【翻訳】Risky Moves - Jeremy Neeman
2012年9月28日 翻訳(プレイング) コメント (4)StarCityGamesより。
リスク評価の落とし穴。
久々に純粋なプレイング記事を翻訳。
大事な場面ほどカバを恐れてしまいがちです。
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Risky Moves
By Jeremy Neeman
11/01/2011
http://www.starcitygames.com/magic/fundamentals/23044_Risky_Moves.html
やあみんな!
僕はJeremy Neeman。そしてこれは素晴らしいウェブサイトのひとつ、StarCityGames.comに寄せる僕の初めての記事だ。
もしあなたが僕と同じようにこの記事にエキサイトしてくれたなら、すぐさまSCGのオンラインショップに飛んで必要のない高価なものを買おう。チャック・ノリスがOKしてくれるよ。
オーケー。ここがどこか分かってるのかって?これじゃあスパムだね、たしかに。
役立つ情報や戦略についての価値ある洞察でいっぱいの記事?そう、その通り。ただいまお持ちします。
あなたが取るべきリスク
たぶん、あなたは保守的にプレイしすぎている。
悪く思わないでほしい。リスクは量るのがとても難しい。金融機関はリスクを量るために自ら数百万ドルを使い、投資先のやっている仕事がどれぐらい良いかしっかり見た上で支払いを決定する。マジックプレイヤーがそれをうまくできないからといって驚くべきことかな?
僕らはただの人間だ。頭の中で複雑な統計分析をするのではなく、バナナを食べるように進化してきた。
人々はいわゆる「Narrative fallacy」(※訳注:後付けでストーリーを構築し、事象に特定可能な原因があると思い込むこと)に陥りがちだ。これはつまり、僕らは物事を統計では考えておらず、物語で考えているということだ。
「彼がここでDevil’s PlayかBrimstone Volleyをドローする確率は8.6%あり、そのいずれかによって95.4%の確からしさで彼はゲームに勝利するだろう」というように僕らは計算したりはしない。僕らが考えるのは「頼む、Devil’s Playを引かないでくれ」ということだ。
実質的に、僕らは簡単に想像できるリスクを大きく見積もりすぎ、すぐには思いつかないリスクを小さく見積もりすぎることになる。
あそこにいるJoe Averageを見てみよう。
彼の対戦相手はダブマリしたうえにちょっとマナフラッド気味で、Joeは並べた生物でビートダウンしている。Joeは自分が勝つだろうと思っているが、相手のトップFireballには負ける可能性があり、それを心配し始める。対戦相手がFireballをトップデッキする可能性はかなり現実的だ。Joeはその場面を簡単に想像できるし、そうなってほしくない――そして彼はそれをケアしはじめる。
Joeは致命的でないアタックに対して、おそらく必要ないだろうUnsummonを使う。「僕はプロだ!」彼は考える。「弱いプレイヤーはこの可能性を完全に失念してしまうだろう。」
そして対戦相手がまったくたいしたことのないSiege Mastodonを場に出し、Joeは自分のプレイ――このターンにFireballで死なないようにしたプレイ――のおかげで、もはや必ずしもゲームに勝てなくなってしまっていることに気づく。それから数ターンのやりとりがあった。Joeが2枚の土地を引き、相手がフライヤーを引いてJoeを殴り、そして最終的にFireballをドローして最後の7点を削った。
Joeは何か間違ったことをした?間違いない!対戦相手がそこでFireballを引く可能性は、何かのクリーチャーを引く可能性よりもずっとずっと小さい。JoeはFireballをケアすべき場面にいるのではなかった。なぜならSiege Mastodonを安全にかわす手段がなかったためだ。
この「ケアすべき場面にいる」というフレーズは乱用されている。そしていま、あなたはこのフレーズにどんな意味があるのかを知った。多くの場合、こちらは土地と生物を並べてビートしているけれども大きな脅威が現れれば負ける、というリスクは受け入れなければならない。もし彼がFireballやOverrunやDivil’s Playをドローすれば、あなたは負ける。例えばBloodline KeeperをDissipateせずに通す余裕があるのは、あなたが大幅に優勢で、Devil’s Playを引くことが相手の唯一の生存手段になっている場合だけだ。
カバとクマの話
