狭さに気付かされました。

素晴らしい記事を翻訳ありがとうございます。

Radish
2013年2月6日1:45

> 通りすがりさん
自分も3に思い至らなかったクチです。
こういう情報戦はコントロールに限らず難しいけど面白いところですよね。
コメントありがとうございました。

re-giant
2013年2月7日16:24

面白かったです。Who’s The Beatdownって古典レベルに有名なんですね。上の方も書いてますが、相手側にアクションを強いることで結果として自分の首を絞める、というくだりが特に興味深かったです。

LED
2013年2月8日15:02

素晴らしい翻訳、ありがとうございます。

選択肢3 の「相手のプレイを予想する」というのはなかなか実戦でやるのは難しいですよね。
練習しなければといつも思うのですが…

ただ、こういう自分の選択によってゲームの流れが変わる時を感じられるのは、MtGで一番面白い瞬間じゃないかと思ってます。

Radish
2013年2月9日3:37

> re-giantさん
ありがとうございます。SCGでWho’s The Beatdownスリーブが売られていたぐらいシンボリックな記事のようです(今見たらスリーブはなくなってしまったようですが)。re-giantさんの訳も前に読ませていただいていました。
アクションしないことで相手をビートダウン側に立たせない、という考えはコントロールミラーならではで面白いですね。

> LEDさん
天使をキャストされないように狼トークンを焼かずに残す、なんて簡単に書いてありますが、相手の手札までしっかり読めていないとなかなかできないプレイですよね。
なかなかうまくできませんが、「スイッチの切り替え」を楽しめるアグロコントロールは大好きです。

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