状況を絞って考えてみよう。シーンはオーストラリア選手権2010の第9ラウンドで、あなたはこのM11ドラフトの最終ラウンドを勝って9-0でトップ8を狙いたい。あなたはForeseeのために青をタッチしたなかなか良い赤緑タッチ青コントロールをドラフトしており、よりアグロな赤緑デッキを相手に戦っている。いまはゲーム2で、お互いにVolcanic Strengthの付いたブロックされないクリーチャーを使って殴り合いをしている。
あなたのボードはこうだ:Volcanic Strengthの付いたSylvan Ranger1体、Stone Golem1体、Awakener Druid1体と4/5になった森1体(全てタップ状態)。ライフは10点。
相手のボードはVolcanic Strengthの付いたGarruk’s Companion1体(こちらもタップ状態)で、ライフは6点。彼は2枚の手札を持っている。あなたも相手も適切な色の土地6枚を出している。
いまはあなたの戦闘後メインフェイズ。あなたの手札はPyroclasm、Pyroclasm、Berserkers of Blood Ridge(コスト4R、4/4、毎ターンアタックする必要あり)だ。
さてどうする?
これはあなたがかなり優勢な盤面の一例で、そしてこのゲームは一つの問いに集約される:Lava AxeかFireballがあるかないか?
ここでPyroclasmを2発撃ち、あなたのカード6枚と相手の2枚を交換するのが正しいプレイだと提案するのはクレイジーに思えるかもしれない。しかし彼がAxeを持っている場合、敗北を避ける唯一の方法がこのプレイだ。彼が何も持っていない場合、あなたはBerserkersをプレイすれば次のターンに間違いなく彼を倒せるだろう――だがこれは引き受けるべきリスクなんだろうか?Pyroclasm2発の後にはあなたの手札にBerserkersがまだ残っており、これは相手のトップから出てくる生物よりも大きい可能性が高い。
僕は去年の選手権のレポートの中でこの問いを提示した。そして集まった回答にびっくりした。
道を間違えた人が少なくなかった――多くの読者がトップ8への強い願望からAxeの可能性を心配し、Pyroclasmでボードを流すことを選んだんだ。
僕はこのプレイは完全に間違いだと思っている。これが理由だ:
理由1.彼の手札はもちろん、デッキにLava Axeが入っているかどうか分からない。
Lava Axeはコモンだが、Chandra’s Outrageのように赤プレイヤーなら何が何でも使うカードではない。多くの赤デッキはLava Axeをサイドボードに入れる。単純にデッキが十分にアグレッシブではなく、使う理由がないためにそうなるんだ。これは特にM11の遅い環境では正しい。
相手がLava Axeをピックしてデッキに入れている可能性を、奮発して見積もって50%としてみよう。彼はデッキの1/4を見ていることになるので、彼が手札にAxeを持っている確率は12.5%だ。Fireballを考慮する場合はもう少し高い値になるけど、Fireballはいずれにしてもあなたにとって非常に悪いということを思い出そう――彼があなた本体を殺さない場合でも、(パイロ2発の後に)あなたのBerserkersを殺して何も残らない状態にできる。
レッスン1:「現実的であれ。」
山とBlasphemous Actが青白デッキから出てくることをケアしてはいけない。仮にそれがあり得る場合にはケアすることも可能だが、実際にそれが起きる可能性は1%もない。
理由2.そんな余裕はない。Lava Axeをケアすることで、それ以外の無視したカードたち全部に対して敗れることになる。
あなたはBerserkers of Blood Ridgeを持っている。相手は2枚の手札を持っている。その手札はYavimaya WurmとSpined Wurmかもしれないし、Grizzly BearsとGiant Growthかもしれない。森と山の可能性もあるが、デッキの上にはYavimaya Wurmから3枚のクリーチャーが続いており、あなたが土地を置いている間に殴りかかってくるかもしれない。ライフ10のプレイヤーが1体の4/4を出している状況を打ち破れるカードは、ライフ5のプレイヤーが2体の4/4、1体の1/1、1体の4/5、そして1体の3/3山渡りを出している状況を打破できるカードよりもずっとずっと多い。
リミテッドにおいて対戦相手が何を持っているか考える場合、特定のカードを明らかに示すプレイがなければ「何らかのクリーチャーたちがいる」というのがもっともよくあるケースとしてまず考えるべきものだ。
レッスン2:「勝率を考えてプレイしよう。」
1体の4/4とあなたのデッキのトップによって、相手の2枚の未知カードと彼のデッキトップを打ち破れる可能性は50/50より高くはない。じゃあ、あなたがここで4/4を出すことにした場合、彼が一撃であなたを殺せるカードを持っていない可能性は?
ずっといい。上で書いたように、もしあなたがLava Axeをケアしなければこの時点でおそらく90%の勝率がある。
これらは全てとても当たり前に思える。それじゃあ、どうして多くの人が間違ったプレイを選んでしまうのだろう?その理由は、彼らがレッスン3:「勇敢になれ!」を無視しているためだ。
そう、その場で自分の下した判断が原因でゲームに負けるかもしれないと考えるのは恐ろしいことだ。友人があなたを笑うかもしれない、あなたをヘタクソだと言うかもしれない、あるいは「なんでLava Axeがくると思わなかったの??」と聞いてくるかもしれない。
これは僕らがすぐ目の前にあるものを恐れるようにできているのが原因だ。有史以前の僕らの祖先は次の週に襲ってくるかもしれないクマのことを心配している暇はなく、ほら穴のすぐ外にいて既にAndyを襲っているカバに対処しなければならなかった。同じように、マジックの試合をするとき、あなたの反射反応は7ターンかけてあなたを倒すしょぼい生物たちよりも、今すぐにあなたを殺せる強力なスペルのことを考える。僕らはカバを心配しすぎて、クマを完全に無視してしまうんだ。
(ポイントを伝えるための余談だけど、例えば、多くの人は糖尿病よりもテロを恐れている。あなたが糖尿病で死ぬ確率はテロリストの攻撃によって死ぬ確率の数千倍は高い。これはテロがカバ、つまり、まれに起こり、即時性があり、あなたを殺す、そういうものだからだ。糖尿病はクマだ。ありふれていてすぐさま危険ではないが、長期的にとても多くの死をもたらす。)
死にたくない!
イニストラードによるスタンダードローテの前に戻ろう。僕はMOで青赤双子コンボをよく使っていた。
特によく覚えているゲームがある。僕はCaw-Bladeを相手にプレイしていて、相手の手札をGitaxian Probeで見ていた。彼はHero of Bladeholdと2枚のFlashfreeze、それとたいして影響のないいくつかのカード(たしかラスとギデオン)を持っていた。僕にとってツイていたのは、彼が土地3枚で止まっていて、こちらはJace Belerenを着地させて追加のカードをドローし始めていたことだ。残念なことに僕の手札は満杯だったけどガラクタの山だった。手札には複数のSplinter Twinと多すぎる土地があり、Deceiver Exarchもなければ1枚のMana Leakすらなかった。彼が4枚目の土地をトップしてHeroを着地させれば勝つのはかなり大変になるだろう。
彼はドローして4枚目の土地をプレイし、そして・・・エンドしてきた!
こんなに嬉しいことはない。ジェイスのおかげで1ターンに2枚のカードを引き、僕はどんどん差をつけた。最終的に2体のDeceiver Exarchで相手をタップさせ、タイミングよく引き込んだMana Leakの助けも得ながらコンボ始動した。
対戦相手のプレイに何が起きたんだろう?
双子はある意味カバを詰め込んだデッキだ。3マナを立てている双子デッキに対してタップアウトすることは巨大なリスクになる。そういうことをする人を殺せるように双子デッキは構築されている。それで僕の対戦相手は負けることを恐れた――しかし彼がやったのは、かなり高い確率で即座に負けることを、同じぐらいの確率で時間をかけて負けることに置き換えただけだ。
土地が詰まり、ボードにプレッシャーを出せておらず、そしてタップアウトすらできないのでは、アクティブなJace Belerenを倒すことを彼はまったく望めない。こちらは徐々に必要なカードを見つけ、必要な土地を手に入れ、そして彼がどんな妨害をキャストしようともくぐり抜けてコンボを始めてしまうだろう。
このシチュエーションでは、Caw-Bladeプレイヤーにとってゲームがクマになっている!今から5ターン後、彼が今よりも悪いポジションに立たされることはほとんど保証されているようなものだ。Hero of Bladeholdをキャストすればタップアウトしてしまうかもしれないが、それでも今チャンスを掴みにいく必要がある。たしかにこれはカバのいる水中に歩いて踏み込むようなものだ。しかしHeroを場に出しつつアンタップを迎えるチャンスは存在して、そうなればゲームを終わらせる素晴らしい一撃を放つ権利が得られる。
負けさえしなければ勝ったようなもの、そうじゃないの?
みんなに話しておきたい最後のリスクに関するエピソードはつい最近のことで、僕自身がカバの牙をかわしてクマにつかまった話だ。
イニストラード3パックのドラフトだった。僕はとても堅実な緑白アグロデッキを作り、決勝戦で青赤を使う対戦相手と戦っていた。彼は若干土地が詰まり気味だったけれど、裏返ったDelver of SecretsにSpectral Flightを付ける強い出だしをしてきた。彼の5/4をダブルブロックできる2体のパワー2のフライヤーを出して反撃開始したとき、僕のライフは2になっていた。
そして、彼が場に出しているのはビート要員の虫と3枚の島だけという状況になった。僕はVillagers of Estwald、Silverchase Fox、Voiceless Spirit、そしてChapel Geistを出していた。彼のライフは10で僕は2。しかし僕はかなりの燃料を手札に持っていた――Festerhide Boar、Avacynian Priest、2枚目のChapel Geist、そしてMausoleum Guardだ。土地は4枚しかなかったけれども。
この時点で僕は自分が有利で、やるべきなのは負けないことだとかなり確信していた。(あなたがこの記事のテーマに注意すれば、リスクを避けることが実に頻繁に「負けない」プレイになっていて、リスクを引き受けることが「勝つ」プレイになることに気づくだろうね。)
こちらを殺すプレイとして僕が想像したのは、彼が山をトップしてNightbird’s Clutchesをキャストし、こちらのフライヤー2体をブロック不能にして最後のダメージを与えてくることだった。たしかにこれはカバ的だ。それで僕はVillagers of Estwaldだけでアタックし、3体目のChapel Geistをボードに追加した。
「もう山+Brimstone Volley以外には負けないぞ!」僕は思った。「これで彼の勝率を半減させた。素晴らしいね。」
対戦相手は山を出し、そして僕がまったく考えていなかったクマを出してきた――Mindshriekerだ。突如として僕のアタックは機能停止した。彼が自分のライブラリからスペルを削りこちらのクリーチャー1体をタダで倒すリスクは取れず、いまや僕は不便な除去呪文を引く可能性に賭けることしかできなくなってしまった。Avacynian Priestは変わらずプレッシャーとして機能したけど、彼はすぐに土地を引き込んで追加のフライヤーをプレイし、僕のボードアドバンテージは一瞬でなくなってしまった。
結局そのゲームは僕が勝ったけれど、彼はLost in the Mistを持っていてほとんど殴り切る寸前だった。彼が土地3枚で止まり、こちらの5体に対して1体のクリーチャーしか出していなかったとき、僕はLost in the Mistに負けるかもしれないと考えただろうか?それは絶対無理だ。それに、仮にそれをケアしたとしてもどのみちNightbird’s Clutchesに負けることになっただろう。実際、僕は彼にClutchesを探すためのターンを何度も与えてしまっていた。
おわりに
もしこの記事を一文にまとめるなら、僕はこう言うね:
「最も恐ろしいことではなく、最も起きそうなことを心配しよう!」
(そしてクマにハチミツを取られないようにしよう。)
それじゃあまた次回。
Jeremy
リスク評価の落とし穴。
久々に純粋なプレイング記事を翻訳。
大事な場面ほどカバを恐れてしまいがちです。
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Risky Moves
By Jeremy Neeman
11/01/2011
http://www.starcitygames.com/magic/fundamentals/23044_Risky_Moves.html
やあみんな!
僕はJeremy Neeman。そしてこれは素晴らしいウェブサイトのひとつ、StarCityGames.comに寄せる僕の初めての記事だ。
もしあなたが僕と同じようにこの記事にエキサイトしてくれたなら、すぐさまSCGのオンラインショップに飛んで必要のない高価なものを買おう。チャック・ノリスがOKしてくれるよ。
オーケー。ここがどこか分かってるのかって?これじゃあスパムだね、たしかに。
役立つ情報や戦略についての価値ある洞察でいっぱいの記事?そう、その通り。ただいまお持ちします。
あなたが取るべきリスク
たぶん、あなたは保守的にプレイしすぎている。
悪く思わないでほしい。リスクは量るのがとても難しい。金融機関はリスクを量るために自ら数百万ドルを使い、投資先のやっている仕事がどれぐらい良いかしっかり見た上で支払いを決定する。マジックプレイヤーがそれをうまくできないからといって驚くべきことかな?
僕らはただの人間だ。頭の中で複雑な統計分析をするのではなく、バナナを食べるように進化してきた。
人々はいわゆる「Narrative fallacy」(※訳注:後付けでストーリーを構築し、事象に特定可能な原因があると思い込むこと)に陥りがちだ。これはつまり、僕らは物事を統計では考えておらず、物語で考えているということだ。
「彼がここでDevil’s PlayかBrimstone Volleyをドローする確率は8.6%あり、そのいずれかによって95.4%の確からしさで彼はゲームに勝利するだろう」というように僕らは計算したりはしない。僕らが考えるのは「頼む、Devil’s Playを引かないでくれ」ということだ。
実質的に、僕らは簡単に想像できるリスクを大きく見積もりすぎ、すぐには思いつかないリスクを小さく見積もりすぎることになる。
あそこにいるJoe Averageを見てみよう。
彼の対戦相手はダブマリしたうえにちょっとマナフラッド気味で、Joeは並べた生物でビートダウンしている。Joeは自分が勝つだろうと思っているが、相手のトップFireballには負ける可能性があり、それを心配し始める。対戦相手がFireballをトップデッキする可能性はかなり現実的だ。Joeはその場面を簡単に想像できるし、そうなってほしくない――そして彼はそれをケアしはじめる。
Joeは致命的でないアタックに対して、おそらく必要ないだろうUnsummonを使う。「僕はプロだ!」彼は考える。「弱いプレイヤーはこの可能性を完全に失念してしまうだろう。」
そして対戦相手がまったくたいしたことのないSiege Mastodonを場に出し、Joeは自分のプレイ――このターンにFireballで死なないようにしたプレイ――のおかげで、もはや必ずしもゲームに勝てなくなってしまっていることに気づく。それから数ターンのやりとりがあった。Joeが2枚の土地を引き、相手がフライヤーを引いてJoeを殴り、そして最終的にFireballをドローして最後の7点を削った。
Joeは何か間違ったことをした?間違いない!対戦相手がそこでFireballを引く可能性は、何かのクリーチャーを引く可能性よりもずっとずっと小さい。JoeはFireballをケアすべき場面にいるのではなかった。なぜならSiege Mastodonを安全にかわす手段がなかったためだ。
この「ケアすべき場面にいる」というフレーズは乱用されている。そしていま、あなたはこのフレーズにどんな意味があるのかを知った。多くの場合、こちらは土地と生物を並べてビートしているけれども大きな脅威が現れれば負ける、というリスクは受け入れなければならない。もし彼がFireballやOverrunやDivil’s Playをドローすれば、あなたは負ける。例えばBloodline KeeperをDissipateせずに通す余裕があるのは、あなたが大幅に優勢で、Devil’s Playを引くことが相手の唯一の生存手段になっている場合だけだ。
カバとクマの話
状況を絞って考えてみよう。シーンはオーストラリア選手権2010の第9ラウンドで、あなたはこのM11ドラフトの最終ラウンドを勝って9-0でトップ8を狙いたい。あなたはForeseeのために青をタッチしたなかなか良い赤緑タッチ青コントロールをドラフトしており、よりアグロな赤緑デッキを相手に戦っている。いまはゲーム2で、お互いにVolcanic Strengthの付いたブロックされないクリーチャーを使って殴り合いをしている。
あなたのボードはこうだ:Volcanic Strengthの付いたSylvan Ranger1体、Stone Golem1体、Awakener Druid1体と4/5になった森1体(全てタップ状態)。ライフは10点。
相手のボードはVolcanic Strengthの付いたGarruk’s Companion1体(こちらもタップ状態)で、ライフは6点。彼は2枚の手札を持っている。あなたも相手も適切な色の土地6枚を出している。
いまはあなたの戦闘後メインフェイズ。あなたの手札はPyroclasm、Pyroclasm、Berserkers of Blood Ridge(コスト4R、4/4、毎ターンアタックする必要あり)だ。
さてどうする?
これはあなたがかなり優勢な盤面の一例で、そしてこのゲームは一つの問いに集約される:Lava AxeかFireballがあるかないか?
ここでPyroclasmを2発撃ち、あなたのカード6枚と相手の2枚を交換するのが正しいプレイだと提案するのはクレイジーに思えるかもしれない。しかし彼がAxeを持っている場合、敗北を避ける唯一の方法がこのプレイだ。彼が何も持っていない場合、あなたはBerserkersをプレイすれば次のターンに間違いなく彼を倒せるだろう――だがこれは引き受けるべきリスクなんだろうか?Pyroclasm2発の後にはあなたの手札にBerserkersがまだ残っており、これは相手のトップから出てくる生物よりも大きい可能性が高い。
僕は去年の選手権のレポートの中でこの問いを提示した。そして集まった回答にびっくりした。
道を間違えた人が少なくなかった――多くの読者がトップ8への強い願望からAxeの可能性を心配し、Pyroclasmでボードを流すことを選んだんだ。
僕はこのプレイは完全に間違いだと思っている。これが理由だ:
理由1.彼の手札はもちろん、デッキにLava Axeが入っているかどうか分からない。
Lava Axeはコモンだが、Chandra’s Outrageのように赤プレイヤーなら何が何でも使うカードではない。多くの赤デッキはLava Axeをサイドボードに入れる。単純にデッキが十分にアグレッシブではなく、使う理由がないためにそうなるんだ。これは特にM11の遅い環境では正しい。
相手がLava Axeをピックしてデッキに入れている可能性を、奮発して見積もって50%としてみよう。彼はデッキの1/4を見ていることになるので、彼が手札にAxeを持っている確率は12.5%だ。Fireballを考慮する場合はもう少し高い値になるけど、Fireballはいずれにしてもあなたにとって非常に悪いということを思い出そう――彼があなた本体を殺さない場合でも、(パイロ2発の後に)あなたのBerserkersを殺して何も残らない状態にできる。
レッスン1:「現実的であれ。」
山とBlasphemous Actが青白デッキから出てくることをケアしてはいけない。仮にそれがあり得る場合にはケアすることも可能だが、実際にそれが起きる可能性は1%もない。
理由2.そんな余裕はない。Lava Axeをケアすることで、それ以外の無視したカードたち全部に対して敗れることになる。
あなたはBerserkers of Blood Ridgeを持っている。相手は2枚の手札を持っている。その手札はYavimaya WurmとSpined Wurmかもしれないし、Grizzly BearsとGiant Growthかもしれない。森と山の可能性もあるが、デッキの上にはYavimaya Wurmから3枚のクリーチャーが続いており、あなたが土地を置いている間に殴りかかってくるかもしれない。ライフ10のプレイヤーが1体の4/4を出している状況を打ち破れるカードは、ライフ5のプレイヤーが2体の4/4、1体の1/1、1体の4/5、そして1体の3/3山渡りを出している状況を打破できるカードよりもずっとずっと多い。
リミテッドにおいて対戦相手が何を持っているか考える場合、特定のカードを明らかに示すプレイがなければ「何らかのクリーチャーたちがいる」というのがもっともよくあるケースとしてまず考えるべきものだ。
レッスン2:「勝率を考えてプレイしよう。」
1体の4/4とあなたのデッキのトップによって、相手の2枚の未知カードと彼のデッキトップを打ち破れる可能性は50/50より高くはない。じゃあ、あなたがここで4/4を出すことにした場合、彼が一撃であなたを殺せるカードを持っていない可能性は?
ずっといい。上で書いたように、もしあなたがLava Axeをケアしなければこの時点でおそらく90%の勝率がある。
これらは全てとても当たり前に思える。それじゃあ、どうして多くの人が間違ったプレイを選んでしまうのだろう?その理由は、彼らがレッスン3:「勇敢になれ!」を無視しているためだ。
そう、その場で自分の下した判断が原因でゲームに負けるかもしれないと考えるのは恐ろしいことだ。友人があなたを笑うかもしれない、あなたをヘタクソだと言うかもしれない、あるいは「なんでLava Axeがくると思わなかったの??」と聞いてくるかもしれない。
これは僕らがすぐ目の前にあるものを恐れるようにできているのが原因だ。有史以前の僕らの祖先は次の週に襲ってくるかもしれないクマのことを心配している暇はなく、ほら穴のすぐ外にいて既にAndyを襲っているカバに対処しなければならなかった。同じように、マジックの試合をするとき、あなたの反射反応は7ターンかけてあなたを倒すしょぼい生物たちよりも、今すぐにあなたを殺せる強力なスペルのことを考える。僕らはカバを心配しすぎて、クマを完全に無視してしまうんだ。
(ポイントを伝えるための余談だけど、例えば、多くの人は糖尿病よりもテロを恐れている。あなたが糖尿病で死ぬ確率はテロリストの攻撃によって死ぬ確率の数千倍は高い。これはテロがカバ、つまり、まれに起こり、即時性があり、あなたを殺す、そういうものだからだ。糖尿病はクマだ。ありふれていてすぐさま危険ではないが、長期的にとても多くの死をもたらす。)
死にたくない!
イニストラードによるスタンダードローテの前に戻ろう。僕はMOで青赤双子コンボをよく使っていた。
特によく覚えているゲームがある。僕はCaw-Bladeを相手にプレイしていて、相手の手札をGitaxian Probeで見ていた。彼はHero of Bladeholdと2枚のFlashfreeze、それとたいして影響のないいくつかのカード(たしかラスとギデオン)を持っていた。僕にとってツイていたのは、彼が土地3枚で止まっていて、こちらはJace Belerenを着地させて追加のカードをドローし始めていたことだ。残念なことに僕の手札は満杯だったけどガラクタの山だった。手札には複数のSplinter Twinと多すぎる土地があり、Deceiver Exarchもなければ1枚のMana Leakすらなかった。彼が4枚目の土地をトップしてHeroを着地させれば勝つのはかなり大変になるだろう。
彼はドローして4枚目の土地をプレイし、そして・・・エンドしてきた!
こんなに嬉しいことはない。ジェイスのおかげで1ターンに2枚のカードを引き、僕はどんどん差をつけた。最終的に2体のDeceiver Exarchで相手をタップさせ、タイミングよく引き込んだMana Leakの助けも得ながらコンボ始動した。
対戦相手のプレイに何が起きたんだろう?
双子はある意味カバを詰め込んだデッキだ。3マナを立てている双子デッキに対してタップアウトすることは巨大なリスクになる。そういうことをする人を殺せるように双子デッキは構築されている。それで僕の対戦相手は負けることを恐れた――しかし彼がやったのは、かなり高い確率で即座に負けることを、同じぐらいの確率で時間をかけて負けることに置き換えただけだ。
土地が詰まり、ボードにプレッシャーを出せておらず、そしてタップアウトすらできないのでは、アクティブなJace Belerenを倒すことを彼はまったく望めない。こちらは徐々に必要なカードを見つけ、必要な土地を手に入れ、そして彼がどんな妨害をキャストしようともくぐり抜けてコンボを始めてしまうだろう。
このシチュエーションでは、Caw-Bladeプレイヤーにとってゲームがクマになっている!今から5ターン後、彼が今よりも悪いポジションに立たされることはほとんど保証されているようなものだ。Hero of Bladeholdをキャストすればタップアウトしてしまうかもしれないが、それでも今チャンスを掴みにいく必要がある。たしかにこれはカバのいる水中に歩いて踏み込むようなものだ。しかしHeroを場に出しつつアンタップを迎えるチャンスは存在して、そうなればゲームを終わらせる素晴らしい一撃を放つ権利が得られる。
負けさえしなければ勝ったようなもの、そうじゃないの?
みんなに話しておきたい最後のリスクに関するエピソードはつい最近のことで、僕自身がカバの牙をかわしてクマにつかまった話だ。
イニストラード3パックのドラフトだった。僕はとても堅実な緑白アグロデッキを作り、決勝戦で青赤を使う対戦相手と戦っていた。彼は若干土地が詰まり気味だったけれど、裏返ったDelver of SecretsにSpectral Flightを付ける強い出だしをしてきた。彼の5/4をダブルブロックできる2体のパワー2のフライヤーを出して反撃開始したとき、僕のライフは2になっていた。
そして、彼が場に出しているのはビート要員の虫と3枚の島だけという状況になった。僕はVillagers of Estwald、Silverchase Fox、Voiceless Spirit、そしてChapel Geistを出していた。彼のライフは10で僕は2。しかし僕はかなりの燃料を手札に持っていた――Festerhide Boar、Avacynian Priest、2枚目のChapel Geist、そしてMausoleum Guardだ。土地は4枚しかなかったけれども。
この時点で僕は自分が有利で、やるべきなのは負けないことだとかなり確信していた。(あなたがこの記事のテーマに注意すれば、リスクを避けることが実に頻繁に「負けない」プレイになっていて、リスクを引き受けることが「勝つ」プレイになることに気づくだろうね。)
こちらを殺すプレイとして僕が想像したのは、彼が山をトップしてNightbird’s Clutchesをキャストし、こちらのフライヤー2体をブロック不能にして最後のダメージを与えてくることだった。たしかにこれはカバ的だ。それで僕はVillagers of Estwaldだけでアタックし、3体目のChapel Geistをボードに追加した。
「もう山+Brimstone Volley以外には負けないぞ!」僕は思った。「これで彼の勝率を半減させた。素晴らしいね。」
対戦相手は山を出し、そして僕がまったく考えていなかったクマを出してきた――Mindshriekerだ。突如として僕のアタックは機能停止した。彼が自分のライブラリからスペルを削りこちらのクリーチャー1体をタダで倒すリスクは取れず、いまや僕は不便な除去呪文を引く可能性に賭けることしかできなくなってしまった。Avacynian Priestは変わらずプレッシャーとして機能したけど、彼はすぐに土地を引き込んで追加のフライヤーをプレイし、僕のボードアドバンテージは一瞬でなくなってしまった。
結局そのゲームは僕が勝ったけれど、彼はLost in the Mistを持っていてほとんど殴り切る寸前だった。彼が土地3枚で止まり、こちらの5体に対して1体のクリーチャーしか出していなかったとき、僕はLost in the Mistに負けるかもしれないと考えただろうか?それは絶対無理だ。それに、仮にそれをケアしたとしてもどのみちNightbird’s Clutchesに負けることになっただろう。実際、僕は彼にClutchesを探すためのターンを何度も与えてしまっていた。
おわりに
もしこの記事を一文にまとめるなら、僕はこう言うね:
「最も恐ろしいことではなく、最も起きそうなことを心配しよう!」
(そしてクマにハチミツを取られないようにしよう。)
それじゃあまた次回。
Jeremy
コメント
このあたりがMTGの面白い所ですよね。
手なりでプレイしていくと、本来なら負けてるはずの双子が勝っている。
自分はこのゲームのこういう所に魅力を感じてます。
コメントありがとうございます。
デュアラン杯のレポート等、こちらも楽しく読ませていただいてます。
> LEDさん
一瞬の気の迷い、みたいなものってどうしてもなくならないですよね。
勝負の恐ろしくて面白いところだと思います。